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2024.02.27.09.44

めいじかいかあんごとりもの

全20話だ。
その1話1話について綴る余力はない。だからと謂って、その中の1篇だけを取り上げて詳細に観ていく事も面倒だ。

拙稿は、その連作時代推理小説 (The Series Of The Historical Mystery Fiction)『明治開化 安吾捕物 (Meiji-kaika Ango Torimono-cho : Civilization And Enlightenment In Meiji Era Ango's Detective Stories)』 [坂口安吾 (Ango Sakaguchi) 作 19501952小説新潮 (Manthly Magazine Shosetsu Shincho : Novels New Tide) 連載] が1冊の書籍に編まれた際に、必ず冒頭に据え置かれる『読者への口上 (The Statement For The Readers)』[1951小説新潮 (Manthly Magazine Shosetsu Shincho : Novels New Tide) 掲載] を中心にして綴ってみたいと思う。だから総論 (The Outline) ですらない。

猶、書籍上ではこの連作時代推理小説 (The Series Of The Historical Mystery Fiction) は『明治開化 安吾捕物帖 (Meiji-kaika Ango Torimono-cho : Civilization And Enlightenment In Meiji Era Ango's Detective Stories)』と謂う表題なのだが、雑誌連載時は『明治開化 安吾捕物 (Meiji-kaika Ango Torimono-cho : Civilization And Enlightenment In Meiji Era Ango's Detective Stories)』だったと謂う。拙稿の表題はそちらの方を採用させて頂いた。

拙稿のテキストである『読者への口上 (The Statement For The Readers)』に綴られてあるのは、その連作時代推理小説 (The Series Of The Historical Mystery Fiction) の構成に関する言及である。それ以上のモノでもそれ以下のモノではない。
だけれどもそれ故に逆に、そこで語られる物語、そしてその物語に附随する謎とは別に、この連作続時代推理小説 (The Series Of The Historical Mystery Fiction) を巡る謎が、浮上してくるのだ。

例えば、作者は何故、連作時代推理小説 (The Series Of The Historical Mystery Fiction) の舞台としてその時代を選んだのだろうか、と謂う点である。

連作推理時代小説 (The Series Of The Historical Mystery Fiction) 第1話『その一 舞踏会殺人事件 (The Ball Murder Case)』[1950小説新潮 (Manthly Magazine Shosetsu Shincho : Novels New Tide) 掲載] には、その事件が起こった年を明治十八 (1885) 年から明治十九 (1886) 年 としている。
この時季、連作時代推理小説 (The Series Of The Historical Mystery Fiction) で探偵役を引き受ける事となる勝海舟 (Katsu Kaishu) は当時62歳、1885年に元老院議官 (Genroingikan : Senator) に就任する事となるが、その年が改まる前に、その職を辞している。つまり、無役であり浪人中の隠居同然の生活なのだ。それ故に、彼が虚構の世界に於いて探偵役を買って出させるには、何ら支障がなにい様に思える。

だが、それだけだろうか。

一方で、明治十八 (1885) 年から明治十九 (1886) 年と謂う時代を念頭に視線を欧州に注げば、連作『シャーロック・ホームズ・シリーズ (Canon Of Sherlock Holmes)』 [全62作 18871927年に発表] の処女作である小説『緋色の研究 (A Study In Scarlet)』[アーサー・コナン・ドイル (Arthur Conan Doyle) 作 1886年執筆 1887年発表 ビートンのクリスマス年鑑 (Beeton's Christmas Annual) 掲載] はまだ登場していない。推理小説 (Mystery Fiction) の歴史では、本格派推理小説 (Orthodox School Mystery) に於ける探偵の筆頭に挙げられるべきシャーロック・ホームズ (Sherlock Holmes) は未だ世にでていないのだ。と、謂う事は当時の推理小説 (Mystery Fiction) と謂うモノは捕物帖 (Trimono-Cho : Detective's Memoirs) まがいの作品であった、そんな認識が成立する。
つまり、連作時代推理小説 (The Series Of The Historical Mystery Fiction) が、捕物帖 (Trimono-Cho : Detective's Memoirs) と名乗り大手を振って歩くのになんら支障もない時代であった、そう断定する事も決して不可能ではないのだ。
但し、この見解に関してはひとつ難点がある。その年以前に推理小説 (Mystery Fiction) と謂うかたちでかの名探偵の活躍は紹介されてはいないが、処女作の後に発表される作品群の分析を通じて、シャーロック・ホームズ (Sherlock Holmes) が活躍した時季、すなわち彼が解決した幾つもの事件の発生期は同定されている。つまり処女作以前から彼の活躍は始まっているのだ。その分析にあたるシャーロキアン (Sherlockian) 諸氏の説は幾つもあるが [こちらを参照の事]、彼が最も早い時季に遭遇しなおかつ解決した事件は短編小説『グロリア・スコット号事件 (The Gloria Scott)』』[アーサー・コナン・ドイル (Arthur Conan Doyle) 作 1893ストランド・マガジン (The Strand Magazine) 掲載] に綴られてあるモノで、その時季は18731875年と看做されている。
そんな、物語の中での時間推移を前提にしてしまえば、連作時代推理小説 (The Series Of The Historical Mystery Fiction) の舞台となった時代設定にシャーロック・ホームズ (Sherlock Holmes) 云々を言及するのは不可能時になってしまう、とも謂えるのだ。

