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2012.02.07.17.22

くのいち

」という文字を分解して、「く」「ノ」「一」。そしてそれをそのままくノ一 (Kunoichi) と読む。
女性の忍者 (Ninja) をこう呼び倣わしている訳だけれども、それ以前に、この言葉に潜む、艶かしさや得体の知れなさは、おんなそのものを指している様な気がしてならない。
軟体動物 (Mollusca) の様な、水棲生物 (Aquatic Organism) の様な、とらえどころのなさがそこにあるのだ。

そもそもが、忍術や忍法 (Ninjutsu or Ninpo) としてのくノ一 (Kunoichi) が、おんながおんなである事を武器にした術だからなのだ。
女官として敵方の陣の奥深くに潜入潜伏する、おんなの一人旅を装って敵地を間諜して廻る。
否、そんな事よりも、己の性そのもので、向かうべき敵方を深くくわえ込むのである。

なぜ彼女達にそんな事が出来るかと言うと、当時の医学では、おとこを去勢 (Castration) する事は出来ても、おんなは去勢 (Castration) 出来ないからだ。
宦官 (Eunuch) は存在するが、その逆はない。

いや、歴史を繙けば宦官 (Eunuch) 自体も、表に裏に暗躍して時のまつりごとを思いのままにしてしまった事態も出来したけれども、それでも、宦官 (Eunuch) にしてしまう事によって未然に防ぎえる事も多かった筈なのだ。

そういう意味では、おんなの存在というのは、悩ましいモノなのである。
もしかすると、例え医学的な施術で彼女達を去勢 (Castration) 出来たとしても、肉体の欲求とはべつのところにある筈のメンタルなものまでも潰えさせる事は出来ないかもしれない。

なぜならば、おんながそおゆう存在である以上、常に、寝返りや裏切りの可能性を孕んでいるからなのだ。これを見過ごす訳にはいかない。
女性蔑視だとか、おとこにもその可能性はあるだろうという向きもあるかもしれないが、洋の東西を問わずに、寝返ったり裏切ったりしても美しいのは、おんなだけなのだ。
おとこが寝返ったり裏切たったりするには、カネとか地位とか名誉とか、なんらかの報償や見返りや口実が必要なのに対し、おんなは違う。
おんなは、そんなモノとは無縁のモノで、寝返りもするし、裏切りもする。そうせざるを得ないナニモノかが、彼女達に働きかけているのに違いない。
そして、それによって、己のいのちを始め、如何なるモノを犠牲にしてしまう事も辞さないのだ。

だけれども、くノ一 (Kunoichi) でネットで画像検索をすると、忍び装束 (Ninja Costume) に身を包んだ女性の画像ばかりが出て来る。
彼女達を、現在の我々はくノ一 (Kunoichi) と呼び倣わしているのである。
それに関しては、ここまで書いてきた文を読めば解る様に、ぼくには異論も反論もある。

だがその前に、ネット上に立ち顕われる彼女達、くノ一 (Kunoichi) の姿を観てみようと思う。

彼女達の多くは微妙に露出度の高い衣裳に身を包んでいる。だからと言って、露出度が高い事がくノ一 (Kunoichi) のアトリビュート (Attribute) かと問えば、勿論、それだけでは、くノ一 (Kunoichi) と断言出来る訳がない。
その衣裳の狭間から覗かれる鎖帷子 (Chainmail) や、顔面を覆い隠す頭巾 (Hood) や、忍刀 ( Ninjato) を背に負う必要はあるのである。
だからと言って、そのひとつのアトリビュート (Attribute) さえあれば、くノ一 (Kunoichi) かと言うと、必ずしもそう断言出来る訳ではない。
なぜならば、一歩間違えれば、「どこの誰かは知らないけれど カラダはみんな知っているけっこう仮面 (Mask The Kekkou) [永井豪 (Go Nagai) 原作の『けっこう仮面 (Mask The Kekkou)』の主人公。1974年に月刊少年ジャンプに初登場] と、区別がつかなくなってしまうからだ。

それでいいのかと問えば、「それでいいのだ」と、答えるモノが殆どだと思う。

上の文で、"世の男性ならば〜"と答えるモノを限定しようと思ったけれども、世には女性のセクシャリティに興味のない男性もいれば、女性のセクシャリティに惹かれる女性もいるのである。
女の腐った様な〜」と言う表現が態を成さないからと言って、その逆の「男の腐った様な〜」と言う表現が受容されるかと言うと、そおゆう訳にもいかない。それと似た様な、ジェンダー (Gender) を取り囲む問題だ。
ややこしい時代になったものである。

