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2011.08.02.21.22

にげるがかち

作品世界を形作る細部の描写や表現手法にはおもいっきり魅了されているのにも関わらず、いまいち『新世紀エヴァンゲリオン (Neon Genesis Evangelion)』 [庵野秀明 (Hideaki Anno) 監督作品 1995年~1996年放映] の物語に入り込めないのは、主人公碇シンジ (Shinji Ikari) の「逃げちゃ駄目だ、」という言葉が、呪文の様に鳴り響いているからなのだ。

それは何故かと言うと、浅田彰 (AKira Asada) の『逃走論 スキゾ・キッズの冒険 (A Theory Of Escape)』 [1985年発表] を持ち出すまでもなくて、「逃げてもいい」という消極的な同意は愚か「とっとと逃げ出せ」という積極的な賛意を、とっくの昔に得ていたからであった。

なにも、「三十六計逃げるに如かず (He who fights and runs away lives to fight another day.)」という成語や、その基になったとされる『兵法三十六計 (Thirty-Six Stratagems / 或稱三十六策)』を持ち出すまでもない。

だがしかし、そんな成語をあたかも実践して、逃げて逃げて逃げまくった戦歴の暁に天下を執った徳川家康 (Tokugawa Ieyasu) の様な武将もいる訳であるし、その武将が正に天下を己の掌中に治めたその合戦 (Battle Of Sekigahara) で、逃げて逃げて逃げまくって己の領国に逃げ切った島津義弘 (Shimazu Yoshihiro) の様な武将もいるのである。
そして、そんなふたりの武将の子孫が立場を全く違えた形で、覇を競う訳であるのだけれども、少なくとも一方の将である徳川慶喜 (Tokugawa Yoshinobu) はここでも逃げまくって、己の身の保全を図ったのである [って決めてつけてしまっていいのだろうか]。

そんな歴史の一齣を粗くざっくりと解釈するまでもない。
例えば1960年代に産まれて1970年代に少年期を活きて来たぼく達の視点で観れば、日本赤軍 (Japanese Red Army) を持ち出すまでもなくて、逃走がそのまま闘争に昇華する可能性がある事を知っているからなのだ。

サイボーグ009 (Cyborg 009)』 [石ノ森章太郎 (Shotaro Ishinomori) 作 1964年~1966年連載] や 『気狂いピエロ (Pierrot Le Fou)』 [ジャン=リュック・ ゴダール (Jean-Luc Godard) 監督作品 1965年制作] や 『続・激突! カージャック (The Sugarland Express)』 [スティーヴン・スピルバーグ (Steven Spielberg) 監督作品 1974年制作] や『七瀬ふたたび (Nanase Once More)』 [筒井康隆 (Yasutaka Tsutsui) 作 1975年発表] をぼく達は観て来たのである。
中には、ジョージ・A・ロメロ (George A. Romero) の『ゾンビ・サーガ (The Dead Movies)』の様に、逃げて逃げて逃げたその先に救い様がない絶望が待ち受けていたり、そのドラマツルギーを踏襲したホラー・ムーヴィーでは再び起こる惨劇を予感させて終幕を迎えるものがないわけでもない [上に例示した作品群だって、総ての作品が必ずしもハッピー・エンドを遂げる訳でもないんだけれども]。
しかしその一方で、逃げて逃げて逃げまくってその最期には自身の自由を勝ち得たパピヨン (Papillon) ことアンリ・シャリエール (Henri Charriere) の生涯も忘れてはならない。彼の自伝『小説・パピヨン (Papillon)』 [1969年発表] はそのまんま映画 『パピヨン (Papillon)』 [フランクリン・J・シャフナー (Franklin J. Schaffner) 監督作品 1973年制作] として観る事も出来るのだけれども、ここでタイトル・ロールを演じたスティーヴ・マックィーン (Steve McQueen) こそ、『大脱走 (The Great Escape)』 [ジョン・スタージェス (John Sturges) 監督作品 1963年制作] や 『華麗なる賭け (The Thomas Crown Affair)』 [ノーマン・ジュイソン (Norman Jewison) 監督作品 1968年制作] や 『ゲッタウェイ (The Getaway)』 [サム・ペキンパー (Sam Peckinpah) 監督作品 1972年制作] で逃げて逃げて逃げまくる主人公を演じて、ぼく達の喝采を浴びた俳優なのであった [と、いう様な論旨の記事は既にこちらで書いてある]。

