fc2ブログ

2007.09.30.11.23

...JLGの軽蔑/軽蔑のBB...


スクリーンの暗黒に照射されるタイポグラフィ、映像とは無関係に続く男女の独白、心地よいテンポで切り替わる、寸断された物語...。ここにあるのは、ジャン=リュック・ゴダールJean-Luc Godard)の常套句とも言える、彼の映像美だけれども、ひとつだけ、我々の快感を裏切るものがある。
それは、切り替わり続ける映像とは全く無縁の世界で鳴り響くストリングス。ジョルジュ・ドルリューGeorges Delerue)作曲の「カミーユのテーマ(Theme de Camille)」。
ブリジット・バルドーBrigitte Bardot)主演のジャン=リュック・ゴダールJean-Luc Godard)監督作品、映画『軽蔑(Le Mepris)』の主題である。

images
個人的には、ジャン=リュック・ゴダールJean-Luc Godard)作品としては、とても違和感を持っている映画です。
と、いうのは、ミック・ジャガー(Mick Jagger)が出ようと、レ・リタ・ミツコLes Rita Mitsouko)が出ようと、サミュエル・フラー(Samuel Fuller)が出ようと、彼らがどんなに足掻いても、『ワン・プラス・ワン / 悪魔を憐れむ歌One plus One)』の中のミック・ジャガー(Mick Jagger)だし、『右側に気をつけろSoigne Ta Droite)』の中のレ・リタ・ミツコLes Rita Mitsouko)だし、『気狂いピエロPierrot Le Fou)』の中のサミュエル・フラー(Samuel Fuller)でしかない。つまりは、JLGことジャン=リュック・ゴダールJean-Luc Godard)という極めて個性の強い映像作家の作品内の、彼らは一映像素材でしかないのだ。彼らがジャン=リュック・ゴダールJean-Luc Godard)の映像美の中で、どんなに素晴らしい音楽を紡ぎ出そうとも、どんなに素晴らしい箴言[『映画とは、戦場のようなものだ(Film is like a battleground... Love, hate, action, violence, death. In one word, emotion!)。』 by サミュエル・フラー(Samuel Fuller)]を寿ごうとも、その真の帰属は、ジャン=リュック・ゴダールJean-Luc Godard)にある。
つまり、JLGの『ワン・プラス・ワン/悪魔を憐れむ歌One plus One)』だし、JLGの『右側に気をつけろSoigne Ta Droite)』だし、JLGの『気狂いピエロPierrot Le Fou)』と言うわけ。例え、ザ・ローリング・ストーンズThe Rolling Stones)の楽曲「悪魔を憐れむ歌(Sympathy For The Devil)」の制作過程が、映画の大半を占めていたとしても、まちがってもザ・ローリング・ストーンズThe Rolling Stones)の『ワン・プラス・ワン/悪魔を憐れむ歌One plus One)』と断言するのは、ストーンズ・マニアでないと不可能でしょう?
ところが、そおゆう強い作家性を揺るがしているのが、『軽蔑(Le Mepris)』でのBBことブリジット・バルドーBrigitte Bardot)。この映画のもう一人の主役と言ってよい映画監督フリッツ・ラング(Fritz Lang)御大が、先に挙げたミック・ジャガー(Mick Jagger)やサミュエル・フラー(Samuel Fuller)同様に、ジャン=リュック・ゴダールJean-Luc Godard)・スタイルの映画的引用にきちんと収まっているのと比較すれば一目瞭然。"JLGの映画"の箍を外して / 外れて、"BBの映画"へと侵犯している様に、僕にはみえて仕方がありません。


