2010.10.27.20.27

Still Photo : Machiko Kyo with Masayuki Mori from the movie "Older Brother, Younger Sister [Ani Imoto]
こんな夢を観た。
深夜。日付はとっくに変わり、夜というよりも朝に近い、そんな夜明け前の出来事である。日中から夜までのばか騒ぎの果てに、ぼろぼろになった俺は、さっきからベッドに突っ伏して、そのまま眠ってしまおうと思っていた。今更、厄介な出来事に手をつけるつもりもさらさらになく、だからと言って、一分もかからない様な瑣事に手を染めるつもりもなかった。着のみ着のまま、このまま、眠ってしまおうと。
しばらくすると、...、といってもそれが数分の事なのか数時間の後の事なのか、俺には解らない。ただ、ほんの一瞬の間に、意識を喪って、そのまま午過ぎまで微動だしない予定が、それを遮られた。
俺の右腕に冷たい感触がある。そして、俺の頬の上にも、濡れた雫が落ちていた。いつのまにか、ベッドの中に潜り込んでいた俺を、そいつが覗き込んでいた。
びしょびしょに濡れそぼった躯を一切、隠そうともせずに、濡れた躯以上に、冷たい水を含んだ長い髪が、俺の顔の辺りまで垂れていた。
隣室の住人Mだった。
Mが俺の隣室に居候を決め込んでから、もう一年近くが経とうとしていた。家出同然にこっちに出て来て、風の便りに聴いた俺の居所を捜しまわって、その結果、ここに棲みついた。その間のすったもんだは、まぁ、いいだろう。結局、家出の原因もうやむやになった頃に、既成事実化した彼女の上京はそのままに、彼女の両親も、俺に預ける事にした。
彼女は、俺から観れば従兄弟の一人娘だった。
と言っても、従兄弟夫婦と俺とは親子程の年の差があって、その一方、Mは俺の五歳下だった。
だから俺も、彼女の面倒も観てやったし、その逆に、彼女を困らせてもいた。無論、ふたりとも小学校に上がる前の頃の事だ。それぞれが学校にいくようになると、自然と疎遠になっていた。
つまり、彼女が俺を尋ねてやって来たのは、それ以来って事なのだ。
Mが俺のところにころがり込んでから、仕方なく、それまで倉庫代わりにしていた一室を彼女に明け渡し、彼女専用の部屋の鍵を与えてやった。
ふたりの間では相互不干渉。それが最大にして唯一の取り決めだった。
だから、かつての倉庫部屋からどんな物音がしようが聴こえないふりをしていた。その音は、いろんな音だった。複数のニンゲンがいなければ立てられない様な物音もあれば、独り泣く女の声の場合もあった。
だから...? 俺はなにもしないでほったらかしておいた。
そして....? 彼女もそれを望んでいた。
そんなふたりの生活が一回りして一年。
寝惚けまなこで、もしかしたら宿酔の俺の前にMが独り立っている。
ずぶ濡れだ。しかも全裸。
こんな時、なにか語り還るべきだろうか。それとも、問い糾すべきなんだろうか。
俺は、枕元にあった布切れかなにかを放り投げて、手招きしてやった。
怖ず怖ずと彼女が潜り込んだとき、部屋の外で、大きな爆発音と叫び声がいくつもこだましていた。
死人と怪我人の数は、陽が昇りきった後で、ゆっくり数えようと思う。何故ならば、布切れ一枚向こうの彼女の肌が蒼ざめて観えてしまったからだ。
The Trailer for the movie "In Bed With Madonna" aka "Madonna: Truth Or Dare"
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