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2009.09.08.18.12

いつまで

以津真天 (Itsumade or Itsumaden ; How Long?) とは、『太平記 (Taiheiki)』「巻12 広有射怪鳥事」に登場し、鳥山石燕 (Toriyama Sekien) が妖怪画集『今昔画図続百鬼 (Konjaku Gazu Zoku Hyakki ; "The Illustrated One Hundred Demons from the Present and the Past")』に図象化した怪鳥の事である。
その存在をぼくはジャガー・バックスの『いちばんくわしい 日本妖怪図鑑』[佐藤有文著]で初めて知った。
真倉翔 & 岡野剛のマンガ『地獄先生ぬ~べ~ (Hell Teacher Nube)』「3巻第105話 妖鳥・以津真天」にも登場するらしいのだが、こちらの方は未見である。

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1334年のことである。
紫宸殿殿上に怪鳥が何処ともなく飛来し「いつまでもいつまでも」と鳴く。それが毎晩の様に続く。その年の秋、疫病が流行し、数多くの病死者が出ている。恐ろしいのである。公卿らは弓の名手、隠岐次郎左衛門広有に怪鳥退治を依頼する。彼らは、かつての (Nue) 退治[1153年] の故事を憶い出したのであろう。果たせるかな、隠岐次郎左衛門広有鏑矢 (Signal Arrow) で見事、怪鳥を射落とす事に成功する。
その怪鳥は、人間の様な顔に鋭い牙が生え揃った嘴があり、蛇の様な長い身体に剣の様な爪がある脚、そしてその翼長は5メートル程もあったという。

さて、この逸話をどの様に解釈したらよいのであろうか。
ひとつには、1334年、すなわち建武の新政 (Kenmu Restoration) が興った年であるという事。この逸話が『太平記 (Taiheiki)』 [この書物は南北朝期 (Nanboku-cho Period) を南朝 (Southern Court) 側の視点で観ている] に書かれているという事。そして、上にも記してある様に、 (Nue) 退治が念頭にあったという事である。

つまり、 (Nue) 退治を行った源頼政 (Minamoto no Yorimasa) に、『太平記 (Taiheiki)』の一方の雄である足利尊氏 (Ashikaga Takauji) を準える行為に他ならないのだ。

源頼政 (Minamoto no Yorimasa) は平氏 (Taira Clan) 全盛の時代にあって清和源氏 (Seiwa Genji) としてはひとり従三位 にまで上りつめた人物であると同時に、保元の乱 (Hogen Rebellion) [1156年] 、平治の乱 (Heiji Rebellion) [1159年] でも勝利者の側に与していた人物なのである。にも関わらずに、平氏 (Taira Clan) の専横政治の不満が高まる中、遂には以仁王 (Prince Mochihito) と結託、平氏 (Taira Clan) 打倒の令旨を伝えたのである。
すなわち、平氏 (Taira Clan) から清和源氏 (Seiwa Genji) への権力闘争の転換点に位置し、その起爆剤としての役割を、彼は果たしたのだ。そしてまた、上の文章の"平氏 (Taira Clan) から清和源氏 (Seiwa Genji) への"はそのまま、"平安貴族から武家への"と交換する事も出来るのだ。

それをそのまま、鎌倉末期から建武の新政 (Kenmu Restoration) そして室町幕府 (Ashikaga Shogunate) の開幕までの時代に呼応させれば、ある人物の姿が浮かび上がる。つまり、それが足利尊氏 (Ashikaga Takauji) そのヒトなのである。
後醍醐天皇 (Emperor Go-Daigo) の倒幕の挙兵の際に、反幕府側として六波羅探題 (Rokuhara Tandai) を滅ぼし、鎌倉幕府 (Kamakura Shogunate) 滅亡の勲功となる。そして後醍醐天皇 (Emperor Go-Daigo) による建武の新政 (Kenmu Restoration) が支持を喪うや、後醍醐天皇 (Emperor Go-Daigo) と対立し、遂には武家政権である室町幕府 (Ashikaga Shogunate) を開くのである。
ついでに書いておけば、足利尊氏 (Ashikaga Takauji) もまた清和源氏 (Seiwa Genji) の流れを汲む。

鵺の鳴く夜は恐ろしい」 [映画『悪霊島篠田正浩 (Masahiro Shinoda)監督作品]という。
その恐ろしい (Nue) の登場によって、ちからが支配する時代の開幕が告げられた様に、その約200年後に登場した怪鳥以津真天 (Itsumade or Itsumaden ; How Long?) が鳴く事によって、永きに渡る戦乱の世が始るのだ。

以津真天 (Itsumade or Itsumaden ; How Long?) は、戦乱や疫病等によって、永い間、放置されたままとなっている屍体の前に現れると言う。
そして「いつまでもいつまでも」と鳴くその声は、その放置された屍体の怨霊が「いつまでこのまま屍体を放っておくのか」と訴えているのだと言う。

次回は「」。
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