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2012.09.25.21.37

ちぇすとばすたー

チェストバスター (Chestburster) とは、エイリアン・シリーズ (The Alien Film Franchise) に登場する、タイトル・ロール、エイリアン (Alien) こと異星人 (Xenomorph) の幼生体である。

その前段階の変異体であるフェイスハガー (Facehugger) によって、宿主に寄生 (Parasitism) させられたチェストバスター (Chestburster) は、その名の通り、宿主の体内から喰い破って誕生する。そして、このチェストバスター (Chestburster) が、エイリアン・ウォーリアー (Alien Warrior) やエイリアン・クイーン (Xenomorph Queen) といった成体へと成長するのである。

エイリアン・シリーズ (The Alien Film Franchise) ではその第1作『エイリアン (Alien)』 [リドリー・スコット (Ridley Scott) 監督作品 1979年制作] において、物語の舞台となる宇宙船ノストロモ号 (Spaceship Nostromo) の船員ケイン (Kane) [演:ジョン・ハート (John Hurt)] の肚を喰い破って登場し、物語の主軸となるエイリアン (Alien) こと異星人 (Xenomorph) の残酷さとその恐怖を第一に印象づけた。
このチェストバスター (Chestburster) が成長して、成体ビッグチャップ (Big Chap) と化し、エレン・リプリー (Ellen Ripley) [演:シガニー・ウィーバー (Sigourney Weaver)] と対決するのである。

ところで、そのチェストバスター (Chestburster) を生物学的な見地から眺めてみると、非常に興味ぶかい存在であると同時に、非常に謎に満ちている事に気づかされる。
そして、その興味と謎を追求して行けば、エイリアン (Alien) こと異星人 (Xenomorph) の、生物としての存在感が観えて来る様な気がするのだ。

エイリアン (Alien) こと異星人 (Xenomorph) の成長の過程を追ってみれば、次の様な変態を遂げている事が解る。

エッグチェンバー (Egg Chamber) →フェイスハガー (Facehugger) →チェストバスター (Chestburster) →成体。

成体は、あたかも (Ant) や (Wasp) や白蟻 (Termite) といった社会性昆虫 (Insecte social) の様に、様々な役割分担と序列がある。大雑把に言えば、働き蟻や働き蜂の様な位置にあるのがエイリアン・ウォーリアー (Alien Warrior) 等であり、女王蟻や女王蜂の様な位置にあるのがエイリアン・クイーン (Xenomorph Queen) なのである。この設定は、映画第2作の『エイリアン 2 (Aliens)』 [ジェームズ・キャメロン (James Cameron) 監督作品 1986年制作] で描かれている筈だ。

だから、上の図の成体の項目に、エイリアン・クイーン (Xenomorph Queen) を代入すれば、エイリアン・クイーン (Xenomorph Queen) →エッグチェンバー (Egg Chamber) となり、生物学上での変態の円環が完成するのだ。

だがしかし、ここで気をつけなければいけない事がふたつある。

ひとつは、フェイスハガー (Facehugger) が成長して、チェストバスター (Chestburster) へと変態するのではない、という点。
フェイスハガー (Facehugger) は、チェストバスター (Chestburster) が寄生 (Parasitism) すべき宿主に、後にチェストバスター (Chestburster) へと成長する胎児を植え付けるのである。つまり、エイリアン (Alien) こと異星人 (Xenomorph) はここで、ひとつ生物学上の世代が、改まっているのである。

個人的には、配偶体 [有性世代] (Gametophyte) と胞子体 [無性世代] (Sporophyte) という2つの世代を行き来するシダ類 (Fern) をふと憶い起こしてしまったのだけれども。

もうひとつ気をつけるべきなのは、第4作『エイリアン 4 (Alien Resurrection)』 [ジャン=ピエール・ジュネ (Jean-Pierre Jeunet) 監督作品 1997年制作] での描写から、エイリアン・クイーン (Xenomorph Queen) が単性生殖 (Asexual Reproduction) している、という事だ。
(Ant) や (Wasp) や白蟻 (Termite) では、牡の存在が必須であるのと、ここが違う。

