2012.06.03.22.53
こんな夢をみた。

"In My Room (El Amor)" from the album "Torment And Toreros
" performed by Marc And The Mambas
往く宛もなく、そして、どこからここへ辿り着いたのか解らぬままに、茫然自失のぼくなのである。
ただ、当て所もなく、彷徨っているばかりで、ここがどこなのかは皆目検討はつかない。
ただ、運の良い事に、そんなぼくを見かねて、身元を引き受けてくれる人物が顕われる。ぼくは、その人物から、彼の自宅の一隅を宛てがわれるのである。
その家は、変わった構造をしている。
外観からは、なにも解らない。普通の木造平屋建てだ。
しかも、普通に訪うだけでは、例え室内に招き入れられるとしても、その構造の奇妙さには、気づかないままに、用向きを片付け、そしてそのまま、暇乞いしてしまうかもしれない。
住居の外郭をぐるっと廊下がひとまわりしている。
外部と廊下は総て、古風な木造の雨戸で仕切る様になっていて、その反対側は総て障子が、廊下とその内部を隔てている。
築数十年は経過しているのだろうか。防犯の観点から観ても、防寒の点から観ても、そこに棲むには、いろいろな問題がありうる様に思える。
まるで、寺社か集会所の様な案配なのである。
その廊下に囲われた内側にはよっつの和室があって、田型に間仕切られている。
そしてそれぞれを隔てているのは、襖だけなのだ。
柱もなにもない。
だから、総ての襖を取っ払ってしまえば、数十名ものヒトビトが一堂に会し、座す事も出来るのに違いない。
やはり、宗教ないしは武道の道場、もしくは私塾、そんな用立てに建てられたのだろうか。
でも、今は総ての襖を取っ払ってしまう事は困難な様に想える。よっつの部屋は、今では家人ひとりひとりの専用の部屋として宛てがわれ、それぞれの部屋には、それぞれの家財道具がひしめいている様なのだ。
それは、ぼくを引き取ってくれた、この住居の主の部屋を観るだけでも、すぐに理解出来る。
畳敷きで二方を襖、遺りの二方を障子で間仕切かれているその部屋には不釣り合いな、大きなソファとテーブルとサイドボードが、そこの大部を占めている。
初めてこの部屋に招き入れられた時の居心地の悪さは、決して忘れられないだろう。潜り込む様にして、ソファとテーブルの狭い空間に己の両脚を押し込み、這い上がる様にして、その狭い空間から脱出する。
そんな記憶ばかりが遺っていて、その代わりに、その時に交わした家主との会話、その殆どはすっかりと消え失せてしまっている。
でも、決して忘れられない事、否、忘れてはならない事も告げられている。
何故ならば、その際に、ぼくの居住空間も確定するからだ。
ぼくの棲む場所は、家主の部屋の奥。
今、ぼくが挟み込まれてしまっている空間からさらに奥、そこにある襖のもうひとつ向こう、その部屋を宛てがわれる。
彼の部屋は、障子が二面、襖が二面。この四面で彼だけの空間が保障されている。
その襖の、二面あるうちのそのひとつ、奥の襖のひとつをひけば、隣の部屋に向かう事が出来る。
しかし、それとは逆の、もう一方の襖をひくと、その向こうに半畳程の板の間が顕われるのだ。
そこがぼくの居所だ、と彼は言う。
実際に、家主が告げるままに、指示された襖を開けてなかを覗き込む。
するとそこは、四面を総て襖で仕切られている。
彼が語るのには、それぞれの襖を開ければ、この建物にあるよっつの部屋のいずれにも赴く事が出来るそうだ。
ここで、帳尻をつける事が出来なくなってしまう。事前に知らされている間取りにはあり得ない空間がひとつ、ここにあるのである。
その事を所有者に問い質そうとするが、それを制するかの様に、彼は、いくつかの注意事項を矢継ぎ早に告げたる。
ひとつ。部屋に入った襖から部屋から出ること。他の襖からはでてはならない。
ひとつ。一度に開ける襖はひとつだけ。ふたつ以上を同時に開けてはならない。
ひとつ。部屋には誰も招き入れないこと。先客がいる場合は、なかにははいらない。
この条件さえ護れば、今からすぐにでも、そして、いつまでもいたいだけ、この部屋で暮して構わない。
家主はそれだけを告げて、ぼくに微笑む。

Will Robinson (acted by Billy Mumy) and The Robot, Class M-3 Model B9 (a prop costume designed by Robert Kinoshita, built by Bob Stewart : performed by Bob May and dubbed by Dick Tufeld), from the scene of "Lost In Space" produced by Irwin Allen

