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2011.08.09.21.25

ちゅーばっか

「あのけむくぢゃらの大猿」とか「吠えるしか能のない奴」とかいうのが、映画『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望 (Star Wars Episode IV: A New Hope)』 [ジョージ・ルーカス (George Lucas) 監督作品 1977年制作] 公開時の、ぼく達の第一印象だった。

そして、その第一印象を増幅させたのが、映画『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望 (Star Wars Episode IV: A New Hope)』 [ジョージ・ルーカス (George Lucas) 監督作品 1977年制作] の日本公開よりも前にロードショー公開された映画『惑星大戦争 (The War In Space)』 [福田純 (Jun Fukuda) 監督作品 1977年制作] だったのである。
その作品の中に顕われる、宇宙獣人 (The Space Beast) [演:マンモス・鈴木 (Mammoth Suzuki)] がチューバッカ (Chewbacca) [演:ピーター・メイヒュー (Peter Mayhew)] をあまりに無様に引き写した姿をしている上に、彼の役割が捕虜となった滝川ジュン (Jun Takigawa) [演:浅野ゆう子 (Yuko Asano)] の獄卒役だったから、尚更、「あのけむくぢゃらの大猿」とか「吠えるしか能のない奴」とかいう罵倒をより増長させたのである。
つまりは美女と野獣 (La Belle et la Bete) なのである。
しかも、それは第一義的な、語感どおりのものでしかなくて、映画『美女と野獣 (La Belle et la Bete)』 [ジャン・コクトー (Jean Cocteau) 監督作品 1946年制作] とも映画『美女と野獣 (Beauty And The Beast)』 [ゲーリー・トゥルースデイル (Gary Trousdale)、カーク・ワイズ (Kirk Wise) 監督作品 1991年制作] とも無縁の存在。浅野ゆう子 (Yuko Asano) [当時17歳] の肢体の引き立て役でしかないのである。

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と、偉そうな事を言えるのも今になってからの事で、映画『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望 (Star Wars Episode IV: A New Hope)』 [ジョージ・ルーカス (George Lucas) 監督作品 1977年制作] の日本公開の半年前に急遽公開されたこの映画を、ぼく達は見向きもしていなかったのも事実である。多分、番宣用のスティル写真を観比べた結果での印象だけによるのではなかったのではないだろうか。
中途半端なアイドルでしかなかった当時の浅野ゆう子 (Yuko Asano) [当時17歳] をいい様に弄ぶ宇宙獣人 (The Space Beast) [演:マンモス・鈴木 (Mammoth Suzuki)] のヴィジュアルと、ハン・ソロ (Han Solo) [演:ハリソン・フォード (Harrison Ford)] と共に銃を構えるヴィジュアルと、そのふたつに差異はあまりない。と、いうか、単に毛むくじゃらの塊が、スティル写真の半分を占拠しているだけにしか観えないからだ。

そして、その半年後に待ちに待って待たされた結果、ようやく観る事の出来た映画『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望 (Star Wars Episode IV: A New Hope)』 [ジョージ・ルーカス (George Lucas) 監督作品 1977年制作] での彼の印象は、あまり変わらない。

ハリウッド製の映画の殆どが全世界同時公開であるのが常識の現在と違って、映画『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望 (Star Wars Episode IV: A New Hope)』 [ジョージ・ルーカス (George Lucas) 監督作品 1977年制作] は一年近くも日本公開が遅れた作品である。その間に、本来ならば映画『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望 (Star Wars Episode IV: A New Hope)』 [ジョージ・ルーカス (George Lucas) 監督作品 1977年制作] の到来と共に沸き上がる筈のSFブームは、映画公開よりも先に起こってしまった。
ぼく達は、作品自体を観ていないのにも関わらずに、物語のディティールは既に入手してしまった後の事だった。
映画館に出向いて行う事は、その確認作業に他ならなかったのかもしれない。

だから、モス・アイズリー (Mos Eisley) に向かったルーク・スカイウォーカー (Luke Skywalker) [演:マーク・ハミル (Mark Hamill)] とオビ=ワン・ケノービ (Obi-Wan "Ben" Kenobi) [演:アレック・ギネス (Alec Guinness)] と二体のドロイド (Droid) が、チャルマンの酒場 (Chalmun's Spaceport Cantina) に入った時にはもう、いち早く、得体の知れないベム達の中に「あのけむくぢゃらの大猿」で「吠えるしか能のない奴」の姿を発見してしまっているのである。
つまり、ぼく達のその時の感慨では、ようやく物語が転がり始めるなぁという印象なのだけれども、全くの予備知識ゼロ [と、いう様な事はもはや不可能なのだけれども] でこの作品に向かえば、どういう観え方をしたのだろうか。

