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2024.02.18.08.22

『クリシェ (Cliche)』 by 大貫妙子 (Taeko Onuki)

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今回はじめて聴く。
ぼくの手許には随分、ながいまえからある。
この場合と同じ、かつての同居人の所有物、その忘れ物のひとつである。

当時、ぼくのいる前で彼女がターンテーヴル (Turntable) 上にこの作品を載せる事はなかった。チャンネル権 (Channel Leader) ならぬターンテーブル権 (Turntable Leader) は彼女にはなく、ぼくにあったからだ。だからと謂って、ぼくの不在時に彼女がこの作品を聴いていたかどうか。と、謂うのは、ぼくと暮らす頃の彼女の嗜好とは随分とかけ離れたモノだったからだ。そして、だからこそ、ぼくと謂う人物と暮らす事もできたのかもしれない。
だけれども、時折、彼女は楽曲『ピーターラビットとわたし (Peter Rabbit To Watashi)』をくちずさむ事がある。本作の収録曲のひとつだ。
ぼくにとってのこの作品は、そんな彼女の愛唱曲が収録されているモノだと謂う事、ただそれだけなのだ。
勿論、大貫妙子 (Taeko Onuki) と謂うアーティストの存在は知っている。彼女と謂えば、欧羅巴 (Europe) だ。だけれども、この等号が成立する理由はとんと知らない。第一に、本作を彩っているのは当時の主流の色彩、パステル調 (Pastel Color) のモノなのだ。この色彩感覚ひとつとりあげるだけで、当時のぼくそしていまのぼくにも無縁な作品なのだ。
だからずっと、彼女がぼくから離れていってからもずっと、てつかずのまま、埃りにまみれていたのであった。

聴いて驚いた。
なんだかこの楽曲は知っているぞ、と。しかも知っているばかりではなく、楽曲が流れているその前後、追う様に先走る様に、その楽曲の旋律が脳裏にうかぶ。
第3曲『ピーターラビットとわたし (Peter Rabbit To Watashi)』がそうであるのは当然だ。彼女がくちずさんでいたのだから。しかも脳内に流れるその声は大貫妙子 (Taeko Onuki) のそれではなくてあのおんなの声なのだ [こまったもんだ]。
多分、当時そしていまも、ぼくが親しんでいる音楽よりもさらに、大貫妙子 (Taeko Onuki) の作品、彼女の楽曲はポピュラリティのあるモノなのだろう。巷で、ラジオ (Radio) で、テレビ (Televison) で流れているその旋律に聴き馴染んでいたのに違いない。
調べてみると、楽曲『黒のクレール (Kuro No Clair)』は日立マクセル (Hitachi Maxell, Ltd.)カセットテープ (Maxell Cassettes) のCM楽曲であり、楽曲『ピーターラビットとわたし (Peter Rabbit To Watashi)』はキユーピー (Kewpie Corporation) のキユーピーマヨネーズ (Kewpie Mayonnaise) のCM楽曲なのだ。それならば当然だろう。でも、半世紀近くも前の事だからね。
だとしても、もしかしたらここまで綴ってきたやや、追憶の向こうへ向かう様な感傷的な戯言はぼくの勘違いなのかもしれない。同居人がくちずさんでいたからではなくて、TV番組『キユーピー3分クッキング (Kewpie 3 MInuts Cooking)』[1962年より CBC制作] の放送前後でその楽曲を聴いた記憶なのかもしれない。謂うまでもなく、その帯番組は、楽曲『ピーターラビットとわたし (Peter Rabbit To Watashi)』を自社製品のCM楽曲に起用した企業、キユーピー (Kewpie Corporation) の提供番組なのだ。

