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2009.08.04.20.29

ひーすくりふ

エミリー・ブロンテ (Emily Bronte) の小説『嵐が丘 (Wuthering Heights)』の主人公。正式名称は、ヒースクリフ (Heathcliff)。とはいうもののこの小説は未読で、この小説のプロットを借りた邦画『嵐が丘』 [吉田喜重 (Yoshishige Yoshida) 監督作品:ヒースクリフ (Heathcliff)に相当する主人公鬼丸は松田優作 (Yusaku Matsuda) が演じている] も、実は未見。粗筋は、松岡正剛ここで紹介しているけれども、それを読めば読む程、その異様に入り組んだ構造の物語に挑戦する気力は萎えてしまう。
それなのに何故、ここに書くのかと言うと、ケイト・ブッシュ (Kate Bush) のデヴュー曲、その名も『嵐が丘 (Wuthering Heights)』 [アルバム『天使と小悪魔 (The Kick Inside)』収録] を採り上げたいからです。

ケイト・ブッシュ (Kate Bush) のあらましに関しては既にここで書いてあります。だから、それとの重複を避ける様に、改めてこの楽曲を紹介していきましょう。

印象的なピアノのフレーズに導入されて始るこの歌。ケイト・ブッシュ (Kate Bush) のハイトーンなヴォーカリゼーションが異世界へと導くそれは、ファンタジックな装いを魅せている。
思わず"ファンタジック"という表現をここでしてしまったのだけれども、僕が意味したいその言葉の意味と、この楽曲が発表された1978年当時にこの言葉が持たされた意味は、恐らく違う。

当時の、この言葉の持つ最大公約数的な意味のそれは、換言すれば、「ディズニー的な」とか「少女趣味的な」というものだろう。
例えば、TV番組『ディズニーランド (The Wonderful World Of Disney)』のオープニングの様なもの。
闇夜の中に軽やかにティンカー・ベル (Tinker Bell) が飛翔し、彼女が魔法の杖を振るうや、一閃、いくつもの花火が華麗にあがり、闇の中にディズニーランド (Disneyland) の王宮が浮かび上がる様な。
それとも、『キャンディ・キャンディ (Candy Candy)』の主人公キャンディス・W・アードレー (Candice White Ardlay)のこころの拠り所、"丘の上の王子さま" ("Prince Of The Hill")の様な存在 [個人的には、この作品は、マス・イメージのもつ少女漫画 (Shoujo Manga) 的な要素を総て投入し、結果的にマス・イメージとしての少女漫画 (Shoujo Manga) に引導を渡した、最期の少女漫画 (Shoujo Manga) だと想うのだが、どうだろう]。

その一方で、僕が"ファンタジック"という言葉に持たせたい意味は、大雑把に言えば、闇を畏れその闇に潜むものを観るちからの事だ。
例えて言えば、数年前に話題となった『本当は恐ろしいグリム童話 (Kinder- und Hausmarchen)』の"本当は恐ろしい"に該当する部分。W. B. イエイツ (William Butler Yeats) やキャサリン・ブリッグズ (Katharine Briggs) が紹介するケルト神話 (Celtic Mythology) の中に潜む、無垢な残虐性。
それは、本来ならば『指輪物語 (The Lord Of The Rings)』の様な"ファンタジー (Fantasy)"の根底にどろりと沈殿している筈なのに、あえて観ようとしていない。もしくは、ゴシック・ロマン (Gothic Romance) の様に過剰に美化されている。

さて、この『嵐が丘 (Wuthering Heights)』という楽曲で、ケイト・ブッシュ (Kate Bush) は己をその題材となった小説の登場人物キャサリン・アーンショー (Catherine Earnshaw) に仮託して、嵐が丘の当主、ヒースクリフ (Heathcliff) に逢いにいくのだ。

わたしよ、ヒースクリフ。キャッシーよ。還って来たの。そとは寒いわ。なかにいれてちょうだい(Heathcliff, it's me, I’m Cathy, I've come home and I´m so cold,let me in your window)

しかも、キャサリン・アーンショー (Catherine Earnshaw) はそのとき既に死亡しているのである。

images
"まるで幽霊ではありませんか" [つげ義春ゲンセンカン主人』より]

次回は「」。
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