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2011.10.16.16.19

"THE WORLD WON'T LISTEN" by THE SMITHS

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『誰も聴きたいとは思わないだろう / ザ・ワールド・ウォント・リッスン (The World Won't Listen)』とは、あまりにも辛辣な上に尊大なタイトルだけれども、これが彼ら [敢て彼らと書くけれども] のやり口なのだ。
充分に注意したがいい。

と、いうのも、アルバムを飾るノスタルジックな佇まいで魅せているセピア調のアート・ワーク自体からして曲者なのだ。
画面手前にある四人の少年の背中に、ぼく達は喪われたものへの郷愁を見出してしまうかもしれない。
しかし、良く観てもらいたい。ここからでは伺い知る事の出来ない彼らの視線の行方を。この写真、集団抗争の図とも、ストリート・ファイトの一瞬とも言える、緊迫した中のワン・ショットなのである [オリジナル作品はこちらに掲載されてます]。
前に出向こうとしている、その横顔を伺う事の出来る中央の少年の右腕をしっかりと捉えて、右端にいる少年が彼の次の行動を抑制している。そして彼を護るかの様にそのふたりの右側面を、ここからでは表情の伺えないひとりの少年が固め、その反対側に立つ左端の少年は、彼らの総ての視線の矛先にいるあるモノ達へ歪めた顔を呈示し、彼らを挑発しているのだ。恐らく画面奥にいるふたりの少年も、同じモノ達への敵意と警戒を露わにしていると観てとれる。
それに気づけば、裏ジャケットにある少女達の険しい表情の理由も自ずと推測出来るのだ [オリジナル作品はこちらに掲載されてます]。

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この写真を撮影したのは、ユルゲン・フォルマー (Jurgen Vollmer)。彼の最も有名な作品は、ジョン・レノン (John Lennon) の『ロックン・ロール (Rock 'n' Roll)』 [1975年発表] を飾るあの写真だ。彼は、アストリット・キルヒヘア (Astrid Kirchherr) と同じく、ハンブルグ時代 (Hamburg Era) にあったザ・ビートルズ (The Beatles) を撮影し続けた人物で、ザ・ビートルズ (The Beatles)・ファンならば一度は眼にした事があるだろう、革ジャン・スタイルでリッケンバッカー 325 (Rickenbacker 325) を抱えて唄うジョン・レノン (John Lennon) の写真 [ここで観る事が出来る筈だ] も彼の作品のひとつだ。
この『ザ・ワールド・ウォント・リッスン (The World Won't Listen)』に使われた写真は、その当時に彼が撮影した写真を纏めた写真集『ロックンロール・タイムズ (Rock 'N' Roll Times: The Style And Spirit Of The Early Beatles And Their First Fans)』に掲載されたものである。
そして、ザ・スミス (The Smiths) のファンならば言うまでもなく、これらの写真を選んだのは、バンドのヴォーカリスト、モリッシー (Morrissey) に他ならないのだ。

ザ・ワールド・ウォント・リッスン (The World Won't Listen)』の発表は1987年。『ハットフル・オブ・ホロウ (Hatful Of Hollow)』 [1984年発表] に次ぐ二枚目の編集盤にあたる訳だけれども、当時としては同時期に米国向けに編集発売されたベスト盤『ラウダー・ザン・ボム (Louder Than Bombs)』 [1987年発表] と比して、英国国内向けのベスト盤という触れ込みだった様な気がする。
バンドも解散し、その後に全作品 / 全楽曲がきちんと編集されたベスト盤や入門盤やコレクターズ・アイテムが流通している現在では、この作品自体の存在価値は無きに等しい。
敢て言えば当時完全に未発表曲だった2曲、『ゼア・イズ・ア・ライト (There Is A Light That Never Goes Out)』と『ユー・ジャスト・ハプント・アーンド (You Just Haven't Earned It Yet baby)』の初登場盤であるという位置づけと、上に述べたジャケット・ワークへの評価くらいが購入意欲をそそらせるものなのだろうか [本作品はLPとCDと同時に発売されたが、フィーチャーされたアート・ワークの違いから両者を購入するファンも多かった筈だ。この頁ではLP仕様をフィーチャーしてある]。
しかし、本作品が発表された1987年には充分に価値があったのだ。

