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2010.02.15.00.05

これもまた悪い夢の続き 22.


"Love For Sale"
from the album
"Strollin'"
by
Chet Baker

こんな夢を観た。

駅を出て、ロータリーをぐるっと廻って、その通りに出ると、ヒトの流れもすこしは落ち着いてくる。

改札から放たれるヒトビトは三方に流れ、そして、改札に呑込まれるヒトビトも三方からの流れを成している。
その流れのひとつに巻き込まれながら、地下にある改札口を駆け上がり、ロータリーに出れば、またひとつのカオスだ。物理の授業で習っただろう? 
このロータリーに無目的に立ち止まろうとすれば、次から次へと来る流れに何度も何度もはじかれて、呆然としている己を発見する。みもしらぬところにいる己は、一体誰だ。これをブラウン運動という。
お上りさんや身体の不自由な老人や身障者ではあるまいと、君は笑うかもしれない。しかし、もはや誰もが用なしとなってしまった公衆電話のとば口や、街路樹で覆い隠された空調ダクトの入口に佇む彼らを、君は知っているだろう。あれがブラウン運動の辿り着くはてだ。

そんな駅前のささやかな混沌も、この通りにまで辿り着くと、一段落する。路は広いが、まっすぐに伸びている。ヒトビトは己の目的地だけを目指して、まっすぐに歩いて行くしかない。陽がおちれば、イルミネーションも輝くだろうが、残念ながら今はまだ、午下がり。春を告げる声は毎日の様にアナウンスされるけれども、まだまだ寒い二月だ。コートの襟を立てて、その路を歩むしかない。

それでも、彼らはこの通りに顕われる。
時には、アンケートと称して。時には、自己啓発プロジェクトと称して。時には、新商品のモニターとして。
通りのあちこちで「ここは道路です。物品販売はできません」とか「物品販売・キャッチセールス・署名活動等禁止します」という文字が躍っているが、そんなものはお構いなし。姿形を変えて、年齢や性別すらも変えて、彼らは顕われる。
この冬は、「名刺交換をオネガイシマス」と叫んで奔る、研修中の新人社員として顕われている様だ。
彼らは主に、恰幅のよい中高年サラリーマンを狙っているが、彼らの望むターゲットは多忙で彼らには応じようとはしないだろうし、応じる彼らは [万一いるとしたらだが] 恐らく数日中にその名刺の肩書を喪う様な輩だろう。
にも、関わらずに、彼らは、「名刺交換をオネガイシマス」と叫んで奔る。数週間前には、中年女性に身をやつし、大判のファイルを抱えて、「アンケートお願いします」と蠢いていたのに。
きっと春になれば、この土地に越して来たばかりの、不案内な少年や少女を狙って、新たな装いで顕われるだろう。それまではしばらく、着慣れないスーツ姿の彼らに遭遇する事になる。

彼らの真の目的はなんだ。

だから、時々、声をかける彼らの求めに応じているのだ。
とはいっても、彼らが案内したがっているある場所へは赴かないし、彼らが小脇にしているファイルにある空欄を埋める様なマネは、絶対にしない。
それこそ、彼らの思う壷だからだ。

その代わりにオープンカフェなファスト・フード店に誘って、彼らの話を彼らの赴くままに話させるのだ。そして、時折、頷いたり、やさしい言葉をかけてやればいい。そうすれば、口外してはいけない事を彼らから聞き出せる。
とはいうものの、その成功率は極めて低い。醜い嫁と可愛い孫の話、交際している恋人の為に貢いでいる金額の話、"先生"と呼ぶヒトにまとわりつく俗気たっぷりの同僚の話、そんな愚にもつかない話を延々と聴かされるのが、落ちなのだ。
でも、そんな愚かしい言葉の端々から、彼らの真意が垣間見えるときがあるのだ。
その瞬間をおれは待っているのだ。

そして今、彼らのひとりを誘い出して、こうして向かい合って座っている。どちらが言い出したのか、10分間だけという約束だ。そしてその約束は単なる口実で、そんなものなんかはなっからを守る意思がないのは、お互い様だ。
紺のスーツに白いシャツ。そして恐らくいろいろな自社資料が入っているのだろう大きな黒い鞄、そしてスーツと同色のちいさなバッグ。それらが草臥れてみえるのは、きっと、なかなかみつからない就活で必死になってようやく内定を掴んだという設定なのだろう。ショート・ヘアの彼女の化粧は薄く、唇から出る息は強く弾んでいた。きっとオレが今日最初の獲物だったのだろう。
ともかく名刺交換を、と急いてる彼女をのらりくらり交わしているから、彼女が差し出した名刺は、テーブルの脇に置かれたままだ。

とりあえず彼女の話したい事を話させるがままにして、ようやく本題に入る間際に「もう約束の時間が過ぎたから」と、席を立とうとする。
普段ならば、ここで押したりひいたりして、こちらのペースに引き込むのが常道なのだ。これで、会話の主導権をこちらが握る事が出来る。

ところが今回は何事もなく、席を離れる事が出来た。おれの背に向けて彼女が「ありがとうございました」と投げかけたのだ。
彼らぢゃあなくてホンモノの新人研修だったのかなと思いながら、振り向きもせずに片手をあげる。
そして、店を出る間際に彼女に一瞥した瞬間、おれはあるモノを観てししまった。彼女がテーブルの上にそっとおいたカメラを。

どうやら、木乃伊採りが木乃伊になってしまったらしい。


"Love For Sale"
from the album
"True Stories"
performed by
Talking Heads
for the movie
"True Stories"
directed by
David Byrne
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