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2011.11.15.18.03

ごめすのさけび

古代怪獣 ゴメス (Gomess)。正式な学名はゴメテウス (Gometius)。TV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』 [TBS系列 1966年放映] の第1話『ゴメスを倒せ! (Defeat Gomess!)』 [円谷一監督 小泉一特技監督 千束北男脚本] のタイトル・ロール。倒せと命ぜられた原始怪鳥 リトラ (Litra)、学名リトラリア (Litolaria) と並んで、その30分番組での主役をはった怪獣の一方の雄である。
単に、主役をはっただけではない、この30分番組はその後に興る怪獣ブームの嚆矢でもある上に、それまで怪獣の登場する場所をスクリーンからブラウン管へと移行させた嚆矢でもあるのだ。雑な言い方をすれば、怪獣王と呼ばれるゴジラ (Godzilla) をその地位から引きずり降ろすきっかけになった作品とも言えるのだ。
古代怪獣 ゴメス (Gomess) が当時どういう存在であったか、もしくは、どの様な存在である事を望まれたのか。それを検証出来る証拠物件はあまりにも少ないので [というか当時所有していたものの殆どが喪われてしまったので]、記憶を頼りに書くしかない。
半世紀近くも前の事だから、誤りがあればご指摘頂きたいし、追加情報等の類もあればそちらもお寄せ頂きたい。

ひとつには、『ウルトラQ (Ultra Q)』 [TBS系列 1966年放映] の主題歌とされる楽曲の存在だ。
番組の中で使われたのは、宮内國郎作曲による『ウルトラQ メインタイトル [M-1T2]』で、これ以外の所謂挿入歌的な存在はない。
だが、ないのにも関わらず『大怪獣の歌』と『ウルトラマーチ』という二曲の楽曲が、ぼく達の中で広く聴かれ、唄われていた。
この曲はどうやって流通していたかそしてぼく達の許まで届いていたかと言うと、朝日ソノラマ (Asahi Sonorama) 等が制作販売していたソノシート (Flexi Disc) 等に収録されていたのである。

ぼく達がよく購入していた、ソノシート (Flexi Disc) は7インチで33 1/3回転。片面10数分の収録が可能だ。この都合20数分の収録時間の中に通常は、オープニングとエンディングの2曲の主題歌、そして、音声ドラマが収録されていた。さらに、そのソノ・シート本体を収める10数頁のブックレットには、上記2曲の歌詞と並んで、音声ドラマをヴィジュアル化した絵物語が掲載されていたのである。
ソノシート (Flexi Disc) として発売された作品の殆どは、当時放映されていたこども向け番組やこども向け映画を素材としたもので、前者に関してはその殆どが、番組放映の初回放送分から起こした音源を編集した音声ドラマと絵物語からなっていた。
これがどういう意味をもつかと言うと、ソノシート (Flexi Disc) があれば、そのTV番組の世界観をいつでも再確認出来るという事なのである。衛星放送での再放送もなければ、ヴィデオ収録も叶わなかった時代である。
藤子不二雄 (Fujiko Fujio) 作品の登場人物達は、土管の並ぶ空地で永遠に戯れる事は出来るが、彼と彼らとの最初の出逢いはたったの一度しかない。石森章太郎 (Shotaro Ishimori) 作品の正義の味方は常に孤独の中で悪と闘い続けているが、彼が超能力を得たきっかけはたったの一度しかない。だから、番組の初回放送を見逃してしまうと、いくつもの大事な事を知らないままに物語を見続ける事になるのだ。
そして、それを補完し、追体験出来るのが当時、ソノシート (Flexi Disc) というメディアだったのである。

ソノシート (Flexi Disc) の説明に紙幅を奪われかねないが、今や忘れられてしまったメディアでしかないのだけれども、これが如何に重要な役割を当時、担っていたのかと言う事は、きちんと力説しておかなければならないのだ。
ブルマァクのソフビ人形とは別の意味で、当時のアイテムとしてなくてはならない役割を演じていた事以上の意味が、そこにはあるのだ。

