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2011.02.20.18.42

『カッワリーの王者 (Shahen - Shah)』 by ヌスラット・ファテ・アリー・ハーン - カッワール・アンド・パーティ(NUSRAT FATEH ALI KHAN - QAWWAL PARTY)

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ゆったりと響き始める男声コーラス。それを導く様に、もしくはそれに導かれる様に、ハルモニウム (harmonium) の旋律とタブラ (Tabala) によるゆるやかなビートが谺する。これらの音々が創り出す、穏やかなグルーヴに浸っていると、そのしじまのうねりからすこしづつはずれだした、豊かな男声が響き始める。その男声は、次第次第に高みを目指し、遥か彼方の天上を目指しているかの様に、高く高く飛翔する。

その声の主が、ヌスラット・ファテ・アリー・ハーン (Nusrat Fateh Ali Khan) である。

冒頭の文章を読み直してみると、曰く近寄り難い印象を得るかもしれない。
実際に、ここで聴かれるカッワーリー (Qawwali) という音楽は、パキスタン (Pakistan)の宗教音楽でもあるので、そこで唄われる内容は、無宗教であるぼく達にとっては、受け入れ難いものもあるのかもしれない。
しかし一旦、その音楽を形成しているシステムとか枠組とか歴史とかを無視してみれば、こんなに気持ちのよいグルーヴはないのである。

朴訥とも言える、主旋律に身を委ねていると、すこしづつすこしづつ、身体がそのビートに浸されていくのが解る。
このビートをそのままループさせて、永遠回帰の無限の回廊を経巡るのもいいだろう。
しかし、その無限回廊を彷徨ううちに、いつのまにか不思議な昂揚感が沸き出すのも事実なのだ。
その昂揚感を更に激しく強く大きく促すのが、ヌスラット・ファテ・アリー・ハーン (Nusrat Fateh Ali Khan) の大音声なのである。

ぼくが、このアーティストの存在を知ったのは1988年、本作品が発表された時である。
ピーター・ガブリエル (Peter Gabriel) が、リアル・ワールド・レコーズ (Real World Records Ltd.) を立ち上げ、最初に国内発売された作品群の中の一枚として、だ。
だが、彼の音楽に触れる機会はなかなかに顕われなかった。
実際に本作品を入手したのは、1997年の彼の死を迎えて、追悼盤として再発された時の事だ。

先を急ぎすぎている。時系を元に戻そう。

彼の音楽に接する機会がないのにも関わらず、音楽誌『ミュージック・マガジン』で、彼や彼のカッワーリー (Qawwali) が紹介される度に、気になる存在ではあった。
しかし、それはそこで書かれていた記事を読んだからではない。その記事中に何度か登場する彼と彼の率いる集団の演奏風景が、ぼくに強く印象づられたからだ。

十数名の男性が胡座をかいて座っている。その中央に一際、巨大な体躯をした男性が中央に座っている。その巨体がヌスラット・ファテ・アリー・ハーン (Nusrat Fateh Ali Khan) だ。
いくつも掲載される写真 [例えばこことかこことかここを参照] では、胡座座りのヌスラット・ファテ・アリー・ハーン (Nusrat Fateh Ali Khan) が、様々な表情をみせていた。大きな上半身から突き上げる様に虚空を目指す二腕もあれば、絶叫を想わせる口許の筋肉の躍動もあった。その逆に、秘め事めいた囁き声を予想させる、繊細な手指の表情と、穏やかな頬の動きもあった。

一体、これはなんなのか。

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動かざる下半身と、動きえる上半身の落差は、一体、なんなのか。
黙して語らぬ下半身と、饒舌極まりない上半身の違いは、一体、なんなのか。

それが、ぼくの彼への興味であり、彼の音楽への興味だった。

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彼の声を実際に聴いたのは、映画『最後の誘惑 (The Last Temptation Of Christ)』 [マーティン・スコセッシ (Martin Scorsese) 監督作品 1988年制作] でのサウンド・トラック盤『最後の誘惑 (Passion: Music For The Last Temptation Of Christ)』であった。
この映画の音楽を担当したのは、ピーター・ガブリエル (Peter Gabriel) である。
実は、映画自体は未だに未見で、ぼくはこのサウンド・トラック盤『最後の誘惑 (Passion: Music For The Last Temptation Of Christ)』を、純粋にピーター・ガブリエル (Peter Gabriel) の新作という興味だけで入手した。それは、彼が非常に寡作であるという点でもあり、彼がこの映画の前に手掛けた映画『バーディ (Birdy)』 [アラン・パーカー (Alan Parker) 監督作品 1984年制作] のサウンド・トラック盤『バーディ (Birdy)』が、映画を離れた音楽作品として成立していたという点だ。
このサウンド・トラック盤『最後の誘惑 (Passion: Music For The Last Temptation Of Christ)』を聴きながら、未だ観ぬ映像をイメージしてみると、物語の舞台であるイスラエル (Israel) の地のランドスケープを想わせもするし、主人公であるイエス・キリスト (Jesus Christ) [演:ウィレム・デフォー (Willem Dafoe)] の受難をも想わせる。
そんなシークエンスの中に、ある声が響いて来る。崇高さと峻厳さを想わせる一方で、何故かやさしさとあたたかさが同居している、そんな豊かな声だ。

その声の主こそが、ヌスラット・ファテ・アリー・ハーン (Nusrat Fateh Ali Khan) なのだろう。
と、当時のぼくは理解したのだ。

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そうして、その映画作品への起用と連動されるかの様に、リアル・ワールド・レコーズ (Real World Records Ltd.) から二枚のアルバム『神秘詩集 vol. 1 (Devotional Songs)』『神秘詩集 vol. 2 (Love Songs)』が登場した。
この二作品がぼくにとって、実際的なヌスラット・ファテ・アリー・ハーン (Nusrat Fateh Ali Khan) 初体験なのである。
勿論、あのサウンド・トラック盤の豊かな声の持ち主は、このふたつの作品の主人公だった。

