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2009.06.16.20.44

おっとーりりえんたーる

イカロス (Ikaros) の飛翔とその失墜から筆を起こすものもあるし、レオナルド・ダ・ヴィンチ (Leonardo da Vinci) が描いた航空機のデッサン (Flying Machines) から語り始めるものもいれば、そんな何百年何千年に及ぶ大空への夢想もお構いなしにライト兄弟 (The Wright Brothers) の飛行実験を始まりとするものもいる。
それは勿論言うまでもない、ヒトが空を翔ぶ夢の実現に向けた、想像力と創造力との葛藤の歴史の事である。

さて、上に挙げたみっつの挑戦のいずれを起源として、その歴史を編むべきなのかと問う事は、オットー・リリエンタール (Otto Lilienthal) の試みをどう解釈するのかという問いとほぼ等しい。

オットー・リリエンタール (Otto Lilienthal) は、現在の言葉で言えばハング・グライダー (Hang Glider) を自作し、その飛行実験を延べ2,000回以上も繰り返し、時によっては300mもの飛翔も可能とした。
初めての成功とされる飛行実験が行われたのが1894年 [1893年という説もある]。
ライト兄弟 (The Wright Brothers) が初飛行に成功した1903年の実験よりも、10年早い

にも関わらずに、人類初飛行の名誉は1903年のライト兄弟 (The Wright Brothers) 二人に委ねられている。
それは何故か。

つまり、それこそがヒトが空を飛ぶ夢、その夢とは何なのか。
そしてその夢が現実のものとなったその先に、ヒトはどちらへ向けて羽搏こうとしていたのか。
という問題なのである。

オットー・リリエンタール (Otto Lilienthal) が初飛行成功後も、さらに実験を重ねたのは何故か。
飛行距離や飛行高度の記録を塗り替えんが為なのだろうか。
追試実験に継ぐ追試実験で、より飛行の精度や練度を挙げんが為なのだろうか。

もしそれだけならば、彼の試みはスポーツや学問の領域内に踏みとどまるものなのである。
彼が行った実験の成果は総て、彼個人に期するものだからである。

しかし、これが10年後のライト兄弟 (The Wright Brothers) による滞空時間12秒間のささやかな成功 (The First Successful Airplane)となると、全く異なる風貌をみせる。
つまり、産業としての飛行やビジネスとしての飛行、[そして勿論軍事としての飛行も]という新しいヴィジョンが見え隠れするのである。
それは何故か。
彼らの実験が動力機関によるものだったからである。その成功は、遅かれ早かれ、商品としての航空機や工業技術としての飛行機製造や、さらにそれらを活用したモノモノの登場を促すであろう。

レオナルド・ダ・ヴィンチ (Leonardo da Vinci) の試行錯誤は、ライト兄弟 (The Wright Brothers) による初飛行が孕むモノを既に内包している。
彼の思索の過程には、常に大空へのロマンと同時に、その夢の実現化した先にある実用化、具体的な使途が常に意識されている[軍事目的と思われるいくつかの大型機械のスケッチ (Weapons And Warfare) を見よ]。

images
ところで、一方のオットー・リリエンタール (Otto Lilienthal) はと言えば、1896年の己の飛行実験途中で失速し墜落、その翌日に死亡した。
彼の遺した記録や研究結果によれば、動力機関による飛翔を研究途中であった事が解る。
そしてライト兄弟 (The Wright Brothers) の成功には、彼が著わした『飛行術の基礎としての鳥の飛行 (Der Vogelflug als Grundlage der Fliegekunst)』[1889年発表]での成果が充分に寄与している[上掲の図版はその一頁]。

彼のあまりにイカロス (Ikaros) 的な失墜と、彼が遺した多くのデータ、それをどう評価するかによって、人類飛翔の歴史を言祝ぐべき最初の時代が分かれるのである。

次回は「」。

蛇足:ミシェル・ルグラン (Michel Legrand) の流麗な音楽とともにグライダー (Sailplane) の飛翔シーンが印象的なスティーブ・マックイーン (Steve McQueen) 主演の映画『華麗なる賭け (The Thomas Crown Affair)』 [1968年発表 ノーマン・ジュイソン (Norman Jewison) 監督作品] では、主人公が"華麗なる賭け"を如何に遂行し獲得するのかという物語である一方で、フランソワ・ド・ルーベ (Francois de Roubaix) のスタイリッシュな音楽が鳴り響くアラン・ドロン (Alain Delon) 主演の映画『冒険者たち (Les Aventuriers)』 [1967年発表 ロベール・アンリコ (Robert Enrico) 監督作品] では、ある飛行実験に賭したパイロットの夢の失墜からその物語が始る。
芸術は歴史を模倣しない (It follows, as a corollary from this, that external Nature also imitates Art.) 、むしろ、それに抗うものの登場を促すと、ここではいうべきだろうか?
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