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2011.11.20.12.18

『マーキー・ムーン (MARQUEE MOON)』 by テレヴィジョン (TELEVISION)

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総てがあらかじめ用意周到に仕組まれた物語だとしたら、あまりにも遺漏や破綻ばかりが目立ってしまう。幾重にも手筈が整った筈の伏線は、その殆どが機能せずに、突然に終焉が告げられてしまうのだから。
しかし、だからと言って、それとは逆に、総てが偶然の連続が織り成した奇蹟や幸運の綾だと言うには、あまりにも出来すぎた物語なのだ。

テレヴィジョン (Television) というバンドを言葉だけで語るのは、とても簡単な事なのである。

あまりにも平凡な名前である事を嫌ったトーマス・ミラー (Thomas Miller) が、自身のフェイヴァリットの詩人であるポール・ヴェルレーヌ (Paul Verlaine) にちなんでトム・ヴァーライン (Tom Verlaine) と名乗り、そのイニシャルからバンド名をテレビ (TV)、すなわちテレヴィジョン (Television) とした、という物語の冒頭で、既に出来すぎているのである。

彼らのファンならばあまりにも周知の事実だけれども、せっかくだから列挙しておこうか。

幾つかのメジャー・レコード会社のオファーを悉く断った結果に、エレクトラ・レコード (Elektra) と契約したのは、そのレーベルにザ・ドアーズ (The Doors) が所属していたからだ。
1978年に突然に解散発表したのは、満月の夜、モビー・グレイプ (Moby Grape) の顰に倣ったからだ。

カッコイイと首肯する事も出来るその一方で、そんな理由でこのご時世に、就職したり転職したり、恋に陥ったり恋人に別れを告げる、そんな輩がいるのならば、と考え始めてみるならば、あなたはどうだろうか。

音楽 [には限らないかもしれないけれどもとりあえず音楽] に、ある種のフェティシズム (Fetishism) とナルシズム (Narcissisme) を感じているモノならば誰しもが、やってみたい誘惑に駆られる様なエピソードなのである。そして、それをやられた側からみれば、たまらない [いろいろな意味で] エピソードなのである。
しかも、それはひとつやふたつに限らないのだ。

当時の公私にわたるパートナーであるパティ・スミス (Patti Smith) に「世界で最も美しいうなじをもつ男 (Tom Verlaine has the most beautiful neck in rock & roll)」[当時のミュージック・ライフ編集長である水上はるこが彼を紹介する時の枕詞としてよく使っていた] と称されたトム・ヴァーライン (Tom Verlaine) は、彼女の1975年のデヴュー・アルバム『牝馬 / ホーセス (Horses)』でも制作に関わっているし、そのアルバムのポートレイトを撮影したロバート・メイプルソープ (Robert Mapplethorpe) [かつてはパティ・スミス (Patti Smith) とは公然の仲] は、本作品のカヴァー写真も手掛けている。
牝馬 / ホーセス (Horses)』と本作とは、二枚の合わせ鏡の様な作品とも言えるし、下世話な表現をすれば、パティ・スミス (Patti Smith) の男性遍歴の記録とも言える。

その一方で、本作発表前に脱退したベーシスト、リチャード・ヘル (Richard Hell) [19731975年在籍] との双頭バンドであった時代、そのリチャード・ヘル (Richard Hell) のアティチュードとファッションが、マルコム・マクラーレン (Malcolm McLaren) [当時ニューヨーク・ドールズ (New York Dolls) のマネージャー] によってロンドン (London) にもたらされ、ヴィヴィアン・ウエストウッド (Vivienne Westwood) との共闘の許に、セックス・ピストルズ (The Sex Pistols) をマヌカンとしたパンク・ファッション (Punk Fashion) が産み出されたのだ。

ある意味で、1977年当時のニューヨーク (New York City) の総てが凝縮していたバンドと言えるのかもしれない。
ニューヨーク・パンク (New York Punk) と呼び慣わされていた当時の音楽シーンの、文学的で内省的な側面と、暴力的で攻撃的な側面を、トム・ヴァーライン (Tom Verlaine) とリチャード・ヘル (Richard Hell) が同じステージに並び立つ事によって、体現していたのだ。
マルコム・マクラーレン (Malcolm McLaren) はその表層的な美味しいところだけを頂戴して、彼らに欠けていたファッショナブルでセンセーショナルな要素を過剰に演出して、後にロンドン (London) で展開したのにすぎない。
何故ならば、ロバート・メイプルソープ (Robert Mapplethorpe) が世界的にブレイクするのは、もう少し先の話だからだ [1980年発表『Lady リサ・ライオン (Lady Lisa Lyon)』からかな?]。

