2007.11.23.19.36

最初に聴いたエリック・ドルフィー(Eric Dolphy)は『アウト・トゥ・ランチ(Out To Lunch)
静鎰で抽象的で、情緒を排除したクールな質感が、結構、気に入ってヘヴィー・ローテーション化しかけた頃に、当時の先輩N氏から「エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)ならば、『エリック・ドルフィー・アット・ザ・ファイブ・スポット Vol.1
エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)は、すぐにどこかにいなくなってしまうという趣旨の発言をしたのは、チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)だけれども、これはエリック・ドルフィー(Eric Dolphy)の音楽性を評しての言葉ではなくて、己のコンボを入脱退を繰り返している彼への愛情たっぷりの苦言。もちろん、その裏には、ミンガス・ミュージックの一翼を担う重要人物としての評価もあってのものです。
まるで出戻り女房を口説く様な愛情に満ちた楽曲に「So Long Eric」があって、「So Long Eric(またな、エリック)」と言いながらもエリック・ドルフィー(Eric Dolphy)自身も演奏に参加しています。
ただ、チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)曰くの「エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)はすぐにいなくなってしまう」というのは、あまりにも適切に、彼の音楽を言い表わしているものだと、僕は思う。
映画『真夏の夜のジャズ
この映画では、未だジャズ・シーンに頭角を現す以前の作品だから、と言うよりもむしろ、チコ・ハミルトン(Chico Hamilton)・カルテットで知名度を一気に挙げたのだから、エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)の若き日々の記録と記しても善いのかもしれないのだが。
その一方で、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)に抜擢されて双頭コンボを結成し、時代の寵児と躍り出るかと思いきや、あまりに早すぎた音楽の急進性からか、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)を売りたいレコード会社インパルス!レコード(Impulse Records)の意向からか、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)との共演作(例『アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード (The Complete 1961 Village Vanguard Recordings)
勿論、現在ではオリジナルに戻されて聴く事も出来る。だからと言って、レコード会社インパルス!レコード(Impulse Records)が彼の演奏をカットしなければならない程に、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)の演奏を疎外したり逸脱している訳でもない。あくまでも、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)の音楽的冒険の範疇もしくはその延長線上で、飛翔するエリック・ドルフィー(Eric Dolphy)を見い出すだけだ。
ぢゃあ、例の、その名も『フリー・ジャズ(Free Jazz : A Collective Improvisation)
エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)のリーダー・アルバムでは、彼の自己主張はきちんと表出されているのだろうか?
一作一作、丹念に聴いて行くと、今度は、彼のあまりに多様な音楽性とあまりに豊穰な表出に、目の前がくらくらしてしまう。
あの曲もこの曲もエリック・ドルフィー(Eric Dolphy)だけれども、それらを掻き集めたとしても、ひとつの音像ひとつの人物に結びつかない。
[例えば、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)もまた別の意味で「すぐにいなくなってしまう」人物だけれども、彼の場合は、そのすくない出現時においても自己存在の証明の刻印はきちんとされている]。
そうなのだ、自身が完全にイニシアティヴを握る作品でもまた、エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)というアーティストの有り様を把握する事が困難なのだ。
チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)曰く「エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)はすぐにいなくなってしまう」
だから、『アウト・トゥ・ランチ(Out To Lunch)
むしろ、エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)の音楽性は本人自身による演奏よりも、彼にインスパイアされた、後に続く者達の音楽に色濃く現れているのではないのだろうか?
例えばフランク・ザッパ(Frank Zappa)やビル・ラズウェル(Bill Laswell)の様な。
彼の遺作『ラスト・デイト(Last Date)
この『エリック・ドルフィー・アット・ザ・ファイブ・スポット Vol.1
蛇足ながら、このコンボもまた、相棒のブッカ-・リトル(Booker Little)の夭折により短命に終ってしまったものです。歴史に「たら」や「れば」は不要だけれども、彼の側にもう少し永く、ブッカ-・リトル(Booker Little)がいてくれたら、どうだったのだろう? 双頭コンボとしての充実と発展はあり得たかも知れないけれども、少なくとも、ここで紹介したジャズ・ジャイアンツとの邂逅はなかったかもしれない。
ものづくし(click in the world!)62.:
エリック・ドルフィー・アット・ザ・ファイブ・スポット Vol.1
(ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT VOL.1
WITH BOOKER LITTLE AND MAL WALDRON,RICHARD DAVIS,EDDIE BLACKWELL)

ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT with BOOKER LITTLE,Mal Waldron,Richard Davis,Eddie Blackwell
エリック・ドルフィー・アット・ザ・ファイブ・スポット Vol.1
1.ファイア-・ワルツ 13:44
FIRE WALTZ(Mal Waldron)
2.ビー・バンプ 12:30
BEE VAMP(Booker Little)
3.ザ・プロフェット 21:22
THE PROPHET(Eric Dolphy)
1961年 7月16日録音
Recorded July 16,1961,New York
FROM MASTER RECORDING OWNED BY FANTASY RECORDS.INC.,U.S.A.
エリック・ドルフィー ERIC DOLPHY,alto sax and bass clarinet
ブッカ-・リトル BOOKER LITTLE,trumpet
マル・ウォルドロン MAL WALDRON,piano
リチャード・デイビス RICHARD DAVIS,bass
エド・ブラックウェル ED BLACKWELL,drums
Dolphy plays bass clarinet on "BEE VAMP"
Recorded in performance at the FIVE SPOT,New York,July 16,1961
Original recordings produced by Esmond Edwards
Original recordings engineered by Rudy Van Gelder
Digital transferred from the original analog 1960's source material by Joe Gastwit at JVC Cutting Center,Sunset Blvd.,Los Angels,Ca.,1985 using JVC/DAS-900 DIGITAL AUDIO MASTERING SYSTEM.
Production co-cordination by Takashi Misu / JVC Musical Industries
NOISE INFORMATION :
This recording is taken from the original analog aource material and therefore contains inherent tape flaws,such as hiss,distortion,and analog dropoults.
These tape flaws become more evident on low level passages and on most fades.
僕が所有している日本盤CDは、『プレスティッジ / リバーサイド CDマスターピース・シリーズ』中の作品として発売されました。同シリーズに寄せた、『CD化されたハード・バップの黄金時代』 by 油井正一と、『ジャズ・ファンにとってかけがえのない喜び』 by 岡崎正通の寄稿と、 悠雅彦の本作品への解説が掲載されています。
ちなみに1985年6月21日、ビクター音楽産業(株)から¥3,200.-で発売されていました。
- 関連記事
-
- 『ビッグ・ヒッツーハイ・タイド・アンド・グリーン・グラス』 by ザ・ローリング・ストーンズ["Big Hits (High Tide and Green Grass)" by The Rolling Stones] (2008/01/20)
- "THE LION " by YOUSSOU N'DOUR (2007/12/16)
- エリック・ドルフィー・アット・ザ・ファイブ・スポット Vol.1(ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT VOL.1 WITH BOOKER LITTLE AND MAL WALDRON,RICHARD DAVIS,EDDIE BLACKWELL) (2007/11/23)
- "Rust Never Sleeps" by Neil Young & Crazy Horse (2007/10/21)
- "FOR THE LOVE OF HARRY : EVERYBODY SINGS NILSSON" (2007/09/23)