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2023.05.02.08.02

どぐらえすわんまぐらえふつー

ふたりでひとりそれはなぁに。
てがよんほん、あしがよんほん、おかおがふたつ、なぁんだ。

初陣の行手をおもわぬものが阻む。そしてそのときはまだ、それが自身の宿敵となるとはおもってもいない。彼 / 彼女が放った2体の機械獣 (The Mechanical Monsters) ダブラスM2(Doublas M2) とガラダK (Garada K7) は、謎の巨大ロボットによって破壊されてしまったのだ。
次なる手段はただひとつ。悪い芽は摘む (Nip Evil In The Bud) に限る。2体の機械獣 (The Mechanical Monsters) の復讐もある。その巨大ロボット、マジンガーZ (Mazinger Z) の操縦者を暗殺するべし。
あしゅら男爵 (Baron Ashura) は、その第1陣として、配下にある地上部隊 (Ground Force)、鉄仮面軍団 (Iron Masks) の派遣と同時に、第2波として機械獣 (The Mechanical Monsters) "2体"、ドグラS1 (Dolra S1) とマグラF2 (Magla F2) に出撃を命ずる。

と、謂う様な逸話は原作マンガ『マジンガーZ (Mazinger Z)』 [永井豪 (Go Nagai)19721973週刊少年ジャンプ連載] にあるのみで、そのアニメ化作品であるTV番組『マジンガーZ (Mazinger Z)』 [永井豪 (Go Nagai)原作 19721974フジテレビ系列放映] にはない。
それ故に、拙稿の主題である "2体" の機械獣 (The Mechanical Monsters)、ドグラS1 (Dolra S1) とマグラF2 (Magla F2) はその番組には登場しない。

マジンガーZ (Mazinger Z) の操縦者である兜甲児 (Koji Kabuto) 宅を急襲した鉄仮面軍団 (Iron Masks) は思わぬ伏兵 (Ambush) である暗黒寺闇太郎 (Yamitaro Ankokuji) の活躍によって粉砕される。
彼等が一安心したそこへ、機械獣 (The Mechanical Monsters) が "2体"、ドグラS1 (Dolra S1) とマグラF2 (Magla F2) が襲撃するのだ。

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"2体" の機械獣 (The Mechanical Monsters) ドグラS1 (Dolra S1) とマグラF2 (Magla F2) は、それぞれの背部で結合されており、外見上は2対の腕部と2対の脚部、そしてひとつの頭部の前後に個別の顔面をもつ奇体な様相を呈している。一見すると、節足動物 (Arthropod) を機械獣 (The Mechanical Monsters) 化したモノにもみえるだろう。しかも、ドグラS1 (Dolra S1) もマグラF2 (Magla F2) も五指をもたぬ事がその想像をさらに掻き立てる。
しかし、その一方でこの機械獣 (The Mechanical Monsters) は、同時に常に分離独立して行動が可能なのである。分離した際には各々が 1対の腕部と1対の脚部、そしてひとつの頭部にひとつの顔面をもつ事になる [画像はこちらから : 右側がドグラS1 (Dolra S1)、左側がマグラF2 (Magla F2) である]。

それ故にこそ、この "2体" の機械獣 (The Mechanical Monsters) に、兜甲児 (Koji Kabuto) 暗殺指令が発せられたのである。
1対1の対戦と思いきや、不意に前後に別れ、一方が敵の背後からその行動を阻止し、遺る一方が攻撃に出るのだ。これは最初から1対2の不利な闘いと知られているよりも、作劇上に於いても、実際の戦闘上に於いても、効果的かつ致命的な筈である。
そして、そのシーンをみて想い出すのは、マンガ『タイガーマスク (Tiger Mask )』 [梶原一騎 (Ikki Kajiwara) 原作 辻なおき (Naoki Tsuji) 作画 19681969ぼくら連載] での対ザ・スカルスター (The Skull Star) 戦の事なのである。プロレス (Puroresu) 会場が不意に停電となった際に [勿論、これは敵側の策謀である] リング下に潜んでいたミスターシャドウ (Mr. Shadow) がタイガーマスク (Tigar Mask) の不意をつくのだ。闇に包まれただけで不利である上に、いつの間にか対戦が2対1となっているのだ。

だけれども、この "2体" が登場したのは、そんな演出、そんな対戦の為だけではないのだ。
と、謂うのは、この "2体" があしゅら男爵 (Baron Ashura) の配下にある事、そこにこそ意味があるからである。
何故ならば、あしゅら男爵 (Baron Ashura) は半身が男性 (Male)、半身が女性 (Female) の結合体、いわば、雌雄同体 (Hermaphrodite) とか両性具有 (Androgyny) と謂う存在だからだ。
彼 / 彼女、その身体の暗喩 (Metaphor)、類推 (Analogy) としてこの "2体" を看做す事が出来よう。

