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2010.09.28.18.33

じげんだいすけ

先ずは、譬え話。
広い空地に一匹の犬とその飼主がいる。
その広い空地には、無数の罠=トラップ (Trap) が仕掛けられている。
飼主は、"いつものように"飼犬に、ボールをみせて、こう言う。
「このボールを今から投げるから、獲ってくるんだぞ。そうしたら、ご褒美をあげよう」
そう言うが早いか、飼主はボールを広場の遥か彼方の方向へと放り投げる。
そのボールの行方を観てとった飼犬は?

さて、どうするのか?
例えば、上の譬え話を『ゴルゴ13 (Golgo 13)』 [作:さいとう・たかを (Takao Saito)] に当て嵌めて考えてみるとする。
そうすると、出てくる答えは簡単だ。
飼犬は、真っ先にボールの投げられた方向をめがけて奔り出し、幾つもの仕組まれた罠=トラップ (Trap) をかいくぐり、その結果、遅くとも数分後には、そのボールをくわえて飼主の許へと、戻って来る。
何故ならば、ボールを投げる前に、そのボールに関しての契約が飼主と飼犬との間に締結されていて、その契約を履行するが為に、飼犬は件の行動を採るのである。
あえて、まだるっこしい説明をしてみたけれども、デューク・東郷 (Duke Togo) はここでは飼犬の謂いであり、彼の依頼主がここで言う飼主、ボールはデューク・東郷 (Duke Togo) にとっての標的=ターゲット (Target) なのである。
そして、『ゴルゴ13 (Golgo 13)』 [作:さいとう・たかを (Takao Saito)] の物語の殆どは、この構図から逃れる事はない。中には、一切、デューク・東郷 (Duke Togo) が登場しないまま、標的=ターゲット (Target) がナニモノかが放った銃弾で死を遂げるという挿話もあるのだけれども、上の譬え話を引用すれば、投げられたボールの視点で、物語が語られたに過ぎない。
つまり、逆の事を言えば、飼主の視点だけで物語られる『ゴルゴ13 (Golgo 13)』 [作:さいとう・たかを (Takao Saito)] の挿話も無数にあるのだ。だからまれにある挿話の様に、飼犬が契約を履行したのにも関わらず、ご褒美をあげない飼主が登場する場合もある [そして、その後勿論、文字通りの「飼犬に掌を咬まれる様に (To Be Betrayed By A Trusted Follower)」その飼主は己の飼犬に襲われてしまう。つまり、本来ならば飼主である筈の依頼主も、飼犬の牙であるデューク・東郷 (Duke Togo) の銃弾から、決して自由ではないのだ]。
このようにして、『ゴルゴ13 (Golgo 13)』 [作:さいとう・たかを (Takao Saito)] の物語の構図は、己ながらに大胆な発想だと思うのだけれども、たったひとつの譬え話で語る事が出来てしまうのである。

では、この譬え話を『ルパン三世 (Lupin The Third)』 [作:モンキー・パンチ (Monkey Punch)] にそのまま流用しようとすると、先ず、混乱する。
ルパン三世 (Lupin The Third) が「あのお宝を盗ってこい」と峰不二子 (Mine Fujiko) に命じられるがままに、銭形幸一警部 (Inspector Zenigata Koichi) の猛遂をなんとか凌ぎながら、お宝を峰不二子 (Mine Fujiko) の許へと持参すれば....。
そんなプロトタイプ (Prototype) はあるのだけれども、そして、このプロトタイプ (Prototype) は『ルパン三世 (Lupin The Third)』 [作:モンキー・パンチ (Monkey Punch)] という物語の主流を成すもののひとつだけれども、この物語の構図はそれだけに収まらない。
ルパン三世 (Lupin The Third) 捕縛に命をかける銭形幸一警部 (Inspector Zenigata Koichi) が策略として、お宝の誤情報を流す場合もあれば、ルパン三世 (Lupin The Third) を亡き者にする為に、彼に敵対する人物もしくは組織が、峰不二子 (Mine Fujiko) の命そのものをお宝として、彼に達成不可能と思われる指令を課す場合もある。さらに言えば、銭形幸一警部 (Inspector Zenigata Koichi) を攪乱させる為に、(偽の)ルパン三世 (Lupin The Third) が登場する場合もある。

つまり、ルパン三世 (Lupin The Third) と峰不二子 (Mine Fujiko) と銭形幸一警部 (Inspector Zenigata Koichi) は、それぞれが飼主と飼犬とボールの三役を交換可能な存在となっているのである。さらに言えば、お互いが交わした契約履行を阻害する、罠=トラップ (Trap) の役割を、そのそれぞれが引き受ける場合も多い。
単純に言えば、さんすくみ (Be In A Three‐cornered Deadlock) だ。それぞれを適宜、役割を入れ替えて、さらに、三者のどの視点で物語を構想するのか、と考えれば、この『ルパン三世 (Lupin The Third)』 [作:モンキー・パンチ (Monkey Punch)] という物語のヴァリエーションは幾らでも出来てしまうのだ。
あえて書くまでもない。三つ巴 Tthree Comma‐shaped Figures In A Circle) の狐と狸の化かし合い (They are trying to out fox each other.) が、『ルパン三世 (Lupin The Third)』 [作:モンキー・パンチ (Monkey Punch)] という物語の魅力の原点なのである。

さて、この三者の構図の中で,次元大介 (Jigen Daisuke) はどこにいるのだろうか?
もしかしたら、デューク・東郷 (Duke Togo) に匹敵する、否、凌ぐかもしれない狙撃手=スナイパー (Sniper) である彼の、その果たすべき役回りが、きちんと彼に与えられているのであろうか?

と、いうのも、原作者であるモンキー・パンチ (Monkey Punch) の作品に『一宿一飯』という連作があるからなのだ。
究めて限定的なシチュエーションの中から、いくつもの物語の手法を導き出すその手口を観れば、さんすくみ (Be In A Three‐cornered Deadlock) の三つ巴 Tthree Comma‐shaped Figures In A Circle) の狐と狸の化かし合い (They are trying to out fox each other.) を、よんすくみやごすくみ、もしくはそれ以上の化かすに莫迦しあう、虚実入り交じった物語にもなりえるのだけれども...。

images
と、いうわけで、今回の掲載画像は次元大介 (Jigen Daisuke) の愛用するスミス&ウエッソン M19 (Smith & Wesson Model 19)、所謂コンバット・マグナム (The Combat Magnum)。
第99話『荒野に散ったコンバット・マグナム (The Combat Magnum Scattered In The Wasteland)』あたりをもう一度、観なおしてみようか。

次回は「」。

附記:同じ事は、石川五ェ門 (Ishikawa Goemon) にも当て嵌まるのではないかという指摘もあるかもしれないが、彼はトランプ=カード・ゲーム (Playing Cards) に譬えれば、切札 (Trump)。
彼の棲んでいる世界を舞台にした、彼がメインを張る物語を除いては、それに徹底している方が小気味よい。
上の譬え話で言えば、いつ飛び出して来るかもしれない、最上級の罠=トラップ (Trap)、それが石川五ェ門 (Ishikawa Goemon) で、ぼくは充分だと思う。
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