2010.08.10.20.37
クレタ文明 (Minoan Civilization) とその発祥の地、クレタ島 (Crete) を舞台とした長い長い神話の中で、イカロス (Ikaros aka Icarus) の飛翔とその失墜は、あくまでも傍系のエピソードである。
神話として物語られるその本流は、あくまでも牡牛 (Cretan Bull) を巡るエピソードだ。
勿論、イカロス (Ikaros aka Icarus) とその父であるダイダロス (Daedalus) もその牡牛 (Cretan Bull) の誕生に一役買っている訳だけれども、イカロス (Ikaros aka Icarus) の物語は、そのダイダロス (Daedalus) 親子自身が関わったその牡牛 (Cretan Bull) から逃亡する挿話でしかない。
ここでいう牡牛 (Cretan Bull) とは、勿論、クレタ島 (Crete) の王であるミノス (Minos) の父ゼウス (Zeus) がその身を偽った際の姿であるし、ゼウスの息子達 (Zeus' Children) の間に起こった紛争のその勝者に授与される王位継承の証左 (Right Of Succession To The Throne) であるし、本来ならばその牡牛 (Cretan Bull) を神に捧げるべきところを惜しんだミノス (Minos) が身代わりに贄とした牡牛 ( The Bull Sacrifice) であるし、その結果としての神の怒りによってミノス (Minos) の妻パーシパエー (Pasiphae) が劣情を催したのが牡牛 (Cretan Bull) であるし、そして彼女が孕み産んだのが牡牛の怪物 (Bull-headed Monster) ミノタウロス (Minotauros) であるのだった。
これ以降、ミノス (Minos) の娘アリアドネ (Ariadne) と英雄テセウス (Theseus) による牡牛の怪物 (Bull-headed Monster) ミノタウロス (Minotauros) 退治の物語になって、最期にはその牡牛 (Cretan Bull) は思わぬところで再登場するのだけれども、閑話休題。
いずれにしろ、牡牛 (Cretan Bull) の存在が通奏低音 (Basso continuo) となって、ある王家の興亡が物語られるのである。
そして、この物語の中で、何度となく登場するのが、イカロス (Ikaros aka Icarus) の父ダイダロス (Daedalus) なのである。
彼は三度、登場する。
初めは、牡牛 (Cretan Bull) に恋い焦がれるパーシパエー (Pasiphae) の懇願に応じて、牡牛の張形 (Bull Dildo) ならぬ、ホンモノそっくりの牝牛の張形 (Wooden Cow) を造って、彼女の望みを成就させる。
二度目は、ミノス (Minos) の命により、そのパーシパエー (Pasiphae) が産んだ牡牛の怪物 (Bull-headed Monster) ミノタウロス (Minotauros) を幽閉させる為の迷宮ラビュリントス (Labyrinth) を造る。
三度目は、ミノス (Minos) の娘アリアドネ (Ariadne) に乞われるがままに、牡牛の怪物 (Bull-headed Monster) ミノタウロス (Minotauros) 退治の方法
(Ariadne's Red Thread) を伝授する。
と、ダイダロス (Daedalus) はあらゆる局面に姿を現し、そこで求められるミノス王家 (Minos And His Family) 一族の願いをそのまま受け入れて、彼らの望みを現実のものとするのである。
異なる視点から観れば、彼はミノス王家 (Minos And His Family) の権力闘争に巻き込まれたとも読む事も出来るし、単なる政争の具を提供したともとれる。
彼は何なのか。彼は悪なのか正義なのか、と問われれば、こう答えるしかない。
彼は技術であり、科学である。だから、その何れにも成り得る、と。
つまり、マッド・サイエンティスト (Mad Scientist) の源流がダイダロス (Daedalus) なのであり、結果的に彼はミノス王家 (Minos And His Family) に対してファウスト (Faust) にとってのメフィストフェレス (Mephistopheles) の役回りを演じたのである。
彼が創造したものは皆、良いも悪いもリモコン次第であり、その末裔がドラえもん (Doraemon) の四次元ポケット (Fourth-dimensional Pocket) とも言い得るのだ。つまり、ミノス王家 (Minos And His Family) は換言すれば、野比家(The Nobis) の遠い先祖に当たる訳だ。
だから、ヴィクター・フランケンシュタイン (Victor Frankenstein) 然り、ネモ艦長 (Captaine Nemo) 然り、モロー博士 (Dr. Moreau) 然り、マッド・サイエンティスト (Mad Scientist) には非業の末路が待っている。
勿論、彼らが始祖、ダイダロス (Daedalus) にも。
その非業の末路の主人公が、彼の息子イカロス (Ikaros aka Icarus) なのである。
つまり。
我が息子ミノタウロス (Minotauros)が殺害されたその遠因がダイダロス (Daedalus) にある事を知ったミノス (Minos) によって、ダイダロス (Daedalus) とその息子イカロス (Ikaros aka Icarus) は、今度は己自身が創造した迷宮ラビュリントス (Labyrinth) に幽閉される。

