2023.02.07.08.14
拙稿はこちらの続き、の様なものである。
かつてソノシート (Flexi Disc)と謂う媒体があった。ぼくが親しんでいたのは、TV番組のそれであり、10頁にみたない冊子の中に、33 1/3回転の7インチのそれが封入されている。後者の片面には、その番組の [番組オープニングとエンディング] 主題歌もしくは後者の代わりとなる番組挿入曲、計2曲が収録されており、遺る片面には番組を編集したドラマが収録されている。そしてその殆どの場合が、番組初回のエピソードをその媒体用に編集したモノなのである。そしてさらに付け加えるべきなのは、その盤のパッケージとしての機能をもつ冊子が、片面収録のドラマのヴジュアル版、有り体に謂えば、番組初回エピソードを紙面展開したモノである。ひとつの物語を音源と紙面で補完しあっているのだ。
つまり、その番組が未体験ならば、その番組紹介となるであろうし、番組放映長期に及ぶ場合は、その物語の導入部の記録となる。
そして、それ故に、ソノシート (Flexi Disc) は、映画館内で販売される上映作品のパンフレット (Movie Brochure) と同種の機能を有する事になる。つまり、映像作品の記録や再映の為の機器、すなわちヴィデオ (Video Tape) や (DVD : Digital Versatile Disc) が登場する為の機器が一般的なモノとなるまでは、自己が体験した映像の記録や記憶を所有する為の手段はそれしかなかったからだ [そのもうひとつの手段はサウンドトラック盤 (Soundtrack Album) であり、主題歌とドラマが一体化しているソノシート (Flexi Disc) と謂うメディアは、パンフレット (Movie Brochure) とサウンドトラック盤 (Soundtrack Album) の、両者を兼ね合わせた様な存在なのである]。
と、謂う様な指摘をこちらでしたのだ。
そして、例外として、特撮TV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』 [1966年 TBS系列放映] の2作品あるうちの1作を挙げ、その作品に録音されているドラマ『恐怖の死闘! ナメゴン対ゴメス (The Fright Mortal Combat, Namegon Vs Gomess)』が、全くの録り下ろし、TV番組の1逸話としても放映されていない物語である事を綴ってある。
拙稿で題材とするのは、もうひとつの例外作品である。
それはTVドラマ番組『バンパイヤ (The Vampires)』 [手塚治虫 (Osamu Tezuka)原作 1968~1969年 フジテレビ系列放映] のソノシート (Flexi Disc) 作品である。
それが何故、例外であるのか、それを寿ぐ前に、もうひとつ告げねばならない事がある。
上に、「映像の記録と記憶を所有する」と綴った。と、謂う事は、仮にぼくがあるソノシート (Flexi Disc) を購入もしくは所有する為には、それの原典たる映像作品をぼくは既に体験していなくてはならない。
だが、未だにぼくはそのTVドラマ番組を未体験なのだ。重ねて綴れば当時ばかりではなく現在に於いても、なのである。
何故、こんなお粗末な現象が勃発するのかと謂うと、ひとつにはぼくの側に幾つかの問題点がある。当時、ぼくが産まれ育った地域には民放放送局 (Commercial Broadcasting Stations) は1局しかない。このTVドラマ番組が放送された時季は、ちょうどふたつめの、民放局 (The second Commercial Broadcasting Stations)が開局した時季にあたる。だからもしかしたら、その新民放局でこのTVドラマ番組が放送されていたのかもしれない。だが、仮にもしそうだとしても、その放送局はユー・エイチ・エフ放送 (UHF : Ultra High Frequency Television Broadcasting) で、それを受信する為には、その機能を備えたTV受信機を入手するか、その放送受信して既存のTV受信機でも視聴可能とする機器、ユー・エイチ・エフ・コンバーター (UHF Transmitter And Receiver) を手配するしかない。ぼくが棲んでいたその家に、後者が導入されるのは、随分と年が経過した後の事なのである。
そして、こんなお粗末な現象のもうひとつには、流通の問題があるのであろうが、そこをとやかく詮議しても致し方ない様な気もするし、それが解消されるには、当時からさらに後、もしかしたら、現在でも深く潜航している問題なのかもしれない。つまり、ここ [と謂うのは拙稿に於いてはぼく個人の事だが、幅広く解釈すれば主たる消費者や受益者が存する地域である ] で消費もしくは受益出来ない商品を販売するなよ、と謂う事なのだ。
