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2023.04.16.07.46

『映画"ビートルズがやって来る ヤァ! ヤァ! ヤァ!" サウンド・トラック盤 (A Hard Day's Night)』 by ビートルズ (The Beatles)

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上にある悪戯画は、ぼくが所有しているモノを基にしたものだ。
1964年発売の日本盤、アルバム『ハード・デイズ・ナイト (A Hard Day's Night)』 [1964年 本国発表] のジャケットである [正式なモノは下に掲載してある]。
厳密に謂えば、ぼくのそれは1974年以降に国内流通している版で、ジャケットに表示されているロゴマーク、つまりそれが帰属するレーベルはオデオンレコード (Odeon Records) ではない。アップル・レコード (Apple Records) なのである。
本作を含めビートルズ (The Beatles) の全作が、本国盤に基づくヴァージョンに統一される数年前に購入したモノなのである。

本作が英米日で異なるアルバム・デザインである事は知っていた、と思う。
そして、地元の大型レコード店舗では、輸入盤コーナーで米国盤も販売されていた。だけれども、英国盤に基づくデザインは、彼等を紹介する幾つかの書籍で掲載された写真で観る事が出来るだけだった。

そして、何故、この3種類のパッケージがあるのかなぁ、ずっとそう思っていた。

謂うまでもなく、本国での本作は彼等にとっての第3作、そして彼等初の主演映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ! (A Hard Day's Night)』 [リチャード・レスター (Richard Lester) 監督作品 1964年制作] のサウンド・トラック盤である。
当時の音楽流通の形態、LPのA面収録の全7曲が映画の中で奏でられる。遺るB面6曲は本作に向けて制作された新曲群ありていに謂えば、映画の没曲である。

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英国盤は、ビートルズ (The Beatles) 100面相 (Make One Hundred Kinds Of Comic Faces) ならぬその4人の20面相 (Make Twelve Kinds Of Comic Faces) である。そこにある彼等の写真は総てバスト・アップ・ショット (Bust Up Shot) なのだ。
紺系統で着色した枠組20が横4段に縦5列づつと謂う構成で編成されている。そこに上から下にジョン・レノン (John Lennon)、ジョージ・ハリスン (George Harrison) 、ポール・マッカートニー (Paul McCartney)、そしてリンゴ・スター (Ringo Starr) の順で配列されている。個々のメンバー写真が異なる表情で5点並んでいるのだ。勿論、その枠組が映画のフィルムを意識したモノなのである。そして、そこに居並ぶ、4人の5点づつの表情、仕草は、どれも彼等らしさ、個々の彼等が発揮されている様に観る事が出来る [リンゴ・スター (Ringo Starr) だけが同じ様な悲しげな表情をただアングルを変えただけで居並んでいるのは、映画で語られる彼の物語の伏線である。]
使用された写真は総てモノクロ (Monochrome) で、映画がモノクロ作品 (Filmed By Monochrome) である事を意味すると同時に、彼等の前作『ウィズ・ザ・ビートルズ (With The Beatles)』 [1963年発表] でのジャケット・イメージを踏襲したモノとなっている。
つまり、英国盤は、貴女が大好きなビートルズ (The Beatles) の様々な表情が、そのモノクロ画面 (Monochrome Screen) の映画で好きなだけ愉しめますよ、とでも謂っている様な風情なのである。

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米国盤は、ジャケット云々以前に先ず、収録楽曲が違う。これは映画の配給先であるユナイテッド・アーティスツ (United Artists) から発売されたモノで、純粋に映画のサウンドトラック盤なのである。
そして、ジャケットにあるのは4人の頭部、当時の彼等を象徴するマッシュルーム・カット (Bowl Cut) が、モノクロ写真 (Monochrome) で並んでいる。
これだけで米国盤の意図は理解出来るだろう。
世間を騒がせている、あの変なヘア・スタイルの4人の若造が主演する映画であり、その主題歌挿入曲集である、そう言いたげな風情なのだ。
だけれども、英国盤よりもある意味で、趣旨は明瞭なのだ。

ぢゃあ、我が国内盤はなんなのだろう。
アルバムを飾るのは、映画のワン・シーン、本作唯一のジョージ・ハリスン (George Harrison) のリードヴォーカル曲『すてきなダンス (I'm Happy Just To Dance With You)』[ レノン = マッカートニー (Lennon - McCartney) 作] の演奏シーンなのである。

