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2012.01.03.10.37

ろびた

手塚治虫 (TezukaOsamu) のキャラクターは、所謂スター・システム (Star System) に則って、手塚治虫 (TezukaOsamu) 作品に"出演"している。
ある手塚治虫 (TezukaOsamu) 作品で主人公を勤めたキャラクターが別の手塚治虫 (TezukaOsamu) 作品にカメオ出演 (Cameo Appearance) するのはざらだし、かつての日本映画全盛時代の大部屋俳優の様に、通行人等のチョイ役専門のキャラクターもいて、それぞれがそれぞれに相応しい役を"演じている"。
だから、極悪非道の悪役専門の憎まれキャラが、ある手塚治虫 (TezukaOsamu) 作品において、『ヴェニスの商人 (The Merchant Of Venice)』[ウィリアム・シェイクスピア (William Shakespeare) 作 1594年頃成立] のシャイロック (Shylock) の様な、"人間的に"厚みのある演技を披露したり、二枚目ヒーローでデヴューしたものの作品に恵まれず、クールな悪役に転向した途端に、大ヒット作品の主要キャラとなってしまったものもいる。
例えばそれは誰かと尋ねられれば、前者ならばアセチレン・ランプ (Acetylene Lamp) だろうし、後者ならばロック・ホームこと間久部緑郎 (Rock Holmes aka Makube Rokuro) だ。

ついでに書いておくと、チョイ役専門のキャラクターは例えば誰かと言えば、ヒョウタンツギ (Hyoutan-Tsugi) がその代表格にあたると思う [チョイ役というにはあまりに存在感がありすぎて、そこに登場する度に、その場にいる総てのキャラクタ−を喰ってしまうのだけれども]。

と、言う様な分析は『Black Jack 300 Stars' Encyclopedia』 [手塚プロダクション監修 山本敦司編] に詳しい。
この本は『ブラック・ジャック (Black Jack)』 [19731978週刊少年チャンピオン連載] に登場した総てのキャラクターを分類整理した、画期的な本である。惜しむらくは、タイトルに有る様に、『ブラック・ジャック (Black Jack)』原理主義 (Fundamentalism) と言うと過言かもしれないけれども、『ブラック・ジャック (Black Jack)』 [19731978週刊少年チャンピオン連載] を原本として作成している為に、例えどんなに他の手塚治虫 (TezukaOsamu) 作品で常連の大活躍をしているキャラクターであっても、その作品に一度も登場していないキャラクターは、この本には決して登場しないのだ。
例えばそれは誰かとここでも尋ねられれば、『火の鳥 (Phoenix aka Hinotori)』に出演した数多くのキャラクター達がそれに該当する、と即座に解答する事が出来る。

本稿のタイトルに掲げたロビタ (Robita) もその中の"ひとり"である。

ロビタ (Robita) は『火の鳥 (Phoenix aka Hinotori)』という永い永い物語の中の第二篇『火の鳥 未来編 (Phoenix aka Hinotori Future)』 [19671968COM連載] で初登場した。生命の神秘を研究する猿田博士 (Dr. Saruta) の使役ロボットとしてだ。
西暦3404年という遥かな未来にあって、その無骨なフォルムは相当に旧式 [というか生きた化石 (Lliving Fossil) か、ロボットを化石呼ばわりするのもなんだけど] で、さしたる活躍もせぬままに、ロック・ホームこと間久部緑郎 (Rock Holmes aka Makube Rokuro) 演じるロック (Rock) に破砕されてしまう。
だが、その後に発表された『火の鳥 復活編 (Phoenix aka Hinotori Resurrection)』 [19701971COM連載] では、彼の誕生秘話とも言うべきエピソードが綴られるのである。

つまり、この『火の鳥 復活編 (Phoenix aka Hinotori Resurrection)』 [19701971COM連載] では、主人公の"ひとり"とも呼んでもさしつかえないだろう。

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舞台は26世紀。少年レオナ (Leon) の交通事故から物語は始る [その劈頭の頁を上に掲載した]。
そして、その一方で、ロビタ (Robita) の集団自決から筆を起こされるもうひとつの物語が、今度は時系列とは逆に、つまり過去へと遡って語られていくのである。
交通事故から奇跡的に復活した少年は、その後遺症を抱えて、己の喪われた記憶と己を瀕死に追いやった交通事故の原因の究明に向かう。
一方のロビタ (Robita) の物語は集団自決出来なかった一体を基軸に据えて、彼が誕生した由来を語り始める。
全く異なるふたつの物語 [一方は死に損なったニンゲンの死に損なった原因追及の物語で、他方は死にそびれたロボットの誕生秘話だ] は、次第にある場所を目指してそれぞれが進んでいくのだけれども、さてこの物語の構造を観ると、なにかを憶い出さないだろうか。

火の鳥 復活編 (Phoenix aka Hinotori Resurrection)』 [19701971COM連載] での全く異なる物語がひとつの場所を目指して進むその構造は、『火の鳥 (Phoenix aka Hinotori)』全篇の構造と全く一緒なのだ。つまり、遥かな過去と遥かな未来のふたつを起点として語られ始める『火の鳥 (Phoenix aka Hinotori)』の物語は、前者は未来に向けて、後者は過去に向けて語られてゆくのである [手塚治虫 (TezukaOsamu) の構想では、最終話は現代の物語になる予定だったと言う]。