しかも『ウルトラQ (Ultra Q)』 [TBS系列 1966年放映] については、特に古代怪獣 ゴメス (Gomess) が担うべき役割を説明するのには。

上に書いた様にTV番組では決して放送されない2曲の主題歌 [共に作詞:東京一 作曲:宮内國郎 歌:みすず児童合唱団] があった。あらためて曲名を書く。『大怪獣の歌』と『ウルトラマーチ』だ。そして、その後者には、歌詞中に次の様なフレーズが登場するのである。

山を揺さぶるゴメスの叫び

ちなみに同曲の二番では「雪崩と共にペギラの叫び」というフレーズが登場する。
単純に考えて『ウルトラQ (Ultra Q)』 [TBS系列 1966年放映] 全28話に登場する怪獣達の、その代表とも象徴とも呼べる存在が古代怪獣 ゴメス (Gomess) であり冷凍怪獣 ペギラ (Peguila) である、という解釈が成立する。
と、いうか、毎日曜日の夜にこの番組の放送をわくわくドキドキして待っていて暮していたぼく達である。毎日の様に、この曲の収録されていたソノシート (Flexi Disc) を聴き、そして唄っていたぼく達である。嫌でも応でもなく、古代怪獣 ゴメス (Gomess) と冷凍怪獣 ペギラ (Peguila) の名前は、インプリンティングされていくのである。

しかも、それだけではない。

ぼくが当時所有していた『ウルトラQ (Ultra Q)』 [TBS系列 1966年放映] 関連のソノシート (Flexi Disc) は二作品あって一作品は第16話『ガラモンの逆襲 (Garamon's Counterattack)』 [野長瀬三摩地監督 的場徹特技監督 金城哲夫 脚本] を音声ドラマ化させたもので、もう一方に、古代怪獣 ゴメス (Gomess) が登場する。
しかもそのもう一方は、収録されていた音声ドラマが『恐怖の死闘! ナメゴン対ゴメス』という、放送作品にはないオリジナルの物語なのである。勿論、物語の登場人物達である万城目淳 (Jun Manjoume)、江戸川由利子 (Yuriko Edogawa)、戸川一平 (Ippei Togawa) はきちんと登場し、それぞれには当時の配役であった佐原健二 (Kenji Sahara)、桜井浩子 (Hiroko Sakurai)、西條康彦がキャスティングされているのだ。
ある意味でとても贅沢な事をやっているし、逆からみれば、ソノシート (Flexi Disc) というメディアの重要性が番組制作サイドから評価されていたとも言える。
もちろん、このソノシート (Flexi Disc) を聴き齧っていた当時は、そんな事等一切考える余裕はなかった。
否、ないどころではない。実際には映像化されていない『恐怖の死闘! ナメゴン対ゴメス』を己の空想世界で観てしまっているのだ。
第1話『ゴメスを倒せ! (Defeat Gomess!)』 [円谷一監督 小泉一特技監督 千束北男脚本] も火星怪獣 ナメゴン (Namegon aka The Mars Monster) が登場する第3話『宇宙からの贈りもの (A Present From Mars)』 [円谷一監督 川上景司特技監督 金城哲夫 脚本] も実際にリアル・タイムで観ているのにも関わらず、そのふたつのエピソードの続編として二大怪獣の対決の物語を、ありありと想い描けてしまうのだ。
だから、長じて、『ウルトラQ (Ultra Q)』 [TBS系列 1966年放映] の文献を漁ったり、実際に作品を追体験した際に、愕然とした記憶がある [尤もこんな事はこの二大怪獣に限っての事ではなくて、実際に観た事もない映像の記憶というのはぼくにはざらなのだ、当時四歳という年齢がそうさせているのか、それとも、当時の映像体験の強い印象がそうさせているのか]。
でも、その観たことのない映像作品の記憶が産まれるのも一理あって、「雪崩と共にペギラの叫び」と謳われた冷凍怪獣 ペギラ (Peguila) は第5話『ペギラが来た! (Peguila Has Come!)』 [野長瀬三摩地監督 川上景司特技監督 山田正弘脚本] と第14話『東京氷河期 (Tokyo Ice Age)』 [野長瀬三摩地監督 川上景司特技監督 山田正弘脚本] の2作品に登場し、もう一枚のソノ・シートの主人公である隕石怪獣 ガラモン (Garamon aka The Garadama Monster) はその素材である第16話『ガラモンの逆襲 (Garamon's Counterattack)』 [野長瀬三摩地監督 的場徹特技監督 金城哲夫 脚本] の前に、第13話『ガラダマ (Garadama)』 [円谷一監督 的場徹特技監督 金城哲夫 脚本] で初登場しているのである。
つまり、冷凍怪獣 ペギラ (Peguila) と隕石怪獣 ガラモン (Garamon aka The Garadama Monster) からの類推で、古代怪獣 ゴメス (Gomess) も2作品で主役をはっているのに違いない、そうあるべき存在である、と信じきっていた様なのである。