視点を変えよう。
問題を解決するヒントのひとつに、作品名にある明治開化 (Meiji-kaika : Civilization And Enlightenment In Meiji Era) と謂う語句が挙げられるのではないだろうか。
つまり、作者は何故、文明開化 (Bunmei-kaika) [18681878年頃] とせずに、明治開化 (Meiji-kaika : Civilization And Enlightenment In Meiji Era) [この4文字熟語自体は作者の創作である様に思われる] としたのだろうか、と謂う点を考えてみるのだ。

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連作時代推理小説 (The Series Of The Historical Mystery Fiction) が舞台とした明治十八 (1885) 年から明治十九 (1886) 年は、所謂文明開化 (Bunmei-kaika) の終焉期にあたる。当時は政府によって欧化政策 (Europeanization) [18811890年頃] が採用された所謂鹿鳴館 (Rokumeikan) [18831940年存在] の時代である[上掲画像は、探景 井上安治 (Yasuji Inoue) 作 『鹿鳴館 (Rokumeikan, From Tokyo Shinga Meisho Zukai : Rokumeikan From The Series True Pictures Of Famous Places In Tokyo)』1884年頃]。

しかも、欧米からの文化文明の受容からさらにその先、「脱亜入欧 (Out Of Asia And Into Europe)」[1887年頃] と謂う標語が登場し始めた時季でもある。
文明開化 (Bunmei-kaika) の時代が終焉し、明治 (Meiji)と謂う時代はこれから先だ、明治開化 (Meiji-kaika : Civilization And Enlightenment In Meiji Era) と謂う語句にはそんな歴史認識が介在しているのかもしれない。
そしてさらに、作者坂口安吾 (Ango Sakaguchi) にとって、その時代は彼がこの連作時代推理小説 (The Series Of The Historical Mystery Fiction) を執筆した時季に相応するモノにみえたのではないだろうか、とぼくは思うのだ。
つまり、黒船来航 (Perry Expedition) [1853年] によって鎖国 (Sakoku : Locked Country) [16391854年] から開国 (The Opening To Japan) [1854年] となり、その到達点としての王政復古 (Meiji Restoration) [1867年] を迎える。その結果として到来したのが文明開化 (Bunmei-kaika) と呼ばれる時代だ。
その経緯と同じモノを、第2次世界大戦敗戦 (Japan Surrenders) [1945年]、連合国最高司令官総司令部 (Supreme Commander For The Allied Powers) による占領政策 (Occupation Of Japan) [19451952年] があり、その結果としてのいまの文化潮流がある、と謂う様な。そしてそれは、文明開化 (Bunmei-kaika) を経て明治 (Meiji) と謂う時代が事実上開始した様に、2年後に於ける講和条約『日本国との平和条約 (Treaty Of Peace With Japan)』 1951年締結 1952年公布] によって更なる変化を迎えるであろう、と謂う様な、半ば期待と願望が込められている様な気配すらある。
あの時代が明治開化 (Meiji-kaika : Civilization And Enlightenment In Meiji Era) ならば、いまは昭和開化 (Show-kaika : Civilization And Enlightenment In Showa Era) だ、と。

