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2023.11.19.08.12

『アイ・スタンド・アローン (I Stand Alone)』 by アル・クーパー (Al Kooper)

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本作が名盤と呼ばれる事には異論がない。
だけれども、果たしてこれが彼の最高傑作なのだろうか。

だからと謂って、マイク・ブルームフィールド (Mike Bloomfield) と帯同したアルバム『スーパー・セッション (Super Session)』 [1968年発表] やそのライヴ篇であるアルバム『フィルモアの奇蹟 (The Live Adventures Of Mike Bloomfield And Al Kooper)』 [1969年発表] を持ち出すつもりは毛頭ない。
だから、彼が参加したブルース・プロジェクト (The Blues Project) やブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ (Blood, Sweat And Tears) を引っ張り出すつもりもない [と、謂いながら前者に関しては既にここで綴ってしまっているし、後者は拙稿において別のかたちで登場するだろう]。
つまり、ボブ・ディラン (Bob Dylan) とのセッションが彼のベスト・プレイなんだとほざく事は決してないから安心して欲しい、そう謂う事なんだ。
比較、検討するのは彼名義のソロ・アルバムだけなのである。

予断を避ける為にここに、綴っておくけれども、第6作『赤心の歌 (Naked Songs)』 [1972年制作] は好きな作品ではない。みんなの好きな楽曲『ジョリー (Jolie)』の一体、どこが良いのだろう、と思う。

本作を知ったのは、1974年に「ミュージック・ライフ選定 (Music Life Magazine Selection)」と銘打って発売された「不滅のロック名盤 (Immortal Rock Masterpieces)」シリーズの1作として、だ。
今の視点からすると、そこにある雑誌『ミュージック・ライフ (Music Life Magazine)』[19371998シンコーミュージック・エンタテイメント (Shiko Music Entertainment Co., Ltd.) 刊行] の地位や評価に驚く。ぼくにとってはその雑誌はクイーン (Queen) から始まるビッグ・イン・ジャパン (Big In Japan) を果敢に推進していた雑誌、10代少女向けのアイドル雑誌と謂う認識が強いのだが、それとは全く異なる権威がそこに起動している事を知らされる。
そのシリーズ作が発売された当時、その名義を冠して発売された諸作の特集記事が掲載されてあった様に思う。だけれども、それはぼくにとっては馬の耳に念仏 (A Nod Is As Good As A Wink...To A Blind Horse) に等しいモノではあったのだ。
先ず、選定された作品の殆ど、それを制作し発表したアーティストの殆どをぼくは知らない。せいぜいジャニス・ジョプリン (Janis Joplin) くらいか。名前を聴いた事があるかもしれないのは。
もう少し後に知る事になる、サンタナ (Santana) は楽曲『哀愁のヨーロッパ (Europa [Earth's Cry Heaven's Smile])』 [アルバム『アミーゴ (Amigos)』 [1976年発表] 収録] 以前だろうし、それと同様にフリートウッド・マック (Fleetwood Mac) は当時の大ヒット作『噂 (Rumours)』 [1977年発表] 収録] とはメンバーはおろか、音楽性すら違うだろう。そんな彼等ではなくとも、その殆どに収録された楽曲を先ず、聴いた事はなかったのだ。
[と、ここまで綴ってきて思うのは、世代が異なればこのシリーズへの認識や感慨は全く異なるんだろうなぁ、と謂う事だ。]
それよりもぼくを吃驚させたのは、限定盤と謂う扱い、そしてそれに基づく価格設定なのだった。
1,500円、当時のエルピー・レコード (LP : Long Play Record) の価格設定はどのレコード会社も2,500円で統一されていたから、破格な設定なのだ。
確か、音楽誌とは全く無縁の一般の新聞紙上でも記事になっていたと思う。
そしてこれ以降、他社もこれに追随するのだ。かつての名盤と評価される諸作が1,500円から2,000円の価格設定で限定発売され始めるのだ。
後にコンパクト・ディスク (CD : Compact Disc) と謂う新しいメディアが誕生し一般化する際にみられたモノと同様の現象が実はここに出来しているのである。
ぼく達からみれば、新作も旧作も対等に聴き、評価出来る環境が顕れたと謂う事になる。
そして面白い事に、この手法が流通していたのは、パンク (Punk)~ニュー・ウェイヴ (New Wave) 登場期と重なる事なのだ。
ロック (Rock) と謂う音楽の爛熟、もしくは新たなる世代の擡頭の予感がそこにはあったのだろうか、と今にしておもう。

アル・クーパー (Al Kooper) の話題から逸脱してしまった。
だけれども、全く無縁なはなしではない。

本作のヴィジュアル、自由の女神 (Statue Of Liberty) の頸を自身のそれとすげかえてしまったその図象が、その「不滅のロック名盤 (Immortal Rock Masterpieces)」シリーズのシンボルとして起用されていたのである。雑誌『ミュージック・ライフ (Music Life Magazine)』に選定された諸作のどの帯上部にも、そのシンボルが掲載されていたのだ。
ぼくが彼、アル・クーパー (Al Kooper) と謂うアーティストを知ったのはそう謂う経緯なのである。
[だけれども、実際に本作を聴く事が出来たのは初CD化された1992年になってからの事である。]