だが、その一方で、逆に、ソノシート (Flexi Disc) と謂うメディアのもうひとつの意図と謂うモノが垣間みえないわけでもない。
それはそれを掲げたTV番組の販促宣伝物と謂う意味である。ソノシート (Flexi Disc) が販売される販売店舗、すなわちレコード店 (Records Shop) や書店 (Bookseller) [綴り忘れてはいたがソノシート (Flexi Disc) は本来書籍としての扱い、出版流通 (Publishing Distoribution) なのである] に、その番組名を彩った商品が陳列されるのである。おかしやおもちゃとして、TV番組の登場人物が刻印されたモノが流通するのと同種の効果が謳われているのだろう。
多分、ぼくがそのTVドラ番組のソノシート (Flexi Disc) を購入したのは、この秋から始まる期待の新番組と謂う様な認識があったのだろう。しかも、その番組の主人公はひとりの少年、否、人狼 (Lycanthrope) なのだ。
と、周縁ばかりを経巡ってようやく、本題のソノシート、TVドラマ番組『バンパイヤ (The Vampires)』のソノシート (Flexi Disc)、しかもその例外性について語る事となる。
録音されている音楽はオープニング主題歌『バンパイヤのテーマ (The Theme Song For The Vampires)』 [福田善之 (Yoshiyuki Fukuda) 作詞 林光 (Hikaru Hayashi) 作曲 松川義昭 (Yoshiaki Matsukawa) 歌唱] だろう。あともう1曲は複数あるエンディング主題歌のひとつ、楽曲『トッペイのバラード (A Ballad For Toppei)』 [福田善之 (Yoshiyuki Fukuda) 作詞 林光 (Hikaru Hayashi) 作曲 尾藤イサオ (Isao Bito) 歌唱]である様だ [2曲ともネットで検索してその演奏を聴いたら、そのまま一緒に歌唱できてしまった。三つ子の魂百まで (The Child Is Father Of The Man) とはこの事である]。
そしてのこ片面に収録されているドラマ『地獄谷の対決 (eEncounter At Jigoku Valley)』は、そのTVドラマの第7話『バンパイヤ委員会 (The Vampires Committee Meeting)』を編集したモノだろうか。そこで語られているのはバンパイヤ (The Vampires) の呪われた境涯であり、それ故に着手されねばならない人類撲滅の為の争闘決起なのである。主人公である人狼 (Lycanthrope)、トッペイ (Toppei) [演:水谷豊 (Yutaka Mizutani)] はそれに違を唱える事によって、このTVドラマ番組で語られる物語が発起する様に描かれている。
今、想うに、このドラマをみるだけでも、先に挙げた例外、TV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』のソノシート (Flexi Disc) に準ずる様な面持ちではある。
だが、これに加えて、このソノシート (Flexi Disc) を封入している冊子が、特異なのである。
ソノシート (Flexi Disc) を封入する冊子の殆どが、実際に番組内で放送された物語の紙面化である事は先に綴った。それは、ソノシート (Flexi Disc) 内で展開される物語のヴィジュアル化でもある。
だけれども、拙稿で話題とするその冊子は、それだけに収まらないのだ。
そこには、収録された物語とは別に、TVドラマ番組名でもある「バンパイヤ (The Vampires)」そのものについての解説ともなっているのである。
そもそも、TVドラマ番組の題名が基とする語句、ヴァンパイア (Vampire) とは吸血鬼 (Vampire) の事である。それを原作者である手塚治虫 (Osamu Tezuka) は、ある種の刺激に反応して身体に変化をきたしてしまう一族を着想し、それをバンパイヤ (The Vampires) と命名したのだ。彼のその着想に基けば、人狼 (Lycanthrope) もバンパイヤ (The Vampires) の1種と謂う事になる。それだからこそ、人狼 (Lycanthrope)、トッペイ (Toppei) は主人公たりえるのだ。
それを前提とすれば、そこに過誤が発生する機運がある事が解る。
