2012.09.18.19.21
暗記 (Rote Learning) は嫌いだ。
しかも、苦手なのだ。
嫌いだから苦手なのか、苦手だから嫌いなのか。そのあとさきは解らない。
漢字の書き取りや、英単語の綴りや、年号の語呂合わせは、ホントに嫌いで苦手と来ているから、テストでとれる点を、みすみす逃している、とよく担任にしかられた。
そして、多分、嫌いで苦手の暗記 (Rote Learning) モノで、ぼくが最初に出くわした障壁が、九九 (Multiplication Table) なのだ。
尤も、それ以前にも、暗記 (Rote Learning) しなければならないモノは幾つもある。
自分自身の名前や、父親や母親の名前や、彼らと共に棲んでいる住所といった、モノである。でも、そんなモノはものごころつく前に、憶えさせられたから、どれ程に、ぼく自身がその暗記 (Rote Learning) に苦労したのだろうか、なんて事は憶えている訳がないのだ。
それと同様に、五十音の一語一語や、数字の数え方といった初歩の初歩の暗記 (Rote Learning) すべきモノも、どうやって、ぼく自身が憶えていったのかは、全然、憶えていない。
だからこそ、九九 (Multiplication Table) をどうやって記憶していったのか、その難事業はありありと記憶の底にこびりついているのだ。
ぼくの記憶に間違いがなければ、九九 (Multiplication Table) を学んだのは、小学校二年生の時で、その三学期の算数 (Elementary Mathematics) の授業を総て、その学習に充てたと想う。
学習に充てたと言っても、ただ只管に、生徒ひとりひとりが諳んじていくだけの作業だ。
2の段でも、3の段でも、5の段でも、9の段でも、どの段でもいい、自身が暗記したと自信をつけた段を自己申告し、担任の前で暗誦するだけなのである。それをきちんと澱み無く発話出来れば、合格のスタンプを所定の用紙にもらえるし、どこか一カ所でもあやしくなったのならば、出直して再挑戦するしかない。
だから、二年生の三学期の算数 (Elementary Mathematics) の授業は、あちらこちらで各自めいめいに九九 (Multiplication Table) を諳んじていて騒がしい一方で、自身の成果を発表する為に、担任の前に生徒が列をなしているという、雑然とした光景を観る事が出来るのである。
ただ、当初は無闇矢鱈に諳んじているだけの生徒達も、暗記 (Rote Learning) が得意な生徒と暗記 (Rote Learning) が不得手な生徒との間に格差も生じるし、暗記 (Rote Learning) は得意だけれども本番に弱い為に、担任の前で思う様な成果を発揮出来ない生徒もいれば、それとは逆に、つっかえつっかえながらもなんとか及第点をもらえる幸運な生徒も出て来る。
生徒それぞれの特質や性格や運不運といった様々な要素が絡み合い、悲喜交々をそれぞれの生徒に引き起こしていた。
だから、多分に、ただ徒に、2の段から始って、3の段、4の段、5の段と順番に、馬鹿丁寧に暗記 (Rote Learning) して行こうとするのは、あまりいい作戦とは言えないだろう、という事に、誰もが皆、気づくのだ。
例えば、2の段は、「にのしのよのやのとう」の延長戦だとか、5の段は、一の位が5と0が交互に登場するとか、9の段は、十の位がひとつ数が増えるに従って一の位がひとつづつ減って行くとか、そんな規則性に気づかされるのである。
[勿論、九九 (Multiplication Table) というのは、一桁の自然数 (Natural Number) の等差数列 (Arithmetic Progression) の集合体だから、その総てに於いてなんらかの法則性は存在せざるの得ないのである。だが、所詮は小学生の考える事だから、ヴィジュアル的に発見出来るモノに着目しているのに過ぎないのだ。]
だから、そんな規則性のあるモノから憶えていけば、記憶しやすいだろうし、万一、担任の前で言い淀んだとしても、その規則性を想い浮かべれば、忘れてしまったモノもすぐに憶い出すに違いない。
と、さも訳知った様な顔をして、単純な暗記 (Rote Learning) 作業からの脱出を試みようとするのである。