神秘学 (Occultism) の書物を紐解けば、立ち所に、あしゅら男爵 (Baron Ashura) の様な様相を呈している雌雄同体 (Hermaphrodite) もしくは両性具有 (Androgyny) の図象がいくつか登場してくる。
例えば図象『黄道帯の宇宙的人間 (Alchemic Approach To Four Humors In Relation To The Four Elements And Zodiacal Signs)』 [書籍『第5元素 (Quinta Essentia)』 [レオンハルト・トゥルナイサー・ツム・トゥルン (Leonhard Thurneysser zum Thurn) 著 1574年刊行] より引用] を挙げても良い。この図版はムック『アンドロギュロスの神話 (The Androgyne : Fusion Of The Sexes In Art And Imaginations Series)』 [エレミール・ゾラ (Elemire Zolla) 著 1981年刊行 川村邦光 (Mitsukuni Kawamura) 訳 澁澤龍彦 (Tatsuhiko Shibusawa) 付論 1988年日本語版刊行] に掲載されており、そのムックに登場する多種多様なアンドロギュノス (Androgynous) の象徴、そのひとつなのである。あしゅら男爵 (Baron Ashura) と謂う存在はそのムックには登場こそしないが、その末席を占めても何ら不思議ではない存在なのである。

そして、さらに謂えば、あしゅら男爵 (Baron Ashura) から過去へとアンドロギュノス (Androgynous) の歴史を辿って行けば、いつしか、書物『饗宴 (Symposium)』 [プラトン (Plato) 著 紀元前4世紀成立] に横着する事になる。その書物の登場人物の一人であるアリストパネス (Aristophanes) が語る人類 (Human Being) の原型こそが、拙稿の主題たる "2体" の機械獣 (The Mechanical Monsters) の姿、そのモノなのである。彼曰く、かつての人類は背中あわせで2体1身であった事、そして同性同士の場合もあれば、両性同士の場合もある事、そして、彼等がいつしか分離してしまったが故に、常にかつての自身の背後を追い求めてしまう事、それが現在でも異性間や同性間の恋愛として顕現する事である、と。

次回は「」。

附記 1. :
機械獣 (The Mechanical Monsters) の形態に関する記述に、アンドロギュノス (Androgynous) 云々、プラトン (Plato) 云々を登場せしめるのは大仰に過ぎる、そんな批判が登場するかもしれない。
だが、待って欲しい。
機械獣 (The Mechanical Monsters) とは、あしゅら男爵 (Baron Ashura) が首領と仰ぐ人物、ドクター・地獄 (Dr. Hell) の創造物でも発明品でもないのだ。彼がミケーネ文明 (Mycenaean Greece) [紀元前1600年頃] の遺跡から発掘した存在、すなわちオーパーツ (Oopart : Out-of-place Artifact) なのである。その点を鑑みれば、ここまでの記述は決して異論でも極論でもないとは思う。

附記 2. :
第1陣の鉄仮面軍団 (Iron Masks) の敗退、そして第2波攻撃である "2体" の機械獣 (The Mechanical Monsters) ドグラS1 (Dolra S1) とマグラF2 (Magla F2) の敗北を受けてあしゅら男爵 (Baron Ashura) が放つ兜甲児 (Koji Kabuto) 暗殺作戦は、これまでよりもさらに対人攻撃 (Anti-personnel Attack) に秀でた機械獣 (The Mechanical Monsters) にその指令を託す事になる。それがガミアQシリーズ (Gamia Qs) の3体である。

附記3. :
この "2体" の機械獣 (The Mechanical Monsters) との対戦の結果、マジンガーZ (Mazinger Z) 最大の弱点は、その頭部にある操縦席上の操縦者にある事が判明し、対戦時での彼の防御手段として、兜甲児 (Koji Kabuto) 着用の戦闘用スーツが考案された。

附記 4. :
あしゅら男爵 (Baron Ashura) の暗喩 (Metaphor)、類推 (Analogy) が "2体" の機械獣 (The Mechanical Monsters) ドグラS1 (Dolra S1) とマグラF2 (Magla F2)であるのならば、彼の好敵手であるブロッケン伯爵 (Count Brocken) にも同様の暗喩 (Metaphor)、類推 (Analogy) を可能とする機械獣 (The Mechanical Monsters) が存在する。彼が頭部と身体が完全に分離した状態である点、それをもって分離した頭部が身体を操縦していると看做すのであるのならば、機械獣 (The Mechanical Monsters) マリオN7 (Mario N7) がその存在である。
そして面白い事に、機械獣 (The Mechanical Monsters) マリオN7 (Mario N7) は対人攻撃 (Anti-personnel Attack) に徹した存在であり、物語上でも兜甲児 (Koji Kabuto) と対戦する事はあってもマジンガーZ (Mazinger Z) 本体と戦闘状態に陥る事はなかったのである。

附記 5. :
小説『ドグラ・マグラ (Dogra Magra)』 [夢野久作 (Yumeno Kyusaku) 作 1935年刊行] にぼくが遭遇し、と同時に読了したのは長じた後の事である。それにも関わらず、その書名をめにした際の、奇妙な既視感 (Deja-vu) はよく憶えている。はて、この名称はどこかで既に出逢っているぞ。それがこの "2体" の機械獣 (The Mechanical Monsters) の事だと気づくのには、結構な時間がかかったのだ。
そのマンガの作者は、一体どこでこの語句を拾い、どういう意図をもって彼等に命名したのであろうか。
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