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2011.01.05.00.40

黒澤明『七人の侍』をリメイク出来るのか? 第四回 / Can We Remake "Seven Samurai" directed by Akira Kurosawa? part 4

さて都合三回 [第一回 (Part One)第二回 (Part Two)第三回 (Part Three)] に渡って、この大作と戯れて来た訳だけれども、そろそろぼくなりの試案を具体的に提出しなければならない。

ところで、この大作が決して順風満帆の歩みを経て完成した訳ではなくて、物語と同様に、波瀾万丈の制作過程を辿って来たという事を、ご存知だろうか。
当初は、武士の日常を描こうとして資料をあたっていたが、満足させるものが得られなかった事、そしてその代わりに農民が武士を雇って自警したという逸話にあたった...、という制作の動機の処から、この作品は、大きな壁にぶちあたりながら、歩み始めているのである。

三人の脚本担当者 [橋本忍 (Shinobu Hashimoto)、小国英雄 (Hideo Oguni) そして黒澤明 (Akira Kurosawa)] が鳩首凝議をしながら、執筆にあたるが、その都度、壁にぶちあたる。

例えば、有名なエピソードとして、菊千代 (Kikuchiyo) [演:三船敏郎 (Toshiro Mifune)] というキャラクターが誕生しなければならなかった経緯がある。

首尾よく侍達 (Samurai)をスカウト出来た農民代表が、その侍達 (Samurai) を村に連れ帰る。さぁ、これが我々の窮地を救ってくれるお侍様方だっと、皆に紹介しようという段になって、ちょっと待て、そんなに上手く村の農民達が諸手を挙げて、彼らを迎え入れるのだろうか、という疑義が執筆者達に沸き上がる。
彼らから観れば、侍 (Samurai) とは村を亡き者にする野武士とは同じ穴の狢、彼らを恐れて各々の家々に、隠れ潜んで出てくる訳がない。

さぁ、どうしたものか...。

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この問題を打開する為に、それまでは久蔵 (Kyuzo) [演:宮口精二 (Seiji Miyaguchi)] の役が宛てがわれていた、三船敏郎 (Toshiro Mifune) の為に新しい役が創造された。それがトリックスター (Trickster) の菊千代 (Kikuchiyo) [演:三船敏郎 (Toshiro Mifune)] である。彼の存在と彼の思いがけない行動によって、家々に隠れ潜む農民達が、彼らを出迎えに出て来ざるを得ない羽目になるのだ。
そして、異なる階級に属する筈の、侍達 (Samurai) と農民達とを、ひとつの集団へと繋ぎあわせる接着剤の様な役割を、彼が果たす事になるのだ。

とにかく、脚本執筆の時点から、難題が絶えず持ち上がり、次から次へとその難題と立ち向かいながら、黒澤明 (Akira Kurosawa) 始め、制作スタッフは、映画を創り続けるのである。

それは、後年『地獄の黙示録 (Apocalypse Now)』 [フランシス・フォード・コッポラ (Francis Ford Coppola) 監督作品 1979年制作] 制作の現場が、もうひとつの戦場と化してしまったのと同様だ。否、それ以上のものなのかもしれない。

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ロケハンの結果、イメージに合致した理想的な撮影現場を捜し出せなかった為に、五カ所の異なる地域で撮影し、それをあたかもひとつの村に観える様にしなければならない事や、志乃 (Shino) [演:津島恵子 (Keiko Tsushima)] と岡本勝四郎 (Katsushiro Okamoto) [演:木村功 (Isao Kimura)] の出逢いの場では一面にホンモノの白い花を用意しなければならなかった為にスタッフ総出で山つつじ (Rhododendron) を採取して現場に植えなければならなかった事や....、総ては黒澤明 (Akira Kurosawa) の完璧主義と徹底したリアリズム演出の為に、数限りない問題が山積みになっていくのである。
その山積された問題をひとつひとつ解決していった結果、想定外の長期間に及ぶ制作期間と果てしない予算超過が起きてしまったのである。

そして、映画会社側から黒澤明 (Akira Kurosawa) に対して、最期通告とも言える厳命が下るのだ。
出来ている部分だけでいいから、観せろ。撮影終了した部分を繋ぎあわせれば、上映可能だろう。とにかく試写してみせろ、と。

地獄の様な戦場を描く映画のその製作現場が、もうひとつの地獄と化した、その状況を余すところなくドキュメントした『ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録 (Hearts of Darkness: A Filmmaker's Apocalypse)』 [エレノア・コッポラ (Eleanor Coppola) 監督作品 1991年制作] は、記録である以上の、作品として成功している。

ぼくがなにを謂いたいのか、解るだろうか?

