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2011.12.18.14.57

『憂国の四士 (U. K.)』 by ユー・ケイ (U. K.)

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バンド結成当時は、ポスト・〜の文脈で語られていた筈だけれども、現在では恐らくプレ・〜の文脈でしか語られないだろう。

いずれにしても、このバンドに関わったメンバー達にとっては過渡期となってしまった筈のものなのだけれども、当時のレコード業界的には、パンク〜ニュー・ウェイヴ (Punk / New Wave) へのカウンター・カルチャー (Counterculture) 的な期待も込められていたのである。
なにせ、1978年発表のこのファースト・アルバムの邦題が『憂国の四士 (U. K.)』。つけもつけたりという気がしないでもないのだけれども、よおく考えれば、当時のイギリスの経済状況は、所謂英国病 ( The British Disease) のまっただ中。しかも、その英国病 ( The British Disease) がパンク〜ニュー・ウェイヴ (Punk / New Wave) の勃興を促す遠因のひとつでもある訳だから、『憂国の志士 (Lloyds Of London)』ならぬ『憂国の四士 (U. K.)』というのは、ある意味で道理が通った命名とも言える。
ただ、残念ながら各メンバーのキャリアと音楽性とそこから観えるパンク〜ニュー・ウェイヴ (Punk / New Wave) への視線から、攘夷 (Sonno Joi : Revere the Emperor)〜開国派にはどうしても観えない。旧守派の左幕、しかもその象徴的な存在である新撰組 (Shinsengumi) の様な、滅び逝く宿命を自ずと背負ってしまった、 ....、と、本作発表後のバンドの命運とこじつけたい誘惑にも駆られてしまうのだ。

余談として書くならば、彼らが本作品を発表した1978年は、同じ国名シリーズ [!?] の、ジャパン (Japan) が登場した年でもあり、その一方でアメリカ (America) は第8作『ハーバー (Harbor)』を発表した年だった。

さて、このバンドの物語を書き出すとなると、やはりキング・クリムゾン (King Crimson) の1974年の解散からになるだろうか。本作品のメンバーの1/2がそのキング・クリムゾン (King Crimson) のリズム・セクションなのだから。

キング・クリムゾン (King Crimson) 解散後、そのリズム・セクションであるジョン・ウェットン (John Wetton) とビル・ブルーフォード (Bill Bruford) に、それぞれが数限りないセッション・ワークをこなしていた1976年、あるスーパー・ユニット結成の企画が持ち上がる。
リック・ウェイクマン (Rick Wakeman) とのトリオ結成なのである。イエス (Yes) を1973年に脱退したリック・ウェイクマン (Rick Wakeman) は1975年には彼のキャリアのピークのひとつである『アーサー王と円卓の騎士たち (The Myths And Legends Of King Arthur And The Knights Of The Round Table) 』を発表しており、それが実現すれば、正にスーパー・ユニットが誕生した筈なのである。
ちなみに、結成されれば同じ編成となり、どうしても比較対象されてしまうエマーソン・レイク・アンド・パーマー (Emerson, Lake & Palmer) は、ライヴ・アルバム『レディース・アンド・ジェントルメン (Welcome Back My Friends To The Show That Never Ends...Ladies and Gentlemen)』が1974年に発表されて以降は活動停止状態、彼らの不在を梃子にシーンに登場するには、正にベストなタイミングであった。
しかし、数度のセッションを経た後に、リック・ウェイクマン (Rick Wakeman) の契約上の問題で、プロジェクトが頓挫してしまう。彼には、所属レコード会社とのソロ・アーティストとしての契約期間中であり、彼のソロプロジェクトの一環として出なければ作品発表が許されなかったのだ。

その頓挫した夢の企画の仕切り直しが本作品なのである。

エディ・ジョブソン (Eddie Jobson) はキング・クリムゾン (King Crimson) 解散後に発表された『USA (USA)』 [1975年発表] に、レコーディング後の編集作業としてオーバーダビングの演奏で参加しているが、それよりも、ロキシー・ミュージック (Roxy Music) のネットワークから交流が始ったのだろう。彼は、ブライアン・イーノ (Brian Eno) の後継としてのキーボード・プレイヤーであり [19731976年]、ロキシー・ミュージック (Roxy Music) やそのメンバーのソロ・プロジェクトのサポート・ベーシストがジョン・ウェットン (John Wetton) だったからだ。

アラン・ホールズワース (Allan Holdsworth) は、頓挫した企画の後に制作されたビル・ブルーフォード (Bill Bruford) のソロ・アルバム『フィールズ・グッド・トゥ・ミー (Feels Good to Me)』 [1977年発表] に参加したギタリストである。彼がそのソロ・アルバムに参加したのは、実質的に音楽的なイニシアティヴを発揮していたデイヴ・スチュワート (Dave Stewart) の紹介によるのではないだろうか。ビル・ブルーフォード (Bill Bruford) はデイヴ・スチュワート (Dave Stewart) が参加していたナショナル・ヘルス (National Health) に1976年には加入しており、同じカンタベリー・ミュージック (Canterbury Music) に分類されるソフト・マシーン (Soft Machine) の『収束 (Bundles)』 [1975年発表] に参加したギタリストがアラン・ホールズワース (Allan Holdsworth) だったからだ。

この二人を迎えて、ジョン・ウェットン (John Wetton) とビル・ブルーフォード (Bill Bruford) によって結成されたのがユー・ケイ (U. K.) であり、その最初にして最期の成果が本作品なのである。

