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2012.01.15.16.39

"HERESIE" by VIRGIN PRUNES

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CDが登場して数年後、大手レコード会社のみならずインディペンデントなレーベルすらもこの新しいメディアでの作品を発売し始めた時季だから、1980年代も終わりかかった頃だと思う。
セッション・ミュージシャンとしてばかりではなくて、プロデューサーとしても幾つものヒット作や話題作を手掛けた某氏が、ぼくにこんな事を語ってくれた。

「儀式じゃあないかな。レコードをターン・テーブルに乗せ、演奏が終わったらそれをひっくり返してまた聴く。ジャケットのヴィジュアルを楽しみながら聴く。それは、儀式なんだろう」

それが、アナログ盤とデジタル盤の違いではないのか。それが某氏の主張だった。

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その主張の是非はともかくとして、本作品を聴くのは正に"儀式"なのである。
10インチ2枚組のこの作品は、ヴィジュアル・イメージとテキストが印刷された数枚のスリーヴと共に、函型ジャケットに収められている(ネット上では上に掲載した様なオリジナル盤の形態が掲載されている)。
10インチ盤のそれぞれには、1枚にはスタジオ・レコーディングの新曲群、もう1枚にはパリ (Paris) で行われたライヴ・パフォーマンスが収録されている。

ぼくはそのオリジナル盤とCDリイシュー盤の二種類を所有しているのだけれども、しかもCDブックレットには、オリジナル盤に掲載されたヴィジュアル・イメージとテキストももれなく添付されているのだけれども、自ずと作品に向かい合う時の、意識の顕われは全く違うのだ。

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いまでこそ、オリジナル盤は自室の奥隅のどこかの地層深くに眠ってしまっていて、めったな事ではその発掘作業を行う事はなくなってしまった。だから、今はCD盤に向き合う事になる。
では、CDならではの気軽さと容易さを堪能しているのかと問えば、必ずしもそうではない。
ターン・テーブルに載せる、ターン・テーブル上で盤面をひっくり返す、もう一枚の10インチと交換する、さらに再びターン・テーブル上で盤面をひっくり返す。
10インチならではの短い収録時間と、その結果として繰り返す事の煩雑さと、何故かそれは音楽に奉仕している様な、音楽に隷従させられている様な、しかも、だからと言って、それは必ずしも手間でも煩わしさでもなくて、大仰な表現をすればマゾヒカルな快楽が潜んでいるのである。
そんな歓びと悦びは勿論、CDで聴く際には一切なくて、逆に一気に全12曲を聴き倒してしまうと、作品のイメージさえもがこじんまりとしたものにも、いくつもの楽曲群の寄せ集め的な、ひとつの作品としての構成力も削がれてしまったものにも、聴こえてしまうのだった。

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ちなみに作品に収められたヴィジュアル・イメージの全容を上に掲載した(ここで観る事が出来る)。
画像上段左から右へ、そして画像下段左から右へと書き出してみる [正しい日本語表記が解るものはそれも加えてある]。
●『Poor Room』 by イヴァン・オルブライト (Ivan Albright)
●『肉体の悪魔 (Les Diables)』 directed by ケン・ラッセル (Ken Russell)
●『ギャヴィン・フライデー (Gavin Friday)、ヴァージン・プルーンズ (Virgin Prunes)』 photo by Ursula Steiger / Jean-Luc Buro
●『La Malade Au Sanctuaire De La Balma』 by Cj De Tejada
●『Performance』 by Virginia Pane
さらにつけ加えれば、アルバム・フロント面にフィーチャーされているのは、映画『ダンテ地獄篇 (Dante's Inferno)』 [ヘンリー・オットー (Henry Otto) 監督作品 1924年制作] の一場面であり、盤面レーベルに掲載されているのは、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ (Caspar David Friedrich) 描く『樫の森の修道院 (Abtei im Eichwald)』である。
その中からネット上でも検索可能だった作品を、本作品のアーティスト写真であるヴァージン・プルーンズ (Virgin Prunes) のものを除いて、ランダムに掲載しておく事にする(そのアーティスト写真の別カットが、現行のCDのフロントを飾っている)。
なお、『ダンテ地獄篇 (Dante's Inferno)』 [ヘンリー・オットー (Henry Otto) 監督作品 1924年制作] と、『肉体の悪魔 (Les Diables)』 [ケン・ラッセル (Ken Russell) 監督作品 1971年制作] に関してはそのものずばりのものを発見出来なかったので、同一シーンの異なるカットを掲載してある。ご了承願いたい。

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1977年に結成されて1986年に解散したヴァージン・プルーンズ (Virgin Prunes) はアイルランド (Eire) 出身のバンドである。
バンド・スタート当初から、ギャヴィン・フライデー (Gavin Friday) とグッギ (Guggi)、この二人のヴォーカリストをフィーチャーしており、その二人のヴォーカリゼーションの絡み合いと演劇的なパフォーマンスが最大の魅力だった。
本作品は1982年の作である。
彼らをヴィジュアル系バンド (Visual Kei) の始祖であるという論調がまかり通っている様だけれども、上のヴィジュアルを観て欲しい。このバンドのふたりのヴォーカリスト、ギャヴィン・フライデー (Gavin Friday) に跨がるグッギ (Guggi) の様相を [オリジナルの画像はここに掲載されている]。
ここから所謂ヴィジュアル系バンドとは、遥かに遠い。
むしろ、寺山修司 (Shuji Terayama) や土方巽 (Tatsumi Hijikata) の方が遥かに近いと思う。