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それはこのバンドならではの作品の発表形態である。否、このバンドに限らずとも、当時の音楽シーンならではの発売形態と言い換えるべきなのかもしれない。
つまり、現在では過去の遺物とも言える12インチ・シングル (12 Inch Single Record) というメディアを使い切った作品の好例が、ザ・スミス (The Smiths) のシングル群だったのである。
定期的に発表される新曲と、それに付随するB面収録曲 [この殆どがアルバムには収録されない] と、そしてそれ以上に、バンド自身のアトモスフィアをパッケージしたヴィジュアルは、彼らならではの魅力なのである。
当時、輸入盤店を毎日の様に俳諧したものならば、解るだろう、壁面にディスプレイされた新着の12インチ・シングル (12 Inch Single Record) の中から、彼らの新作を発見するのは非常に容易かった事を。つまり、それだけ統一されたヴィジュアル・イメージだったのである。

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だが、それは即ち、次の事を示唆している。
彼らの作品は、限りある入荷枚数ではすぐに完売されてしまうモノである上に、さらに、彼らのリリース・ペースは他のどのバンド / アーティストよりも早いのである。すぐに売り切れる上に、作品の数が多い、ホントにコアな彼らのファンでなければ、リアルタイムで総ての楽曲群を制覇するのは、経済的な理由も含めてかなり困難を要した筈だ。
だからこその、当時のシングル楽曲群を纏めた編集盤『ザ・ワールド・ウォント・リッスン (The World Won't Listen)』の存在意義があったのだ。

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ところで、先にバンド自身のアトモスフィアをパッケージしたヴィジュアルと書いたけれども、ここでも騙されてはいけないと思うのだ。
彼らの作品を飾るモノ・トーンの写真群は、『ザ・ワールド・ウォント・リッスン (The World Won't Listen)』同様に、ノスタルジックな佇まいを魅せている。そこに映し出されている1950~1960年代の顔々は、1987年のぼく達にとっては喪われてしまったモノだけが放つ魅力である。
だがそれは、彼らの表情をぼく達が、未だ観ぬ存在として捉えているからではないだろうか。
だが、TVのブラウン管や映画館のスクリーンの中で、リアルタイムに彼らの表情や行動を追ったモノ達から観れば、実は違和感だらけの異物にしか観えないかもしれない。
[例えば、これを日本のものに置き換えてくれると解るかもしれない。数年前もしくは数十年前にヴァラエティ番組や昼ドラに出ていたかつての人気俳優や人気タレントの顔を大きくディスプレイしたら、どんな風に観えるだろうか??]
もちろん、この中にはアート・ディレクションも担当しているモリッシー (Morrissey) のフェイヴァリットな人物達もいる。だがしかし、例えば、この中にあるエルヴィス・プレスリー (Elvis Presley) の写真を観て、ヒトはどう思うのだろうか。捜し出した資料によればこの写真は、エルヴィス・プレスリー (Elvis Presley) の最初のプロモーション用写真らしいのだけれども、この疲弊感に満ちたオーラのなさはどうなんだろうか。素直に、好きなアーティストだから、そのポートレイトを起用しましたというレベルとは別の作為なり悪意を、ぼくは読み取ってしまうのだが。
また、バンドの評価が [良きにつけ悪しきにつけ] 定まってくればくる程、ザ・スミス (The Smiths) のシングル写真に起用されたという事、それ自体が色眼鏡を着けさせる事になるのだ。
つまり、ザ・スミス (The Smiths) のシングルにトルーマン・カポーティ (Truman Capote) が起用されるという事 [しかも撮影者はかのセシル・ビートン (Cecil Beaton) だ] は、モリッシー (Morrissey) とトルーマン・カポーティ (Truman Capote) とさらにはセシル・ビートン (Cecil Beaton) それぞれを知るモノにとっては何の説明もいらないくらいに自明な文脈を見出せてしまうのだけれども、それと同じ文脈を、他のザ・スミス (The Smiths) 作品に登場した男性達にも、垣間見させてしまうのだ。例え、その被写体の起用が、その文脈とは一切無関係だとしても [なにを言っているのかさっぱりと言うヒトは敢て詮索しなくてもいいですよ]。
だから、ファンキー・モンキー・ベイビーズ (Funky Monkey Babys) の"顔ジャケット・シリーズ"とは同工異曲どころか、似て非なるものと看做すべきなのである。

