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2012.04.17.17.24

きんぐじょー

キングジョー (King Joe) はTV番組『ウルトラセブン (Ultraseven)』 [1967~1968TBS系放映] での、ペダン星人 (Alien Pedan) が操るロボットである。前後篇の2回にわたって放送された『ウルトラ警備隊西へ (Ultra Garrison Westward)』 [監督:満田かずほ (Kazuho Mitsuki) 脚本:金城哲夫 (Tetsuo Kinjou) 特殊技術:高野宏一 (Kouichi Takano)] に登場する。以降、そこからのシークエンスの抜粋である『ウルトラファイト (Ultra Fight)』 [1970~1971TBS系放映] を始め、何度も何度もウルトラ・シリーズ (Ultra Series) に再登場するが、ここではそこまでは触れられない。『ウルトラ警備隊西へ (Ultra Garrison Westward)』 [監督:満田かずほ (Kazuho Mitsuki) 脚本:金城哲夫 (Tetsuo Kinjou) 特殊技術:高野宏一 (Kouichi Takano)] での彼のみについて書いてみる。
なお、後で詳しく触れる事になるが、彼は、頭部・胸部・腹部・脚部のよっつのパートに分離 / 合体出来る。所謂合体ロボットなのである。だから、ここではそれにちなみ、よっつの章に分けて、書いてみたいと思う。


脚部;唯一の弱点
ウルトラ警備隊西へ (Ultra Garrison Westward)』 [監督:満田かずほ (Kazuho Mitsuki) 脚本:金城哲夫 (Tetsuo Kinjou) 特殊技術:高野宏一 (Kouichi Takano)] は前後篇、通常の放送枠の2倍の1時間番組である。ただそれだけでキングジョー (King Joe) の強さというモノが誰にも類推出来ると思う。しかもその上に、キングジョー (King Joe) はウルトラセブン (Ultraseven) 一人では倒せなかった強敵なのである。ドロシー・アンダーソン博士 (Dr. Dorothy Anderson) [演:リンダ・ハーディスティー (Linda Hardesty)] が開発した新兵器ライトンR30爆弾 (Lightning R30 Bomb) によって、ようやく打倒出来たのが、キングジョー (King Joe) なのである。
しかし、それでも彼にも弱点はある。それが、脚部なのである。
なぜなのか。
彼は下半身が脆弱で、一度、転倒すると自力で立ち上がる事が出来ないのだ。
尤もそんな場合は、ロボット形態からよっつの飛行形態に分離すれば、己の急難から逃れる事は出来る。物語の中でも、ウルトラセブン (Ultraseven) との最初の戦闘シーンで既に、そんな状況下に追い込まれ、辛くも、彼は危機的状況から脱していく。
物語の常道であれば、本来ならば、この弱点に乗じたキングジョー (King Joe) 攻略が行われる筈なのだろうが、その様な描写は遂に顕われなかった。それは、物語が強敵であるキングジョー (King Joe) の描写のみに徹していない上に、主題がそれ以外にあるからなのだ。
ただひとつ蛇足を補足すれば、当時ブルマァク から発売されていたソフトビニール (Polyvinyl Chloride) 人形のキングジョー (King Joe) もよく転倒したモノなのである。
通常の怪獣ならば2脚に加えて尾がある事によって、3点で安定する事が出来る。また、尾のないモノでも両脚の腿を稼働させる事が出来たから、それぞれの状況に応じて自身を安定させられるポージングが可能だった。だが、何故かキングジョー (King Joe) は、腰から下が一体成形であって、既に造られた姿勢のまま、立たせる事しか出来なかった。しかも、あの形態だと自然と重心が通常よりも上にあって、非常にバランスがとりにくいのだ。
だから、ホンモノに違わず、よく転倒した。しかもおもちゃだから、自立する事なぞあり得ない。よっつの飛行形態に分離するなど、もってのほかである。つまり、その勇姿とは不似合いな程に、ホンモノと同じ弱点を、ブルマァクソフトビニール (Polyvinyl Chloride) 人形も有していたし、その弱点をいつも無様に曝していたのである。

