2009.09.01.20.08
あったりまえぢゃん!?
という話ではなくて、文法的におかしい、否、おかしくないという日本語における大問題の中のひとつ。
確か井上ひさし (Hisashi Inoue) の作品の中にも登場して来た筈だけれども、その出典を捜し出すのはちょっと勘弁してもらいたい。彼の著作物のどれもが、過剰で饒舌で絶妙で妙技が込められているその上に、豊潤なオノマトペ (Onomatopoeia) がてんこ盛りだからだ。僕が読んだ作品の数は、決して多くはないけれども、例えばかの『吉里吉里人 (Kirikirijin)』の単行本は二段組の上に厚さが十数糎もある[文庫版は上巻
中巻
下巻
の3分冊]。広辞苑 (Kojien) がみつからない時は、代わりの枕にするのにちょうど良い。それを一頁一頁捲って捜すのは相当な困難を要するのだ。
というのは、あくまでも余談であって本題に入る前の、枕であります(あれ!? 落ちがついちゃったかな??)
お後が宜しい様で。
次回は「い」。
閑話休題。ここから先は、興味のある方だけお読み下さい。
「ぞうははながながい」を主語[S] と述語[V] に分けようとすると、とっても困るという話。もしくは、述語[V] を「ながい」と仮定したら、主語[S] はどれなんだ、という問題とも言える。
英語の授業でならう5文型で言うと、この文章は、主語[S] + 述語[V] + 補語[C] の「S + V + C」に該当する様に観える。ちなみにこの文法か否かを見分ける方法は、主語[S] = 補語[C] が成立するか否かを観れば良い。成立すれば「S + V + C」で、不成立ならば、主語[S] + 述語[V] + 目的語[O] の「S + V + O」であると言える。
例)
●彼女は、僕の妹だ。
She is my younger sister. ["She" = "my younger sister"]
●彼女は、紅い花束を持っている。
She has red flowers. ["She" ≠ "red flowers"]
では、「ぞうははながながい」では、どうか。
一見すると「ぞうは」と「はなが」のふたつの主語[S] が存在する様に観える。しかしながら、述語[V] との関連性を観てみると、「はながながい」は意味的にも文法的にも成立するが、「ぞうはながい」とは、一体なんなのだろう?
蛇 (Snake) の様に「はらばいで歩きちりを多べる (You will crawl on your belly and you will eat dust) [『創世記 3章 14節 (Genesis 3-14)』より]』象 (Elephant) や、大きく裂けた口と鋭く尖った牙の上に細長く伸びた鼻を持った蛇 (Snake) を想像してしまう。かの『鼻行類―新しく発見された哺乳類の構造と生活
(The Snouters: Form and Life of the Rhinogrades
)』[ハラルト・シュテュンプケ (Harard Stumpke) 著] にもそんな生物は登場しない。
なんだか気持ち悪い。
それではと、とりあえずの落としどころとして立てられた諸説がある。
1. 「は」は所有を表す格助詞の意味に用いられるときがある。
つまり、「の」と同じ意味合いで使われているというのである。英文で書くと解りやすいだろう。"A nose of an elephant is long."=「ぞうのはなはながい」
2. 「ぞうは」が主語[S] 、述語[V] が「はながながい」。
解った様で解らない禅問答の様な説明だが、これも英文で書くと解りやすいだろう。 "An Elephant [is an animal, whose] nose is long."=「ぞうははながながい [動物である]」
3. 「はなが」が主語[S] 、述語[V] が「ながい」。では、「ぞうは」は何かと言うと、文の主題・題目であるという。
これも同じく英語にしてみる。"[In case of an] elephant, a nose is long."=「ぞうに関して言えば、はながながい」
4. いやいやそうではなくて、『源氏物語 (The Tale Of Genji)』等に現れている様に、そもそも日本語には主語[S] と言う概念が希薄で...云々。
5. さらに興味のあるやつは、三上章に『象は鼻が長い―日本文法入門
』という著作があるからそれを読め。
と、いう様な話を聴いたのが、数十年前の今時分、大学受験の補習授業だった。
個人的に納得のいく説もあれば、無体な説もある。

いや、それ以上に疑問なのが、この構文の例として、何故、「ぞうははながながい」が選ばれたのか、それが未だに持って最大の謎なのである。
鼻行類 (Rhinogradentia)だって、鼻が長い[掲載画像は、ヘッケル ムカシハナアルキ (Archirrhinos haeckelii)]。
という話ではなくて、文法的におかしい、否、おかしくないという日本語における大問題の中のひとつ。
確か井上ひさし (Hisashi Inoue) の作品の中にも登場して来た筈だけれども、その出典を捜し出すのはちょっと勘弁してもらいたい。彼の著作物のどれもが、過剰で饒舌で絶妙で妙技が込められているその上に、豊潤なオノマトペ (Onomatopoeia) がてんこ盛りだからだ。僕が読んだ作品の数は、決して多くはないけれども、例えばかの『吉里吉里人 (Kirikirijin)』の単行本は二段組の上に厚さが十数糎もある[文庫版は上巻
というのは、あくまでも余談であって本題に入る前の、枕であります(あれ!? 落ちがついちゃったかな??)