と、ずうっとここまで音楽の話ではなくてその容れ物について書いて来た。このまんま、アート・ワーク論として纏めてしまいたい欲求にかられて入るのだけれども、そういう訳にもいかない。

少しだけ書く。

ザ・スミス (The Smiths) がシーンに登場した時の触れ込みはふたつあった。
ひとつは、これまで一向に作品毎のワン・ショット契約しかして来なかったラフ・トレード・レコーズ (Rough Trade Records) が初めて長期間に渡る複数作品の制作を約束する契約を交わした事。
そして、もうひとつがザ・バーズ (The Byrds) の再来。
前者に関しては、それだけバンドの存在意義がレーベル側にとって大きかったというよりも当時、その屋台骨がぐらついている程に経営状態が悪化しているという報道を裏付けるものでしかなかった。実際に、ラフ・トレード・レコーズ (Rough Trade Records) の初期を彩ると同時に当時の音楽シーンにとって最重要だったいくつかのバンド / アーティストは解散したり活動拠点を他所のレーベルに移していたのだ。
むしろ、問題なのは後者の音楽的な評価である。

多分、ギタリストであるジョニー・マー (Johnny Marr) のソング・ライティング能力とそれをさらに際立たせる演奏力 / アレンジ力に注目したからだと思うのだけれども、これこそ、同工異曲どころか、似て非なるものなのである。

いや、勿論、ジョニー・マー (Johnny Marr) の作曲能力とその表現力は認めるものだけれども、それがモリッシー (Morrissey) のあの歌唱方法と彼の書く詩世界とが一致している事の方がおかしいのである。
水と油とまではいわないけれども、両者にある隔たりをどうして誰も指摘しないのだろう。とにかく、彼らの作品を初めて聴いた当時、モリッシー (Morrissey) のヴォーカルにいたたまれなさと同時にいわれなき苛立が、ぼくの中に沸き起こっていたのだ。

でもそれは、モリッシー (Morrissey) のヴォーカルの聴き難さ / 受け入れ難さをジョニー・マー (Johnny Marr) が一生懸命、オヴラートで包み込んでいるという様なものでもないと思う。むしろ、それとは逆に、そのヴォーカリゼーションの異質さを過剰に演出しているのではないか、と思われる節もあるのである。

それはなんの根拠もないのだけれども、彼らのライヴ盤『ランク (Rank)』 [1988年発表] のインナースリーヴに掲載されたイアン・チルトン (Ian T. Tilton) 撮影の写真を観て、余計にその印象を強くしたのである [オリジナル作品はこちらに掲載されてます]。
それは、ザ・スミス (The Smiths) ってこういう聴かれ方 / 受け止められ方をしているのだなぁという驚き以外のなにものでもないのだが。

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例えば、一見、普通のどこにでもいる様なヴィジュアルの少年達をここまで熱狂させる男性アーティストなりバンドが、この日本にあるのだろうか、って事 [ここ日本では、その役割を女性アーティスト達が担っているんだけれども?]。

ここから先、どこまでも持論を展開出来てしまうのだけれども、どうしても性的に差別的な発言を引き出してしまいそうだ。
ビッグマウス・ストライクス・アゲイン (Bigmouth Strikes Again)』
この箴言に従う事にしよう。

ものづくし(click in the world!)109. :
"THE WORLD WON'T LISTEN" by THE SMITHS


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"THE WORLD WON'T LISTEN" by THE SMITHS

