2012.09.02.11.13
こんな夢をみた。

the movie poster "American Graffiti" drawn by Mort Drucker for the movie "American Graffiti
" directed by George Lucas
大学の卒業パーティーに間に合わせようと必死になって走っている。電車の乗り換えに手間取ったらしい。しかも、たちの悪い事に、数時間前にぼくの腕時計が壊れていて、自身の遅れに気づくのに、相当の無駄な時間が経過している。
基本的には、立食パーティーだから、宴席の冒頭は長と名のつくヒトの挨拶ばかりだから、と己自身に言い聞かせながら、只管、走るに走っている。
すると、懐かしい光景に出くわす。だが、その光景は、パーティー会場に向かうぼくが、決して遭遇する謂れのない場所なのだ。
実家のある、共同住宅の一角なのである。
そして、その幾棟もある共同住宅を走り抜けて行くと、かつてぼく自身が棲んでいた建物に辿り着く。
そこに行けば、きっと母親はいるに違いないのだけれども、今、立ち寄る謂れも時間もない。そう、独りごちて、駆け抜けて行こうとすると、様子が変だ。
その建物のいくつもある階段のそのひとつに、会葬者が列をつくっている。それは、ぼくの実家へと上がる階段なのだ。
そうして、憶い出したのは、ぼくが上京している間に、ぼくの父方の祖母と、その息子が相次いで亡くなった事である。息子とは、言うまでもなく、ぼくの父だ。
ある年の元旦を挟んで、年末と年明け早々に亡くなったから、時季的に慮って、葬儀らしい葬儀はしなかったと聴く。第一、ぼく自身が、参列していない。
それを今頃になって行おうというのだろうか。
一旦は、実家を通り過ぎようとしたぼくだけれども、ふと、気になって立ち寄る事にする。
すると、さっきまで列をなしていた会葬者は跡形も無く、居なくなっていて、ぼくは昇りきった階段の向こうにある玄関を開ける。
そこには、ぼくの母と彼女の母親がいて、ぼくを迎え入れる。
言いたい事は山ほどあるらしい素振りだけれども、彼女たちは黙って、ふたつの位牌が据えられている茶箪笥まで、導いてくれる。
決まりきった形式どおりに拝むと、祖母がカメラを取り出して、写真を撮りたいと言う。
彼女の指示に従って、狭い部屋のなかを何度か場所を変えて、撮り撮られている内に、ふたりの女性の誰とでもなく、こう切り出す。
「今度は、ゆっくりしてくれるんでしょう?」
その発言をきっかけにして、ぼくは出かける支度を始める。卒業パーティーには、なんとしても出席しなければならないからだ。
ここに立ち寄ったのは、約束の場所への通り道であると、説明して、ふたりの懇請を避けようとする。
なんとかふたりを振り切って、階段を下りきった矢先に、みっつ年下の弟に出くわしてしまう。
一触即発の嫌な空気が、弟とぼくの間に流れたその時に、AKB48みたいな制服姿の少女が道を尋ねる。彼女の持った手書の地図を観ながら、弟が丁寧に道案内をする。数十年振りにこの街に帰って来たぼくには、出来ない相談だ。
少女のぎこちない、しかし、馬鹿丁寧なお礼のことばが言い終わらぬ内に、「またくる」と投げ捨てて、弟を振り切る様にして、その場を去る。
ぼくには、もう、あまり時間がない。
気がついてみると、ぼくは自転車を漕いでいる。しかし、何故だか、いつのまにか右腕を負傷したみたいで、ハンドルを握る事も、覚束ない。
それに辺りはすっかり暗くなっていて、ライトを点灯した分だけ、ペダルは重くなる。
目の前を、送迎専用のスクール・バスが走り抜ける。目的地は近いらしい。
ようやくに大学構内の入口に差し掛かると、むこうからこちらへと向かって来る集団に出くわす。おそらく、宴席の中抜けをした連中なのだろう。とおり一編の宴席は早々に、親しいモノ達同士での二次会を組んでいるのに違いない。
ぞろぞろと歩いて来る彼らのなかには、ぼくを見知っているモノも数名いて、声をかけて来る。そして勿論、それとは逆に、ぼくの方から、挨拶のことばを投げる場合もある。
恐らく、彼らの大半には、もう二度と逢う事はないのだ。だけれども、名残を惜しむ様な雰囲気は一切ないし、自転車を停めて語らう程の心算には、決してならない。それに第一、利き腕が満足に使えない今だから、ブレーキをかける事自体が、とても危うい。
なかには、きちんと別れの挨拶を交わしたい人物がいない訳ではないが、辺りは薄暗く、そんなヒトに限って、ぼくに気づかないままに、通り過ぎてしまう。
ぼくはひとり、そんな集団と離れ、つづれ織りの下り坂を、覚束ないハンドル裁きで、恐る恐ると下って行く。
吹き上げるつむじ風で、ゴミがそこら中を舞っている。

