2011.11.03.11.38
こんな夢をみた。

"Theme From M.A.S.H. (Suicide Is Painless)" for the single "Theme From M.A.S.H. (Suicide Is Painless)
" by Manic Street Preachers
さっきからずっと、バスタブにしゃがみ込んでいる。湯はもちろんはっておらず、灯りもついていない。ただ、ちいさな曇りガラスの向こうから冷たい光がはいって来ている。ひえびえとしたそこはとても静かで、吐く息も鼓動もよく聴き取れる。
しゃがみこんだバスタブから観えるものは随分と限定的で、白いタイルを背景にして洗面用具が居並んでいる。その中にひとつ変なものが紛れ込んでいる。包丁だ。特別なものではない。100円ショップ辺りで購入出来る様な代物だろう。
これで死ねということなのだろう。
そうか、やっぱり死ぬんだな。
そう思って、眼を閉じる。そして、抱え込んだふたつの膝の間に、頭を沈めてみる。当然の様に、閉じていた両膝が開き、冷たい浴槽の壁に触れる。狭い。眼を閉じたまま頭を上げて、浴槽の片方にそのまま身を預ける。
しばらくそうしてみる。
なにか憶い出すのではないだろうかと思って、閉じたままの瞳をこころの内へと向ける。哀しくなって泪が溢れるかと思って、頬に指をあてるがなにもない。
今の気分に相応しいのは『サテライト・オブ・ラブ』だ。と思いついたが、メロディすら出て来ない。ミラ・ ジョヴォヴィッチのスポークン・ワードを聴きたいと思っているけれども、彼女の声はどこにもない。
寝る前に観た旧い映画の中の、ジェファーソン・エアプレインしか憶い出せない。腑抜けたコミューン幻想なんか大嫌いな筈なのに。
それとも、この夢はおれになんだかとてつもないくらい、下らない事を告げたいのだろうか。
今、書いた文章に違和感を感ずるモノもいるかもしれないが、その場にいれば、いい加減、誰だってこんな喜劇じみた状況が、夢以外のナニモノでもないと、気づく筈だ。
だから、溜息とも深呼吸ともとれる深い息をひとつ吐いて、その包丁を手にする。
胸なのか肚なのか頸なのか、こころのなかでは逡巡していたが、腕は勝手に逆手にとった包丁を胸元にあてている。
これでいいんだなと思う。
天井を見上げてみれば、やはりここは狭い。
ちっぽけな場所だ。
鼻で笑う。いまさら、なんなのだ。
右掌は逆手に包丁を握り、左掌はステンレスの刃に軽く添えられている。ちからの加減がずれると、刃は柔らかくしなる。そして切っ先が胸を突く。
あとはずぶずぶとそいつが身体の中に入って行くだけなのだ。
このままの姿勢でいつまでそこにいるのだろう。
そうしておれはバスタブの中からゆっくりとたちあがる。浴室から出ても、辺りは暗い。真っ暗な中を灯りを着ける事も忘れて、彼女の許へ向かう。
彼女はさっきからずっと、そうやって仰向けに倒れている。そのそばに跪き、白いブラウスをまくりあげる。まっしろい肚だ。
その肚の上におれは頭を乗せて独り、眠りに就く。

The opening scene from the movie "Sonezaki Shinju : The Love Suicides At Sonezaki
" directed by Yasuzo Masumura

"Theme From M.A.S.H. (Suicide Is Painless)" for the single "Theme From M.A.S.H. (Suicide Is Painless)
さっきからずっと、バスタブにしゃがみ込んでいる。湯はもちろんはっておらず、灯りもついていない。ただ、ちいさな曇りガラスの向こうから冷たい光がはいって来ている。ひえびえとしたそこはとても静かで、吐く息も鼓動もよく聴き取れる。
しゃがみこんだバスタブから観えるものは随分と限定的で、白いタイルを背景にして洗面用具が居並んでいる。その中にひとつ変なものが紛れ込んでいる。包丁だ。特別なものではない。100円ショップ辺りで購入出来る様な代物だろう。
これで死ねということなのだろう。
そうか、やっぱり死ぬんだな。
そう思って、眼を閉じる。そして、抱え込んだふたつの膝の間に、頭を沈めてみる。当然の様に、閉じていた両膝が開き、冷たい浴槽の壁に触れる。狭い。眼を閉じたまま頭を上げて、浴槽の片方にそのまま身を預ける。
しばらくそうしてみる。
なにか憶い出すのではないだろうかと思って、閉じたままの瞳をこころの内へと向ける。哀しくなって泪が溢れるかと思って、頬に指をあてるがなにもない。
今の気分に相応しいのは『サテライト・オブ・ラブ』だ。と思いついたが、メロディすら出て来ない。ミラ・ ジョヴォヴィッチのスポークン・ワードを聴きたいと思っているけれども、彼女の声はどこにもない。
寝る前に観た旧い映画の中の、ジェファーソン・エアプレインしか憶い出せない。腑抜けたコミューン幻想なんか大嫌いな筈なのに。
それとも、この夢はおれになんだかとてつもないくらい、下らない事を告げたいのだろうか。
今、書いた文章に違和感を感ずるモノもいるかもしれないが、その場にいれば、いい加減、誰だってこんな喜劇じみた状況が、夢以外のナニモノでもないと、気づく筈だ。
だから、溜息とも深呼吸ともとれる深い息をひとつ吐いて、その包丁を手にする。
胸なのか肚なのか頸なのか、こころのなかでは逡巡していたが、腕は勝手に逆手にとった包丁を胸元にあてている。
これでいいんだなと思う。
天井を見上げてみれば、やはりここは狭い。
ちっぽけな場所だ。
鼻で笑う。いまさら、なんなのだ。
右掌は逆手に包丁を握り、左掌はステンレスの刃に軽く添えられている。ちからの加減がずれると、刃は柔らかくしなる。そして切っ先が胸を突く。
あとはずぶずぶとそいつが身体の中に入って行くだけなのだ。
このままの姿勢でいつまでそこにいるのだろう。
そうしておれはバスタブの中からゆっくりとたちあがる。浴室から出ても、辺りは暗い。真っ暗な中を灯りを着ける事も忘れて、彼女の許へ向かう。
彼女はさっきからずっと、そうやって仰向けに倒れている。そのそばに跪き、白いブラウスをまくりあげる。まっしろい肚だ。
その肚の上におれは頭を乗せて独り、眠りに就く。

The opening scene from the movie "Sonezaki Shinju : The Love Suicides At Sonezaki
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