2010.10.12.18.43
タイトルだけ観ると、所謂シャッター商店街の淋しい光景を詠んだ様な響きがあるのだけれども、勿論、違う。30年以上も前の、ニュー・ヨークの荒んだ光景 (New York City 1970s) と、そこを彷徨うこころを投影したもので、ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) のアルバム『女たち (Some Girls)
』収録曲にして、第二弾のシングル・カット曲『シャッタード (Shattered)』の事である。
アルバム『女たち (Some Girls)
』が1978年に発表された当時、リスナーは、その第一弾のシングル・カット・ナンバーであると同時に、アルバムの冒頭を飾るナンバー『ミス・ユー (Miss You)』に耳を疑ったものだった。
典型的なフォー・オン・ザ・フロアー (Four-on-the-floor) のその曲は、何度となく再燃するディスコ・ブームに寄り添ったものに聴こえ、ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) よ、オマエもかという論調もあったのも確か。
丁度、映画『サタデー・ナイト・フィーバー
(Saturday Night Fever)』 [ジョン・バダム (John Badham) 監督作品] が前年に公開されて、その使用楽曲であるビージーズ (The Bee Gees) の『ステイン・アライヴ (Stayin' Alive)』や『恋のナイト・フィーバー (Night Fever)』を筆頭にチャートを席巻していた頃の事であるからだ。
でも、アルバムをきちんと聴くと、それはあくまでも表層上の事でしかないのが解る。
アルバムの基調を成しているのは次の三曲。『ホエン・ザ・ウィップ・カムズ・ダウン (When The Whip Comes Down)』、『リスペクタブル (Respectable)』、そして『シャッタード (Shattered)』。この三曲のファスト・チューンであり、そしてこの三曲をファスト・チューン足らしめている、チャーリー・ワッツ (Charlie Watts) の叩きだす、性急で焦燥感に満ちたビートだ。
そしてそれはそのまま、『ミス・ユー (Miss You)』がディスコ・ブームを多分に意識した以上に、彼らの足許を揺らがしかねないパンク・ムーブメントへの回答であるのだ。
つまり、当時、次々と英国から輩出されて来ていた若いバンド / アーティスト達の仮想敵のひとつが彼ら、ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) であったからなのだ。
ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) の世代が「ドント・トラスト・オーヴァー・サーティー (Don't Trust Over Thirty)」と言い、「老いる前に死んじまいたい (Hope I Die Before Get Old)」と言い、己らの上の世代を弾劾していたその言葉がそのまま、彼らよりも若い世代から投じられていたのである。
『1977年には、エルヴィスも、ビートルズも、スートンズだっていらない (No Elvis, Beatles, Or The Rolling Stones In 1977)』 [『1977』 by ザ・クラッシュ (The Clash)]
しかも、その言葉はさらに切迫したものでもあり、のっぴきならないものだけに尚更だ。つまり、それは当時、英国病 (The British Disease) と揶揄されたその国の経済状況が大きな遠因となっていたからであった。それは否が応でも「スウィンギン・シックスティーズ (Swingin' 60s)」を謳歌していた彼らとは、異なるところから出て来た問題意識なのである。
この時点で、ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) はどちらの途も選択出来た筈だ。ビッグ・ネームとして音楽シーンの頂点に居座り、彼ら自身と彼ら自身が所属する世代に向けた音楽を提供し続ける事も出来た訳である。実際に、彼らと同世代のバンド / アーティストの殆どはそういう途を選び、若い世代の向けた牙に対して、歯牙をみせもしなかった。つまり、オトナになったのである。
しかし、何故だかザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) は、そんな場所からわざわざと降りてきて、彼らの息子や娘といってもおかしくない世代と、真っ向勝負しようとしてきた訳である。
だから~とか、なぜならば~、とはここでは続けない。ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) のビジネス戦略やサヴァイヴァル術を語るつもりは、今のぼくにはない。
前作であるライヴ・アルバム『感激! 偉大なるライヴ (Love You Live)
』でもキャパ500人程度のクラヴ、エル・モカンボ・クラブ (El Mocambo Nightclub) でのセッションを収録した事を指摘して、ここでの彼らのとった途が単なる思いつきレベルのものではない、と語っておけば充分だろう。
むしろ、全然別の理由が楽曲制作の発端となった、キース・リチャーズ (Keith Richards) の『ビフォー・ゼイ・メイク・ミー・ラン (Before They Make Me Run)』が、図らずもバンド自身の内心を語っている様な気がする。
楽曲自体は、彼のヘロイン不法所持による逮捕とその後の裁判 (Keith Richards' Heroin Bust) を反映したものだが、「走らされる前に歩き出すんだ (Let Me Walk Before They Make Me Run)」という徒労感と、否が応でも選ばねばならないその対処療法は、バンドにとっても必要な事なのだ、と聴こえる。
そして、その対処療法が、アルバムで示した途であり、基調曲である三曲なのだ、と。