と、ここまで綴ってきてぼくはたじろいでしまう。ここまでは良い。異論反論はあるだろうが、そんな時代解釈は決して不可能ではない。だけれども、そんな時代に何故、連作時代推理小説 (The Series Of The Historical Mystery Fiction) が登場すべきなのか、本来ならここから語るべきモノをぼくはまだ入手していないのだ。

いまぼくが謂える事は、推理小説 (Mystery Fiction) の牙城とも呼ぶべき雑誌『新青年 (Shin Seinen)』[19201950博文館 (Hakubunkan) 刊行] が休刊してしまい、推理小説 (Mystery Fiction) のひとつの時代が終わってしまった事、そして、通常ならば、戦後の混乱期が小説『点と線 (Points And Lines)』[松本清張 (Seicho Matsumoto) 作 19571958年 雑誌 (Bimonthly Magazine Travel) 連載] に代表される様な社会派推理小説 (Social Mystery Novel) の登場を促したとか謂うかたちに解釈すべきならば、それを前提にして坂口安吾 (Ango Sakaguchi) ならではの社会派推理小説 (Social Mystery Novel) が登場しても良いのだ。
だが、彼はそうはしなかった。
解っているのは、彼は時代に逆行する様なかたちでこの連作時代推理小説 (The Series Of The Historical Mystery Fiction) を執筆した、と謂う事だけなのだ。

次回は「」。

附記 1 .:
連続時代推理小説 (The Series Of The Historical Mystery Fiction) を原作とする映像化作品は幾つもあるが、ぼくが体験したのは、その最初の作品であるTVドラマ『新十郎捕物帖・快刀乱麻 (Shinju-ro Torimono-cho Kaitoranma : Shinju-ro's Detective Stories Cutting The Gordian Knot)』 [坂口安吾 (Ango Sakaguchi) 原作 19731974朝日放送系列放映] だけだ。
そのTVドラマの放送時間帯は、当時のぼくにとっては、大人の時間であり、子供は寝る時間だったから、その放送回総てを体験した訳ではない。そして、再放送も観た事もない。だけれども、その印象は今でも強く遺っている。
その番組名にも原作同様に捕物帖 (Trimono-Cho : Detective's Memoirs) と謂う文字が踊るが、物語の舞台設定は原作同様、明治時代 (Meiji Era) である。しかし、物語の主題になるのは、時代劇 (Period Drama) 特有の義理人情 (Duty And Humanity) の物語でもない。
難事件が勃発する。そしてその解決に乗り出す探偵が2人いる。この辺は、銭形平次 (Heiji Zenigata) と三の輪の万七 (Manshichi, Minowa) が覇を競う時代劇小説 (Period Drama Novel)『銭形平次捕物控 (Zenigata Heiji)』[野村胡堂 (Kodo Nomura) 作 19311957文藝春秋オール讀物号 (Monthly Magazine All Yomimono : All Of Reading) 連載] に似ていなくもない。結城新十郎 (Shinju-ro Yuki) [演:若林豪 (Go Wakabayashi)] と勝海舟 (Katsu Kaishu) [演:池部良 (Ryo Ikebe)] が智慧と推理を駆使するのだ。
そして、2人の探偵にはそれぞれ、銭形平次 (Heiji Zenigata) である結城新十郎 (Shinju-ro Yuki) には八五郎 (Hachigoro) がいる様に古田鹿蔵 (Shikazo Furuta) [演:河原崎長一郎 (Choichiro Kawarasaki)] がおり、その一方で三の輪の万七 (Manshichi, Minowa) である勝海舟 (Katsu Kaishu) にはお神楽の清吉 (Seikichi, Okagura) がいる様に泉山虎之介 (Toranosuke Izumiya) [演:花紀京 (Kyo Hanaki)] がいる。実は覇を競っているのは,結城新十郎 (Shinju-ro Yuki) と勝海舟 (Katsu Kaishu) ではない。彼等2人の周縁に、彼等の一方を支持する人物がそれぞれ何人も屯している。自身が信奉する探偵に「親分、てぇへんだ (My Boss, Horrible Thing Happen!)」とばかりに事件概要を進駐する古田鹿蔵 (Shikazo Furuta) と泉山虎之介 (Toranosuke Izumiya) はその代表格なのだ。つまり、ひとつの謎、その解決を巡って常に2派があい争っているのだ [もしかしたらこの対立図式は当時の政権闘争等の構図をそのまま当てはめたモノなのかもしれない]。当時のぼくは子供心に、事件の謎やその解決とは無縁の、彼等のいがみ合いが意外と愉しみではあった。
勿論、肝腎要の事件や謎の解明は愉快なのだ。その番組の原作たる連続時代推理小説 (The Series Of The Historical Mystery Fiction) そのまま、すなわち、『読者への口上 (The Statement For The Readers)』にある小説の構造に素直に従った、その小説自体、逸話によってはその構造を遵守する事なく進行する事もあるから、原作以上に愚直に『読者への口上 (The Statement For The Readers)』に忠実な番組展開は、単純明快なだけに解りやすかった。
例えば学年誌 (Gakunen-shi : Learning Magazines For Each Grade) の付録や特集、そして児童向叢書『ジュニアチャンピオンコース (Junior Champion Course)』[19711977学習研究社 (Gakken) 刊行] にある事件や推理、もしくは名探偵の活躍を綴った文章の様に、事件の勃発、関係者の証言が語られ終わったと同時に改頁される様なモノなのだ。『読者への口上 (The Statement For The Readers)』にある様に「雑誌をふせて一服しながら推理」する様に、CMが放送されている時間に推理する事が自ずと促せられるし、そしてそうする事によって楽しめる。そんな構成なのだ。
番組ではその段階で古田鹿蔵 (Shikazo Furuta) や泉山虎之介 (Toranosuke Izumiya) に代表される取り巻き双方がそれぞれ、真犯人や事件の実際を推理もするし、そしてそれを聴いた反対勢力の面々がその説に対し揚げ足を取る様に反証を発言をする光景があったかと思う。事件の謎をめぐる彼等の妄言や迷言さえもが、番組を観ているぼく達にも、推理への参加を促している様にもみえた。あたかも、彼奴等よりもまともな推理は出来るだろうね、そんな挑発めいた雰囲気で。
ともあれ、この番組の印象に引きずられまま後に、ぼくはその原作たる連作時代推理小説 (The Series Of The Historical Mystery Fiction) の文庫を買ってもらうのだ。おそらく、ぼくがこれまで親しんできていた児童書への決別、大人向けの小説 [と謂うと変な表現、艶かしい空想が発動しそうになってしまうが] を読み始めた最初期の1冊がこの作品のなのである。
連作『シャーロック・ホームズ・シリーズ (Canon Of Sherlock Holmes)』でさえ児童向けの書籍を読んでいた時季の事だ。

