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2011.01.16.18.25

"Automatic" by THE JESUS AND MARY CHAIN

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リュミエール兄弟 (Auguste et Louis Lumiere) の逸話から書き始める映画史はあって当然なのだけれども、それと同様に、ブルース・リー (Bruce Lee) から書き始める映画史や、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド (Night Of The Living Dead)』 [ジョージ・A・ロメロ (George Andrew Romero) 監督作品 1968年制作] から書き進める映画史も必然の賜物なのだ。
そして、それと同じ理由でジーザス & メリーチェイン (The Jesus and Mary Chain) が巻頭を飾る音楽史があっても、それは然るべきモノなのである。

えらく遠回りな物謂いから書き出してしまったけれども、彼らの存在は決して小さくはない。だが、その一方で、バンドの中心人物であるウィリアム・リード (William Reid) とジム・リード (Jim Reid) のリード兄弟 (Reid Brothers) の立ち居振る舞いが、向こう正面を狙った大きなものでないのも事実だ [その代わりに、一度、彼らの言動が注目を浴びる際は必要以上に涜神的で冒涜的なものになってしまうのだけれども] 。
だから、ふと、彼らが築きあげた功績が、他の人物達のそれへと、取って代わられてしまう危惧も、常にある。

否、少なくとも、バンドがシーンへと登場した時期は、スリリングでスキャンダラスでアジテーショナヴルな、言説がまかり撮っていた。
当時の音楽誌には、"セックス・ピストルズ以来の衝撃 ("The Best Band Since The Sex Pistols" by NME)"とか"コンサート会場で暴動が発生 (I.C.A, London, 29th December 1984)"という物々しくも仰々しいコピーが乱舞していたのだ。

確かにコンサート会場では暴動は起きていたし、それを煽るメンバーの行動もあった。
そして、彼らの初期の音楽には決して欠かす事の出来ないもの、ギターのフィードバック・サウンド (Audio Feedback) がそれをさらに煽り立てていた。

メンバーの行動もあった、と書いたけれども、それはなにも観衆を挑発したり攻撃したりするアグレッシヴなものではないと聴いている。
短い演奏時間、轟音だけが渦巻くそのサウンド、むしろ、彼らは観衆を無視し拒絶しただけなのである。

"セックス・ピストルズ以来の衝撃 ("The Best Band Since The Sex Pistols" by NME)"と先に紹介したけれども、彼らの言動が音楽シーンのフィールドを越えて、物議をかもす事はなかった。セックス・ピストルズ (Sex Pistols) が生放送のTV番組内で四文字言葉を発してしまう (Bill Grundy Interview 1.12.76)、そんな"事件"はかろじて忌避される。
例えば、1985年発表の彼らのサード・シングル『ユー・トリップ・ミー・アップ (You Trip Me Up)』のB面収録予定曲はタイトルが何度も変更された挙げ句、最終的にはその曲『 ジーザス・サック (Jesus Suck)』は急遽、差し替えられ収録が見送られる [この楽曲は現在では、『サック (Suck)』として未発表音源集『パワー・オヴ・ネガティヴ・シンキング (Power Of Negative Thinking: B-Sides & Rarities)』に収められている]。
勿論、それ以上に彼ら自身が音楽以外の話題に関しては殊更、寡黙だったからだ。

彼らの作品が発表されて行くに連れて、彼らの音楽の最大の特徴だったフィードバック・サウンド (Audio Feedback) が影を潜めてゆく。それとも、聴衆の耳が彼らの音楽に馴染み、外形を装っていたその音の向こうに潜むモノの正体に気づき始めたのだろうか。
メランコリックで退廃的、と同時に、ある意味で懐かしいとも表現出来る、甘美なメロディが聴こえ始めたのである。
それは、ザ・ビートルズ (The Beatles) 登場期以前に、煩雑に頻繁にラジオから流され続けていたポップ・チューンの様な、甘い音楽なのである。ザ・ビーチ・ボーイズ (The Beach Boys) に代表されるサーフィン / ホット・ロッド・チューン (Surfin' And Hot Rod Music) と指摘するモノもいれば、フィル・スペクター (Phil Spector) のウォール・オブ・ サウンド (Wall Of Sound) との類似性を指摘するモノもいた。
あの、轟音のフィードバック・サウンド (Audio Feedback) こそが、ウィルソン兄弟 (Wilson Brothers) らのコーラス・ワークや、フィル・スペクター (Phil Spector) の分厚い音の壁の代替だったのだ、と。