しかし、ふたりは鑞で固めた (Brazing) 鳥の翼 (Bird Wing) を用いて悠々、迷宮ラビュリントス (Labyrinth) から脱出に成功する....。[掲載画像はフレデリック・レイトン (Frederick Leighton) の『イカロスとダルダロス (Daedalus And Icarus)』]
ここから先のエピソードは書かないけれども、いままでの流れから観れば、ダイダロス (Daedalus) と彼の息子イカロス (Ikaros aka Icarus) のエピソードから得られるべき教訓は、科学もしくは技術の誤用の恐ろしさであろう。もう少し踏み込んで読んでみれば、己の度量を越えた行為の恐ろしさであり、それをもたらす己の過信への戒めと成り得る。
つまりその行為は、文字通りの神をも恐れぬ所行として否定されるべき行為なのである。
にも、関わらずに、ぼく達はイカロス (Ikaros aka Icarus) の飛翔と失墜のエピソードに、それとは全く異なるロマンを抱いてしまう。
でなければ、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は小型ソーラー電力セイル (Solar Sail) 実証機に、イカロス (IKAROS) などと言う不吉で縁起でもない名前をつけたりしない。
この名称の直接の動機は、NHK『みんなのうた』で山田美也子 (Miyako Yamada) が歌った『勇気一つを友にして』らしいが、この曲そのものがイカロス (Ikaros aka Icarus) のエピソードから着想を得ているのだから、言い訳の仕様がない。
『ウルトラセブン (Ultra Seven)』の『第10話 怪しい隣人 (Episode 10 The Suspicious Neighbour)』に登場したイカルス星人 (Alien Icarus) に憧れたからとでも説明してくれたら、少しはこちらの懐疑を逃れられたのかもしれないが、今更そういう訳にもいくまい。
話が逸れた。元に戻す。念の為に、承前の文章をそっくりそのまま繰り返す。
にも、関わらずに、ぼく達はイカロス (Ikaros aka Icarus) の飛翔と失墜のエピソードに、それとは全く異なるロマンを抱いてしまう。
それは何故か。
やはり、これはどうしようもないのだけれども、彼が飛翔し得たから、としか言いようがないのだ。
本題に辿り着く前に、随分と紙幅を費やしすぎてしまった様な気がするのだけれども、こんな中途半端な終わり方も、このテーマに相応しいかもしれない。
つづきはどこかで書くかもしれない、なんせ語頭は母音 (Vowel) の「い (I)」。語尾がこの言葉で終わるものは、相当数ある。
次回は「ち」。
神話として物語られるその本流は、あくまでも牡牛 (Cretan Bull) を巡るエピソードだ。
勿論、イカロス (Ikaros aka Icarus) とその父であるダイダロス (Daedalus) もその牡牛 (Cretan Bull) の誕生に一役買っている訳だけれども、イカロス (Ikaros aka Icarus) の物語は、そのダイダロス (Daedalus) 親子自身が関わったその牡牛 (Cretan Bull) から逃亡する挿話でしかない。
ここでいう牡牛 (Cretan Bull) とは、勿論、クレタ島 (Crete) の王であるミノス (Minos) の父ゼウス (Zeus) がその身を偽った際の姿であるし、ゼウスの息子達 (Zeus' Children) の間に起こった紛争のその勝者に授与される王位継承の証左 (Right Of Succession To The Throne) であるし、本来ならばその牡牛 (Cretan Bull) を神に捧げるべきところを惜しんだミノス (Minos) が身代わりに贄とした牡牛 ( The Bull Sacrifice) であるし、その結果としての神の怒りによってミノス (Minos) の妻パーシパエー (Pasiphae) が劣情を催したのが牡牛 (Cretan Bull) であるし、そして彼女が孕み産んだのが牡牛の怪物 (Bull-headed Monster) ミノタウロス (Minotauros) であるのだった。
これ以降、ミノス (Minos) の娘アリアドネ (Ariadne) と英雄テセウス (Theseus) による牡牛の怪物 (Bull-headed Monster) ミノタウロス (Minotauros) 退治の物語になって、最期にはその牡牛 (Cretan Bull) は思わぬところで再登場するのだけれども、閑話休題。
いずれにしろ、牡牛 (Cretan Bull) の存在が通奏低音 (Basso continuo) となって、ある王家の興亡が物語られるのである。
そして、この物語の中で、何度となく登場するのが、イカロス (Ikaros aka Icarus) の父ダイダロス (Daedalus) なのである。
彼は三度、登場する。
初めは、牡牛 (Cretan Bull) に恋い焦がれるパーシパエー (Pasiphae) の懇願に応じて、牡牛の張形 (Bull Dildo) ならぬ、ホンモノそっくりの牝牛の張形 (Wooden Cow) を造って、彼女の望みを成就させる。
