2012.06.17.11.53
『クール・ソロ (KOOL-SOLO)』 by 鮎川誠 (Makoto Ayukawa)

「お前は誰だ 鮎川だ」
確かそんなキャッチコピーと共に、この作品カヴァーのフロントとバックを飾る鮎川誠 (Makoto Ayukawa) の、写真が起用されていた。
それとも実際はその逆で、広告写真の方が先で、それが作品のヴィジュアルにそのまま起用されたのか。
いずれにしても、今この場で確かめる術はない。
日比谷野外大音楽堂 [通称:日比谷野音] (Hibiya Open-Air Concert Hall) でのライヴ音源を収録したものであって、参加メンバーは当時のシーナ・アンド・ザ・ロケッツ (Sheena & The Rokkets) の演奏者3人 [川島一秀 (Kazuhide Kwashima)、浅田孟 (Takeshi Asada)、 and 鮎川誠 (Makoto Ayukawa)] に、同じく当時のゲスト・キーボーディストである野島健太郎 (Kentaro Nojima) が参加している [一曲のみ、シーナ (Sheena) がバック・コーラスに加わっていて、これで当時のシーナ・アンド・ザ・ロケッツ (Sheena & The Rokkets) の布陣が完成する]。
当日は、そのヴォーカリストであるシーナ (Sheena) を含めての本編を始める前の、余興の様な、肩ならしの様な、オープニング・アクト的なかたちでのものだったらしい。だから、偶々、収録していたその結果であって、クオリティ的に充分に商品として耐え得る作品だから、発表に至ったと言う。
本作品発表当時は、そんな情報がまかり通っていたけれども、実際はどうなのだろう。
本作品の発表と前後して、シーナ (Sheena) は最初の産休に入ってしまうのだ。
と、いう様な、作品の、制作に至る過程と、その発売に及ぶまでの舞台裏は、作品を聴くにあたって、一切、無用なモノなのである。
この作品から聴く事が出来るのは、これ以上、削りようもない程のストイックな音楽であり、と、同時に、ここにあるモノ以外、なにひとつつけ加えるべき要素も一切、必要ないのだ。
ぼくは決して、シーナ・アンド・ザ・ロケッツ (Sheena & The Rokkets) の良きファンではない。だから、この作品を聴く度に、何故、鮎川誠 (Makoto Ayukawa) はシーナ (Sheena) というヴォーカリストを必要とするのだろうか、と、いつも想ってしまう。
スリー・ピースのロックンロール・バンド (Rock And Roll Band) としてのザ・ロケッツ (The Rokkets)、それで充分ではないかと、常に想う。
勿論、鮎川誠 (Makoto Ayukawa) には、もうひとりのヴォーカリストがいる。
菊 (Kiku) こと柴山俊之 (Toshiyuki Shibayama) という盟友だ。サンハウス (Sonhouse) で共にデヴューし、そのバンド解散後も、共に楽曲制作をしている。現に、本作品に収録されているいくつかの楽曲はサンハウス (Sonhouse) 時代のモノであったり、二人の共作曲でもある。
確かに柴山俊之 (Toshiyuki Shibayama) は希代のヴォーカリストだ。しかも、それは巧拙とは別の次元のモノである。彼のヴォーカリゼーションには色気がある。
ついそんな表現をしたくなる程、唄うその曲を統べて己の世界観に持って来てしまう程の、磁場もあれば引力もある。
柴山俊之 (Toshiyuki Shibayama) と比べると、鮎川誠 (Makoto Ayukawa) のヴォーカルにはそれはない。色気云々で言えば、本業であるギターの方が確実に濃厚だ。
しかし、彼のヴォーカリゼーションには、その代わりに、柴山俊之 (Toshiyuki Shibayama) には決してないモノがある。
誠実なのだ。歌や曲に対して、偽りのないモノが、鮎川誠 (Makoto Ayukawa) のヴォーカリゼーションにある。
[ぢゃあ、シーナ (Sheena) はどうなの? と、聴かれても、彼女のヴォカリゼーションを語りうる程には聴き込んでいない。もしここで、自説を語ったとしても、その正当性を騙るのが関の山でしかないだろう。]
それは、他者が提供した歌詞を、自らが作曲して唄うからなのだろうか。少なくとも、通常ならば、ヴォーカリストが唄う環境を整える事、それ以上の事をしなければならない使命感めいた心積りが、演奏者でもあると同時に歌唱者でもある鮎川誠 (Makoto Ayukawa) の内心に響いている様なのだ。
それは、永年の確執を越えてミック・ジャガー (Mick Jagger) を脇に控えさえて唄うキース・リチャーズ (Keith Richards) とも、己自身が作詞作曲した楽曲をロジャー・ダルトリー (Roger Daltrey) に唄わさせるピート・タウンゼンド (Pete Townshend) とも、微妙に異なる立場だ。
