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2011.07.17.19.24

"BIRD & DIZ" by CHARLIE PARKER / DIZZY GILLESPIE

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例えば映画『勝手にしやがれ (A bout de souffle)』 [ジャン=リュック・ゴダール (Jean-Luc Godard) 監督作品 1959年制作] のこんなシーン。
つまらない事から殺人を犯してしまった主人公ミシェル・ポワカール / ラズロ・コバクス (Michel Poiccard / Laszlo Kovacs) [演:ジャン=ポール・ベルモンド (Jean-Paul Belmondo)] がパリの街を奔走している最中に、あるパレードに遭遇してしまい、思いどおりの行動がとれずに、街中をじりじりと蠢き回る。
この処女作品の、と同時にジャン=リュック・ゴダール (Jean-Luc Godard) の代表的な演出技法である即興を語る有名なシーンだけれども、この時に流れるべき音楽は、この作品で演奏された楽曲ではなかったろうか。

勿論、現実にある映画に、この作品の音楽が起用されている訳ではなくて、これは単なる思い違いに等しい程の、ぼくの妄想である。

その事実はきちんと受け止める事は当然に出来る事なのだけれども、それにも関わらずに、ぼくにとっては、それ程に、この作品はある種の映像を喚起させる楽曲群なのである。

それは、単純に二三分の短いテーマの楽曲の、異なるテイクが何度も何度も繰り返し顕われるという、作品の構成によるのかもしれない。つまり、短いパッセージが様々なアレンジとヴァリエーションとなって登場するサウンドトラック作品の体裁に似ているから、という理由からかもしれない [そんな構成になったのは音楽を伝播させるメディアの変遷によって収録時間が増えた結果と、それに付随しての未発表音源の発掘によるもので、制作時にはそんな構成など微塵も考慮されていないのだけれども]。

でも、それ以上に、本作品の一方の主人公であるチャーリー・パーカー (Charlie Parker) という人物のあり方にもよるのかもしれないのだ。

例えば、街中の書店の一角にある「芸術」だとか「音楽」だとか表示されている一角に並んでいる単行本を眺めていると、彼の名前が躍っている書物の多さに驚かされる時がある。しかも、これが彼ではなくてビリー・ホリデイ (Billie Holiday) やチャールズ・ミンガス (Charles Mingus) ならば、自伝であるのは解るのだけれども、チャーリー・パーカー (Charlie Parker) の場合は、自伝でも評伝でもサックス・プレイの指南書でもなくて、彼の名前が躍る本の中に、彼自身は居ない様な気がするのだ。チャーリー・パーカー (Charlie Parker) や彼の音楽を語る事によって、著者が伝えたい語りたい事物を代弁させている様な気がしてならないのだ。

つまり、ジャック・ケルアック (Jack Kerouac) の『路上 (On The Road)』 [1957年発表] にバップ / ビバップ (Bop / Bebop) の演奏シーンが忽然と登場する様なものなのである。
小説と言う虚構としての体裁をとりながらも、この『路上 (On The Road)』 [1957年発表] は、ジャック・ケルアック (Jack Kerouac) の米大陸放浪のドキュメンタリーである。もしここに登場するミュージシャンが彼ではない他の人物の実名だったり、全然別のジャンルの音楽の演奏シーンだったら、どうなのだろう。
ジャック・ケルアック (Jack Kerouac) のこの作品全編を覆うモノ、気分と言うかモードと言うか、それはかなり異なるものになると思えるのだが。

それだけ、チャーリー・パーカー (Charlie Parker) という存在は、音楽であるよりも前に、非常に文学的な、しかも散文的な存在なのである。そして、その理由は、彼の音楽そのものではなくて、破天荒な彼の人生そのものにある事に他ならない。
そういう意味では、自他ともに認めるジャズ・ファンであるクリント・イーストウッド (Clint Eastwood) が監督業に専念した最初の作品を映画『バード (Bird)』 [クリント・イーストウッド (Clint Eastwood) 監督作品 1988年制作] にしたのも頷けるものがある [彼はまたリアル・チャーリー・パーカー (Charlie Parker) を体験した事もあると言う]。と同時に、彼のジャズの映画的演出に異議を唱える為に、フィクショナブルなジャズ・ミュージシャンを主人公とした映画『モ'・ベター・ブルース (Mo' Better Blues)』 [スパイク・リー (Spike Lee) 監督作品 1990年制作] も存在し得る訳だ。
前者は、チャーリー・パーカー (Charlie Parker) の実際の演奏やソロ・パートだけを抽出して、バックの演奏を現在のミュージシャンのものに差し替える手法でも話題となったが、それさえも議論の的になったのだ [スパイク・リー (Spike Lee) は、ブランフォード・マルサリス (Branford Marsalis) を音楽監督として起用し新録の演奏を使用している] 。

