2012.09.16.13.23
『マイルス・アット・フィルモア (MILES DAVIS AT FILLMORE)』 by マイルス・デイビス (MILES DAVIS)

「本作を聴くと、あの時代が眼前に出現する。あの時代の空気までがモワ〜ッと漂ってくる」
「ここで、早くも殺気が漂う。マリファナの煙がたちこめる、モワ〜ッとした空気が伝わる」
「そのクライマックスに、マイルスが鋭い一音を吹き放ちながら出現、《フィルモア》の暑く長い夏<以下略>」
上に引用した文章は、総て中山康樹著『マイルスを聴け!
と、言うのは、例えばこの作品を、マイルス・デイヴィス (Miles Davis) の道程や、ひいてや、ジャズの歴史、そしてちょっと視点を変えて、この作品に参加した各メンバーのキャリア、そんな垂直的な視点から眺める事は、あまり意味がない様に思えるからだ。
勿論、いくつもいくつもあるマイルス・デイヴィス (Miles Davis) の名盤と比較しても決してひけをとる様な作品ではないし、あまたあるジャズの名盤の中に埋没する様な作品でもない。
そして、各メンバーのキャリアに於いても、この作品は、いろいろな意味で重要なモノになるのに違いない。例え、現在の彼らの音楽性とあまりにかけ離れたモノを演奏していて、その結果、自身の暗黒史と化していたとしても、それはそれ。現在矜持している彼ら自身のパブリック・イメージ (Public Image) を裏切るモノを演奏していたその意味を、それぞれのファンが吟味すればいいだけなのだから。
だからと言って、そんな垂直軸に則った視点から本作品に辿り着こうとしても、決して到達しえないモノがある。そして、それこそが、本作品の本質であり素晴らしさであるのに違いない。
マイルス・デイヴィス (Miles Davis) というアーティストが辿った道程、ジャズという音楽の歴史、各メンバーのディスコグラフィー的な視点、そんなモノモノとは無縁の聴き方をする必要があると思うのだ。
それは、この作品が収録されたフィルモア・イースト (Fillmore East) で同じ様にレコーディングされた他のアーティストの作品群と共に、聴いてみようという事なのだ。




オールマン・ブラザーズ・バンド (The Allman Brothers Band) の『フィルモア・イースト・ライヴ (At Fillmore East)
そんな同時代作品を、平行軸に並べて体験するべきなのだ。
マイルス・デイヴィス (Miles Davis) を筆頭にして、スティーヴ・グロスマン (Steve Grossman) もチック・コリア (Chick Corea) もキース・ジャレット (Keith Jarette) もデイヴ・ホランド (Dave Holland) もジャック・ディジョネット (Jack DeJohnette) もアイアート・ モレイラ (Airto Moreira) も、同じ時代に同じステージに立った彼らと、同じものを観ていたのに違いないのだ。
ライヴ・パフォーマンスのスナップを、無造作に並べただけのヴィジュアル・パッケージが何故、こうも格好良く観えるのか、その証左はそここそにある。
ものづくし(click in the world!)120. :
『マイルス・アット・フィルモア (MILES DAVIS AT FILLMORE)』
by マイルス・デイビス (MILES DAVIS)

『マイルス・アット・フィルモア (MILES DAVIS AT FILLMORE)
DISC 1
1. WEDNESDAY MILES -M. Davis- (24:13)
2. THURSDAY MILES -M. Davis- (26.57)
DISC 2
1. FRIDAY MILES -M. Davis- (27:58)
2. SATURDAY MILES -M. Davis- (22:25)
Personel
Miles Davis マイルス・デイビス (tp)
Steve Grossman スティーヴ・グロスマン (ss)
Chick Corea チック・コリア (elp)
Keith Jarette キース・ジャレット (org)
Dave Holland デイヴ・ホランド (elb)
Jack DeJohnette ジャック・ディジョネット (ds)
Airto Moreira アイアート・ モレイラ (perc)
Live Recording Date
1970 Jun. 17 : DISC-1 1.
1970 Jun. 18 : DISC-1 2.
1970 Jun. 19 : DISC-2 1.
1970 Jun. 20 : DISC-2 2.
at "Fillmore East" New York
Produced by Teo Macero
Engineering : Stan Tonkel and Russ Payne
Jack DeJohnette Courtesy of Milestone Records
Original Liner-notes by
Morgan Ames popular music editor. High Fidelity
Mort Goode
(P) (C) 1970 Sony Music Entertainment Inc.
ぼくの持っている日本盤 [紙ジャケット仕様] には、 藍良章 / Akira Ayler の解説 [1996. July] が掲載されている。
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