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2011.11.08.18.16

いりたまご

ある宴席での事である。
話の発端がなんだったのかは憶い出せないのだけれども、いつのまにか話題は玉子料理 (Egg Recipes) になっていた。
実家で良く出てくる玉子料理 (Egg Recipes) といえば、あれだ、炒り玉子だ、と切り出したところ、それは炒り玉子ではない、と断罪された。
じゃああれかな、スクランブルド・エッグというものだろう、とやんわりと口撃 [なんせ酒の席での話だ、話す方も聴く方も少し角がたっている] をかわそうとしたら、今度は別のモノから、流石にそれはないだろうと、言われてしまう。
ふたりから丸め込まれようとしているから、ちょっと弱気になって小声で、ぢゃあ、そぼろ (Rousong) と言えばいいんだろう、と発したら、そもそもそれは玉子料理 (Egg Recipes) ぢゃあないのではないか、とまた別のモノからダメ出しをされてしまった。

では、それを一体、なんと呼べば良いのだろう。
すくなくとも、ゆで玉子 (Boiled Egg) ではない事だけは、確かなのだけれども。

実家で食べていた、彼らに言わせれば、炒り玉子でもスクランブルド・エッグでもそぼろ (Rousong) でもない、その玉子料理 (Egg Recipes) は次の様なものである。

材料(三人分)
合挽肉 (Mixture Of Ground Beef And Pork) 300g程
生玉子 (Raw Egg) 6個
バター (Butter) 小2
塩 (Salt) 少々
胡椒 (Pepper) 少々

1. あたためたフライパンの上にバター (Butter) をおとし、よく溶かす。
2. その上で合挽肉 (Mixture Of Ground Beef And Pork) を焼きながら、塩 (Salt)・胡椒 (Pepper) をまぶす。
3. 程よく焼けた時点で、予め融いておいた生玉子 (Raw Egg) をフライパンにおとす。
4. これでそのまま玉子 (Egg) で包み込んでしまえば、挽肉オムレツ (Minced Meat Omelet) になってしまうので、焼きながら、フライパンの中のものを攪拌し、よくほぐす。
5. 玉子 (Egg) に火が通り、焼き上がったら出来上がり。

と、言う様なモノを実家では炒り玉子と呼んでいるのだけれども、どこが間違っているのだろう。
出来上がったモノは、粒状の挽肉 (Minced Meat) を玉子 (Egg) で包み込んだものだ。それとも、挽肉 (Minced Meat) を玉子 (Egg) で包み込んだものを粒状にした、と言うべきなんだろうか。

ここで旧来のメディア、特にテレビ的に論旨を展開しようとすれば、コンビニ、スーパー、百貨店といった各種の食材売り場を尋ね歩いたり、ファミレスや行列の出来る話題の店からホテルの名店や高級料理店まで、各種の料理を食べさせてくれる店に赴いて、炒り玉子スクランブルド・エッグそぼろ (Rousong) を食べ比べるところなんだろうけれども、そんな予算は残念ながらありません。

images
だから、ネットでさくっと検索してみた。

そこでの調べた結果を整理すると、辞書的な意味で厳密に言えば、炒り玉子スクランブルド・エッグも玉子 (Egg) 単品で調理する料理だ。単純に、炒り玉子を英訳すれば"Scrambled Egg"になり、スクランブルド・エッグを邦訳すれば"Iri Tamago"になってしまうのだけれども、全然、異なる調理であるとされている。
味付けが和風のものを炒り玉子、洋風のものをスクランブルド・エッグと呼んでもいいのだろうし、ぱらっとした粒状になっているのが炒り玉子、やや半熟状態のものをスクランブルド・エッグと呼んでも構わないのだろう。だけれども、和風の半熟状態のそれは炒り玉子なのかスクランブルド・エッグなのか、洋風のぱらっとした粒状はスクランブルド・エッグなのか炒り玉子なのかは、判然としない。

一方のそぼろ (Rousong) は、挽肉 (Minced Meat) を使ったものや玉子 (Egg) を使ったもの等、様々な食材が対象になる。つまり、どんな食材を使おうとも、あの形状をしていればそぼろ (Rousong) なのだ。だけれども、挽肉 (Minced Meat) ヴァージョンと玉子 (Egg) ヴァージョンは、融合しない。基本は単品の食材で作るべきで、挽肉 (Minced Meat) ヴァージョンと玉子 (Egg) ヴァージョンは、それぞれがセパレートで出て来る。