[しかしながら、そんな法則性に搦み採られて、結局はしどろもどろになってしまうのだけれども。馬鹿の一つ覚えでひとつひとつを馬鹿丁寧に暗記 (Rote Learning) していった生徒の方が、成功率が高かったりもしてしまうのだ。]
そして、三学期も終わる頃には、生徒の大半は、及第点ももらえないままに春休みを迎えてしまう。
しかも、担任は、三年生になったのならば九九 (Multiplication Table) を憶えていないとこれから先の算数 (Elementary Mathematics) の授業には到底、ついて行けないから、休み中に完全に記憶する様に、と脅すのである。三年生になった最初の授業で、ひとりひとり試験をするからな、と。
しかしだからと言って、そんな脅しはあるモノの、ぼく達は、決して、春休みに九九 (Multiplication Table) の事なぞ、省みるわけはないのだ。
短い小学生の春休みには、宿題というモノが出た試しがないのだから。
で、結局、どうなったのか。
三年生の最初の算数 (Elementary Mathematics) の授業では、九九 (Multiplication Table) の試験はなかった。最初の授業だけではない、2回目の授業でも3回目の授業でも、試験は行われなかった。
ただ、三年生になって学ぶべきモノだけが教えられ、九九 (Multiplication Table) は総て、生徒達の頭の中にしっかりと根付いているモノとして、授業は進められて行った。
だから、暗記 (Rote Learning) は嫌いで苦手なのである。
それは、担任の吐いた嘘とともにあるからでもある。

上記掲載画像は、ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) の5曲入EP『ファイヴ・バイ・ファイヴ (Five By Five)』 [1964年発表] 。アルバム・タイトルは、メンバー5名の手によるいつつの楽曲という意味で、5 × 5の意。
次回は「ち」。
しかも、苦手なのだ。
嫌いだから苦手なのか、苦手だから嫌いなのか。そのあとさきは解らない。
漢字の書き取りや、英単語の綴りや、年号の語呂合わせは、ホントに嫌いで苦手と来ているから、テストでとれる点を、みすみす逃している、とよく担任にしかられた。
そして、多分、嫌いで苦手の暗記 (Rote Learning) モノで、ぼくが最初に出くわした障壁が、九九 (Multiplication Table) なのだ。
尤も、それ以前にも、暗記 (Rote Learning) しなければならないモノは幾つもある。
自分自身の名前や、父親や母親の名前や、彼らと共に棲んでいる住所といった、モノである。でも、そんなモノはものごころつく前に、憶えさせられたから、どれ程に、ぼく自身がその暗記 (Rote Learning) に苦労したのだろうか、なんて事は憶えている訳がないのだ。
それと同様に、五十音の一語一語や、数字の数え方といった初歩の初歩の暗記 (Rote Learning) すべきモノも、どうやって、ぼく自身が憶えていったのかは、全然、憶えていない。
だからこそ、九九 (Multiplication Table) をどうやって記憶していったのか、その難事業はありありと記憶の底にこびりついているのだ。
ぼくの記憶に間違いがなければ、九九 (Multiplication Table) を学んだのは、小学校二年生の時で、その三学期の算数 (Elementary Mathematics) の授業を総て、その学習に充てたと想う。
学習に充てたと言っても、ただ只管に、生徒ひとりひとりが諳んじていくだけの作業だ。
2の段でも、3の段でも、5の段でも、9の段でも、どの段でもいい、自身が暗記したと自信をつけた段を自己申告し、担任の前で暗誦するだけなのである。それをきちんと澱み無く発話出来れば、合格のスタンプを所定の用紙にもらえるし、どこか一カ所でもあやしくなったのならば、出直して再挑戦するしかない。