ところで、ぼく達に「あのけむくぢゃらの大猿」とか「吠えるしか能のない奴」とか罵倒されている彼の、名誉回復の為に、この駄文を連ねている訳では、実はない。
物語の中での彼のキャラクター設定はあちら こちらを観てもらえばいいのだし、それ以前に、全シリーズをきちんと観てもらえば、彼本来の物語上の役割は理解出来る筈だ。
そこで、充分に彼の知性と人格を知る事が出来るに違いないのだ。

そうではなくて、映画『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望 (Star Wars Episode IV: A New Hope)』 [ジョージ・ルーカス (George Lucas) 監督作品 1977年制作] には、主要登場人物の中には独りも有色人種がいなかったでしょう、という事なのだ。

先程のモス・アイズリー (Mos Eisley) のチャルマンの酒場 (Chalmun's Spaceport Cantina) でのシーンに代表される様に、多種多彩で百花繚乱な宇宙人やベムが登場するのだけれども、物語の中核をなす登場人物の殆どが、地球人類型 (Humanoid) [それとも霊長類型 (Hominoids ) というべきか] で、その上に白色人種ばかりなのだ。

確かに二体のドロイド (Droid)、C-3PO (C-3PO) [演:アンソニー・ダニエルズ (Anthony Daniels)] とR2-D2 (R2-D2) [演:ケニー・ベイカー (Kenny Baker)] は物語の中枢にあるけれども、彼らは別格。と、いうのも、当初は三部構成で全9作品の映画が予定されているとアナウンスされていた『スター・ウォーズ・サーガ (Star Was Saga)』の総てに登場する唯一の登場人物達が、この二体のドロイド (Droid) なのであるからだ。
その一方で物語初動において、二体のドロイド (Droid) とルーク・スカイウォーカー (Luke Skywalker) [演:マーク・ハミル (Mark Hamill)] との出逢いを演出するジャワ族 (The Jawas) も、ルーク・スカイウォーカー (Luke Skywalker) [演:マーク・ハミル (Mark Hamill)] とオビ=ワン・ケノービ (Obi-Wan "Ben" Kenobi) [演:アレック・ギネス (Alec Guinness)] との遭遇を演出するタスケン・レイダー (Tusken Raiders) も、ほんの端役でしかない。
勿論、そこには映像技術の問題も横たわっていて、後に大きく物語に関わって来るジャバ・ザ・ハット (Jabba The Hutt) [演:彼自身 (Himself)] は、その登場が断念させられて後の"特別編 (Special Edition)"の際に、新たに彼の登場シーンが追加されたのである。

だから?

そう、だから、なのである。

映画『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望 (Star Wars Episode IV: A New Hope)』 [ジョージ・ルーカス (George Lucas) 監督作品 1977年制作] の元ネタのひとつである映画『超人対火星人 (Flash Gordon)』 [フレデリック・ステファニー (Frederick Stephani) 監督作品 1936年制作] の敵役がミン皇帝 (Ming The Merciless) [演:チャールズ・ミドルトン (Charles B. Middleton)] と名乗るアジア系のヴィジュアルであったのも、そうなのだ。
映画 『猿の惑星 (Planet Of The Apes)』 [フランクリン・J・シャフナー (Franklin J. Schaffner) 1968年制作] の同名原作小説である『猿の惑星 (La Planete des singes)』 [ピエール・ブール (Pierre Boulle) 作 1963年発表] のそもそもが原作者の太平洋戦争時での捕囚経験に基づいているのも、そうなのである。
宇宙人とかベムとかは、まったく虚構の世界の存在である前に、この現実の地球上にいるナニモノかの代替装置にすぎないのである。

例えが悪すぎる、と主張したい向きもあるかもしれない。
1970年代後半の、大作で娯楽嗜好の強いハリウッド制作の作品ならば、ある意味で偏ったキャスティングになるのは致し方ないのではあるまいか、と。21世紀の視点で語るのは如何なものか、と。

