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2010.05.11.18.01

きんぽうげ

今回の記事には時節柄、不穏当でかつ不適切な単語が登場する事になっている。
通常の文章ならば「○○○」とか「××××××」と表記すべきものでる。
しかし、それらは無粋と言えば無粋だし、無様と言えば無様である。
だから、次の様にする。

伏せ字にすべき単語は「饅頭」と表記する。

きんぽうげ』という曲は、甲斐バンドの8枚目のシングル『そばかすの天使』のB面収録曲として1977年9月に発表され、同年10月に発表された彼らの4枚目のアルバム『この夜にさよなら』に収録された。

と、ここで文章を閉じてしまうと、いたって地味な楽曲の印象しか持ちえないのだが、その後に、次の文章を続けると、その表情が変わってしまう。

1978年3月に発表された甲斐バンド初のライブ・アルバム『サーカス & サーカス』に、そのオープニング・ナンバーとして収録されて、そのポジションは、次のライヴ・アルバム『100万$ナイト』 [1980年発表] でも不動だった。

この2年間の間には、セイコーウオッチ (Seiko-Watches Corporation) のCMタイアップ曲として起用されてその結果、彼らにとっての初のシングル・チャートNo. 1となった『HERO [ヒーローになる時、それは今]』の発表 [1978年12月] があり、バンドを取り巻く環境が俄然に変わり始めた、変動と躍進の時期だ。
サーカス & サーカス』が中野サンプラザホール (Nakano Sun Plaza Hall) でのレコーディングであるのに対し、『100万$ナイト』はバンドにとっての初の日本武道館 (Nippon Budokan) でのライヴ。前者がキャパ2,000人規模であるのに対して、後者は10,000人は裕に入る。
リーダーの甲斐よしひろNHK-FMの『サウンド・ストリート』のDJを担当し、ぼく自身も、否応なく毎週水曜日は、彼が紹介する音楽と彼の世界観を聴く羽目になるのだ [と書くとイヤイヤ聴いていた様なニュアンスになるけれども、当時は音楽の情報源が非常に限られていたので、...、まぁ、これしかなかったのだ]。


そんな時期にあっても関わらずに、コンサートのオープニングを飾っていたのが、『きんぽうげ』という曲なのである。
状況が変わろうとも、時代が変わろうとも、変わらないものがあると言いたげな素振りなのである。
と、いうか、印象的なギター・リフが終始リードするこの楽曲。開幕を告げるベルとしては充分に機能的なのだ。

そしてその一方で、当時のぼく達の間では、これはザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) の「饅頭」であろうというのが統一見解だった。
きんぽうげ』自体が『ホンキー・トンク・ウィメン (Honky Tonk Women)』の「饅頭」ならば、それがオープニングを飾る二枚組ライヴの『1100万$ナイト』が同じく二枚組ライヴの『ラヴ・ユー・ライヴ (Love You Live)』の「饅頭」。それによぉく考えると曲名が花の名前だなんてところから『ダンデライオン [たんぽぽ] (Dandelion)』の「饅頭」疑惑も生じる。『ダンデライオン [たんぽぽ] (Dandelion)』もシングルB面曲だしね。

ふむふむ。

と、悦に入っていたら、所変われば品変わるとばかりに、この曲はカーリー・サイモン (Carly Simon) 『うつろな愛 (You're So Vain)』の「饅頭」である、という説もあって吃驚した。
そうなのか? そうなのかもしれない。
だって、『うつろな愛 (You're So Vain)』にはミック・ジャガー (Mick Jagger) がバック・ヴォーカルで参加しているぢゃあないか。

ただし、ここで強調したいのは、この「饅頭」疑惑は、最近の岡本真夜 (Mayo Okamoto) 『そのままの君でいて』の「饅頭」された疑惑やスピッツ (Spitz) 『空も飛べるはず』の「饅頭」された疑惑とは、質が違うという点である。
かつては「饅頭」する側だった日本人アーティストが今や「饅頭」される側になった....というのではない。
勿論、それもあるけど、そればかりではない。

ぼく達の視線の方向と同じところに彼らの視線が向いていた。そして、それを幸運にもぼく達は知ってしまった。
そんな、秘密の共有をしているという歓びにも似たものなのである。
きみが好きなものは、ぼくも好き。そして、それを知っているのはぼく達だけである。
観方を変えれば、それは卑屈な片想いに観えるかもしれないし、一歩間違えるとストーカー行為にも陥ってしまう。
そんな危うい疑似恋愛なのである。

だからといって、ぼく達の視線の向かう先が、叙情派フォーク四畳半フォークの連中のそれと同じだったのならば、逆にいたたまれない。
彼らは当時のぼく達の"敵"だったのだから。

甲斐バンドには何故、それを許せたのか。ちょっと複雑な事情がぼく達の方にこそあったのだ。

日本語ロック論争』というものがあった。
1970年から翌年にかけて大瀧詠一松本隆内田裕也 (Yuya Uchida) が雑誌『ニュー・ミュージック・マガジン [当時]  / ミュージック・マガジン [現]』等で論争したもので、テーマは「ロックは日本語で唄うべきか否か」。
現在の音楽状況を考えると、何故、論争せねばならないテーマなのかという気もする一方で、日本語で唄われる今日の音楽のことばを読むと、むしろ、深刻なテーマなのかもしれない。

当時のぼく達は、そんな論争なぞ知るよしもない。
しかし、日常的に聴こえる音楽をあえて遠ざけるかの様に、海外の最新の音楽を聴き漁っていたぼく達にも、それは潜む問題だったのだ。
「何故、意味も解らない、発音も聴き取れもしない、洋楽ロックを聴くのだ」と。

甲斐バンドの、決して洗練されていない演奏と、その上に載るぎこちない日本語の歌詞は、なんとなく、その回答のひとつの様な気がしていた。
それは「饅頭」の味も含めての話だ。

次回は「」。
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>ugg boots classicさん

引用ありがとうございます。

2010.10.26.15.57. |from たいとしはる feat. =OyO=| URL

ugg boots classic

当時のぼく達は、そんな論争なぞ知るよしもない。
しかし、日常的に聴こえる音楽をあえて遠ざけるかの様に、海外の最新の音楽を聴き漁っていたぼく達にも、それは潜む問題だったのだ。
「何故、意味も解らない、発音も聴き取れもしない、洋楽ロックを聴くのだ」と。
http://www.uggwebboots.com/ugg-tall-boots.html

2010.10.26.15.46. |from ugg boots classic| URL [edit]

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