と、言う様な事は、実はぼくにとっては後付けの知識でしかない。

この作品を入手した当時、ぼくは何故だかキング・クリムゾン (King Crimson) との共通のものを感じていた。多分、殆どのヒトはこの発言に共鳴してくれないのだけれども、テレヴィジョン (Television) の作品で聴けるふたつのギターの共鳴は、キング・クリムゾン (King Crimson) [再結成期 (Line-up 3) と分類される時代で] のインプロヴィゼーションと同種のものに思えたのだ。
それはメロディでもリズムでもなくて、響きあう楽器群の輝きなのだが。
ただ、テレヴィジョン (Television) のそれが非常に女性的な繊細さをもつのに対し、キング・クリムゾン (King Crimson) のそれはあまりに男性原理的だ。そんな違いはあるものの、例えば『マーキー・ムーン (Marquee Moon)』の破綻さえみえるギター・ブレイクのパートと『突破口 (Fracture)』[1974年発表『暗黒の世界 (Starless And Bible Black)』収録] の幾重にも重なるメイン・テーマは、同じ出自にあるのではないだろうか。

だから、誰にも認めてもらえそうもない持説でしかないのだけれども、ニューヨーク (New York City) を活動拠点としてソロ・パフォーマンスを展開した後に、ロバート・フリップ (Robert Fripp) が満を持してキング・クリムゾン (King Crimson) を再結成した時は、独り悦に入って得心していたのだ。
何故ならば、その新しいキング・クリムゾン (King Crimson) は、エイドリアン・ブリュー (Adrian Belew) をフィーチャーした、テレヴィジョン (Television) と同じツイン・ギターの編成だったからである。

ここから先は余談。
世評に高い『マーキー・ムーン (Marquee Moon)』に比して、とかく失敗作と言われるセカンド・アルバム『アドヴェンチャー (Adventure)』 [1978年発表] だけれども、日常的に聴く回数としてはこちらの方が多いのかもしれない。
それは例えば、『デイズ (Days)』の様な、静かにしてかつ高潔な煌めきを聴きたいからなのだ。
後のトム・ヴァーライン (Tom Verlaine) のソロ・アルバムのいくつかにも同系統の作品が散見されるが、もしも、この路線を追求出来ていたら、テレヴィジョン (Television) はもう少し永く活動をしていたのかもしれない。

ものづくし(click in the world!)110. :
『マーキー・ムーン (MARQUEE MOON)』
by テレヴィジョン (TELEVISION)


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マーキー・ムーン (MARQUEE MOON)』 by テレヴィジョン (TELEVISION)

★SIDE ONE
1. シー・ノー・イーヴル
 SEE NO EVIL (3:56)
2. ヴィーナス
 VENUS (3:48)
3. フリクション
 FRICTION (4:43)
4. マーキー・ムーン
 MARQUEE MOON (9:58)

★SIDE TWO
1. エレヴェイション
 ELEVATION (5:08)
2. ガイディング・ライト
 GUIDING LIGHT (5:36)
3. プルーヴ・イット
 PROVE IT (5:04)
4. 引き裂かれたカーテン
 TORN CURTAIN (7:00)

All songs written by Verlaine
All lyrics by Verlaine
(C) 1977 Double Exposure Music, Ltd. ASCAP
All rights reserved. Used by permission

TOM VERLAINE : Lead vocals, guitar
RICHARD LLOYD : Guitar, vocals
FRED SMITH : Bass, vocals
BILLY FICCA : Drums

Keyboards : Tom
GUITAR SOLOS :
See No Evil, Elevation, Guiding Light - Richard
Venus, Friction, Prove It, Torn Curtain - Tom
Marquee Moon - Richard after the second chorus
Tom after the third

PRODUCED BY ANDY JOHNS AND TOM VERLAINE
RECORDED AT A & R STUDIOS, NEW YORK CITY
ENGINEERED BY ANDY JOHNS. ASSISTED BY JIM BOYER.
MIXED AT ATLANTIC STUDIOS BY ANDY JOHNS
ASSISTED BY RANDY MASON AND JIMMY DOUGLASS
ART DIRECTION TONY LANE
BACK COVER ART : BILLY LOBO
PHOTOGRAPHY : ROBERT MAPPLETHORPE
MASTERED BY GREG CALBI
AND LEE HULKO - STERLING SOUND INC
ALL SONGS PUBLISHED BY DOUBLE EXPOSURE MUSIC. LTD.
THIS ALBUM IS DEDICATED TO WILLIAM TERRY ORK.

Television managed by The Wartoke Concern, Inc.

(P) & (C) 1977 Elektra / Asylum Records
962 North La Cienega Boulevard
Los Angeles California 90069
A Division Of Warner Communications Inc.

ぼくが所有している国内盤LPには水上はるこによる解説が封入されている。
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