the movie poster for the movie "A Wedding
" directed by Robert Altman

the movie poster "American Graffiti" drawn by Mort Drucker for the movie "American Graffiti
大学の卒業パーティーに間に合わせようと必死になって走っている。電車の乗り換えに手間取ったらしい。しかも、たちの悪い事に、数時間前にぼくの腕時計が壊れていて、自身の遅れに気づくのに、相当の無駄な時間が経過している。
基本的には、立食パーティーだから、宴席の冒頭は長と名のつくヒトの挨拶ばかりだから、と己自身に言い聞かせながら、只管、走るに走っている。
すると、懐かしい光景に出くわす。だが、その光景は、パーティー会場に向かうぼくが、決して遭遇する謂れのない場所なのだ。
実家のある、共同住宅の一角なのである。
そして、その幾棟もある共同住宅を走り抜けて行くと、かつてぼく自身が棲んでいた建物に辿り着く。
そこに行けば、きっと母親はいるに違いないのだけれども、今、立ち寄る謂れも時間もない。そう、独りごちて、駆け抜けて行こうとすると、様子が変だ。
その建物のいくつもある階段のそのひとつに、会葬者が列をつくっている。それは、ぼくの実家へと上がる階段なのだ。
そうして、憶い出したのは、ぼくが上京している間に、ぼくの父方の祖母と、その息子が相次いで亡くなった事である。息子とは、言うまでもなく、ぼくの父だ。
ある年の元旦を挟んで、年末と年明け早々に亡くなったから、時季的に慮って、葬儀らしい葬儀はしなかったと聴く。第一、ぼく自身が、参列していない。
それを今頃になって行おうというのだろうか。
一旦は、実家を通り過ぎようとしたぼくだけれども、ふと、気になって立ち寄る事にする。
すると、さっきまで列をなしていた会葬者は跡形も無く、居なくなっていて、ぼくは昇りきった階段の向こうにある玄関を開ける。
そこには、ぼくの母と彼女の母親がいて、ぼくを迎え入れる。
言いたい事は山ほどあるらしい素振りだけれども、彼女たちは黙って、ふたつの位牌が据えられている茶箪笥まで、導いてくれる。
決まりきった形式どおりに拝むと、祖母がカメラを取り出して、写真を撮りたいと言う。
彼女の指示に従って、狭い部屋のなかを何度か場所を変えて、撮り撮られている内に、ふたりの女性の誰とでもなく、こう切り出す。
「今度は、ゆっくりしてくれるんでしょう?」
その発言をきっかけにして、ぼくは出かける支度を始める。卒業パーティーには、なんとしても出席しなければならないからだ。
ここに立ち寄ったのは、約束の場所への通り道であると、説明して、ふたりの懇請を避けようとする。
なんとかふたりを振り切って、階段を下りきった矢先に、みっつ年下の弟に出くわしてしまう。
一触即発の嫌な空気が、弟とぼくの間に流れたその時に、AKB48みたいな制服姿の少女が道を尋ねる。彼女の持った手書の地図を観ながら、弟が丁寧に道案内をする。数十年振りにこの街に帰って来たぼくには、出来ない相談だ。
少女のぎこちない、しかし、馬鹿丁寧なお礼のことばが言い終わらぬ内に、「またくる」と投げ捨てて、弟を振り切る様にして、その場を去る。
ぼくには、もう、あまり時間がない。
気がついてみると、ぼくは自転車を漕いでいる。しかし、何故だか、いつのまにか右腕を負傷したみたいで、ハンドルを握る事も、覚束ない。
それに辺りはすっかり暗くなっていて、ライトを点灯した分だけ、ペダルは重くなる。
目の前を、送迎専用のスクール・バスが走り抜ける。目的地は近いらしい。
ようやくに大学構内の入口に差し掛かると、むこうからこちらへと向かって来る集団に出くわす。おそらく、宴席の中抜けをした連中なのだろう。とおり一編の宴席は早々に、親しいモノ達同士での二次会を組んでいるのに違いない。
ぞろぞろと歩いて来る彼らのなかには、ぼくを見知っているモノも数名いて、声をかけて来る。そして勿論、それとは逆に、ぼくの方から、挨拶のことばを投げる場合もある。
恐らく、彼らの大半には、もう二度と逢う事はないのだ。だけれども、名残を惜しむ様な雰囲気は一切ないし、自転車を停めて語らう程の心算には、決してならない。それに第一、利き腕が満足に使えない今だから、ブレーキをかける事自体が、とても危うい。
なかには、きちんと別れの挨拶を交わしたい人物がいない訳ではないが、辺りは薄暗く、そんなヒトに限って、ぼくに気づかないままに、通り過ぎてしまう。
ぼくはひとり、そんな集団と離れ、つづれ織りの下り坂を、覚束ないハンドル裁きで、恐る恐ると下って行く。
吹き上げるつむじ風で、ゴミがそこら中を舞っている。

the movie poster for the movie "A Wedding
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