二枚の作品自体は、1985年に発表されたもので、彼の初の海外レコーディング作品だと言う。
この年、彼はピーター・ガブリエル (Peter Gabriel) 主催のウォーマッド・フェスティヴァル (WOMAD; World Of Music, Arts And Dance) への出演を果たしている。フェスティヴァルへの出演を終えた彼が、その帰途の直前にレコーディングされた作品なのだ。
そのせいかどうか解らないのだけれども、彼の所属する音楽ジャンルであるカッワーリー (Qawwali) では、普段使用されない楽器群 [ギター (Guitar), マンドリン(Mandolino)] が起用されている。
収録された楽曲群も、カッワーリー (Qawwali) では代表的な知名度の高いものだそうで、ヌスラット・ファテ・アリー・ハーン (Nusrat Fateh Ali Khan) の音楽の入門編としても、彼のベスト・アルバムとしても聴く事が出来る様だ。

この二作品を何度も何度も聴き倒していた。その間には、彼の来日公演もあれば、ウォーマッド・フェスティヴァル (WOMAD; World Of Music, Arts And Dance) への出演もあった。
彼の作品も何枚も発売されただろう。

そうして、突然に入って来たのが、彼の訃報なのであった。
そして、その訃報が故に、永らく廃盤状態であった本作品が再発され、それをぼくが購入したという訳なのである。

ものづくし(click in the world!)101. :
『カッワリーの王者 (Shahen - Shah)』
by ヌスラット・ファテ・アリー・ハーン - カッワール・アンド・パーティ(NUSRAT FATEH ALI KHAN - QAWWAL PARTY)


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カッワリーの王者 (Shaneh Shah)』 by ヌスラット・ファテ・アリー・ハーン - カッワール・アンド・パーティ (NUSRAT FATEH ALI KHAN - QAWWAL PARTY)

1. あなたは昼間の太陽、夜の満月 ... 11' 04"
  Shamas - Ud - Doha, Badar - Ud - Doja
2. アッラーとムハンマドと4人の聖者 ... 11' 29"
  Allah, Mohammed, Char, Yaar
3. あなたの黒髪に騙されて ... 11' 45"
  Kali Kali Zulfon Ke Phande Nah Dalo
4. わが瞳から涙がとめどもなく ... 10' 53"
  Meri Ankhon Ko Bakhshe Hain Aansoo
5. 恋人よ、この愛を受けとめて ... 11' 52"
  Nit Khair Mansan Sohnia Main Teri
6. 真実はそっと隠しておいて ... 13' 59"
  Kehna Ghalat Ghalat To Chhupana Sahi Sahi

[メンバー]
ヌスラット・ファテ・アリー・ハーン [主唱者]
Nusrat Fateh Ali Khan Main Vocal
ムジャーヒド・ムバーラク・アリー・ハーン [副唱者]
Mujahid Mubarik Ali Khan senior singer
ファッルフ・ファテ・アリー・ハーン [副唱者、ハルモニウム]
Farrukh Fateh Ali Khan singer and harmonium
イクバール・ナキービー [コーラス]
Iqbal Naqbi Chorus and manager of the group
アサド・アリー・ハーン [コーラス]
Asad Ali Khan Chorus
ディルダール・フサイン [タブラ]
Dildar Hussain Tabala
コーカブ・アリー [コーラス]
Kaukab Ali Pupil singer
アター・ファリード [コーラス]
Atta Fareed Chorus
グラーム・ファリード [コーラス]
Ghulam Fareed Chorus
ムハンマド・ミスキーン [コーラス]
Mohammad Maskeen Chorus

Recorded and mixed Real World Studio, Box, Wiltshire, U.K. march 1988.
Recording Engineer David Bottrill
Mixing Engineer Richard Evans
Musical Director Farrukh Fateh Ali Khan
Design Mouat @ Assorted images
Cover Photograph Dave Peabody
(Front Cover) Nusrat during his performance at the 1988 WOMAD Festival
(Back Cover) Dasht - i - kavir, the windblown desert floor of salt flats and salt lake, in Iran. Taken from the space shuttle Columbia in April 1981. Courtesy of NASA (National Aeronautics and Space Administration). With thanks to Russell L. Schweickart and the Association of Space Explorers, 35 White Street, San Francisco, California 94109, USA, and The Home Planet.
With thanks to Mr. Mohammed Ayuub of Oriental Star Agencies

ALL TRACKS ARE TRADITIONAL, ARRANGED BY NUSRAT FATEH ALI KHAN AND PARTY

ALL TRACKS PUBLISHED BY WOMAD MUSIC LTD..
(P) 1989 Real World Records Ltd.
(C) Real World Records Ltd. / Virgin Records Ltd.


ピーター・ガブリエル (Peter Gabriel) による、リアル・ワールド・レコーズ (Real World Records Ltd.) 開設の辞が、日本語を含む四各国語で掲載されている。

ぼくが所有している日本盤CDはヌスラット・ファテ・アリー・ハーン (Nusrat Fateh Ali Khan) の追悼盤として再発されたもので、彼の略歴と共に、麻田豊の『ヌスラットよ、さようなら』と題された追悼記事が掲載されている。
また、同作を含む日本盤リアル・ワールド・レコーズ (Real World Records Ltd.) の監修は、中村とうようが行っており、監修の辞がCD帯裏面に掲載されている。
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