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2011.01.06.00.41

黒澤明『七人の侍』をリメイク出来るのか? 第五回 / Can We Remake "Seven Samurai" directed by Akira Kurosawa? part 5

過去4回 [第一回 (Part One)第二回 (Part Two)第三回 (Part Three)第四回 (Part Four) ] に渡って、勝手気侭に『七人の侍 (Seven Samurai)』 [黒澤明 (Akira Kurosawa) 監督作品 1954年制作] のリメイク案 (Remake) なるものを書き連ねて来た。
僕個人の中でのアイデアは総て書き尽くしたつもりだけれども、そこから零れてしまったこの映画に関する事を、すこし書いてみる。
第四回 (Part Four) で予告した様に、ここから先は、完全な蛇足である。

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ぼくがこの映画を初めて体験したのは、1975年。この映画が全国洋画系のロードーショー館でリヴァイヴァル上映された時期だ。
黒澤明 (Akira Kurosawa) 作品の当時の新作『デルス・ウザーラ (Dersu Uzala)』 [1975年制作] が公開されたばかり。多分それを当て込んでのロードショーだったのだろう。
ぼくが棲んでいた地域では、所謂、洋画一番館と呼ばれる最もキャパシティの大きい映画館で公開された。当時で言えば、『ポセイドン・アドベンチャー (The Poseidon Adventure)』 [ロナルド・ニーム (Ronald Neame) 監督作品 1972年制作] や『タワーリング・インフェルノ (The Towering Inferno)』 [ジョン・ギラーミン (John Guillermin) 監督作品 1974年制作] といった大作映画が封切られる様なところで、後には『JAWS / ジョーズ (Jaws)』 [スティーヴン・スピルバーグ (Steven Spielberg) 監督作品 1975年制作] や『スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望 (Star Wars Episode IV: A New Hope)』 [ジョージ・ルーカス (George Lucas) 監督作品 1977年制作] が公開される様なところである。幼い頃から家族揃って観に行く馴染みの映画館だった。『七人の侍 (Seven Samurai)』 [黒澤明 (Akira Kurosawa) 監督作品 1954年制作] を観たのは多分、親離れして独りで映画館通いをし始めた頃だ [『デルス・ウザーラ (Dersu Uzala)』 [1975年制作] のポスターの隣にあるのが、当時リヴァイバル上映された際の『七人の侍 (Seven Samurai)』 [黒澤明 (Akira Kurosawa) 監督作品 1954年制作] のポスターだ]。

映画館に通い始めると、誰でもそうだったと思うのだけれども、そこで上映される作品は、ある意味、ブランド化された様な感じがする。この映画館で上映される作品ならば、愉しめるだろう、という様な。なにせ、ぼくの地域で最も大きかった映画館だし、実際にスクリーンは大きかった。70mm映画 (70 mm Film) や話題作や一級の娯楽作品は、総てそこで上映されていた。
その上に、映画館では本編上映前に、次回、次々回の上映作品の予告編が上映されていたから、尚更だ。

だから、ぼくは殆どの予備知識を持たずに観に行ったと思う。それとも、約20年前の前回のロードショー公開を身を持って体験した父親の付け焼き刃でもあったのだろうか、それはよく憶えていない。

ちなみに黒澤明 (Akira Kurosawa) としての当時の最新作『デルス・ウザーラ (Dersu Uzala)』 [1975年制作] は、別のもっとちいさな映画館で上映されていたと記憶している。仏映画や伊映画の、恋愛映画や文芸映画が普段は上映されている様なところだった。

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映画が始って、野武士の襲撃の報を受けた農民達が一堂に会しているシーンになって、思ったのは、旧い映画だなと言う事だった。
と、いうのも、映画の舞台となる村の現状を、農民ひとりひとりの台詞を廻して説明しているからだった。そして、己の主張を受け入れられない利吉 (Rikichi) [演:土屋嘉男 (Yoshio Tsuchiya)] が独り、群から離れ、皆に背を向けた格好でしゃがみ込む。それを見かねた茂助 (Mosuke) [演:小杉義男 (Yoshio Kosugi)] が相互いに対立する双方を調整し始めた辺りで、ますます、その認識が深まった。
これは、演劇ぢゃあないか。舞台をそのまま撮影した様なものだな。
そんな風に思いながら、映像に観入っていた記憶がある。

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但し、これは最初のこのシーンだけで、その次に登場する村の長老、儀作 (Gisaku, The Old Man) [演:高堂国典 (Kokuten Kodo)] の「やるべし」の発言から、どんどんと"映画"になっていく訳だけれども。