お後が宜しい様で。
次回は「い」。
閑話休題。ここから先は、興味のある方だけお読み下さい。
「ぞうははながながい」を主語[S] と述語[V] に分けようとすると、とっても困るという話。もしくは、述語[V] を「ながい」と仮定したら、主語[S] はどれなんだ、という問題とも言える。
英語の授業でならう5文型で言うと、この文章は、主語[S] + 述語[V] + 補語[C] の「S + V + C」に該当する様に観える。ちなみにこの文法か否かを見分ける方法は、主語[S] = 補語[C] が成立するか否かを観れば良い。成立すれば「S + V + C」で、不成立ならば、主語[S] + 述語[V] + 目的語[O] の「S + V + O」であると言える。
例)
●彼女は、僕の妹だ。
She is my younger sister. ["She" = "my younger sister"]
●彼女は、紅い花束を持っている。
She has red flowers. ["She" ≠ "red flowers"]
では、「ぞうははながながい」では、どうか。
一見すると「ぞうは」と「はなが」のふたつの主語[S] が存在する様に観える。しかしながら、述語[V] との関連性を観てみると、「はながながい」は意味的にも文法的にも成立するが、「ぞうはながい」とは、一体なんなのだろう?
蛇 (Snake) の様に「はらばいで歩きちりを多べる (You will crawl on your belly and you will eat dust) [『創世記 3章 14節 (Genesis 3-14)』より]』象 (Elephant) や、大きく裂けた口と鋭く尖った牙の上に細長く伸びた鼻を持った蛇 (Snake) を想像してしまう。かの『鼻行類―新しく発見された哺乳類の構造と生活
なんだか気持ち悪い。
それではと、とりあえずの落としどころとして立てられた諸説がある。
1. 「は」は所有を表す格助詞の意味に用いられるときがある。
つまり、「の」と同じ意味合いで使われているというのである。英文で書くと解りやすいだろう。"A nose of an elephant is long."=「ぞうのはなはながい」
2. 「ぞうは」が主語[S] 、述語[V] が「はながながい」。
解った様で解らない禅問答の様な説明だが、これも英文で書くと解りやすいだろう。 "An Elephant [is an animal, whose] nose is long."=「ぞうははながながい [動物である]」
3. 「はなが」が主語[S] 、述語[V] が「ながい」。では、「ぞうは」は何かと言うと、文の主題・題目であるという。
これも同じく英語にしてみる。"[In case of an] elephant, a nose is long."=「ぞうに関して言えば、はながながい」
4. いやいやそうではなくて、『源氏物語 (The Tale Of Genji)』等に現れている様に、そもそも日本語には主語[S] と言う概念が希薄で...云々。
5. さらに興味のあるやつは、三上章に『象は鼻が長い―日本文法入門
と、いう様な話を聴いたのが、数十年前の今時分、大学受験の補習授業だった。
個人的に納得のいく説もあれば、無体な説もある。

いや、それ以上に疑問なのが、この構文の例として、何故、「ぞうははながながい」が選ばれたのか、それが未だに持って最大の謎なのである。
鼻行類 (Rhinogradentia)だって、鼻が長い[掲載画像は、ヘッケル ムカシハナアルキ (Archirrhinos haeckelii)]。
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