そして、彼らの歌の主題は、次第に内省的なものになってゆく。
当時既に、メンバーはリード兄弟 (Reid Brothers) ふたりだけとなる。
その一方で一時的なヘルパーとして参加していたボビー・ギレスピー (Bobby Gillespie) は、プライマル・スクリーム (Primal Scream) を率いて時代の寵児と化して行く。
後にシューゲイザー (Shoegazer) と呼称される、フィードバック・サウンド (Audio Feedback) とポップなメロディを同居させたバンド群がシーンに登場し出すのも、間近い時期の話だ。
[プライマル・スクリーム (Primal Screamシューゲイザー (Shoegazer) 達の活躍は、誰かがどこかで書いているだろう。]

あえて記せば、ジーザス & メリーチェイン (The Jesus and Mary Chain) の音楽の源流には、ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド (The Velvet Underground) がある。
全世界を敵に回したかの様な、無防備な攻撃性で満たされている『ホワイト・ライト / ホワイト・ヒート (White Light / White Heat)』と、その反動で虚無とも言える内省的な吐露が聴こえる次作『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド (Velvet Underground)』と。このふたつのアルバムを同時にプレイすれば、ジーザス & メリーチェイン (The Jesus and Mary Chain) に逢えるのかもしれない。
でも、それは1980年代以降に登場したバンド / アーティスト群のどれにも当て嵌まる事で、彼らの音楽性の隔たりは、どちらのアルバムに指針がより大きく触れたのかという違いでしかない。

むしろ、大事なのは、ジーザス & メリーチェイン (The Jesus and Mary Chain) には、それらが完全に同居しているという事である。
呪詛とも言える外界へ向けたフィードバック・サウンド (Audio Feedback) の彼方には、孤独で自閉的な無垢なこころの心情が紡がれているのである。
いたたまれない。
だからこそ、この音楽を奏でられるのは、お互いに向き合わざるを得ないウィリアム・リード (William Reid) とジム・リード (Jim Reid)、ふたりだけに限られるのだ。

本作品は、ふたりきりになってしまった彼らが1989年に発表したサード・アルバム。一曲を除き、完全にふたりだけで演奏している為に、アルバム・タイトルの『オートマティック (Automatic)』そのままに、無機質なプログラミングされたリズム・シークエンスの上に、彼らの世界が繰り広げられる。
逆に言えば、彼らの作品の中では、一般的な音楽ファンの中では、最も聴きやすい作品となっているのかもしれない。

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最期にアート・ワークに関して。
リード兄弟 (Reid Brothers) 自らが提案したコンセプトによるこのジャケットの中に写るふたりは、一体、なにをしているのだろうか。星形にはめ込まれた、ノイズのかかったその写真を観てみると、ウィリアム・リード (William Reid) の右掌とジム・リード (Jim Reid) の左掌が、がっしと握りしめられているのだ。
バンド・メンバーが兄弟ふたりっきりになってしまった所以と、それ故の、ふたりの結束を誓ったものと、安易に読めてしまうが、実はそれだけではない。
インナー・スリーブに掲載された別ショットでは、ジム・リード (Jim Reid) の左掌には、墨黒々と"Jesus"と欠き殴られてあるのだ [上掲写真参照]。だから、おそらく、ウィリアム・リード (William Reid) の右掌には、"Mary"と書かれているのに違いないのだ。
ジーザス & メリーチェイン (The Jesus and Mary Chain) 、すなわち、イエス・キリスト (Jesus Christ) と聖母マリー (The Virgin Mary) の交合 (Chain)。

ものづくし(click in the world!)100. :
"Automatic" by THE JESUS AND MARY CHAIN


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"Automatic" by THE JESUS AND MARY CHAIN

1. HERE COMES ALICE* ... 3.52
2. COAST TO COAST ... 4.13
3. BLUES FROM A GUN* ... 4.44
4. BETWEEN PLANETS ... 3.27
5. UV RAY ... 4.04
6. HER WAY OF PRAYING ... 3.46
7. HEAD ON ... 4.11
8. TAKE IT ... 4.34
9. HALF WAY TO CRAZY ... 3.41
10. GIMME HELL ... 3.18
11. DROP* ... 1.55
12. SUNRAY ... 1.35

Produced, Written and Performed by William Reid and Jim Reid
Engineered by Alan Moulder

Assistants : Jamie Harley & Lee Curle, Recorded at Sam Therapy, Mixed at The Church, Mix Engineered by Alan Moulder, Assistant : Dick Meaney, Richard Thomas played drums on "Gimme Hell", Vocals Jim except * William, Photography : Live shot : Steve Mitchell, Portraits : Andrew Catlin, Cover Concept by Jim and William, Design : Ryan Art, All tracks published by Warner Chappell Music Ltd.

Blanco y Negro
(P) 1989 WEA Records Ltd. (C) 1989 WEA Records Ltd.
A Warner Communications Company
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