でも、その前に本作の邦題について考えてみたい。
この邦題は水野晴郎 (Haruo Mizuno) 命名のモノだと謂う。当時の彼は日本ユナイト映画 (United Artists) の宣伝部 (Publicity Department) で就業していたのだ。そして当時の日本公開映画の幾つか、その邦題は彼が命名したモノだと謂う。その1作が本作なのだ。
はっきり謂って気恥ずかしい題名だ。大きな声では決して謂えない。小さな声では、きっと省略して謂うだろう。少なくとも彼等の音楽を聴き馴染み親しんでいるぼく達はとてもぢゃないけど許せない様な邦題である。
だけれども、その映画とその映画主演の4人の当時の状況を踏まえれば、実はとても優れた命名でもあるのだ。少なくみつもっても映画としての次作『ヘルプ! 4人はアイドル (Help!』 [リチャード・レスター (Richard Lester) 監督作品 1965年制作]、その邦題よりも遥かに良い [何故ってその邦題はその前作にも置換可能などこにでもあるありふれた様なモノ、つまり陳腐極まりないモノなのだから]。

邦題の後半部にある「ヤァ!ヤァ!ヤァ! (Yeah, Yeah, Yeah, Yeah)」は彼等の第4作『シー・ラヴズ・ユー (She Loves You)』 [1963年発表]、そこでの印象的なコーラスを踏襲したモノであろう。恐らく、当時の [彼等のファンではない] 大人達は、このフレーズで、あああいつらの事か、たちどころで理解可能なのだ。そんな解りやすさがその語句にある。
そして前半部にある「ビートルズがやって来る (The Beatles Come To Town)」は彼等のファン、その大半が当時の少女達に向けてのモノなのだろう。雑誌の写真でしかみた事のない、音楽は幾らでも聴いているが動く彼等は知らない、そんな彼女達に対して今度、貴女の街のスクリーンで思う存分拝む事が出来る、貴女の街に待ちに待った彼等がやってくる、そんな主張がそこにあるのだろう。

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そして、その映画のポスターは、映画のワン・シーン、映画やアルバムに先行する形で発表された彼等の第6作『キャント・バイ・ミー・ラヴ (Can't Buy Me Love)』 [1964年発表] のシーンなのだ。
そして、ここでもジョン・レノン (John Lennon)、ポール・マッカートニー (Paul McCartney)、ジョージ・ハリスン (George Harrison) の躍動感の発露ともいえる両掌両脚をおもいっきり延ばした姿勢に唯一背く様な格好でリンゴ・スター (Ringo Starr) がこじんまりと跳ねている。何故、彼ひとりこんな格好なのか、それは映画を観れば一目瞭然だ。そして、それ故に、リンゴ・スター (Ringo Starr) と謂う"俳優"の、映画での役割の主張でもある。

と、謂う様な事に考えを巡らせば、本作の国内盤ヴィジュアルなのが、こうなったのも類推可能だろう。
ステージ上での彼等の写真は幾つもある。舞台上手にジョン・レノン (John Lennon)、その反対側にジョージ・ハリスン (George Harrison) [中央よりに]、ポール・マッカートニー (Paul McCartney) がいる。そして一歩奥まった中央にリンゴ・スター (Ringo Starr) がいる。
だけれども、本作での様な配置、4人が輪を囲む陽な配置はそう簡単にはみられない。映画ならではの光景なのだ。
おそらくそんな主張ではないか、とぼくはおもう。
ちなみに、アルバム裏面には高崎一郎 (Ichiro Takasaki) による解説文が掲載されているが、その大半が映画に関するモノなのだ。

と、ここまでずっと本作のパッケージにだけ紙幅を費やしてきた。
そして、それで終わってしまってもいいだろうとはおもうが、音楽について、ほんの少しだけ綴ってみる。

映画で観る事、聴く事の出来るA面7曲よりも実は、B面6曲の方が名曲が多い、そんな主張がある。
そして、時にぼくもそうおもう [先行シングル曲『キャント・バイ・ミー・ラヴ (Can't Buy Me Love)』よりもそのB面曲『ユー・キャント・ドゥ・ザット (You Can't Do That)』の方が格好いいぢゃないか?]。
と、謂うのは、7曲は彼等のパブリック・イメージを一切裏切らない、解りやすい楽曲が多いからだ。ビートルズ (The Beatles) とはなんだ? そんな単純な疑問にいとも簡単に答えられるのがこの7曲だ。そしてそれは当時の彼等に対する一般的な批評、五月蝿い騒がしいに対する反論も含めて存在している。彼等のもうひとつの側面、抒情的な、楽曲『恋におちたら (If I Fell)』と楽曲『アンド・アイ・ラヴ・ハー (And I Love Her)』までもがそこに収録されているのだ。
もう一度、繰り返そう。ビートルズ (The Beatles) とはなんだ? そんなきみには、この7曲をお薦めする、そう謂えば、当時はそれで良いのだ。