さて、ところで、本作品『バード・アンド・ディズ (Bird & Diz)』 [1950年発表] は、映画『バード (Bird)』 [クリント・イーストウッド (Clint Eastwood) 監督作品 1988年制作] で試みられた手法と、真逆のものが採用されているのである。

事の発端は1942年から1944年にかけて行われたレコーディング・ストライキ (1942 - 44 Musicians' Strike) である。そして、その間に、ジャズ・シーンの寵児として話題を席巻していたのが、チャーリー・パーカー (Charlie Parker) とディジー・ガレスピー (Dizzy Gillespie) によるコンボなのである。
バップ / ビバップ (Bop / Bebop) という新しい音楽手法を呈示すると同時に、彼らのファッションは新しいモードとして音楽の世界を離れて話題になる。
にも関わらずに、彼らの全盛期を捉えた作品は数少なく、レコーディング・ストライキ (1942 - 44 Musicians' Strike) が解消された時には、ふたりのコンビは発展的に解消されていて、各々が新しい領域へと突入した時季だったのである。

そこで、プロデューサーであるノーマン・グランツ (Norman Granz) はふたりの再会セッションを企画、そして実現させたのが本作品なのである。
さて、問題は彼らの演奏を支えるリズム・セクションなのである。もしも、クリント・イーストウッド (Clint Eastwood) がノーマン・グランツ (Norman Granz) の立場にあり、映画『バード (Bird)』 [クリント・イーストウッド (Clint Eastwood) 監督作品 1988年制作] の制作時と同じ発想をもって制作を行ったとしたら、チャーリー・パーカー (Charlie Parker) やディジー・ガレスピー (Dizzy Gillespie) よりも遥かに若い、新進気鋭のミュージシャンを彼らのサイド・メンに起用したのではないだろうか [当時の彼はまだ俳優業にも関わっていない一介の学生だった様だが]。
しかし、ノーマン・グランツ (Norman Granz) は、クリント・イーストウッド (Clint Eastwood) ではなかった。

先ず、ピアニストには、バップ / ビバップ (Bop / Bebop) の生成と醸造と熟成の場であったミントンズ・プレイハウス (Minton's Playhouse) でハウス・ミュージシャンであったセロニアス・モンク (Thelonious Monk) を起用する。つまり、チャーリー・パーカー (Charlie Parker) やディジー・ガレスピー (Dizzy Gillespie) と対等な立場で、新しい音楽のムーヴメントを牽引して来た人物を充てるのである。
と、なると、その発想の先では、バップ / ビバップ (Bop / Bebop) のリズムを共に産み出して来たケニー・クラーク (Kenny Clarke) かマックス・ローチ (Max Roach) が適任の筈なのである。
しかし、実際は違ったのだ。バップ / ビバップ (Bop / Bebop) よりも以前のイディオムをもったドラマー、敢て言えば、旧世代に属するバディ・リッチ (Buddy Rich) が起用されたのだ。

バディ・リッチ (Buddy Rich) の起用には、賛否両論がある様だ。せっかくの再会セッションなのだから、ケニー・クラーク (Kenny Clarke) かマックス・ローチ (Max Roach) の何れかを起用すべきだったという説と、そうではなくて前世代のバディ・リッチ (Buddy Rich) の従来的なドラミングが逆に、バップ / ビバップ (Bop / Bebop) の斬新さを際立たせているという説だ。
ちなみに、セロニアス・モンク (Thelonious Monk) はここではサイド・マンに徹しきっている。後に、ワン・アンド・オンリーな独自の世界を築き上げるセロニアス・モンク (Thelonious Monk) だけれども、作品の企画に素直に従っているのである。例の「喧嘩セッション (The 1954 Session)」の逸話を引き出すまでもなく、作品コンセプトを理解していればそれにきちんと従うのが、彼なのである。