1- PANIC
2- ASK
3- LONDON
4- BIGMOUTH STRIKES AGAIN
5- SHAKESPEARE'S SISTER
6- THERE IS A LIGHT THAT NEVER GOES OUT
7- SHOPLIFTERS OF THE WORLD UNITE
8- THE BOY WITH THE THORN IN HIS SIDE
9- MONEY CHANGES EVERYTHING
10-ASLEEP
11- UNLOVEABLE
12- HALF A PERSON
13- STRETCH OUT AND WAIT
14- THAT JOKE ISN'T FUNNY ANY MORE
15- OSCILLATE WILDLY
16- YOU JUST HAVEN'T EARNED IT YET, BABY
17- RUBBER RING

(3, 4, 6, 8, 9, 10, 11, 16) PRODUCED BY MORRISSEY & MARR
(5, 12, 13, 14) PRODUCED BY THE SMITHS
(1, 2, 7, 15) PRODUCED BY JOHN PORTER

(P) 1986 ROUGH TRADE RECORDS LTD.
(C) 1986 WARNER BROS. MUSIC LTD.

ROUGH CD 101

LISTEN

RECORDED BETWEEN JANUARY 1985 AND SEPTEMBER 1986
VOICE BY MORRISSEY, GUITARS BY JOHNNY MARR
THE BASS GUITAR BY ANDY ROURKE, THE DRUMS BY MIKE JOYCE
ALL SONGS RECORDED IN ENGLAND
WORDS BY MORRISSEY, MUSIC BY JOHNNY MARR
SLEEBE BY MORRISSEY, PHOTOGRAPHY (C) JURGEN VOLLMER
LAYOUT BY CARYN GOUGH, ART CO-ORDINATION BY JO SLEE
ROUGH TRADE RECORDS LTD., 61-71 COLLIER STREET, LONDON N1 9BE

なお、オリジナル盤には不掲載だが、収録楽曲を収録したシングルのデータを下記に記しておく。本作品発表時には、『ゼア・イズ・ア・ライト (There Is A Light That Never Goes Out)』と『ユー・ジャスト・ハプント・アーンド (You Just Haven't Earned It Yet baby)』が未発表曲で、この作品での登場が初出となる。


"How Soon Is Now?" (released on 28 January 1985 : including 15.)
cover art work : a still from the movie "Dunkirk" (1958 directed by Leslie Norman) featuring British actor Sean Barrett

"Shakespeare's Sister" (released on 18 March 1985 : including 5. 13.)
cover art work : Pat Phoenix, her long-running role in the UK TV series "Coronation Street"

"That Joke Isn't Funny Anymore" (released on 1 July 1985 : including 14.)
cover art work : unknown Ukrainian child actor who appeared in an unknown 1965 Movie (still from the film appeared in a book owned by Morrissey)

"The Boy With The Thorn In His Side" (released on 23 September 1985 : including 8. 10. 17.)
cover art work : Truman Capote photo by Cecil Beaton in 1949

"Bigmouth Strikes Again" (Released on May 19, 1986 : including 4. 9. 11.)
cover art work : a photo of James Dean by Nelva Jean Thomas

"Panic" (released on 21 July 1986 : including 1.)
cover art work :Richard Bradford, the picture is from the 60's UK TV series "Man In A Suitcase"

"Ask" (released on 20 October 1986 : including 2.)
cover art work : Yootha Joyce, a still from the movie "Catch Us If You Can", (1965 directed by John Boorman)

"Shoplifters Of The World Unite" (released on 26 January 1987 : including 3. 7. 12.)
cover art work : Elvis Presley, the first official press photograph

"There Is A Light That Never Goes Out" (released on 12 October 1992 : including 6.)
cover art work : Sandie Shaw, covered "Hand In Glove" by The Smiths

"The World Won't Listen" (released on February 23, 1987 : including 16.)
cover art work : photos by Jurgen Vollmer from the book "Rock 'N' Roll Times: The Style and Spirit of the Early Beatles and Their First Fans" for front cover and back cover.
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