そして、『火の鳥 復活編 (Phoenix aka Hinotori Resurrection)』 [19701971COM連載] という物語は、少年レオナ (Leon) の交通事故から語り始められる、あるロボットの物語なのである。

これはそのまま、『鉄腕アトム (Astro Boy)』 [19521968少年連載] の物語冒頭と全く同じである。不慮の交通事故で亡くなってしまった一子トビオ (Tobio Tenma) の身代わりとして天馬博士 (Dr. Tenma) によって産み出されたのが、アトム (Astro Boy aka Tetsuwan Atom) なのである。アトム (Astro Boy aka Tetsuwan Atom) は人間と同じ様な感情を持つにも関わらず、ニンゲンとロボットとの決定的な差に気づいてしまった天馬博士 (Dr. Tenma) 自身から抛擲されてしまうのである。

火の鳥 復活編 (Phoenix aka Hinotori Resurrection)』 [19701971COM連載] の主人公である少年レオナ (Leon) はその生命を取り留める為に、身体と脳の大半を人口組織と入れ替えてその結果、蘇生出来た。だが、その後遺症として、生命体と非生命体、有機物と無機物の認識に齟齬が生じてしまう。彼にとっては、生命体=有機物よりも非生命体=無機物の方を己の側にあるモノとして認識してしまうのだ。
一方のロビタ (Robita) は、ミテクレは無骨で旧式だが、本来ならばニンゲンの指示や命令に従って正確無比な行動しか出来ないロボットの筈なのに、うっかりとしたミスをしでかしたり、26世紀のヒトビトは誰も知らない様な、昔のヒトビトの生活に根ざす知識を持っている。

言うなれば、外見上はニンゲンに近いが内部構造はロボットに近いレオナ (Leon) と、外見はどうみてもロボットだけれども記憶や知識はニンゲンに近いロビタ (Robita) の物語が、語られていくのである。

ところで、アトム (Astro Boy aka Tetsuwan Atom) の、時としてニンゲン以上にニンゲンらしい立ち居振る舞いを示すそれは、ある意味で最もロボットらしくないロボットのモノであるその一方で、あるべきニンゲンの姿からはかけ離れたモノなのである。

ぼくが言いたい事は通じているだろうか。

例えば、『鉄腕アトム 第12話 電光人間の巻 (Astro Boy Episode 12 Lightening Man)』に於けるスカンク草井 (Skunk Kusai) による指摘である。
アトム (Astro Boy aka Tetsuwan Atom) は完全ではないな。なぜなら悪い心をもっていないから
完全な芸術品ともいえるロボットならば人間と同じこころをもつはずだ」

だから、スカンク草井 (Skunk Kusai) に言わしめれば、『火の鳥 復活編 (Phoenix aka Hinotori Resurrection)』 [19701971COM連載] の"ふたりの"主人公達はどちらも、もうひとりのアトム (Astro Boy aka Tetsuwan Atom) と呼ぶべき存在であるに違いない。

身体と脳の半分以上を人口組織に組み替えられたレオナ (Leon) は己をニンゲンではなくてロボットだと理解し、一方のたった一台だけ生き遺ったロビタ (Robita) は己をニンゲンであると主張するのである。
そしてロビタ (Robita) は己のレゾンデートル (Raison d'etre) の証として、ニンゲンにしか出来ない行為を試みるのである。

その果ての、物語の最後に、ロビタ (Robita) が辿り着いたのは、天馬博士 (Dr. Tenma) から抛擲されたアトム (Astro Boy aka Tetsuwan Atom) が辿り着いた最終の場所がお茶の水博士 (Dr. Ochanomizu) の許だった様に、"彼"の終の住処は猿田博士 (Dr. Saruta) の許だった。
余談にしかならないけれども、このふたりの博士は遠い縁戚関係にあるというのは通説である。

今更、言うまでもなく『火の鳥 (Phoenix aka Hinotori)』全篇はニンゲンの物語である。輪廻転生 (Reaincarnation) を繰り返し永遠の生命を持つと言う火の鳥 (Phoenix aka Hinotori) を狂言廻しにして、ニンゲンの生命の、その永遠性の可能性と不可能性を追求した物語である。
そこに非生命体で無機物であるロボットの物語が介在する余地はあるのだろうか。
例えば『火の鳥 未来編 (Phoenix aka Hinotori Future)』 [19671968COM連載] に登場するスーパー・コンピューターであるハレルヤ (Hallelujah) に代表される様に、ニンゲンとその人間性を疎外する要因としての役回りしかここでは廻って来ないのではないだろうか。
と、なると、手塚治虫 (TezukaOsamu) がこれまで綴って来たアトム (Astro Boy aka Tetsuwan Atom) の物語の存在そのものも否定されかねない。
アトム (Astro Boy aka Tetsuwan Atom) とはなんなのか。
鉄腕アトム (Astro Boy)』 [19521968少年連載] 本編でも常々追求されて来た疑問を、そのまま『火の鳥 (Phoenix aka Hinotori)』の書式 [過去と未来で起きた異なるふたつの物語が現在でひとつの物語へと融合する] に倣って、呈示したのが『火の鳥 復活編 (Phoenix aka Hinotori Resurrection)』 [19701971COM連載] での"ふたり"の主人公、レオナ (Leon) とロビタ (Robita) ではないのだろうか。

次回は「」。
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