ひとつは、人狼 (Lycanthrope) をこそバンパイヤ (The Vampires) と呼ぶのだろうと謂う認識、そしてそれとは逆の視点、人狼 (Lycanthrope)、トッペイ (Toppei) を吸血鬼 (Vampire) であると過誤してしまう可能性だ [他にも多くの理由があるのではあろうが、あるモノはこの物語の根幹に来するモノでもあり得るので、ここでは擱筆せざるを得ない]。
そして、もうひとつには、もしかすると次の様なモノだ。
それはTVアニメ番組『怪物くん (The Monster Kid)』 [藤子不二雄 (A) (Fujiko Fujio A) 原作 1968〜1969年 TBS系列放映] に登場する怪物達、中でもその主要登場人物であるオオカミ男 (Wolfman) との差別化である。ぼくの様な当時の主たる視聴者達に対しては、もしかするとこちらの方がおおきな課題だったのかもしれない [とは謂え、オオカミ男 (Wolfman) にみられる幾つかの特徴は、人狼 (Lycanthrope)、トッペイ (Toppei) の実弟であるチッペイ (Chippei) [ 演:山本善朗 (Yoshiro Yamamoto)] に散見されてしまうのだが]。
いずれにしろ、その冊子に綴られているのは、ヴァンパイア (Vampire) とバンパイヤ (The Vampires) の差異、それは前者に潜む幾つもの特徴 [太陽光を嫌う、大蒜 (Garlic) と十字架 (Christian Cross) が苦手、鏡に姿が投影されない等] と同時に、バンパイヤ (The Vampires) がいつどんな時に変身するのかを幾つもの図版を駆使して丁寧に説明しようとしているのだ。

そして、それはヴァンパイア (Vampire) とバンパイヤ (The Vampires) の決別と同時に、何故か、 [古典的な恐怖や怪異である] ヴァンパイア (Vampire) から [新たなる恐怖や怪異としての係累としての] バンパイヤ (The Vampires) による継承を謀ろうとしている様なのだ。
上掲図は当該ソノシート (Flexi Disc) の冊子、その見開き頁である [こちらから]。
中世終焉の後の恐怖、その象徴たる魔女狩り (Witch-hunt) の図示から始まって、そこにあるのは吸血鬼ドラキュラ (Dracula) [[ブラム・ストーカー (Bram Stoker) 創造 小説『吸血鬼ドラキュラ (Dracula)』 [1897年刊行] に登場]]、フランケンシュタイン (Frankenstein) [メアリー・シェリー (Mary Shelley) 創造 小説『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス (Frankenstein: Or The Modern Prometheus)』 [1818年刊行] に登場] に続いて登場するのが人狼 (Lycanthrope) ならば所謂世界三大モンスター (Universal Classic Monsters) なのだが ... そうではなくて虎男 (Tiger Man) [そしてその一方で、この世界三大モンスター (Universal Classic Monsters) こそがTVアニメ 『怪物くん (The Monster Kid)』の主要登場人物達だ]、そしてその掉尾を飾るかの様にして、そのTVドラマ番組に登場するバンパイヤ委員長丸山 (Maruyama, The chairman Of The Vampires) [演:木村幌 (Akira Kimura) の写真が掲載されている。
[ギリシャ神話 (Greek Mythology) に登場するゴーゴン (Gorgons) が何故、そこにいるのかはぼくには解らないのだけれども]。
次回は「と」
附記:
このソノシート (Flexi Disc) を何度も何度も聴き込んだ [どう聴き込んだのかは、他のソノシート (Flexi Disc) 同様に盤面よりも先に冊子の方が崩壊した事で明らかだ。] ぼくは 、後年、そのTVドラマ番組の原作であるマンガ『バンパイヤ (Vampire)』[手塚治虫 (Osamu Tezuka) 作 1966~1967年 週刊少年サンデー連載] を読む事になる。恐らく、初めて読んだ手塚治虫 (Osamu Tezuka) 作品だろう。そして吃驚する。ソノシート (Flexi Disc) のドラマの中ではヒロインであるかの様に思われた大西ミカ (Mika Onishi) [演:桐生かほる (Kahoru Kiryu)] があっさりと魔手にかかり惨殺されてしまう事、そしてその犯人である人物こそが、そのマンガの真の主人公である事によって、だ。
つまり、ソノシート (Flexi Disc) のドラマには間久部緑郎 (Rock) [演:佐藤博 (Hiroshi Sato)] は登場していないのだ。