敢て言えば、リチャード・マニュエル (Richard Manuel)、リック・ダンコ (Rick Danko) そしてリヴォン・ヘルム (Levon Helm) という三人のヴォーカリストを擁していたザ・バンド (The Band)、そのギタリストのロビー・ロバートソン (Robbie Robertson) みたいな立ち居振る舞いなのかもしれない。 己のバンド・メンバーだけではない、ロニー・ホーキンス (Ronnie Hawkins) やボブ・ディラン (Bob Dylan) のバッキング演奏までをも行ってきた彼だ。
実は、次の様な事をふと、想うのだ。
もしかしたら、己が唄う事に後ろめたさの様なモノを感じているのかもしれない。
と、言っても、それは己のバンドのヴァーカリストであるシーナ (Sheena) に対して、ではない。
後ろめたさを感じてしまうその相手とは、己が奏でるべきギターに対してなのではないだろうか。
己のギターが鳴り響き、他のメンバーの演奏から最大限のモノを噴出させて、それがそのまま、ヴォーカリストにとって最高のロックンロール (Rock And Roll) となる。
それで充分ではないか。
そんな潔さだ。
ものづくし(click in the world!)117. :
『クール・ソロ (KOOL-SOLO)』 by 鮎川誠

『クール・ソロ (KOOL-SOLO)
SIDE 1
JUKEBOXER (3:54)
Words by Chris Mosdell
Composed & Arranged by Makoto Ayukawa
(C) 1981 by 1980 Music Inc.
DEAD GUITAR (3:28)
Words by Chris Mosdell
Composed & Arranged by Makoto Ayukawa
(C) 1980 by 1980 Music Inc.
クレイジー・クール・キャット (2:24)
作詞:松本 康
作曲・編曲:鮎川 誠
(C) 1981 by 1980 Music Inc.
どぶねずみ (6:48)
作詞:鮎川 誠
作曲・編曲:鮎川 誠
(C) 1976 by MCA Music Inc. & 夢本舗
アイ ラブ ユー (3:28)
作詞:柴山 俊之
作曲・編曲:鮎川 誠
(C) 1979 by Kay Music Publishing Ltd.
SIDE 2
ビールス カプセル (5:45)
作詞:柴山 俊之
作曲・編曲:鮎川 誠
(C) 1979 by Kay Music Publishing Ltd.
ブーン ブーン (3:33)
作詞:柴山 俊之
作曲・編曲:鮎川 誠
(C) 1976 by MCA Music Inc. & 夢本舗
GOOD LUCK (3:29)
Words by Toshiyuki Shibayama
Composed & Arranged by Makoto Ayukawa
(C) 1980 by 1980 Music Inc.
ぶちこわせ (4:00)
作詞:柴山 俊之
作曲・編曲:鮎川 誠
(C) 1976 by MCA Music Inc. & 夢本舗
PRODUCED BY 鮎川 誠
EXECUTIVE PRODUCER 川添象郎
PRODUCED & ARRANGED BY MAKOTO AYUKAWA
SOUND BY MAKOTO AYUKAWA (VOCAL, GUITAR)
KAZUHIDE KAWASHIMA (DRUMS)
TAKESHI ASADA (BASS, CHORUS)
KENTARO NOJIMA (KEYBOARDS)
SHEENA (CHORUS A-5)
RECORDED BY TAMCO MOBILE UNIT
AT "PIN-UP LIVE" HIBIYA-YAON, TOKYO 1981
KEISUKE TAJIMA (P.A. MIXER) & HIBINO ONKYO
KOHJI KASAI (LIGHTING) & MAHOJIN
SHIGERU TANABE (STAGE) & TOKYO STUFF
DUB & MIXED AT THE STUDIO A
YASUHIKO TERADA (ENGINEER)
AKITSUGU DOI (ASSISTANT ENGINEER)
YOSHIFUMI IIO (ASSISTANT ENGINEER)
KAZUMASA YOSHIOKA (A & R CO-ORDINATOR)
TOSHINAO TSUKUI (CREATIVE SERVICE)
KOICHI HARA (COVER DESIGN)
KATSUO HANZAWA (COVER PHOTO)
MASAO HIRUMA (SLEEVE DESIGN)
MANAGEMENT BY RIBBON
SPECIAL THANKS MIKI CURTIS
A & R DIRECTOR KAZUSUKE OBI
EXECUTIVE PRODUCER SHORO KAWAZOE
MADE IN JAPAN (C) 1982 by ALFA RECORDS,INC.
, TOKYO, JAPAN (P) 1982
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