ぢゃあ、挽肉オムレツ (Minced Meat Omelet) なのかと言うと、玉子 (Egg) と挽肉 (Minced Meat) が粒状にくっついているその形状を挽肉オムレツ (Minced Meat Omelet) と呼ぶには、いささか抵抗がある。失敗した挽肉オムレツ (Minced Meat Omelet) とか挽肉オムレツ (Minced Meat Omelet) のダダ (Dadaism) 的解釈と呼んでもいいのかもしれないけれども、幼い頃からその失敗作を嬉々として食して来たというのも、機嫌が悪い。

父方は関西出身で、母方は地元だ。
地元と言ってもそれだけでは勿論通じない。ぼくがその地元にいないからだ。
関東圏関西圏では味付けが異なるのは誰もが知っていると思うけれども、その二極化に異を唱える様に、名古屋圏の味というものもある。最近では、その独自の食文化もメジャー化してきていると思う。そして、その名古屋圏とも違う味が関東圏名古屋圏の間にあって、ここでいう地元とは其所の事だ。
一言で言えばすむところを、あえてややこしく書いてみた。

しかもここからが本題だ。

つまり、父の味覚と母の味覚が異なっていて、時にはその差異で食事中に父から母にクレームが出る事がある。「味が濃い」と。だから、大概は母の味付けは、関西圏に沿ったものになる。その結果、ぼくは自宅で食べるものと外食とでは大いに味付けは勿論、使用する食材や調理方法も異なるものに遭遇する事になる。
では、今回の主題の玉子料理 (Egg Recipes)、炒り玉子でもスクランブルド・エッグでもそぼろ (Rousong) でもないこの料理は、どちらが出自なのだろうか。

ちなみに、実家ではこの料理は大皿にもったかたちでテーブルに並ぶ。各自が勝手にそこから己のご飯茶碗の上にのせて、勝手気侭に食べる。副食というよりも、ふりかけ的なニュアンスだ。
出来立てのあつあつも美味しいが、冷蔵庫で冷やしたものも熱いご飯と一緒だと意外と美味い。
だから、母はいつも、息子ふたりには充分な程、二三日は保つであろうと大量に作っていた。

だが、二日三日保つ程に大量に作っても保った試しはなかった様に思う。何故ならば、嫌いな料理が主食としてテーブルに並ぶ時は、それを避けてこの玉子料理 (Egg Recipes) で済ませてしまっていたからだ。
それに気づいた母は、以来、こどもが嫌う料理は総て各自個別の皿に盛り、好みの料理は大皿に盛りつける様になった。

ぼくの喰い意地がはっている理由は、そんなところにある。好みの料理はどうしても兄弟で取り合いになるからだ。

次回は「」。

附記 1. :
上のレシピに倣っていえば、「そのまま玉子 (Egg) で包み込んでしまえば、挽肉オムレツ (Minced Meat Omelet)」というコースも、実家ではよくある料理なのだ。ただ、その場合でも、挽肉オムレツ (Minced Meat Omelet) 的な佇まいをみせてくれない。家族四人で揃って、鉄板を囲む様な食卓によく出てくるのだ。お好み焼き (Okonomiyaki) や焼そば (Yakisoba) を作る様な感覚で、この挽肉オムレツ (Minced Meat Omelet) を作って食べる。
焼きたての出来立てのものを鉄板に置いたまま、ソース (Sauce) をかけて、焦げるソース (Sauce) の風味を味わいながら、お好み焼き (Okonomiyaki) 用のへらで掬って食べる。

附記 2. :
本文中程に突然ザ・ビートルズ (The Beatles) の四人が並んでいて吃驚した方も多いかもしれない。1965年米国で発売されたシングル『イエスタデイ (Yesterday) c/w アクト・ナチュラリー (Act Naturally)』のカヴァーだ。なぜこの写真がこんなところにというと、彼らの代表曲のひとつでもある『イエスタデイ (Yesterday) 』は、歌詞が定まっていない頃、『スクランブルド・エッグ (Scrambled Egg)』と呼ばれていた。
単にそれだけの理由です。
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