大雑把に言ってしまえば、楽曲重視のジョン・ウェットン (John Wetton) とエディ・ジョブソン (Eddie Jobson) に対し、演奏重視のビル・ブルーフォード (Bill Bruford) とアラン・ホールズワース (Allan Holdsworth) の、その方向性の違いがそのままのごとくに顕われてしまったのである。前者は事前に編まれた編曲を尊重したいとするその一方で、後者はインプロヴィゼーション主体の演奏に比重を移していたのだ。

本作品を発表した直後、バンドは分裂。前者は、バンド名をそのまま引き継いで、新たなドラマーにテリー・ボジオ (Terry Bozzio) を迎える。彼はエディ・ジョブソン (Eddie Jobson) と同じくフランク・ザッパ (Frank Zappa) のバンドに、1975年から1978年まで所属していた。
脱退したかたちとなった後者は、『フィールズ・グッド・トゥ・ミー (Feels Good to Me)』 [1977年発表] に参加したメンバーを再度結集して、ビル・ブルーフォード (Bill Bruford) のソロ・プロジェクトではなく今度は、バンドとしてのブルーフォード (Bruford) 名の下に活動を始める。

前者も後者もともに、それぞれの物語が始って続いていくのだけれども、さすがにそれを追っていくつもりはない。紆余曲折や集合離散の物語が続くばかりだからだ。

ちなみに、肝心の本作品だけれども、LPで言う両面それぞれに組曲形式の楽曲が冒頭をなし、それに小曲 [と言っても裕に7〜8分もの楽曲だけれども] が続くという構成。
ただ、それぞれのメンバーがかつて在籍していたバンドでの、神経衰弱ぎりぎりの緊張感溢れるものを期待すると、ちょっと肩すかしを喰らう。
演奏力や技術力からみれば、遥かに難易度のたかいものが次から次へと繰り出しているかもしれないが、安心して聴いていられるというのが、正直な感想である。
だからLPで言うと、A面1曲目『闇の住人 (In The Dead Of Night )』のオープニングの無愛想なベース・リフにおぉと身構えればその緊張感は組曲最終まで継続するし、B面1曲目『アラスカ (Alaska)』の冷徹なシンセサイザーのサウンドに、あぁと背をのけぞらせば、その緊張感はいつまでもどこまでも果てしなく冷ややかに次の曲へと橋渡しされる。
欲しいモノは確実に提供されるし、望んだモノは間違いなく手に入るのだ。
だがしかし、この直後に二派に分裂してしまうバンドにしては、いい意味でも悪い意味でも、破綻も波乱もないのである。
逆に言うと、己の主張を曝け出し、そのぶつかり合いをさせる事すら出来なかった程に、既にメンバー間のこころは乖離していたのかもしれない。
それとも、個々のメンバーの求めているものが様変わりしてしまっていたのにも関わらずに、頓挫した夢の企画の辻褄あわせに奔走してしまったからであろうか。

ものづくし(click in the world!)111. :
『憂国の四士 (U. K.)』 by ユー・ケイ (U. K.)


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憂国の四士 (U. K.)』 by ユー・ケイ (U. K.)

SIDE A
IN THE DEAD OF NIGHT
 1. 闇の住人
  IN THE DEAD OF NIGHT 5' 36"
  JOBSON / WETTON
 2. 光の住人
  BY THE LIGHT OF DAY 4' 40"
  JOBSON / WETTON
 3. 闇と光
  PRESTO VIVACE AND REPRISE 3' 06"
  JOBSON / WETTON
4. 若かりし頃
 THIRTY YEARS 8' 02"
 WETTON / JOBSON / BRUFORD
SIDE B
1. アラスカ
 ALASKA 4' 38"
 JOBSON
2. 時空の中に
 TIME TO KILL 5' 00"
 JOBSON / WETTON / BRUFORD
3. ソーホーの夜
 NEVERMORE 8' 09"
 HOLDSWORTH / JOBSON / WETTON
4. 瞑想療法
 MENTAL MEDITATION 7' 24"
 HOLDSWORTH / BRUFORD / JOBSON

★U. K.
エディ・ジョブソン [ヴァイオリン、キーボード]
EDDIE JOBSON ELECTRIC VIOLIN KEYBOARDS AND ELECTRONICS
ビル・ブラフォード [ドラムス、パーカッション]
BILL BRUFORD KIT DRUMS AND PERCUSSION
アラン・ホールズワース [ギター]
ALLAN HOLDSWORTH GUITARS
ジョン・ウェットン [ベース、ヴォーカル]
JOHN WETTON VOICE AND BASS

RECORDED AND MIXED AT TRIDENT STUDIOS, SOHO, LONDON
DECEMBER 1977 AND JANUARY 1978
ENGINEERED BY STEPHEN W. TAYLER
ASSISTED BY RENO RUOCCO, STEVE SHORT AND COLIN GREEN

MANAGEMENT BY ALEX SCOTT

SLEEVE DESIGN BY NICHOLAS DE VILLE
PHOTOGRAPHIC ASSISTANCE BY MARTIN DURRANT

SPECIAL THANKS TO JIM WILMER

THE CS80 POLYPHONIC SYNTHESIZER IS BY YAMAHA

ALL SONGS PUBLISHED BY E.G. MUSIC LTD

PRODUCED BY U. K. FOR E.G. RECORDS LTD (P) 1978

ぼくが所有している国内盤LPには、水上はるこの解説と武内邦愛の訳詞及び詞解説が掲載されている。
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