かつてソノシート (Flexi Disc)と謂う媒体があった。ぼくが親しんでいたのは、TV番組のそれであり、10頁にみたない冊子の中に、33 1/3回転の7インチのそれが封入されている。後者の片面には、その番組の [番組オープニングとエンディング] 主題歌もしくは後者の代わりとなる番組挿入曲、計2曲が収録されており、遺る片面には番組を編集したドラマが収録されている。そしてその殆どの場合が、番組初回のエピソードをその媒体用に編集したモノなのである。そしてさらに付け加えるべきなのは、その盤のパッケージとしての機能をもつ冊子が、片面収録のドラマのヴジュアル版、有り体に謂えば、番組初回エピソードを紙面展開したモノである。ひとつの物語を音源と紙面で補完しあっているのだ。
つまり、その番組が未体験ならば、その番組紹介となるであろうし、番組放映長期に及ぶ場合は、その物語の導入部の記録となる。
そして、それ故に、ソノシート (Flexi Disc) は、映画館内で販売される上映作品のパンフレット (Movie Brochure) と同種の機能を有する事になる。つまり、映像作品の記録や再映の為の機器、すなわちヴィデオ (Video Tape) や (DVD : Digital Versatile Disc) が登場する為の機器が一般的なモノとなるまでは、自己が体験した映像の記録や記憶を所有する為の手段はそれしかなかったからだ [そのもうひとつの手段はサウンドトラック盤 (Soundtrack Album) であり、主題歌とドラマが一体化しているソノシート (Flexi Disc) と謂うメディアは、パンフレット (Movie Brochure) とサウンドトラック盤 (Soundtrack Album) の、両者を兼ね合わせた様な存在なのである]。
と、謂う様な指摘をこちらでしたのだ。
そして、例外として、特撮TV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』 [1966年 TBS系列放映] の2作品あるうちの1作を挙げ、その作品に録音されているドラマ『恐怖の死闘! ナメゴン対ゴメス (The Fright Mortal Combat, Namegon Vs Gomess)』が、全くの録り下ろし、TV番組の1逸話としても放映されていない物語である事を綴ってある。
拙稿で題材とするのは、もうひとつの例外作品である。
それはTVドラマ番組『バンパイヤ (The Vampires)』 [手塚治虫 (Osamu Tezuka)原作 1968~1969年 フジテレビ系列放映] のソノシート (Flexi Disc) 作品である。
それが何故、例外であるのか、それを寿ぐ前に、もうひとつ告げねばならない事がある。
上に、「映像の記録と記憶を所有する」と綴った。と、謂う事は、仮にぼくがあるソノシート (Flexi Disc) を購入もしくは所有する為には、それの原典たる映像作品をぼくは既に体験していなくてはならない。
だが、未だにぼくはそのTVドラマ番組を未体験なのだ。重ねて綴れば当時ばかりではなく現在に於いても、なのである。
何故、こんなお粗末な現象が勃発するのかと謂うと、ひとつにはぼくの側に幾つかの問題点がある。当時、ぼくが産まれ育った地域には民放放送局 (Commercial Broadcasting Stations) は1局しかない。このTVドラマ番組が放送された時季は、ちょうどふたつめの、民放局 (The second Commercial Broadcasting Stations)が開局した時季にあたる。だからもしかしたら、その新民放局でこのTVドラマ番組が放送されていたのかもしれない。だが、仮にもしそうだとしても、その放送局はユー・エイチ・エフ放送 (UHF : Ultra High Frequency Television Broadcasting) で、それを受信する為には、その機能を備えたTV受信機を入手するか、その放送受信して既存のTV受信機でも視聴可能とする機器、ユー・エイチ・エフ・コンバーター (UHF Transmitter And Receiver) を手配するしかない。ぼくが棲んでいたその家に、後者が導入されるのは、随分と年が経過した後の事なのである。
そして、こんなお粗末な現象のもうひとつには、流通の問題があるのであろうが、そこをとやかく詮議しても致し方ない様な気もするし、それが解消されるには、当時からさらに後、もしかしたら、現在でも深く潜航している問題なのかもしれない。つまり、ここ [と謂うのは拙稿に於いてはぼく個人の事だが、幅広く解釈すれば主たる消費者や受益者が存する地域である ] で消費もしくは受益出来ない商品を販売するなよ、と謂う事なのだ。