腰部:合体ロボット
冒頭にも書いた様に、キングジョー (King Joe) はよっつの部位に分離し、それぞれが飛行形態を採る事が出来る。これをもって、後に趨勢を極める合体ロボットの原点と捉える向きもあるが、果たしてそうだろうか。
少なくとも、彼の登場する以前に、合体ロボットはあった。
それは手塚治虫 (Tezuka Osamu) の『鉄腕アトム (Astro Boy)』 [1952~1968少年連載] の第34話『ガデム (Gademu)』に登場したロボット、ガデム (Gademu) である。彼が合体ロボットの嚆矢かどうかは解らないが、分離して個別に行動する際の特色と、合体して行動する際の特色は、それぞれに描き分けられその差異が物語を牽引していく。つまり、物語の中において、ガデム (Gademu) が合体ロボットであるのは、必然なのだ。
ぼくが思うのには、キングジョー (King Joe) が合体ロボットであるその位置づけは、ウルトラ警備隊 (The Ultra Garrison) のウルトラホーク1号 (UH-001 Ultra Hawk 1) の存在に誘因されているのではないか。アルファ号(α) ベータ号(β) ガンマ号 (γ) に分離して飛行可能な形態のそれがあってはじめて、それと敵対する存在としての分離合体兵器、すなわち、所謂合体ロボットであるキングジョー (King Joe) が誕生したのではないだろうか。つまり、キングジョー (King Joe) は、マジンガーZ (Mazinger Z aka Tranzor Z) やゲッターロボ (Getter Robo) へ繋がる系譜上にあるのではなくて、ゴッドフェニックス (God Phoenix) やロボット犬フレンダー (Friender) へ繋がる系譜上にあるのである。
と、結論づけようとしたら、少し勝手が違った。
当初の設定では、よっつの部位ではなくて、無数の部品に分離 / 合体するという構想だった様だが、さすがに当時の技術力ではそれを再現させる手段がなく断念せざるを得なかったという。
もしも、この当初の設定を忠実に再現出来たとしたら、横山光輝 (Mitsuteru Yokoyama) 作品に何度も登場する合体ロボに、そっくりなのである。『むてきごうりき』 [1969小学館学年各誌連載] に登場した名も無きロボット [こちらで観る事が出来る] や『バビル二世 (Babel II)』 [19711973週刊少年チャンピオン連載] に登場する岩石ロボット ゴーリキ (Goriki) に。