実際に、地底怪獣 パゴス (Pagos) が登場した第18話『虹の卵 (The Rainbow Egg)』 [飯島敏宏監督 有川貞昌特技監督 山田正弘脚本] には、当初の予定では古代怪獣 ゴメス (Gomess) が再登場する事になっていたという。
では、その予定が何故に実現しなかったのか。

それは着ぐるみとしての古代怪獣 ゴメス (Gomess) が既に存在していなかったからである。

着ぐるみとしての古代怪獣 ゴメス (Gomess) は、映画『モスラ対ゴジラ (Mothra vs. Godzilla)』[本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品 1964年制作] と映画『三大怪獣 地球最大の決戦 (Ghidorah, the Three-Headed Monster)』[本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品 1964年制作] に登場したゴジラ (Godzilla) の、着ぐるみの改造作品である。
それ故に、古代怪獣 ゴメス (Gomess) のスーツ・アクターは当時ゴジラ (Godzilla) の中にはいっていた中島春雄 (Haruo Nakajima) が演じる事になった [地底怪獣 パゴス (Pagos) も中島春雄 (Haruo Nakajima)]。
ゴジラ (Godzilla) であった事とその中のヒトの演技によって、古代怪獣 ゴメス (Gomess) には、重厚感とも威風とも呼べる趣を観る事が出来る。それは、相対する原始怪鳥 リトラ (Litra) の軽快感とも俊敏さとの対比もあってより強調されている様に観える。

だからこその、『ウルトラQ (Ultra Q)』 [TBS系列 1966年放映] のオープニングを飾る栄えを得たというのは穿った観方だろうか。
30分という短い時間に、古代から語り継がれて来た伝説の再演である死闘が繰り広げられ、その一方で、怪獣へ熱いまなざしを向ける少年のドラマもある。後に登場する怪獣の物語の重要な要素が、いくつもこの作品に込められている。
しかも、万城目淳 (Jun Manjoume) を演じる佐原健二 (Kenji Sahara) の坑道探索は、映画『空の大怪獣ラドン (Rodan)』[本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品 1956年制作] で演じた河村繁 (Shigeru) の再演だ。

一方で、企画制作サイドの流れを追うと、異次元体験や怪奇現象をメインに据えた『アンバランス (Unbalance)』から怪獣を主軸に置いた『ウルトラQ (Ultra Q)』 [TBS系列 1966年放映] への転換点を成している。第1話『ゴメスを倒せ! (Defeat Gomess!)』 [円谷一監督 小泉一特技監督 千束北男脚本] は、当初第1クールとして制作された13作品の中の数少ない怪獣登場作品であって、第1クルーで得た感触を基に、冷凍怪獣 ペギラ (Peguila) や隕石怪獣 ガラモン (Garamon aka The Garadama Monster) や地底怪獣 パゴス (Pagos) が登場するエピソードが第2クルー用として企画制作される。

つまり、企画制作サイドの視点から観ても、彼らが創り上げた30分番組の物語として観ても、古代怪獣 ゴメス (Gomess) の存在は重要に違いないのだ。
だから、番組立ち上げ当初は、恐らく古代怪獣 ゴメス (Gomess) をメインに据えた番宣体勢を考えていたのに違いない。いつ、どの雑誌に収められていたのか記憶は定かではないのだけれども、マンガ版『ゴメスを倒せ!』をその雑誌の別冊付録として読んだ記憶がある [ネット上で検索したところ、『少年ブック・コミックス ウルトラQ』6月号には中城健太郎作品が、『小学五年生』7月号には江波譲二作品が、それぞれ掲載されている様だが、そのいずれだろうか]。
ウルトラマーチ』という主題歌で古代怪獣 ゴメス (Gomess) が登場するのも、『恐怖の死闘! ナメゴン対ゴメス』というオリジナルな音声ドラマがあったのも、その体勢の顕われかもしれないのだ。