附記 2. :
この番組に登場する勝海舟 (Katsu Kaishu) は泉山虎之介 (Toranosuke Izumiya) からの報告に耳を傾け、その聴き及んだ内容だけで推理する。完全なる安楽椅子探偵 (Armchair Detective) として行動する。自身の書斎から1歩も出ない。それ故に、いつも推理の成果は思わしくない。よって、その責を泉山虎之介 (Toranosuke Izumiya) に負わせる。おまえはちゃんと報告していないぢゃないか、と。
ところで勝海舟 (Katsu Kaishu) と謂う実在の人物が登場する連作推理時代小説 (The Series Of The Historical Mystery Fiction) をこの時期、TVドラマ化したのだろうと問えば、恐らく、こんなところに理由があるのではないだろうか。
この番組が放映される1年後、勝海舟 (Katsu Kaishu) を主人公とするNHK大河ドラマ (Taiga Drama) 『勝海舟 (Katsu Kaishu)』[子母沢寛 (Kan Shimozawa) 原作 1974NHK放映] が放映される事となっているのだ。
だとしても、その盛り上がりに便乗しようとしたのか、それとも、そんな番組の主人公がこの番組で迷推理を披露しては失敗ばかりさせる事によって、それを下降させようとしたのか、その解釈には悩むばかりだが。

附記 3. :
序でに綴っておけば、その番組の主題歌『少女ひとり (A Girl Only)』 [作詞:佐々木勉 (Ben Sasaki) 作曲:都倉俊一 (Shunichi Tokura) 歌唱:内田喜郎 (Yoshiro Uchida)] が妙に印象に遺っているのだ。
捕物帖 (Trimono-Cho : Detective's Memoirs) の主題歌に相応しくないばかりか、刑事モノや犯罪モノの番組主題歌としても相応しくない。そしてそれ故に、こころに遺る。
だがその一方で、この番組を離れたところで、好評価だったと謂うモノでもない。つまり、番組主題歌として殉じてしまっているのだ。
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