だが、その一方で、逆に、ソノシート (Flexi Disc) と謂うメディアのもうひとつの意図と謂うモノが垣間みえないわけでもない。
それはそれを掲げたTV番組の販促宣伝物と謂う意味である。ソノシート (Flexi Disc) が販売される販売店舗、すなわちレコード店 (Records Shop) や書店 (Bookseller) [綴り忘れてはいたがソノシート (Flexi Disc) は本来書籍としての扱い、出版流通 (Publishing Distoribution) なのである] に、その番組名を彩った商品が陳列されるのである。おかしやおもちゃとして、TV番組の登場人物が刻印されたモノが流通するのと同種の効果が謳われているのだろう。
多分、ぼくがそのTVドラ番組のソノシート (Flexi Disc) を購入したのは、この秋から始まる期待の新番組と謂う様な認識があったのだろう。しかも、その番組の主人公はひとりの少年、否、人狼 (Lycanthrope) なのだ。
と、周縁ばかりを経巡ってようやく、本題のソノシート、TVドラマ番組『バンパイヤ (The Vampires)』のソノシート (Flexi Disc)、しかもその例外性について語る事となる。
録音されている音楽はオープニング主題歌『バンパイヤのテーマ (The Theme Song For The Vampires)』 [福田善之 (Yoshiyuki Fukuda) 作詞 林光 (Hikaru Hayashi) 作曲 松川義昭 (Yoshiaki Matsukawa) 歌唱] だろう。あともう1曲は複数あるエンディング主題歌のひとつ、楽曲『トッペイのバラード (A Ballad For Toppei)』 [福田善之 (Yoshiyuki Fukuda) 作詞 林光 (Hikaru Hayashi) 作曲 尾藤イサオ (Isao Bito) 歌唱]である様だ [2曲ともネットで検索してその演奏を聴いたら、そのまま一緒に歌唱できてしまった。三つ子の魂百まで (The Child Is Father Of The Man) とはこの事である]。
そしてのこ片面に収録されているドラマ『地獄谷の対決 (eEncounter At Jigoku Valley)』は、そのTVドラマの第7話『バンパイヤ委員会 (The Vampires Committee Meeting)』を編集したモノだろうか。そこで語られているのはバンパイヤ (The Vampires) の呪われた境涯であり、それ故に着手されねばならない人類撲滅の為の争闘決起なのである。主人公である人狼 (Lycanthrope)、トッペイ (Toppei) [演:水谷豊 (Yutaka Mizutani)] はそれに違を唱える事によって、このTVドラマ番組で語られる物語が発起する様に描かれている。
今、想うに、このドラマをみるだけでも、先に挙げた例外、TV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』のソノシート (Flexi Disc) に準ずる様な面持ちではある。
だが、これに加えて、このソノシート (Flexi Disc) を封入している冊子が、特異なのである。
ソノシート (Flexi Disc) を封入する冊子の殆どが、実際に番組内で放送された物語の紙面化である事は先に綴った。それは、ソノシート (Flexi Disc) 内で展開される物語のヴィジュアル化でもある。
だけれども、拙稿で話題とするその冊子は、それだけに収まらないのだ。
そこには、収録された物語とは別に、TVドラマ番組名でもある「バンパイヤ (The Vampires)」そのものについての解説ともなっているのである。
そもそも、TVドラマ番組の題名が基とする語句、ヴァンパイア (Vampire) とは吸血鬼 (Vampire) の事である。それを原作者である手塚治虫 (Osamu Tezuka) は、ある種の刺激に反応して身体に変化をきたしてしまう一族を着想し、それをバンパイヤ (The Vampires) と命名したのだ。彼のその着想に基けば、人狼 (Lycanthrope) もバンパイヤ (The Vampires) の1種と謂う事になる。それだからこそ、人狼 (Lycanthrope)、トッペイ (Toppei) は主人公たりえるのだ。
それを前提とすれば、そこに過誤が発生する機運がある事が解る。
ひとつは、人狼 (Lycanthrope) をこそバンパイヤ (The Vampires) と呼ぶのだろうと謂う認識、そしてそれとは逆の視点、人狼 (Lycanthrope)、トッペイ (Toppei) を吸血鬼 (Vampire) であると過誤してしまう可能性だ [他にも多くの理由があるのではあろうが、あるモノはこの物語の根幹に来するモノでもあり得るので、ここでは擱筆せざるを得ない]。