だからこその、『トムとジェリー (Tom And Jerry)』 (メトロ・ゴールドウィン・メイヤー (Metro-Goldwyn-Mayer) 制作 19401958年制作] での逃げる側と追う側のドラマツルギーは永遠普遍のものであり、それをそのまんまサイド・ストーリーとして呑込んだ『ルパン三世 (Lupin The 3rd)』 [モンキー・パンチ (Monkey Punch) 作 1967年~1969年連載] も活きてくるのだ [あくまでもルパン三世 (Lupin The 3rd) 一味の犯罪をメイン・ストーリーとして観れば、それを追う銭形幸一警部 (Inspector Koichi Zenigata) はもうひとつの物語でしかない]。

さらにいえば、『チキチキマシン猛レース (Wacky Races)』 [ハンナ・バーベラ・プロダクション (Hanna-Barbera) 制作 19681970年制作] は、こうも謂えるのである。
敵役のブラック魔王 (Dick Dastardly) とケンケン (Muttley) が常にコースの先回りをして妨害工作をする馬鹿馬鹿しさに呆れながらも楽しむその一方で、常にぼく達はこの物語の陥る陥穽を笑いながらも指摘していたのである。
先回り出来るのならば、妨害工作なぞの手間暇を惜しんでそのまんまゴールへ一直線でいいのだ、と。
だから、その続編である『スカイキッドブラック魔王 (Dastardly and Muttley in Their Flying Machines)』 [ハンナ・バーベラ・プロダクション (Hanna-Barbera) 制作 1969年制作] では、逃げる一方の伝書鳩ポッピー (Yankee Doodle Pigeon) に、追いかける側のブラック魔王 (Dick Dastardly) とケンケン (Muttley) とその他二人が翻弄されてしまうのである。
物語のテーゼとしては、こちらの方が正論なのだ。

だから、なぜ逃げないのだ、と問うてみる。

ノストラダムス (Nostradamus) が『諸世紀ことミシェル・ノストラダムス師の予言集 (Les Propheties de M. Michel Nostradamus)』に書いている。
「逃げろ逃げろ すべてのジュネーブから逃げ出せ (Migrez, migres de Geneve trestous, / Saturne D'or en fer se changers, / Le contre Raypoz exterminera tous, / Avant L'advent le Ciel signes fera.)」 [第9章第44編 (Centurie 9 quatrain 44)] と。

次回は「」。

附記:
現実的には、そこから逃げ出せというのが正しい便法なのだけれども、物語では、危険地帯であるそこへ逃げ込んで、そこでの悲劇的な終焉を予感させる物語がある。
例えば、映画 『赤ちゃんよ永遠に (Zero Population Growth)』 [マイケル・キャンパス (Michael Campus) 監督作品 1971年制作] だ。
しかし、その一方で、『猿の惑星』シリーズ (Planet Of The Apes, A Media Franchise) では禁じられた場へ逃げ込んで終わった筈の物語 [第一作 『猿の惑星 (Planet Of The Apes)』 [フランクリン・J・シャフナー (Franklin J. Schaffner) 1968年制作] ] が、その続編である 『続・猿の惑星 (Beneath The Planet Of The Apes)』 [テッド・ポスト (Ted Post) 監督作品 1970年制作] では、その逃げ込んだ放射能汚染地帯を舞台にして、物語が繰り広げられるのである。

images
早乙女門土 (Mondo Saotome) と身堂竜馬 (Tatsuma Midoh) も同じ。脱獄犯である彼らが、関東地獄地震で破壊され、見捨てられ、無法地帯となった関東に逃げ込むところから、『バイオレンスジャック 黄金都市編 (Violence Jack Mondo Saotome)』 [永井豪 (Go Nagai) 作 1973年~1974年連載] の物語は始るのである。
[掲載画像は、遺棄された関東へ逃亡したばかりの二人。奥が早乙女門土 (Mondo Saotome)、手前が身堂竜馬 (Tatsuma Midoh)]
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