つまり、それだけ本作のヴィジュアルが解りやすかったのである。
[かつての] 新しい音楽、新しい音楽家、それにあたかも灯火をなげかける様な面持ち、それは当時の音楽シーンをあたかも導いてきたかの様な印象さえ与える。
本作の評価と謂うモノはもしかしたら、そのシリーズが与えたモノではないだろうか。そんな疑念が生じないでもない。

と、綴ってしまうとぼくが本作に対して否定的立場をとっているのかと謂うと決してそうではない。
本作が秀でた作品である、それを前提にした上で、綴ってみたい事があるのだ。

ひとつは本作が当時のアル・クーパー (Al Kooper) の現状、彼に対する環境を前提とした作品であろう、と謂う事だ。
"アイ・スタンド・アローン (I Stand Alone)"、すなわちぼくはひとりぼっちでここにいる。ニューヨーク (New York City) の突端にあるリバティ島 (Liberty Island) に立つ自由の女神 (Statue Of Liberty) がいいそうな台詞ではある。だがそれがアル・クーパー (Al Kooper) の台詞となると、彼女の、彼女と謂う存在がなげかけるメッセージとは異なる意味にはなるだろう。
本作の収録曲のひとつに楽曲『ワン (One)』がある。作者のハリー・ニルソン (Harry Nilsson) が1968年、自身のアルバム『空中バレー (Aerial Ballet) 』に収録して発表したモノだ。その楽曲『ワン (One)』がカヴァーされて本作に収録されている事によって、あたかも作品名でもある「アイ・スタンド・アローン (I Stand Alone)」と呼応、補強しあっている様にみえる。だけれども、その結果、その楽曲の発表当時の作者の心情とは異なる位置に、その曲は移行された様にみえる。
ひとり (I'm Alone) である事、孤独 (Lonleyness) である事が何故か、誇らしいモノにみえるのだ。それはもしかしたら、孤独 (Lonelyness) ではないのかもしれない。嫌な解釈をすればそれは孤立 (Isolation)、自讃してみればそれは孤高 (Solitary) と響くかもしれない。
そしてそれはそのまま作品全体はおろか、アル・クーパー (Al Kooper) と謂うアーティストを巡る環境そのものへの言及である様にもみえるのだ。

本作は楽曲『序曲 (Overture)』で幕を開け、楽曲『アンボーン・チャイルドに捧げる歌と踊り (Song And Dance For The Unborn, Frightened Child)』で幕を閉じる。収録された12曲全体がひとつの作品、コンセプト・アルバム (Concept Album) と謂えばきこえはいいが、現在のぼくの視点から謂うとすこし冗長にすぎる [早く2曲目である、実質的には最初の楽曲『アイ・スタンド・アローン (I Stand Alone)』を聴きたいのだ]。
そして、ふと思う。
この構成は、楽曲『オーヴァーチュア [序曲] (Overture)』で始まり楽曲『ソー・マッチ・ラヴ / アンダーチュア (So Much Love / Underture)』で終わる、ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ (Blood, Sweat And Tears) の第1作『子供は人類の父である (Child Is Father To The Man)』 [1968年発表] と同じ構成ではないか。誰もが知る様にそのバンドはアル・クーパー (Al Kooper) とスティーブ・カッツ (Steve Katz) の双頭バンドとして結成されたのにも関わらず、その1作の制作をもって追われる様に彼は脱退したのだ。
それを念頭に置けば、その第1作が成立したのは、自身の存在故である、そんな自負とも、曳かれ者の小唄 (Many A One Sings That Is Full Sorry.) とも怨み節 (Song With Lyrics About Resentment And A Sorrowful Tune​) とも解釈可能なのかもしれないのだ。あたかも、"ぼくひとりでできるんだもん (I Stand Alone)" そう謂いたげな風情で。

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だから、本作は彼からみれば、謂わなければならない事をここで吐き出して、自身の足場を確認する、そんな意識が働いていたのではないかと、ぼくには思える。
と、謂うのは、次作、彼の第2作の作品名が『孤独な世界 (You Never Know Who Your Friends Are)』[1969年発表] なのだから。
警官隊がある集団を排除している光景、そしてそれはもしかしたら自由の女神 (Statue Of Liberty) の背後、さもなければ彼女のその名によって行われているモノなのかもしれない、そのありさまをヴィジュアルに据えたその作品、邦題を無視して読めば "きみには友人と謂うもの、その意義が解らないんだ (You Never Know Who Your Friends Are)" となる。
そしてそれはそのまま、前作にして第1作である本作とものの見事に呼応している。
すなわち "ぼくはひとりっきりさ、でも、きみもにたようなものだろう (I Stand Alone. But, You Never Know Who Your Friends Are.)" と。