"In My Room (El Amor)" from the album "Torment And Toreros
往く宛もなく、そして、どこからここへ辿り着いたのか解らぬままに、茫然自失のぼくなのである。
ただ、当て所もなく、彷徨っているばかりで、ここがどこなのかは皆目検討はつかない。
ただ、運の良い事に、そんなぼくを見かねて、身元を引き受けてくれる人物が顕われる。ぼくは、その人物から、彼の自宅の一隅を宛てがわれるのである。
その家は、変わった構造をしている。
外観からは、なにも解らない。普通の木造平屋建てだ。
しかも、普通に訪うだけでは、例え室内に招き入れられるとしても、その構造の奇妙さには、気づかないままに、用向きを片付け、そしてそのまま、暇乞いしてしまうかもしれない。
住居の外郭をぐるっと廊下がひとまわりしている。
外部と廊下は総て、古風な木造の雨戸で仕切る様になっていて、その反対側は総て障子が、廊下とその内部を隔てている。
築数十年は経過しているのだろうか。防犯の観点から観ても、防寒の点から観ても、そこに棲むには、いろいろな問題がありうる様に思える。
まるで、寺社か集会所の様な案配なのである。
その廊下に囲われた内側にはよっつの和室があって、田型に間仕切られている。
そしてそれぞれを隔てているのは、襖だけなのだ。
柱もなにもない。
だから、総ての襖を取っ払ってしまえば、数十名ものヒトビトが一堂に会し、座す事も出来るのに違いない。
やはり、宗教ないしは武道の道場、もしくは私塾、そんな用立てに建てられたのだろうか。
でも、今は総ての襖を取っ払ってしまう事は困難な様に想える。よっつの部屋は、今では家人ひとりひとりの専用の部屋として宛てがわれ、それぞれの部屋には、それぞれの家財道具がひしめいている様なのだ。
それは、ぼくを引き取ってくれた、この住居の主の部屋を観るだけでも、すぐに理解出来る。
畳敷きで二方を襖、遺りの二方を障子で間仕切かれているその部屋には不釣り合いな、大きなソファとテーブルとサイドボードが、そこの大部を占めている。
初めてこの部屋に招き入れられた時の居心地の悪さは、決して忘れられないだろう。潜り込む様にして、ソファとテーブルの狭い空間に己の両脚を押し込み、這い上がる様にして、その狭い空間から脱出する。
そんな記憶ばかりが遺っていて、その代わりに、その時に交わした家主との会話、その殆どはすっかりと消え失せてしまっている。
でも、決して忘れられない事、否、忘れてはならない事も告げられている。
何故ならば、その際に、ぼくの居住空間も確定するからだ。
ぼくの棲む場所は、家主の部屋の奥。
今、ぼくが挟み込まれてしまっている空間からさらに奥、そこにある襖のもうひとつ向こう、その部屋を宛てがわれる。
彼の部屋は、障子が二面、襖が二面。この四面で彼だけの空間が保障されている。
その襖の、二面あるうちのそのひとつ、奥の襖のひとつをひけば、隣の部屋に向かう事が出来る。
しかし、それとは逆の、もう一方の襖をひくと、その向こうに半畳程の板の間が顕われるのだ。
そこがぼくの居所だ、と彼は言う。
実際に、家主が告げるままに、指示された襖を開けてなかを覗き込む。
するとそこは、四面を総て襖で仕切られている。
彼が語るのには、それぞれの襖を開ければ、この建物にあるよっつの部屋のいずれにも赴く事が出来るそうだ。
ここで、帳尻をつける事が出来なくなってしまう。事前に知らされている間取りにはあり得ない空間がひとつ、ここにあるのである。
その事を所有者に問い質そうとするが、それを制するかの様に、彼は、いくつかの注意事項を矢継ぎ早に告げたる。
ひとつ。部屋に入った襖から部屋から出ること。他の襖からはでてはならない。
ひとつ。一度に開ける襖はひとつだけ。ふたつ以上を同時に開けてはならない。
ひとつ。部屋には誰も招き入れないこと。先客がいる場合は、なかにははいらない。
この条件さえ護れば、今からすぐにでも、そして、いつまでもいたいだけ、この部屋で暮して構わない。
家主はそれだけを告げて、ぼくに微笑む。

Will Robinson (acted by Billy Mumy) and The Robot, Class M-3 Model B9 (a prop costume designed by Robert Kinoshita, built by Bob Stewart : performed by Bob May and dubbed by Dick Tufeld), from the scene of "Lost In Space" produced by Irwin Allen
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