作品は2人の編曲者が参加している。坂本龍一 (Ryuichi Sakamoto) とジャン・ミュジー (Jean Musy) だ。アルバム前半には坂本龍一 (Ryuichi Sakamoto) 編曲担当楽曲が並び、その後半にはジャン・ミュジー (Jean Musy) 編曲担当楽曲が並ぶ。アナログ音源で謂えば、片面づつ、綺麗に棲み分けた格好だ。
ウィキペデイア (Wikipedia) のこの頁には、このふたりが起用された理由や経緯が縷々と綴られている。綴られてはいるがその結果、逆にいくつもの疑問が生じないではない。
例えば、ジャン・ミュジー (Jean Musy) による全曲の編曲でも良かったのではないか、さもなければ、彼の編曲担当楽曲5曲のみを収録したミニ・アルバム (Mini Album) でも良かったのではないだろうか、と謂う様な事だ。
勿論、その逆が成立しても良い。
だけれども、そんな疑問を呈させるのが、最終楽曲『黒のクレール [reprise] (Kuro No Clair)』なのである。この編曲に載せた大貫妙子 (Taeko Onuki) の歌唱を聴きたいと、どうしてもおもってしまう [もしかしたらこの欠乏感が本作を愛聴させる動機となる可能性もあるのだろうか]。

聴いておもうのは作品全体を貫いている色調がノスタルジック (Nostalgic) と謂う語句で表現出来てしまう事だ。
だけれども坂本龍一 (Ryuichi Sakamoto) 編曲担当楽曲とジャン・ミュジー (Jean Musy) 編曲担当楽曲とは、ノスタルジック (Nostalgic) の質が違う。前者に於けるノスタルジック (Nostalgic) は、嗚呼、あの時代はこういう音色、こういう編曲が主流だったと謂うぼく個人の体験もしくは時間の経過が想起させるモノだ。その一方で、後者はもう少し前の時代に意識を向かわせる。それを普遍的なモノさもなければ常套句 (Cliche) としてのノスタルジック (Nostalgic) と呼ぶべきなのかもしれない。
だけれどもその一方で、より新鮮に響くのは後者の方なのだ。

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アルバム・ジャケットは、エコール・ド・パリ (Ecole de Paris) 時代の [売れていない] 画家の1室を1982年当時の美意識で再現したと看做す事が出来る。彼女が棲み暮らし制作に勤しむこの画室 (Atelier) は屋根裏部屋 (Le Grenier) にあるのだ [初めて観た時、なんでこんな中途半端な場所にちゅうぶらりんで窓枠があるのだろうと思った]。と、謂う事は画面右隅にある奇妙なオブジェ (Objet)) は彼女が手掛けるもしくは手がけた静物画 (Still Life) の題材の植物を模したモノで、画面左に据えられた等身大のデッサン人形 (Wooden Manikin) は実は、モデルとしての [生身の] 裸婦を意図したモノなのかもしれない。
そんなふうに解読してしまうと、本作のヴィジュアルは、その制作動機の根本は違うのだろうが、マネキン人形 (Mannequin) 達と雀卓 (Mahjong Table) をメンバー3人が囲む、イエロー・マジック・オーケストラ (Yellow Magic Orchestra) のアルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー (Solid State Survivor)』 [1979年発表] と同趣旨なのかもしれないのだ。

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ところで、本作は先行する大貫妙子 (Taeko Onuki) の2作品、アルバム『ロマンティーク (Romantique)』 [1980年発表] とアルバム『アヴァンチュール (Aventure)』[1981年発表] とによって「ヨーロピアン三部作 (Europian Trilogy)」を成していると謂う。その3部作の掉尾を飾るのが本作だ。

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「ヨーロピアン三部作 (Europian Trilogy)」と謂えば、加藤和彦 (Kazuhiko Kato) には「ヨーロッパ三部作 (Europe Trilogy)」がある。アルバム『パパ・ヘミングウェイ (Papa Hemingway)』 [1979年発表] とアルバム『うたかたのオペラ (L 'Opera Fragile)』 [1980年発表] そしてアルバム『ベル・エキセントリック (Belle Excentrique)』[1981年発表] である。