七人の侍 (Seven Samurai)』 [黒澤明 (Akira Kurosawa) 監督作品 1954年制作] の制作の裏側にあった出来事、つまり、『七人の侍 (Seven Samurai)』 [黒澤明 (Akira Kurosawa) 監督作品 1954年制作] のメイキングを一篇の映画作品として、制作したらどうだろうか?
そんな事を考えているのだ。
戦後まもない日本の娯楽の殿堂であった映画の、そこに英知を結集したモノどもの物語だ。そこには膨大なエネルギーが満ちているだろうし、そこに臨んだモノどもの様々な想いが渦巻いている。

このメイキングは、脚本執筆から始って、映画会社側が申し出た試写で終わればいい。
もしも、このメイキングを観た観客が、当時の映画会社側の人間が味わった感興と同じ感慨に陥る事が出来るのであるならば、その感興の余韻のままにリメイク版『七人の侍 (Seven Samurai)』を期待するだろう。

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何故ならば、その実際に行われた試写では、クライマックス・シーンである合戦シーンの直前で終了したからである。
現行の作品でいえば、休憩に入る前編だけを試写したのだ。百姓屋の屋根によじ上り、旗を突き刺した菊千代 (Kikuchiyo) [演:三船敏郎 (Toshiro Mifune)] が、遥か彼方から迫り来る野武士達をみつけた、そのシーンで終わっているのだ。
「つづきは、はやくつづきをみせろ、まだ撮影していないというのか、それならば、一刻も早く撮影を再開しろ」
そんなこころの叫びが試写会場にこだましていたと言うのだ。

と、言う様な逸話をぼくはぜひ映画化してもらいたいと思うのだが。そして、このメイキングと同時並行で、本編であるリメイク版も制作して行けばいいと勝手に思っているのだ。

ちなみに、メイキング篇の監督は三谷幸喜 (Koki Mitani)。
彼ならば集団劇、群像劇の中で、右往左往する個々の人物達をヒトリヒトリ丁寧に抽出して行く事が出来るだろうし、そしてその中に、日本人ならではの、機微な感情の迸りや微妙な激情のゆらめきを描いて行ける様な気がするのだ。
ラジオドラマの生放送中に起きるありとあらゆるハプニングを乗り越えてドラマを完結させる『ラヂオの時間 (Welcome Back, Mr. McDonald)』 [1997年制作] や、手法も思想も異なる男達が集まって一軒の住宅を建設する『みんなのいえ (Everyone's Home)』 [2001年制作] や、そしてある武装集団の結成から活躍を経て瓦解へと至る総てを見据えた『新選組 ! (Shinsengumi!)』 [NHK 2004年放映] や、それらの作品で試みられた手法を総て投じる事が出来れば、面白い作品になると思うのだ [余談だけれども、『新選組 ! (Shinsengumi!)』 [NHK 2004年放映] のキャストをひとつの容器に押し込んで、ガラガラポンと放り出せば、リメイク版『七人の侍 (Seven Samurai)』のキャステイングの概要は出来てしまうかもしれないと思うのだが]。

そして、本編であるリメイク篇はリドリー・スコット (Ridley Scott) にお願いしたい。
と、いうのは、彼は誇り高い負け戦を幾度となく映画化してきたからだ。

密室である宇宙船から命からがら逃げ出す『エイリアン (Alien)』 [1979年制作] から始って、己の末期を悟った敵によって文字通り救済される『ブレードランナー (Blade Runner)』 [1982年制作]、そして人情 [=私怨] を捨てて義理 [=職務] を全うせねばならなかった『ブラック・レイン (Black Rain)』 [1989年制作]、天下の悪帝の死を誇り高い男のそれにまで高めようとした『グラディエーター (Gladiator)』 [2000年制作]、勿論、敵前まっただ中に墜落してしまった『ブラックホーク・ダウン (Black Hawk Down)』 [2001年制作] ...。
リドリー・スコットの映画は、負ける事から始る映画ばかりなのだ。
そして、この『七人の侍 (Seven Samurai)』 [黒澤明 (Akira Kurosawa) 監督作品 1954年制作] という映画も、如何に負けて行くのかを描いた映画だからだ。
「また負け戦だったな」と、島田勘兵衛 (Kanbei Shimada) [演:志村喬 (Takashi Shimura)] が生残りの侍 (Samurai) にむけて発している様に。

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以上。
と、いきたいところだけれども、蛇足の第五回 (Part Five) があります。
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