だから、二年生の三学期の算数 (Elementary Mathematics) の授業は、あちらこちらで各自めいめいに九九 (Multiplication Table) を諳んじていて騒がしい一方で、自身の成果を発表する為に、担任の前に生徒が列をなしているという、雑然とした光景を観る事が出来るのである。
ただ、当初は無闇矢鱈に諳んじているだけの生徒達も、暗記 (Rote Learning) が得意な生徒と暗記 (Rote Learning) が不得手な生徒との間に格差も生じるし、暗記 (Rote Learning) は得意だけれども本番に弱い為に、担任の前で思う様な成果を発揮出来ない生徒もいれば、それとは逆に、つっかえつっかえながらもなんとか及第点をもらえる幸運な生徒も出て来る。
生徒それぞれの特質や性格や運不運といった様々な要素が絡み合い、悲喜交々をそれぞれの生徒に引き起こしていた。
だから、多分に、ただ徒に、2の段から始って、3の段、4の段、5の段と順番に、馬鹿丁寧に暗記 (Rote Learning) して行こうとするのは、あまりいい作戦とは言えないだろう、という事に、誰もが皆、気づくのだ。
例えば、2の段は、「にのしのよのやのとう」の延長戦だとか、5の段は、一の位が5と0が交互に登場するとか、9の段は、十の位がひとつ数が増えるに従って一の位がひとつづつ減って行くとか、そんな規則性に気づかされるのである。
[勿論、九九 (Multiplication Table) というのは、一桁の自然数 (Natural Number) の等差数列 (Arithmetic Progression) の集合体だから、その総てに於いてなんらかの法則性は存在せざるの得ないのである。だが、所詮は小学生の考える事だから、ヴィジュアル的に発見出来るモノに着目しているのに過ぎないのだ。]
だから、そんな規則性のあるモノから憶えていけば、記憶しやすいだろうし、万一、担任の前で言い淀んだとしても、その規則性を想い浮かべれば、忘れてしまったモノもすぐに憶い出すに違いない。
と、さも訳知った様な顔をして、単純な暗記 (Rote Learning) 作業からの脱出を試みようとするのである。
[しかしながら、そんな法則性に搦み採られて、結局はしどろもどろになってしまうのだけれども。馬鹿の一つ覚えでひとつひとつを馬鹿丁寧に暗記 (Rote Learning) していった生徒の方が、成功率が高かったりもしてしまうのだ。]
そして、三学期も終わる頃には、生徒の大半は、及第点ももらえないままに春休みを迎えてしまう。
しかも、担任は、三年生になったのならば九九 (Multiplication Table) を憶えていないとこれから先の算数 (Elementary Mathematics) の授業には到底、ついて行けないから、休み中に完全に記憶する様に、と脅すのである。三年生になった最初の授業で、ひとりひとり試験をするからな、と。
しかしだからと言って、そんな脅しはあるモノの、ぼく達は、決して、春休みに九九 (Multiplication Table) の事なぞ、省みるわけはないのだ。
短い小学生の春休みには、宿題というモノが出た試しがないのだから。
で、結局、どうなったのか。
三年生の最初の算数 (Elementary Mathematics) の授業では、九九 (Multiplication Table) の試験はなかった。最初の授業だけではない、2回目の授業でも3回目の授業でも、試験は行われなかった。
ただ、三年生になって学ぶべきモノだけが教えられ、九九 (Multiplication Table) は総て、生徒達の頭の中にしっかりと根付いているモノとして、授業は進められて行った。
だから、暗記 (Rote Learning) は嫌いで苦手なのである。
それは、担任の吐いた嘘とともにあるからでもある。

上記掲載画像は、ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) の5曲入EP『ファイヴ・バイ・ファイヴ (Five By Five)』 [1964年発表] 。アルバム・タイトルは、メンバー5名の手によるいつつの楽曲という意味で、5 × 5の意。
次回は「ち」。
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