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そして3部作を成す第1作のジャケット・デザインは、南洋の孤島の様にも洒落た礼服 (Black Tie) の様にもみえる、シンプルでミニマムなデザインである 。このどこが欧羅巴 (Europe) なのだろう、と思う。
なんだか、本作のバック・カヴァーにある臙脂色 (Dark Red) の襟締 (Necktie) をあしらったデザイン、そしてそれは恐らく画家と謂う設定の大貫妙子 (Taeko Onuki) が描いた素描 (Dessin) のひとつと謂う認識なのだろうが、それがその作品とそれが成す3部作への言及の様に思えなくもない。もう一度謂うと、本作の色調は、欧羅巴 (Europe) のそれとはあまりにかけ離れたモノなのだ。

ものづくし (click in the world!) 256. :『クリシェ (Cliche)』 by 大貫妙子 (Taeko Onuki)


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クリシェ (Cliche)』 by 大貫妙子 (Taeko Onuki)

A-1 黒のクレール
  大貫妙子 作詞・作曲/坂本龍一 編曲 (4:56)
A-2 色彩都市
  大貫妙子 作詞・作曲/坂本龍一 編曲 (3:34)
A-3 ピーターラビットとわたし
  大貫妙子 作詞・作曲/坂本龍一 編曲 (3:10)
A-4 LABYRINTH
  大貫妙子 作詞・作曲/坂本龍一 編曲 (4:33)
A-5 風の道
  大貫妙子 作詞・作曲/Jean Musy 編曲 (3:29)
B-1 光のカーニバル
  大貫妙子 作詞・作曲/ Jean Musy 編曲 (3:15)
B-2 つむじかぜ
  大貫妙子 作詞・作曲/ Jean Musy 編曲 (3:08)
B-3 憶ひ出
  大貫妙子 作詞・作曲/ Jean Musy 編曲 (3:40)
B-4 夏色の服
  大貫妙子 作詞・作曲/ Jean Musy 編曲 (3:08)
B-5 黒のクレール [reprise]
  大貫妙子 作曲/Jean Musy 編曲 (3:09) (インストルメンタル)

MUSICIANS
Jean Musy : Arrangement, Keyboard (A-5, B-1. 2. 3. 4. 5)
Pierre Alandahn : Drums (A-5, B-3. 5)
Sauver Mallia : Bass (A-5, B-2. B-3. 5)
Claude Samard : Guitar (A-5, B-3)

坂本龍一 : Arrangement, Keyboard, Drums (A-1. 2. 3. 4)
大村憲司 : Guitar (A-1. 2. 3. 4. 5)
浜口茂外也 : Percussion (A-2. 4)
細野晴臣 : Bass (A-1)
村上秀一 : Drums (B-2)
epo : Background Vocals (A-2)

細野晴臣 : appear through the courtesy of ALFA Records

Cliche : T. O.

Face 1
KURO NO CLAIR*
SHIKISAI TOSHI*
PETER RABBIT TO WATASHI*
LABYRINTH*
KAZE NO MICHI

Face 2
HIKARI NO CARNIVAL
TOURBILLION
MEMOIRE
NATSUIRO NO FUKU
CLAIR NOIR

Paroles et Musiques : Taeko Onuki

Produit et realise pour RCA par Shigeki Miyata : pour MIGNONNE par Taeko Onuki

Arrangement et Direction Musicale : Jean Musy
Arrangement et Mixage : Ryuichi Sakamoto*
Enregristrement et Mixage : Yasuo Sato Hitokuchizaka ; TOKIO*
Didier Lize : et Gilbert Caruso STUDIO DELPHINE ; PARIS
Gravure et Photos : Kohei Onishi
Conception graphique : Kotaro Sugiyama, Muneyuki Sekiya et Atsushi Gunge

Direction artistique : Kenichi Makimura assiste de Hidenori Ogawa

Arigato a Tsuya Morita (Le Poin) M.et Mme Oguma

(P) '82 RVC CORPORATION
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