そして、もうひとつには、もしかすると次の様なモノだ。
それはTVアニメ番組『怪物くん (The Monster Kid)』 [藤子不二雄 (A) (Fujiko Fujio A) 原作 1968〜1969年 TBS系列放映] に登場する怪物達、中でもその主要登場人物であるオオカミ男 (Wolfman) との差別化である。ぼくの様な当時の主たる視聴者達に対しては、もしかするとこちらの方がおおきな課題だったのかもしれない [とは謂え、オオカミ男 (Wolfman) にみられる幾つかの特徴は、人狼 (Lycanthrope)、トッペイ (Toppei) の実弟であるチッペイ (Chippei) [ 演:山本善朗 (Yoshiro Yamamoto)] に散見されてしまうのだが]。
いずれにしろ、その冊子に綴られているのは、ヴァンパイア (Vampire) とバンパイヤ (The Vampires) の差異、それは前者に潜む幾つもの特徴 [太陽光を嫌う、大蒜 (Garlic) と十字架 (Christian Cross) が苦手、鏡に姿が投影されない等] と同時に、バンパイヤ (The Vampires) がいつどんな時に変身するのかを幾つもの図版を駆使して丁寧に説明しようとしているのだ。

そして、それはヴァンパイア (Vampire) とバンパイヤ (The Vampires) の決別と同時に、何故か、 [古典的な恐怖や怪異である] ヴァンパイア (Vampire) から [新たなる恐怖や怪異としての係累としての] バンパイヤ (The Vampires) による継承を謀ろうとしている様なのだ。
上掲図は当該ソノシート (Flexi Disc) の冊子、その見開き頁である [こちらから]。
中世終焉の後の恐怖、その象徴たる魔女狩り (Witch-hunt) の図示から始まって、そこにあるのは吸血鬼ドラキュラ (Dracula) [[ブラム・ストーカー (Bram Stoker) 創造 小説『吸血鬼ドラキュラ (Dracula)』 [1897年刊行] に登場]]、フランケンシュタイン (Frankenstein) [メアリー・シェリー (Mary Shelley) 創造 小説『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス (Frankenstein: Or The Modern Prometheus)』 [1818年刊行] に登場] に続いて登場するのが人狼 (Lycanthrope) ならば所謂世界三大モンスター (Universal Classic Monsters) なのだが ... そうではなくて虎男 (Tiger Man) [そしてその一方で、この世界三大モンスター (Universal Classic Monsters) こそがTVアニメ 『怪物くん (The Monster Kid)』の主要登場人物達だ]、そしてその掉尾を飾るかの様にして、そのTVドラマ番組に登場するバンパイヤ委員長丸山 (Maruyama, The chairman Of The Vampires) [演:木村幌 (Akira Kimura) の写真が掲載されている。
[ギリシャ神話 (Greek Mythology) に登場するゴーゴン (Gorgons) が何故、そこにいるのかはぼくには解らないのだけれども]。
次回は「と」
附記:
このソノシート (Flexi Disc) を何度も何度も聴き込んだ [どう聴き込んだのかは、他のソノシート (Flexi Disc) 同様に盤面よりも先に冊子の方が崩壊した事で明らかだ。] ぼくは 、後年、そのTVドラマ番組の原作であるマンガ『バンパイヤ (Vampire)』[手塚治虫 (Osamu Tezuka) 作 1966~1967年 週刊少年サンデー連載] を読む事になる。恐らく、初めて読んだ手塚治虫 (Osamu Tezuka) 作品だろう。そして吃驚する。ソノシート (Flexi Disc) のドラマの中ではヒロインであるかの様に思われた大西ミカ (Mika Onishi) [演:桐生かほる (Kahoru Kiryu)] があっさりと魔手にかかり惨殺されてしまう事、そしてその犯人である人物こそが、そのマンガの真の主人公である事によって、だ。
つまり、ソノシート (Flexi Disc) のドラマには間久部緑郎 (Rock) [演:佐藤博 (Hiroshi Sato)] は登場していないのだ。
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