そして、そこで印象付けられたモノをさらに深く、重層的に印象付けてくれるのが6曲の方ではないだろうか。つまり、彼等にはこんな面もあるんだよ、と謂う様な。
アルバム最終曲『アイル・ビー・バック (I'll Be Back)』は、ナイーブな印象を聴くモノに抱かしむる楽曲である。アルバム全体を通して聴くと、これで終わりで良いんだろうか、とおもう。
でも、この楽曲が呈示した印象は、実は、次作『ビートルズ・フォー・セール (Beatles For Sale)』 [1964年発表] での主調となっている。
本作が陽なら、次作は陰、否、翳とか深とか謂うべきだろうか。その作品がそうなってしまった外因は幾つか挙げられるが、そうではない、本作と次作をあわせて聴くとようやく、当時の彼等の音楽性が理解出来る様に、ぼくには思えるのだ。

とは、謂うモノの、映画で俳優としての才能をみいだされた格好となっているリンゴ・スター (Ringo Starr) は本作での歌唱曲はない。
そして、ジョージ・ハリスン (George Harrison) は楽曲『すてきなダンス (I'm Happy Just To Dance With You)』でこそリード・ヴォーカルを担当してはいるモノの、それはレノン = マッカートニー (Lennon - McCartney) 作品だ。彼の自作を聴けるのはようやく、次々作『4人はアイドル (Help!)』 [1965年発表] に於いて、なのである。それはレノン = マッカートニー (Lennon - McCartney) の疲弊、特に前者のそれが顕著だったからでもある。
だから、前段で綴られてある彼等と謂う語句にはビートルズ (The Beatles) ではなく、当時の彼等のメイン・ソングライター2人の名前を充てるべきなのだろう。

ものづくし (click in the world!) 246. :『『映画"ビートルズがやって来る ヤァ! ヤァ! ヤァ!" サウンド・トラック盤 (A Hard Day's Night)』 by ビートルズ (The Beatles)


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映画"ビートルズがやって来る ヤァ! ヤァ! ヤァ!" サウンド・トラック盤 (A Hard Day's Night)』 by ビートルズ (The Beatles)

[Side 1]
1. ビートルズがやって来る ヤァ! ヤァ! ヤァ!
2. 恋する二人
3. 恋におちたら
4. すてきなダンス
5. アンド・アイラヴ・ハー
6. テル・ミー・ホワイ
7. キャント・バイ・ミー・ラヴ
[Side 2]
1. エニー・タイム・アット・オール
2. ぼくが泣く
3. 今日の誓い
4. 家に帰れば
5. ユー・キャント・ドゥ・ザット
6. アイル・ビー・バック

[解説:DJ 高崎一郎]
[表紙写真提供 ユナイト映画]

レコードから無断でテープその他に録音することは法律で禁じられています。
東芝EMI株式会社
MADE IN JAPAN ¥2,200 (AP8147)

A HARD DAYS NIGHT THE BEATLES
SIDE 1
1. A HARD DAY'S NIGHT
2. I SHOULD HAVE KNOWN BETTER
3. IF I FELL
4. I'M HAPPY JUST TO DANCE WITH YOU
5. AND I LOVE HER
6. TELL ME WHY
7. CAN'T BUY ME LOVE
from the soundtrack of the United Artists film "A HARD DAY'S NIGHT "
Words and Music JOHN LENNON PAUL McCARTNEY
MFD. BY TOSHIBA EMI LTD.. JAPAN

SIDE 2
1. ANYTIME AT ALL
2. I'LL CRY INSTEAD
3. THINGS WE SAID TODAY
4. WHEN I GET HOME
5. YOU CAN'T DO THAT
6. I'LL BE BACK
Words and Music JOHN LENNON PAUL McCARTNEY
MFD. BY TOSHIBA EMI LTD. JAPAN

アルバム上でクレジットされているのは上記のみである。特記すべきはジョージ・マーティン (George Martin) によるプロデュース (Produce)、ノーマン・スミス (Norman Smith) とケン・スコット(Ken Scott) によるエンジニアリング (Enginnering) によって アビー・ロード・スタジオ (Abbey Road Studios) とパテ・マルコーニ・スタジオ (Studio Pathe Marconi) でレコーディング (Recoerding) された事、そしてザ・ビートルズ (The Beatles) の遺る2人がジョージ・ハリスン (George Harrison) とリンゴ・スター (Ringo Starr) である事、以上であろうか。
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