だが、生物学的に考えて、恒常的に単性生殖 (Asexual Reproduction) する高等生物はあり得るのだろうか、という疑義が産まれる。

ミズカビ (Saprolegnia) やミジンコ (Daphnia) 等は、そこに棲む環境の条件が整えば、単性生殖 (Asexual Reproduction) を行うけれども、それはあくまでも、緊急避難的なモノの様だ。種を存続させる為のやむを得ない選択肢のひとつであると同時に、現在までミズカビ (Saprolegnia) やミジンコ (Daphnia) 等が生き延びて来れた、種の生命力の証しと言ってよい。
と、同時に、アオミドロ (Spirogyra) やゾウリムシ (Paramecium) は、単性生殖 (Asexual Reproduction) が恒常的な生殖方法であるけれども、こちらはこちらで、そこに棲む環境の条件が整えば、接合 (Bacterial Conjugation) といった擬似的な両性生殖 (Biological Life Cycle) を行うのだ。しかも、面白い事に、彼らは緊急避難的に、そんな生殖行為を行うのである。

だから、暴論かもしれないけれども、生物はいつかどこかで両性生殖 (Biological Life Cycle) を行うのである。
もし仮に、それが一切行われないとしたら、種の存続は難しいモノになるだろううし、生物学上の"進化"を果たしえない様にも思えるのだ。
何故ならば、突然変異によって新たに獲得した形質を、自身の直系の子孫に伝える事は出来ても、後の世代へと伝播させる手段がないからである。

だからこそ、と言うべきなのだろうか。
チェストバスター (Chestburster) には、ある特異な、他の生物にはみられない特徴があるのだ。
それは、寄生 (Parasitism) した宿主の性質を受け継ぐ事だ。
第3作『エイリアン 3 (Alien 3)』 [デヴィッド・フィンチャー (David Fincher) 監督作品 1992年制作] に登場したエイリアン (Alien) こと異星人 (Xenomorph) は、犬に寄生 (Parasitism) した為に、四足歩行となった [ドッグ・エイリアンもしくはバンビ・エイリアン (Dog Alien or Bambi Alien) と呼ばれる]。
また、第4作『エイリアン 4 (Alien Resurrection)』 [ジャン=ピエール・ジュネ (Jean-Pierre Jeunet) 監督作品 1997年制作] では、水棲可能なニュー・ウォーリアー (New Warrior) と呼ばれるモノも登場する。
だから、鳥類等に寄生 (Parasitism) すれば恐らく、有翼のモノが誕生するのに違いないのだ。

つまり、エイリアン (Alien) こと異星人 (Xenomorph) という生物にとって、フェイスハガー (Facehugger) によってもたらされる寄生 (Parasitism) と、その結果の宿主の存在とは、通常の寄生 (Parasitism) とは異なるモノなのである。
我々のよく知る寄生 (Parasitism) とは、そこに食料があるという事だ。フェイスハガー (Facehugger) が寄生 (Parasitism) 先の宿主の体内にその胎児を植え付けるその行為は、寄生蜂 (Parasitoid Wasp) を憶い起こさせるけれども、それだけではないのだ。
ヒトが宿主となれば二足歩行となり、犬が宿主となれば四足歩行となる、その意味は、宿主の生物学的な特質や遺伝的な特質をそこで獲得するという事なのだ。
ある意味に於いては、宿主と擬似的な生殖行為を行っていると看做すべきなのかもしれない。

逆に考えれば、寄生 (Parasitism) という手段によって、自身の生物学的な特質を進化させてきた生物が、彼らなのである。

images
上記画像は、エイリアン (Alien) こと異星人 (Xenomorph) をヴィジュアル上で誕生させたH. R. ギーガー (H.R. Giger) [映画上のクレジットはクリーチャーデザイン (Alien Design)] 描くチェストバスター (Chestbuster)。

次回は「」。
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