胸部:宇宙人同士の約束
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キングジョー (King Joe) という呼称は、物語の中には登場しない。掌中では、ペダン星人 (Alien Pedan) のロボットと呼ばれているだけである。先に書いたブルマァクソフトビニール (Polyvinyl Chloride) 人形を筆頭とする、商品化の際に、あらためてキングジョー (King Joe) と命名された。
一説によればその由来は、脚本を書いた金城哲夫 (Tetsuo Kinjou) だと言う。では、何故、彼の名前を抱いたのだろうか。
物語の中で、ペダン星人 (Alien Pedan) のコントロール下にあるドロシー・アンダーソン博士 (Dr. Dorothy Anderson) [演:リンダ・ハーディスティー (Linda Hardesty)] と、ウルトラセブン (Ultraseven) ことモロボシ・ダン (Dan Moroboshi) [演:森次晃嗣 (Kohji Moritsugu)] が神戸港 (Port Of Kobe) 埠頭で遭遇するシーンがある。誰も声高に主張していないけれども、『ウルトラセブン (Ultraseven)』 [1967~1968TBS系放映] 全49話の中でも屈指の名シーンだ。と、ぼくは思う。映像美云々とは別の次元で、『ウルトラセブン (Ultraseven)』 [1967~1968TBS系放映] の世界観を如実に顕わしているという意味では、『狙われた街 (The Targeted Town)』 [監督:実相寺昭雄 (Akio Jissoji) 脚本:金城哲夫 (Tetsuo Kinjou) 特殊技術:大木淳 (Jun Ohki)] でのちゃぶ台のシーン [詳しくはこちら] に匹敵するか、それを凌駕するモノなのかもしれない。
つまりぼくが主張したいのは、そこで遭遇し、そこで交渉され、そこで締結された「宇宙人同士の約束」の事なのである。
地球人という仮の姿をしたふたりの宇宙人が交わす「宇宙人同士の約束」のその場には、本来ならば同席すべきもう一人の当事者が不在なのである。ふたりの宇宙人の会話に登場する「宇宙人」ということばの中に、「地球人」は含まれていない。つまり、敵対する両者のどちらから観ても、「地球人」はそれぞれにとって対等の存在ではなく、埒外のモノなのである。
しかし、これはこれまでの「地球人」の歴史上、何度となく「地球人」が繰り返してきた事の再現でしかない。
古くは、植民地獲得競争中のポルトガル国王ジョアン2世 (Joao II de Portugal) とスペイン国王フェルディナンド2世 (Fernando II de Aragon) をローマ教皇アレクサンデル6世 (Alexander VI) が調停した1494年のトルデシリャス条約 (Treaty Of Tordesillas)、そしてそこで締結された地球という地図を再分割しようとする3C政策3B政策の衝突、そしてさらに、太平洋戦争 (Pacific War) を経た後の冷戦 (Cold War) 下での世界各地で行われた綱引きと、沖縄 (Okinawa) で今更に延々とぐだぐだに繰り返されているモノ。
この作品の脚本を担当した金城哲夫 (Tetsuo Kinjou) が描きたかったのは、そこではないのだろうか。
穿った観方かもしれない。しかし、この作品は、前後篇の1時間作品なのだ。
前作『ウルトラマン (Ultraman)』 [1966~1967TBS系放映] では、年も改まった正月に放送されたのがやはり、前後篇の1時間作品『怪獣殿下 (The Prince Of Monsters)』 [監督:満田かずほ (Kazuho Mitsuki) 脚本:金城哲夫 (Tetsuo Kinjou)、若槻文三 (Bunzou Wakatsuki) 特殊技術:高野宏一 (Kouichi Takano)] だった。この作品は、『ウルトラマン (Ultraman)』 [1966~1967TBS系放映] の世界観を如実に物語ったモノである事は既にここで指摘した。つまり、ファンタジーの在り方であり、現実と非現実が交錯する場としての番組の有り様なのである。
そしてそれと同様に『ウルトラセブン (Ultraseven)』 [1967~1968TBS系放映] の年もあらたまった正月の放映作品である『ウルトラ警備隊西へ (Ultra Garrison Westward)』 [監督:満田かずほ (Kazuho Mitsuki) 脚本:金城哲夫 (Tetsuo Kinjou) 特殊技術:高野宏一 (Kouichi Takano)] が語るべきモノがあると、ぼくは思うのである。『怪獣殿下 (The Prince Of Monsters)』 [監督:満田かずほ (Kazuho Mitsuki) 脚本:金城哲夫 (Tetsuo Kinjou)、若槻文三 (Bunzou Wakatsuki) 特殊技術:高野宏一 (Kouichi Takano)] が『ウルトラマン (Ultraman)』 [1966~1967 TBS系放映] の世界観を語ったのと同様に、『ウルトラ警備隊西へ (Ultra Garrison Westward)』 [監督:満田かずほ (Kazuho Mitsuki) 脚本:金城哲夫 (Tetsuo Kinjou) 特殊技術:高野宏一 (Kouichi Takano)] が『ウルトラセブン (Ultraseven)』 [1967~1968 TBS系放映] の世界観を語っていたとしても、決してオカシクはないのだ。
しかも、そこに登場する強敵ゴモラ (Gomora) が敗北する遠因を形作ったのが科学特捜隊 (Science Special Search Party) による攻撃であるのと同様に、キングジョー (King Joe) もウルトラ警備隊 (The Ultra Garrison) の攻撃によって、ようやく大破させられたのである。
ここになにかの相似形を見出してしまう事も許されるだろうし、そしてそこから逆に、両者にある隔たりの中に、それぞれの作品の特色を見出してしまう事も許されるのに違いないのだ。つまり、『ウルトラセブン (Ultraseven)』 [1967~1968 TBS系放映] の中にあるファンタジーは、とても苦いという指摘なのである。
[上記掲載画像は、神戸港 (Port Of Kobe) 埠頭にたつ、森次晃嗣 (Kohji Moritsugu) 扮するウルトラセブン (Ultraseven) 扮するモロボシ・ダン (Dan Moroboshi) [左] とリンダ・ハーディスティー (Linda Hardesty) 扮するペダン星人 (Alien Pedan) 扮するドロシー・アンダーソン博士 [右]:詳しい記事はこちらにあります。]

頭部:モノ・アイ
キングジョー (King Joe) の眼は、誰しも、頭頂部に煌煌と輝く四辺形の光源だと思うだろう。これを眼に擬して看做す事によって、キングジョー (King Joe) というロボットに冷徹さと強靭さと非生物的な逞しさを見出すに違いない。多分、図像学 (Iconography) 的には、キュクロープス (Cyclops) の単眼にその原点を見出せるかもしれない。
しかし、ここでふと、その四辺形直下にあるボタン状の一対の突起物を眼に擬して看做してみたらどうなるのか。その突起物の間にある凸を逆転させた紋様が鼻に観え、頭部と胸部の結合部を成すひとつの直線がおおきな口唇に観えて来ないだろうか。
つまり、史上最強と謳われているキングジョー (King Joe) が突然に姿を決して、紙の毛を結わえておだんごをふたつ乗っけた様な、ゆるキャラが顕われてしまうのである。
なんだかなぁ。
最大の弱点とは、実はここにあるのかもしれない。

次回は「」。

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