だからこそ、ぼくからみれば、その第2作こそが彼の最高作であり必須の作品なのだ。
先に挙げた楽曲『オーヴァーチュア [序曲] (Overture)』やそれに呼応する様な楽曲『月面軟着陸 (Soft Landing On The Moon)』の様な冗長性は一切なく、ひとつの楽曲それぞれに不断にありとあらゆる音楽の要素が注ぎ込まれている。
自由の女神 (Statue Of Liberty) の向こうには人種の坩堝 (Melting Pot) たるニューヨーク (New York City) がある様に、彼女を模したアル・クーパー (Al Kooper)、すなわち本作の向こうには音楽の坩堝 (Crucible) たる次作が控えているのである。

ものづくし (click in the world!) 253. :『アイ・スタンド・アローン (I Stand Alone)』 by アル・クーパー (Al Kooper)


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アイ・スタンド・アローン (I Stand Alone)』 by アル・クーパー (Al Kooper)

オーケストラの導入で"内なる孤独"を描いた叙情的アルバム。
アル・クーパーのウィットが溶け込んだ感動の名作。 '69年作品。世界初CD化。

解説:萩原健太渡辺亨
歌詞対訳:藤沢睦美

1. 序曲 4:38
 OVERTURE
 Arranged by Al Kooper, Jimmy "Wiz" Wsiner
 Piano by Al Kooper
 Written by Al Kooper
2. アイ・スタンド・アローン 3:37
 I STAND ALONE
 Arranged and Conducted by Al Kooper
 Keyboards by Al Kooper
 Written by – Al Kooper
3. カミール 2:54
 CAMILLE
 Arranged and Conducted by Charlie Calello
 Written by Al Kooper, T. Powers
4. ワン 2:53
 ONE
 Arranged and Conducted by – Jimmy "Wiz" Wsiner
 Written by Harry Nilsson
5. カラード・レイン 3:01
 COLOURED RAIN
 Arranged and Conducted by Al Kooper, Don Ellis
 Featuring The Don Ellis Orchestra
 Piano, Keyboards (Ondioline) by Al Kooper
 Written by C. Wood, J. Capaldi, S. Winwood
6. 月面軟着陸 4:00
 SOFT LANDING ON THE MOON
 Organ (Unaccompanied Hammond Organ Solo) by Al Kooper
 Written by Al Kooper
7. アイ・キャン・ラヴ・ア・ウーマン 3:28
 I CAN LOVE A WOMAN
 Arranged and Conducted by Charlie Calello
 Written by Al Al Kooper
8. ケンタッキーの青い月 2:14
 BLUE MOON OF KENTUCKY
 Arranged and Conducted by Charlie McCoy
 Rhythm Guitar by Al Kooper
 Soloist, Guitar [Guitar Solo] by Jerry Kennedy
 Written by Bill Monroe
9. トゥ・ホールド 3:53
 TOE HOLD
 Arranged and Conducted by Al Kooper
 Keyboards by Al Kooper
 Written by Hayes - Porter
10. ライト・ナウ 2:33
 RIGHT NOW FOR YOU
 Arranged and Conducted by Al Kooper
 Keyboards [Ondioline] by Al Kooper
 Written by Al Kooper
11. ヘイ・ウエスタン・ユニオン・マン 3:43
 HEY, WESTERN UNION MAN
 Arranged and Conducted by Al Kooper
 Keyboards by Al Kooper
 Written by Butler, Gamble, Huff
12. アンボーン・チャイルドに捧げる歌と踊り 4:33
 SONG AND DANCE FOR THE NBORN, FRIGHTENED CHILD
 Arranged and Conducted by Jimmy "Wiz" Wsiner
 Written by Al Kooper

プロデュース:アル・クーパー
アナログでは1. ~6. がA面、7. ~12. がB面に収録されています。

Produced by Al Kooper

The selection are BMI except "Coloured Box", which is ASCAP.

LINE HER NOTES copyright 1967 Al Kooper

Mastered At Customatrix

Artwork ["Liberty" By] – Bob Cato, John Berg
Artwork [Al Kooper By] – Don Hunstein, Sandy Speiser
Artwork [Collage] – Virginia Team

Backing Vocals by The Blossoms (tracks: A2, B2, B3, B4, B5)
Bass by Charlie McCoy (tracks: A2, B2, B3, B3, B4,, B5)
Drums by Ken Buttrey (tracks: A2, B3, B4, B5)
Engineered by Brian Ross-Myring, Charlie Bragg, Don Puluse, Fred Catero, Glen Kolotkin, Neil Wilburn
Guitar by Big Charlie Daniels (tracks: A2, B2, B3, B4, B5), Jerry Kennedy (tracks: A2, B3, B4, B5), Wayne Moss (tracks: A2, B2, B3, B4, B5)
Illustration [Drawing] by Bill Charmatz
Liner Notes by Al Kooper
Photography [Collage Photos] by Alice Ochs, Bob Cato, Don Hunstein, Jerry Jacobson, Jim Marshall, John Cooke, Mike Sullivan, Sandy Speiser
Produced by Al Kooper

猶、参加ミュージシャン等の詳細は、こちらを参照した。
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