まるで絶えず打ち寄せている漣が砂を運び石を呼び込み、次第次第に岩盤をも砕いて遂には海岸線の様相を全く異なったものに変えてしまう様な、映画内で鳴り響いている「カミーユのテーマ(Theme de Camille)」が、ヒントかもしれない。
ジャン=リュック・ゴダールJean-Luc Godard)は、映画音楽を通常の映画音楽として扱うのではなく、むしろ、音響(sound effects)として多用する。音楽制作の現場が舞台のひとつになっている『ワン・プラス・ワン/悪魔を憐れむ歌One plus One)』や『右側に気をつけろSoigne Ta Droite)』の様にあからさまになってはいなくとも、ジャン=リュック・ゴダールJean-Luc Godard)の映画で聴く事ができる音楽は、音楽以前の存在、もしくは音楽の断片、さらに言えば断片の為の音楽である。
それは、彼の映画での物語自身の役割が、物語を物語るのではなくて、いくつものあり得た物語の、その断片を語る事、もしくは、今映されている映像から始る、新しい物語の可能性をみせる事と似ている。
だから例えば、ミュージカル映画よろしく、突然主役のアンナ・カリーナAnna Karina)が唄い踊ってしまう事もあるのだけれども(『気狂いピエロPierrot Le Fou)』での「わたしの生命線(Ma Ligne De Chance)」)、この作品の中で描かれている男女の逃避行が、それは、あたかもミュージカル映画であるかの様な素振りをみせたり、ミュージカル映画に成りえたかもしれない物語である事を示しているのに過ぎないのだ。
しかし、ここで紹介するブリジット・バルドーBrigitte Bardot)とミシェル・ピッコリ(Michel Piccoli)のベッドでの語らいのシーンでの「カミーユのテーマ(Theme de Camille)」の扱われ方を観てみると...、その余りにJLG的な要素の少なさ[と、いうかそもそもBB自身は一切を身に纏っていないのだが)は?


だから、この シャネル(Chanel)・ルージュ アリュール(Chanel Rouge Allure)のCMみたいなオマージュ的な映像作品も出てくる訳です。
しかし、こうやって商業ベースの映像作品に移植されてみると、先のシーンも些か異様なシーンである事が解る。
きっちりと衣服を身に纏った男性と、全裸の女性が同じベッドにいるというのは。
いや、個人的には、二人とも全裸ないし半裸ならば、違和感感じないし、ありふれてると思うんですけれどもね~。片方だけが全裸でその相手が着衣していると、無性に、様々な物語を解読したり紡ぎ出したりしたくなってしまうのですよ。その辺はすこぶるJLG的ですね?


その一方で、ジャン=リュック・ゴダールJean-Luc Godard)へのオマージュと思しき、ネイキッド・シティ(Naked City)による演奏も発表されている[音盤化作品としては『Naked City』に"Contempt"という『軽蔑(Le Mepris)』の英語版タイトルで収録]。ジョン・ゾーン(John Zorn)の事だから、映画音楽作家ジョルジュ・ドルリューGeorges Delerue)へのリスペクトという意味合いの方が強いのかも? 尤も、彼の初期作品にはその名も『Godard』というのもあるのだけれども如何でしょう。
このテの音楽に馴染みがないヒトが聴けば、「カミーユのテーマ(Theme de Camille)」を演奏のモチーフにして、只管、フリーキーなトーンを発しているのにすぎない様に聴こえるかも知れない。しかしながら、『軽蔑(Le Mepris)』という映画を観てみれば、流麗なストリングスの奏でる情感たっぷりなフレーズが鳴り響いている映画の中で行われているのは、二人の男女の激しい諍いだったり、言葉にならない感情の襞と襞の攻めぎあいだったりする。そして、ほんのちょっとした言葉の行き違いや感情のもつれから到達するのが、ブリジット・バルドーBrigitte Bardot)の「軽蔑するわ!!(Le Mepris)」という激烈な言葉と、彼女に突然襲いかかる悲劇的な結末なのである。

他にも、BBがJLGの埒外にいて、『軽蔑(Le Mepris)』という映画を、"JLGの映画"ではなくて"BBの映画"の方に引き込んでいる向きもあちらこちらに散見される。特に、彼女が感情を暴発しているシーンとかに。
但し、だからと言って、BBのフィルモグラフィー(Filmography)の中にこの作品を押し込んでみると、やはり、居心地が悪く、特異な作品にみえてしまうのも事実ではある。

だから、JLGとBBの邂逅がこの作品以外にもあったらどうなんだろうか?とも思う一方で、二人の唯一の接点だからこそあり得た異形の映画なのかもしれない。

フリッツ・ラング(Fritz Lang)に関しては、いつかどこかで語りたいんだけど...、その前にブリジット・バルドーBrigitte Bardot)・サイドからの『軽蔑(Le Mepris)』論が先かなぁ?
関連記事

theme : 気になる映画 - genre : 映画

move the movie | comments : 0 | trackbacks : 0 | pagetop

<<previous entry | <home> | next entry>>

comments for this entry

only can see the webmaster :

tackbacks for this entry

trackback url

https://tai4oyo.blog.fc2.com/tb.php/60-0a89c262

for fc2 blog users

trackback url for fc2 blog users is here