だが、それが頓挫してしまったのは、先にも書いた様に、ゴジラ (Godzilla) の着ぐるみの改造であったから。
東宝から借り受けた映画『三大怪獣 地球最大の決戦 (Ghidorah, the Three-Headed Monster)』[本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品 1964年制作] でのゴジラ (Godzilla) に、新たな胴体を肉付けし、頭部にいくつかの突起物をつけ加えたのが、古代怪獣 ゴメス (Gomess) である。ゴジラ (Godzilla) の面影は、その表情や腕部や脚部に発見出来る。

images
だから、番組放送を告げる、1965年11月に行われた記者会見場には、冷凍怪獣 ペギラ (Peguila) と隕石怪獣 ガラモン (Garamon aka The Garadama Monster) と地底怪獣 パゴス (Pagos) そして第24話『ゴーガの像 (The Idol Of Goga)』 [野長瀬三摩地監督 的場徹特技監督 上原正三脚本] に登場する貝獣 ゴーガ (Goga) 等が列席するが、本来ならば主役級の扱いとなる筈の古代怪獣 ゴメス (Gomess) はそこにいないのだ。
上記掲載画像は、その記者会見を受けての『週刊少年マガジン』 [1965年12月26日号] 表紙。巻頭グラビアは『『ウルトラQ』の怪獣たち』である。

古代怪獣 ゴメス (Gomess) は、ゴジラ (Godzilla) の改造であるが上に己の存在感と存在意義を充分に表現出来たが、結果、ゴジラ (Godzilla) の改造である事が仇となって、消えざるを得なかったのである。

次回は「」。

附記 1. :
古代怪獣 ゴメス (Gomess) を演じたのがゴジラ (Godzilla) を演じた中島春雄 (Haruo Nakajima) と書いたけれども、スーツ・アクターの演技力というものをどう評価すべきなのだろう。
少なくとも、後にアマギ隊員 (Amagi)となる古谷敏 ( Bin "Satoshi" Furuya) が演じた初代ウルトラマン (Ultraman) の、戦闘シーンに於ける異様とも言える前傾姿勢は、古谷敏 ( Bin "Satoshi" Furuya) でなければ産まれなかったであろう。と、いうのも、生身の上に薄皮一枚まとっただけとも言える初代ウルトラマン (Ultraman) の着ぐるみの中にいる彼は、周囲にある爆発物の恐怖というものが常にあったそうなのだ。その恐怖心が、長身の初代ウルトラマン (Ultraman) に腰を落とさせ身体を前に屈まさせる、あの姿勢を産み出した様なのだ。
超能力を持つとはいえ、知的高等生物である宇宙人が怪獣に相対時するというのは、例えて言えば、人間が素手で猛獣に立ち向かう様なもの。
その緊迫感とリアリズムを産み出すあの前傾姿勢は、演技以前の内心が産み出したものだったのだ。

附記 2. :
古代怪獣 ゴメス (Gomess) に取って代わった恰好となる地底怪獣 パゴス (Pagos) だけれども、着ぐるみとしての地底怪獣 パゴス (Pagos) も数奇な運命にある。元はと言えば映画『フランケンシュタイン対地底怪獣 (Frankenstein vs. Baragon)』[本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品 1965年制作] に登場した地底怪獣 バラゴン (Baragon) からの改造であって、それはそのまま地底怪獣 パゴス (Pagos) を経て、透明怪獣 ネロンガ (Neronga) にも地底怪獣 マグラー (Magular) にも、ウラン怪獣 ガボラ (Gabora) にも改造される。
だが、その結果、地底怪獣 バラゴン (Baragon) から脈々と受け継いできたフォルム、特に背びれの造型は、ウルトラ・シリーズ (Ultra Series) の地底怪獣の様式美の様な評価さえ得てしまう。
だからここでも、もしも、古代怪獣 ゴメス (Gomess) が当初の予定どおり、『ウルトラQ (Ultra Q)』 [TBS系列 1966年放映] の名実共にメイン怪獣であったのならば、ゴジラのフォルムが、えりまき恐竜 ジラース (Jirass) のみに限定される事なく幾度も幾度もウルトラ・シリーズ (Ultra Series) で散見されたのかもしれない。
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