しかし、上の二例とは別の意味で、TV番組『宇宙大作戦 [スタートレック] (Star Trek)』 [19661969年制作] に登場する宇宙船エンタープライズ号 (U.S.S. Enterprise) の乗務員達が、米国の縮図の様な多士多彩な人種構成をなしていた事を考慮してもらいたいのだ。
特に、女性でかつアフリカ系のウラ中尉 (Nyota Uhura) [演:ニシェル・ニコルズ (Nichelle Nichols)] が常に、通信担当士官 (Communications Officer) として、宇宙船エンタープライズ号 (U.S.S. Enterprise) のキャビンに常駐していた事を憶い出してもらいたいのだ。
彼女の存在は、ぼく達が考える以上に、米国におけるマイノリティ達を勇気づけたらしいのだが。

つまり、C-3PO (C-3PO) [演:アンソニー・ダニエルズ (Anthony Daniels)] の中に、アンクル・トム (Uncle Tom) 的な愚かし気な忠誠心を観出す事が出来るのであるならば、チューバッカ (Chewbacca) [演:ピーター・メイヒュー (Peter Mayhew)] の中に高貴なる野蛮人 (Bon sauvage) という旧態然とした、有色人種へのある視点が蠢いていると観てとれるに違いないのである。

そしてまた、その3年後に完成する第二作である映画『スター・ウォーズ エピソード5 / 帝国の逆襲 (Star Wars Episode V: The Empire Strikes Back)』 [アーヴィン・カーシュナー (Irvin Kershner) 監督作品 1980年制作] の中での、ランド・カルリシアン (Lando Calrissian) [演:ビリー・ディー・ウィリアムズ (Billy Dee Williams)] の小賢しい立ち居振る舞いをぼく達は観せつけられるのである ,,, 。

次回は「」。

附記1:
ミレニアム・ファルコン (Millennium Falcon) のふたりの搭乗員を、小説『ドン・キホーテ (El ingenioso hidalgo don Quijote de la Mancha)』 [ミゲル・デ・セルバンテス (Miguel de Cervantes) 作 1605年発表] のドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ [アロンソ・キハーナ] (Don Quixote de la Mancha [Aldonza Lorenzo)]) とサンチョ・パンサ (Sancho Panza) の主従になぞらえる事が出来るだろうかと、考えてみたけれども、少なくとも、ハン・ソロ (Han Solo) [演:ハリソン・フォード (Harrison Ford)] には騎士道精神 (Chivalry) 的な美意識は皆無だろう。
むしろ、元ネタのひとつである映画『隠し砦の三悪人 (The Hidden Fortress)』 [黒澤明 (Akira Kurosawa) 監督作品 1958年制作] に登場する田所兵衛 (General Hyoe Tadokoro) [演:藤田進 (Susumu Fujita)] の人格を二分割したと考えるべきではないか。
それとも、田所兵衛 (General Hyoe Tadokoro) [演:藤田進 (Susumu Fujita)] をジョージ・ルーカス (George Lucas) に翻案させると、ランド・カルリシアン (Lando Calrissian) [演:ビリー・ディー・ウィリアムズ (Billy Dee Williams)] なのか。

附記2:
確か雑誌『スターログ (Starlog)』のインタヴューだと思ったのだけれども、映画『スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望 (Star Wars Episode IV: A New Hope)』 [ジョージ・ルーカス (George Lucas) 監督作品 1977年制作] の敵役ダース・ベイダー (Darth Vader) [演:デイヴィッド・プラウズ (David Prowse) 声:ジェームズ・アール・ジョーンズ (James Earl Jones)] の"中のヒト"の方であるデイヴィッド・プラウズ (David Prowse) が、次の様な趣旨の発言をしていたと思う [大雑把な記憶なので、間違いがあったら訂正願います]。
「悪の総帥と正義の猿とどちらがいいかと、尋ねられた」と。
彼の選択は果たして正しかったのか否か。
一方、ぼくはチューバッカ (Chewbacca) [演:ピーター・メイヒュー (Peter Mayhew)] を演じた"中のヒト"の取材記事を読んだ記憶はないのだけれども [ぼく自身が彼に興味がないから、例えそんな記事が存在していたとしても未読で通り過した、という可能性がない訳ではないのだが]。
ちなみに物語上での設定では、ダース・ベイダー (Darth Vader) [演:デイヴィッド・プラウズ (David Prowse) 声:ジェームズ・アール・ジョーンズ (James Earl Jones)] が202cmでチューバッカ (Chewbacca) [演:ピーター・メイヒュー (Peter Mayhew)] が228cm。その"中のヒト"の実際は、前者が198cmで後者が221cmであった。
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