どちらの説が正しいのか、ぼくには判断は出来ない。
ただ、この作品が制作された3年後の1953年には、最期のバップ / ビバップ (Bop / Bebop)・コンサートと言われるマッセイホール・コンサート (Jazz At Massey Hall) が開催される [こちらを参照願います] 。既にバップ / ビバップ (Bop / Bebop) は流行遅れとなりつつあったのかもしれない。
チャーリー・パーカー (Charlie Parker) のサイドメンであったマイルス・デイヴィス (Miles Davis) は『クールの誕生 (Birth Of The Cool)』 [1949年録音] を既に制作しており、マックス・ローチ (Max Roach) がバップ / ビバップ (Bop / Bebop) をさらに発展させる形でクリフォード・ブラウン (Clifford Brown) との双頭ユニットを率いて登場するのは1954年だ。

にも関わらずに、本作品は、バップ / ビバップ (Bop / Bebop) の時代を描いた名盤としての名声を欲しいままにしている。
個人的にも、音楽スタイル云々やその歴史云々を意識しなければ、単純に愉しめる作品だと思うのだ。

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最期に、ジャケットの話を少々。
現行の再発CDは、この作品に関わる総てのセッション・テイクを網羅して、オリジナル・ジャケットを起用したもので流通している。上記掲載画像の左側がそのオリジナル・ジャケットだ。作品発表年である1950年当時の美意識に従ったとしても、オールド・ファッションな印象が否めないイラストだ。それを意識したかどうか、主役のふたりのツー・ショットを全面に押し出したものに差し替えられる。ぼくが持っているCDもそのフォーマットに準じている。
1951年にバードランド (Birdland) で行われたコンサートの際の撮影らしいのだが、オリジナルの写真 (Tommy Potter,Charlie Parker, Dizzy Gillespie and John Coltrane at Birdland, 1951-1a) 右端に、神妙な面持ちで佇んでいるのが、ジョン・コルトレーン (John Coltrane) なのである。当時の彼はディジー・ガレスピー (Dizzy Gillespie) のバンドの一員であり、彼がマイルス・デイヴィス (Miles Davis)・クインテットに起用されるのが1955年。
時代は、確実に変わりつつあったのである。

ものづくし(click in the world!)106. :
"BIRD & DIZ" by CHARLIE PARKER / DIZZY GILLESPIE


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"BIRD & DIZ" by CHARLIE PARKER / DIZZY GILLESPIE

SUPERVISED BY NORMAN GRANZ

personnel : Charlie Parker, alto sax ; Dizzy Gillespie, Trumpet ;
Thelonious Monk, piano ; Curly Russell, bass ; Buddy Rich, drums

1. BLOOMDIDO Master Take 3:24
 (Charlie Parker)
2. AN OSCAR FOR TREADWELL Alternate Take 3:20
 (Charlie Parker)
3. AN OSCAR FOR TREADWELL Master Take 3:22
 (Charlie Parker)
4. MOHAWK Alternate Take 3:48
 (Charlie Parker)
5. MOHAWK Master Take 3:34
 (Charlie Parker)
6. MY MELANCHOLY BABY* Alternate Take 3:16
 (Ernie Burnett - George Norton) (previously unreleased)
7. MY MELANCHOLY BABY Master Take 3:23
 (Ernie Burnett - George Norton)
8. LEAP FROG* Alternate Take 2:33
 (Charlie Parker) (previously unreleased)
9. LEAP FROG Alternate Take 2:00
 (Charlie Parker)
10. LEAP FROG* Alternate Take 2:05
 (Charlie Parker) (previously unreleased)
11. LEAP FROG Master Take 2:28
 (Charlie Parker) (previously unreleased)
12. RELAXIN' WITH LEE Alternate take 3:53
 (Charlie Parker)
13. RELAXIN' WITH LEE Alternate take 2:44
 (Charlie Parker)

* additional track on compact disc only

Recorded June 6,1950 in New York
Original sessions produced by Norman Granz.
Prepared for compact disc by Richard Seidel and Donald Elfman
Previously unreleased material researched by Phil Schaap and Bob Porter.
Digitally remastered directly from the original mono master tapes by Dennis Drake, PolyGram Studios, U.S.A.
Designed for compact disc by Tom and Ellie Hughes, Hughes Group
All selections previously released except where noted.

Publishing Info :
BMI / JATAP Pub. Co., Inc. except track 6 - ASCAP / Shapiro Bernstein & Co., Inc. and Jerry Vogel Music Co., Inc.

linner notes by Phil Schaap

(P) 1950 Verve Records Inc., USA
(C) 1986 Polygram Records Inc., USA
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