今でもこの映画の、この冒頭の車座のシーンを観る度に、そう思う。
物語の冒頭に、映画以前の表現形態をあえて起用して、それ以降、映画ならではの物語の飛躍と断絶を駆使してゆく。そして、最期には、当時の最新の撮影方法であるマルチカム撮影方式 (Multicam Shooting) を起用した合戦シーンへと至る。
黒澤明 (Akira Kurosawa) がどこまで意図して演出していたのかは解らないけれども、この映画を観る事は、映画と言うメディアの成熟過程をそのまま体験出来る、そんな気がしてならない。

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そして、最期の合戦シーンで、凄まじいデジャヴ (deja-vu) に襲われた事も指摘しておこう。
侍 (Samurai) 達と農民達は、自身の村のいくつかの入口を武装し、要塞化させる。そして、迫り来る敵の数騎だけを村の中に呼び込み、逆に彼らを逃げ場なしの袋の鼠と化すのだ。
この戦闘方法にとてもよく似た戦いを、実は、この映画体験の前に、ぼくは観ていたのだ。
それは、永井豪 (Go Nagai) の『バイオレンスジャック (Violence Jack)』 [週刊少年マガジン 19731974年連載] だった。この長い物語の冒頭を飾る『関東スラム街編 (Kanto Slum-gai Hen)』で、物語の準主役とも言える逞馬竜 (Ryu Takuma) と300人の震災孤児が、スラムキング (Slum King) 配下の外道会 (Gedokai) と一戦を交える為に引き蘢ったのが、天然の要害、震災砦だった。そこでの戦闘方法が、よく似ていたのだ。
ぼくは、孤児300人と外道会の壮絶な戦いを、週刊少年マガジンの連載時に体験し、その後に『七人の侍 (Seven Samurai)』 [黒澤明 (Akira Kurosawa) 監督作品 1954年制作] を観たのだ。

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最期にもうひとつ。
三船敏郎 (Toshiro Mifune) だ。
ぼく達の世代の最初の三船敏郎 (Toshiro Mifune) 体験は、「男は黙ってサッポロビール」であった。
映画作品の中での最初の体験は『レッド・サン (Red Sun / Soleil Rouge)』 [テレンス・ヤング (Terence Young) 監督作品 1971年制作] だった [この映画も先の一番館で家族一同で観たと思う] し、間にこの『七人の侍 (Seven Samurai)』 [黒澤明 (Akira Kurosawa) 監督作品 1954年制作] を挟んだその次の作品は『ミッドウェイ (Midway)』 [ジャック・スマイト (Jack Smight) 監督作品 1976年制作] だった [この映画も同様だ]。
それらの作品で観られる三船敏郎 (Toshiro Mifune) は、貫禄充分で寡黙で威風堂々としたものであって、世界の檜舞台で世界的なスターと渡りあう俳優、文字通りの"世界の三船"だった。
ところが、この『七人の侍 (Seven Samurai)』 [黒澤明 (Akira Kurosawa) 監督作品 1954年制作] で観る事の出来る菊千代 (Kikuchiyo) は、そんな三船敏郎 (Toshiro Mifune) のパブリック・イメージとは真逆のものだった。

例えば、七郎次 (Shichiroji) [演:加東大介 (Daisuke Kato)] を先頭に農民達が隊列を作って走るシーンがある。この際のそれぞれの身体の動かし方はどうみても軍隊でのそれである。時代考証的にどうこう以前に、当時の成年男子にそれはしみついてどうしようもないものだ。
にも関わらずに、菊千代 (Kikuchiyo) [演:三船敏郎 (Toshiro Mifune)] の動きの、ある意味で無駄だらけで無造作極まりない肢体の動きは、凄まじいのだ。機敏であると同時に無駄だらけだ。ナニをしたいのか、ナニをすべきなのか、そんな事を考える暇も惜しいぐらいに、勝手気侭,傍若無人に肉体が蠢いている。
あらためて三船敏郎 (Toshiro Mifune) という俳優の身体能力の高さに驚かされてしまった。

そこには"世界の三船"なるものは存在せず、ひたすらに童子の様な鬼神の様な、菊千代 (Kikuchiyo) という"生き物"がいたのである。
つまり、ぼくの知らない三船敏郎 (Toshiro Mifune) がそこにいたのだ。

だから、同世代でこの映画を未体験の友人知人には、この映画をこう言って、紹介している。
「あなたの知らない三船敏郎 (Toshiro Mifune) に逢える」と。
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