このバンドが登場した当初、ぼくにとっては彼らを語る言葉はなくて [寺山修司 (Shuji Terayama) や土方巽 (Tatsumi Hijikata) を知るのはもっと後の事だ]、純粋にヴァージン・プルーンズ (Virgin Prunes) というジャンルとして存在していた。
しかも、数少ない情報から得られる、ツイン・ヴォーカルをフィーチャーした劇的なパフォーマンスを伝える文章や写真も、想像力を掻き立てされこそすれ、決して全貌を把握させる様なものではなかった。
しかもその一方で、彼らの作品は、音楽作品として留まるものでもない。1981年の連作『ア・ニュー・フォーム・ビューティー (A New Form Of Beauty)』では、7インチや10インチや12インチといった異なる形態の作品が相次いで発表されて、それらと並んでライヴ・パフォーマンスそのものも作品のラインナップに加えられていたと思う [そのうちの音楽作品に関しては『ア・ニュー・フォーム・ビューティー (A New Form Of Beauty)』として1枚のCDに纏められている]。

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だから、彼らの作品に向かう時はいつも、靴下掻痒の感に襲われていたし、それと同時に恐ろしくイマジナヴルな状況に置かれていたのも事実である。
だから、彼らの作品に掲載されたヴィジュアル・イメージを足がかりに、様々なモノを捜そうとしたのは、そんな情報不足とその結果の欠乏感の顕われなのかもしれない。
彼らの世界観の根底にあるかもしれないアイルランドの神話体系 (Celtic Mythology) や、反キリスト教 (Antichrist) 的なヴィジョン [それは本作品のタイトルでもある異端者 (Heresie) でもある] や、それらに根付く現代のアーティスト達のクリエイティヴな活動。

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そんな世界を捜そうとするのは、恐らく当時でなければ出来なかった様な気がする。

今回、この文章を書くにあたって、本作品のヴィジュアル・イメージをネット検索した際に、つくづくそう思ったのである。
というのは、いくつかはご覧の様に発見出来なかったものの、それ以外は容易く情報も画像も入手出来たからだ [そしてその結果がここにある]。
ネット上での情報なりデータに還元されているとはいえ、引用元に容易く辿り着けるそれは、創造力や想像力が介在する場所がないからだ。

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つまり、ここでも"儀式"というものが喪われているのである。

ものづくし(click in the world!)112. :
"HERESIE" by VIRGIN PRUNES


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"HERESIE" by VIRGIN PRUNES

part one : (recorded at Windmill Lane studio, Dublin, June 1982)
WE LOVE DEIRDRE
RHETORIC
DOWN THE MEMORY LANE
MAN ON THE CORNER
NISAM LO
LOVED ONE
GO'T' AWAY DEIRDRE

part two : (recorded live at the Rex club, Paris, April 1982)
CAUCASIAN WALK
WALLS OF JERICHO
PAGAN LOVESONG
THEME FOR THOUGHT
COME TO DADDY

COMPOSITION, ARRANGEMENT, PRODUCTION : VIRGIN PRUNES.
(C) COMPLETE MUSIC

New Rose records & distribution
(P) 1982 Virgin Prunes (C) 1993 Complete Music
made in France

TRIOMPHE DE LA MORT (extract) by D'Annunzio
ON SOILING AND SANITY (extract) by Jean-Pierre Turmel (June 1982)
AMBIGUITY AND HORROR (extract) by Sandro Bergamo 27. 7. 82

POOR ROOM - IVAN ALBRIGHT
LA MALADE AU SANCTUAIRE DE LA BALMA - CJ DE TEJADA
VIRGINIA PANE - PERFORMANCE
KEN RUSSELL - LES DIABLES

Artwork concept : Mary Lemeur / Yann Farcy / Gerard Rabel
Texts translated from French by Malcolm Duff
Photography : Ursula Steiger / Jean-Luc Buro

上記クレジットは、1993年にニュー・ローズ・レコード (New Rose records & distribution) から再発されたCDの、そのブックレットに記載されていたものである。恐らく、オリジナル盤に掲載されている文章と図版を引き写したものと思われる。
そのオリジナル盤は、1982年に仏インヴィタシオン・スィサイド・レーベル (L'Invitation Au Suicide) より、上に記した様に、10インチ・レコード2枚組にヴィジュアル・ブックレット封入の函入仕様で発表された。自宅のどこかにある筈だけれども、そう簡単には姿を顕わしてくれそうもない。
だから、再発CDとオリジナル盤とのクレジットの異同の有無は、最終的には検証出来ていない。

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