そして、中でも『シャッタード (Shattered)』は、1979年のサタデー・ナイト・ライブ (Saturday Night Live) でのパフォーマンス [こちらで観る事が出来る] を受けて、ライブでも必要不可欠なものとなっていく。1982年発表の『 スティル・ライフ―アメリカンコンサート '81("Still Life" - American Concert 1981)
』にも2008年発表の『シャイン・ア・ライト (Shine A Light)
』にもそのライヴ・パフォーマンスが収録されるのだ。

"Available Stores In Tribeca" photo by Allan Tannenbaum
次回は「が」。
アルバム『女たち (Some Girls)
典型的なフォー・オン・ザ・フロアー (Four-on-the-floor) のその曲は、何度となく再燃するディスコ・ブームに寄り添ったものに聴こえ、ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) よ、オマエもかという論調もあったのも確か。
丁度、映画『サタデー・ナイト・フィーバー
でも、アルバムをきちんと聴くと、それはあくまでも表層上の事でしかないのが解る。
アルバムの基調を成しているのは次の三曲。『ホエン・ザ・ウィップ・カムズ・ダウン (When The Whip Comes Down)』、『リスペクタブル (Respectable)』、そして『シャッタード (Shattered)』。この三曲のファスト・チューンであり、そしてこの三曲をファスト・チューン足らしめている、チャーリー・ワッツ (Charlie Watts) の叩きだす、性急で焦燥感に満ちたビートだ。
そしてそれはそのまま、『ミス・ユー (Miss You)』がディスコ・ブームを多分に意識した以上に、彼らの足許を揺らがしかねないパンク・ムーブメントへの回答であるのだ。
つまり、当時、次々と英国から輩出されて来ていた若いバンド / アーティスト達の仮想敵のひとつが彼ら、ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) であったからなのだ。
ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) の世代が「ドント・トラスト・オーヴァー・サーティー (Don't Trust Over Thirty)」と言い、「老いる前に死んじまいたい (Hope I Die Before Get Old)」と言い、己らの上の世代を弾劾していたその言葉がそのまま、彼らよりも若い世代から投じられていたのである。
『1977年には、エルヴィスも、ビートルズも、スートンズだっていらない (No Elvis, Beatles, Or The Rolling Stones In 1977)』 [『1977』 by ザ・クラッシュ (The Clash)]
しかも、その言葉はさらに切迫したものでもあり、のっぴきならないものだけに尚更だ。つまり、それは当時、英国病 (The British Disease) と揶揄されたその国の経済状況が大きな遠因となっていたからであった。それは否が応でも「スウィンギン・シックスティーズ (Swingin' 60s)」を謳歌していた彼らとは、異なるところから出て来た問題意識なのである。
この時点で、ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) はどちらの途も選択出来た筈だ。ビッグ・ネームとして音楽シーンの頂点に居座り、彼ら自身と彼ら自身が所属する世代に向けた音楽を提供し続ける事も出来た訳である。実際に、彼らと同世代のバンド / アーティストの殆どはそういう途を選び、若い世代の向けた牙に対して、歯牙をみせもしなかった。つまり、オトナになったのである。
しかし、何故だかザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) は、そんな場所からわざわざと降りてきて、彼らの息子や娘といってもおかしくない世代と、真っ向勝負しようとしてきた訳である。
だから~とか、なぜならば~、とはここでは続けない。ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) のビジネス戦略やサヴァイヴァル術を語るつもりは、今のぼくにはない。
前作であるライヴ・アルバム『感激! 偉大なるライヴ (Love You Live)
むしろ、全然別の理由が楽曲制作の発端となった、キース・リチャーズ (Keith Richards) の『ビフォー・ゼイ・メイク・ミー・ラン (Before They Make Me Run)』が、図らずもバンド自身の内心を語っている様な気がする。
楽曲自体は、彼のヘロイン不法所持による逮捕とその後の裁判 (Keith Richards' Heroin Bust) を反映したものだが、「走らされる前に歩き出すんだ (Let Me Walk Before They Make Me Run)」という徒労感と、否が応でも選ばねばならないその対処療法は、バンドにとっても必要な事なのだ、と聴こえる。
そして、その対処療法が、アルバムで示した途であり、基調曲である三曲なのだ、と。
そして、中でも『シャッタード (Shattered)』は、1979年のサタデー・ナイト・ライブ (Saturday Night Live) でのパフォーマンス [こちらで観る事が出来る] を受けて、ライブでも必要不可欠なものとなっていく。1982年発表の『 スティル・ライフ―アメリカンコンサート '81("Still Life" - American Concert 1981)

"Available Stores In Tribeca" photo by Allan Tannenbaum
次回は「が」。
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