二度目は、ミノス (Minos) の命により、そのパーシパエー (Pasiphae) が産んだ牡牛の怪物 (Bull-headed Monster) ミノタウロス (Minotauros) を幽閉させる為の迷宮ラビュリントス (Labyrinth) を造る。
三度目は、ミノス (Minos) の娘アリアドネ (Ariadne) に乞われるがままに、牡牛の怪物 (Bull-headed Monster) ミノタウロス (Minotauros) 退治の方法
と、ダイダロス (Daedalus) はあらゆる局面に姿を現し、そこで求められるミノス王家 (Minos And His Family) 一族の願いをそのまま受け入れて、彼らの望みを現実のものとするのである。
異なる視点から観れば、彼はミノス王家 (Minos And His Family) の権力闘争に巻き込まれたとも読む事も出来るし、単なる政争の具を提供したともとれる。
彼は何なのか。彼は悪なのか正義なのか、と問われれば、こう答えるしかない。
彼は技術であり、科学である。だから、その何れにも成り得る、と。
つまり、マッド・サイエンティスト (Mad Scientist) の源流がダイダロス (Daedalus) なのであり、結果的に彼はミノス王家 (Minos And His Family) に対してファウスト (Faust) にとってのメフィストフェレス (Mephistopheles) の役回りを演じたのである。
彼が創造したものは皆、良いも悪いもリモコン次第であり、その末裔がドラえもん (Doraemon) の四次元ポケット (Fourth-dimensional Pocket) とも言い得るのだ。つまり、ミノス王家 (Minos And His Family) は換言すれば、野比家(The Nobis) の遠い先祖に当たる訳だ。
だから、ヴィクター・フランケンシュタイン (Victor Frankenstein) 然り、ネモ艦長 (Captaine Nemo) 然り、モロー博士 (Dr. Moreau) 然り、マッド・サイエンティスト (Mad Scientist) には非業の末路が待っている。
勿論、彼らが始祖、ダイダロス (Daedalus) にも。
その非業の末路の主人公が、彼の息子イカロス (Ikaros aka Icarus) なのである。
つまり。
我が息子ミノタウロス (Minotauros)が殺害されたその遠因がダイダロス (Daedalus) にある事を知ったミノス (Minos) によって、ダイダロス (Daedalus) とその息子イカロス (Ikaros aka Icarus) は、今度は己自身が創造した迷宮ラビュリントス (Labyrinth) に幽閉される。

しかし、ふたりは鑞で固めた (Brazing) 鳥の翼 (Bird Wing) を用いて悠々、迷宮ラビュリントス (Labyrinth) から脱出に成功する....。[掲載画像はフレデリック・レイトン (Frederick Leighton) の『イカロスとダルダロス (Daedalus And Icarus)』]
ここから先のエピソードは書かないけれども、いままでの流れから観れば、ダイダロス (Daedalus) と彼の息子イカロス (Ikaros aka Icarus) のエピソードから得られるべき教訓は、科学もしくは技術の誤用の恐ろしさであろう。もう少し踏み込んで読んでみれば、己の度量を越えた行為の恐ろしさであり、それをもたらす己の過信への戒めと成り得る。
つまりその行為は、文字通りの神をも恐れぬ所行として否定されるべき行為なのである。
にも、関わらずに、ぼく達はイカロス (Ikaros aka Icarus) の飛翔と失墜のエピソードに、それとは全く異なるロマンを抱いてしまう。
でなければ、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は小型ソーラー電力セイル (Solar Sail) 実証機に、イカロス (IKAROS) などと言う不吉で縁起でもない名前をつけたりしない。
この名称の直接の動機は、NHK『みんなのうた』で山田美也子 (Miyako Yamada) が歌った『勇気一つを友にして』らしいが、この曲そのものがイカロス (Ikaros aka Icarus) のエピソードから着想を得ているのだから、言い訳の仕様がない。
『ウルトラセブン (Ultra Seven)』の『第10話 怪しい隣人 (Episode 10 The Suspicious Neighbour)』に登場したイカルス星人 (Alien Icarus) に憧れたからとでも説明してくれたら、少しはこちらの懐疑を逃れられたのかもしれないが、今更そういう訳にもいくまい。
話が逸れた。元に戻す。念の為に、承前の文章をそっくりそのまま繰り返す。
にも、関わらずに、ぼく達はイカロス (Ikaros aka Icarus) の飛翔と失墜のエピソードに、それとは全く異なるロマンを抱いてしまう。
それは何故か。
やはり、これはどうしようもないのだけれども、彼が飛翔し得たから、としか言いようがないのだ。
本題に辿り着く前に、随分と紙幅を費やしすぎてしまった様な気がするのだけれども、こんな中途半端な終わり方も、このテーマに相応しいかもしれない。
つづきはどこかで書くかもしれない、なんせ語頭は母音 (Vowel) の「い (I)」。語尾がこの言葉で終わるものは、相当数ある。
次回は「ち」。
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