という、あだしごとはさておき。本題に戻るとするのである。

なんだっけ。

そうそう、くノ一 (Kunoichi) のヴィジュアルにおけるアトリビュート (Attribute) の事だった。
先にみっつ挙げたくノ一 (Kunoichi) のアトリビュート (Attribute) を最低でもふたつは必要だと思うのだ。
だからと言って、組み合わせ如何によっては、鎖帷子 (Chainmail) をまとったけっこう仮面 (Mask The Kekkou) にしか観えなかったり、忍刀 ( Ninjato) を構えたけっこう仮面 (Mask The Kekkou) にしか観えない、そんな場合も出て来てしまうのだ。

なんだかなぁ [(C) 斉木克己]。

というか、話題を冒頭に降り戻せば、現在流通している様々なくノ一 (Kunoichi) のヴィジュアル自体がオカシイのである。
その殆どがあからさまな戦闘コスチュームである忍び装束 (Ninja Costume) [とその変型] を身につけているが、くノ一 (Kunoichi) とは、そもそもが戦闘要員ではないのである。
一般の女性よりも確かに武術や格闘技の技量はあるにせよ、一般の武家の婦女子よりも特殊な武術や格闘技 [これらを総称して忍術とか忍法 (Ninjutsu or Ninpo) とか呼ぶ訳だけれども] いずれにしろ、百戦錬磨のモノから観れば、たかが知れている。

つまり戦闘要員としての技術である忍術や忍法 (Ninjutsu or Ninpo) ではなくて、間者や間諜と呼ばわる方の忍術や忍法 (Ninjutsu or Ninpo) の持ち主が、彼女達なのである。
前者を陰忍と呼ぶのに対し、後者を陽忍と呼ぶ。

やっぱり、繰り返しになるけれども、女性が女性である事を武器にして敵方に仕えたりして、諜報活動を行うのがその本来任務の筈なのだ。

だから、ネット上にあまた登場する彼女達の中からひとり選んで、その画像を掲載する訳にもいかない。
歴史的には、甲賀望月氏 の出身で武田信玄 (Takeda Shingen) の命により、女性だけの諜報部とも言える歩き巫女を組織した望月千代女 (Mochizuki Chiyome) というくノ一 (Kunoichi) も存在するが、彼女の肖像なぞは遺っていない様だ。
その名で画像検索してみても、彼女を名を名乗る、露出度の高い忍び装束 (Ninja Costume) をまとったキャラクターばかりが居並ぶのだ。
いままでの論旨から言えば、そんなヴィジュアルの彼女を掲載する訳にはいかない。

だから、これにする。

旧約聖書外典 (Biblical Apocrypha) のひとつ『ユディト記 (Book Of Judith)』のヒロイン、ユディト (Judith) である。
ユディト (Judith) とは、ユダヤ (Judea) の街ベトリア (Bethulia) に棲む未亡人である。

アッシリア (Assiriya) 王ネブカドネツァル (Nebuchadnezzar II) の配下ホロフェルネス (Holofernes) によって、ベトリア (Bethulia) が兵糧攻めにあった時の物語である。
彼女は一人、ホロフェルネス (Holofernes) の許に赴き、彼の目的地であるエルサレム (Jerusalem) への道案内をしたいと言う。彼女の申し出を聴いたホロフェルネス (Holofernes) は悦び、彼女を歓待し、最後には、己の天幕の中で彼女とふたりきりとなり、不覚にも泥酔してしまう。
その隙をみて、ユディト (Judith) はホロフェルネス (Holofernes) の頸を斬り落とすのである。

旧約聖書外典 (Biblical Apocrypha) の中の一節なだけに、ふたりっきりとなった天幕の中で、実際に何が起きたのかは記されていない。
だけれども、どう読んでも、ここに書かれている物語は、これまで観てきたくノ一 (Kunoichi) の属性を総て体現している様に思える。

images
と、いう訳で上記掲載画像はグスタフ・クリムト (Gustav Klimt) が描く『ユディト I [ユーディット I] (Judith I)』。
彼女の肖像は、時代や画風を越えて、様々な画家によって描かれてきたが、本論に相応しいのは、この作品だと思われる。
敵を葬った勝利の陶酔と、おとこを我がものにした恍惚がないまざったその表情は、くノ一 (Kunoichi) のなかに潜むモノを体現している様に、ぼくには思えるのだ。
[ちなみに彼のもうひとつのユディト (Judith) 『ユディト II [ユーディット II] (Judith II)』は既にこちらで紹介している]

次回は「」。
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