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2009.05.17.21.25

『夜明けの口笛吹き (THE PIPER AT THE GATES OF DAWN)』 by ピンク・フロイド (PINK FLOYD)

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ピンク・フロイド (Pink Floyd) の、中でも シド・バレット (Syd Barrett) 在籍時代に関しては、彼の追悼記事として書いたここや、当時の彼らの代表曲のひとつに関するよた話で、あらかた書き散らかしてしまった様な気もする。
だから、ここでは以前に書かれた内容と重複しない様に書いてみる事にします。

ぼくは、この作品をLPとCDでそれぞれ一枚づつ所有している。

LPは日本盤で、記憶に間違いなければ、1980年頃に買ったものである。当時の音楽シーンは、パンク (Punk) からニュー・ウェイヴ (New Wave) へと移行する時代。新しい可能性を秘めたバンドを紹介する為にばらまかれた言葉の端々に、 シド・バレット (Syd Barrett) という呪詛のかかった単語が踊っていたのである。つまり、彼の影響下にあると想われるいくつもの新進アーティストが登場していたのだ。
その一方で、彼がかつて在籍し、彼の在籍時を凌駕する成功を収めたピンク・フロイド (Pink Floyd) に関しては冷ややか、というよりも酷評や罵倒に近いニュアンスで語られていたのである。ひとつはその商業的な成功と言うやつで、もうひとつはひとつのメッセージを伝える為に、長い長い時間を要したからだ。僅か3分弱で、ずばっと断言してしまうパンク (Punk) ~ニュー・ウェイヴ (New Wave) な手法から観れば、アルバム一枚を費やしてあるモノゴトを伝達する手法は、冗長で散漫に想えて仕方がなかったからだ。

そういう反面教師的な存在に観えたピンク・フロイド (Pink Floyd) の、その創始者である シド・バレット (Syd Barrett) は、そこから離脱したが為に"狂ったダイアモンド (Shine On You Crazy Diamond) "の様に、ぼく達にも輝いて観えたのだ。
ポップ・ミュージックのフォーマットに乗っ取りながらも、己の内面にある言いようの知れない世界を描いてゆく。そして、その言いようの知れない世界が如何に巨大で深奥だったのかを、謀らずも、自らの肉体と精神で物語ってしまう。
いま、どこにいるのかもわからない、いま、どこへむかえばいいのかわからない、いま、どこからここへきたのかすらわからない。
そんなぼく達にとって、よい意味でも悪い意味でも、彼はひとつの指標であったのだ。

アルバムの一曲目「天の支配 (Astronomy Domine) 」からかける。ハード・ドライヴィンなこの曲に身を委ねていると、少しづつ地軸が歪んで観えてくる。5曲目の「パウ・R・トック・H (Pow R. Toc H.) 」の得体の知れない生物の咆哮を模した擬声が聴こえてくる頃には、相当変な場所に到達している。
そして、ターンテーブル (Turntable) に乗ったLPをひっくり返す。サイケデリックなあの時代 (Psychedelic Era) の雰囲気をびんびんに香しながら「星空のドライヴ (Interstellar Overdrive) 」が聴こえてくる。この曲の最終局面の旧いスタジオ技法に辟易していると、また地軸が歪んでくる。終焉部の不気味な鴉の様な鳴声を背景に「バイク (Bike) 」が終わる頃には、また己を喪失している。あぁ、かわいたわらいがまたきこえる...。
そして、当時の彼らの最大のヒット曲である「 シー・エミリー・プレイ (See Emily Play) 」が始るのである。オリジナル英国盤には収められていないこの曲、作品全体の流れからも相当異質であるし、違和感も感じられる。だけれども、この曲が最期に収録されているおかげで、無事に己の居る場所に戻って来れる事も事実である。それは、あまりに強引な方法なのだけれども。

と、いうのは、1997年に発売されたモノラル盤、ぼくのもう一枚のCDの方を聴いたからだ。恐らく、アルバム発表30周年記念で発売されたこのヴァージョン。オリジナル・フォーマットに則って、全11曲入りのアルバム篇[それは特製パッケージでコティングされていた]と、その前後に発表された3枚のシングル収録曲を収めたシングル曲集とに、別売りされたのだ。そして、この二作品を入手したモノは、その特製パッケージに二枚共にして収納出来る....というのは、これは購入したモノの趣味の問題だけれども。

この形態になって初めて理解出来る事がある。
それは、バンドがやりたかったこととバンドにもとめられていたことの乖離である。

当時のアンダーグラウンド・シーンからいくつも登場したバンドの中にあって、ピンク・フロイド (Pink Floyd) だけが際立った存在であった事がひとつある。それは、 シド・バレット (Syd Barrett) という人物に三分間のポップ・ソングを書ける能力があったという事である。当時の殆どのバンドが、ブルースやジャズをサイケデリック (Psychedelic) という坩堝 (Crucible) に入れて、長い長いインタープレイ (Interplay) や一触即発のインプロヴィゼーション (Improvisation) の中から音楽を紡ぎ出していた。そんな彼らとは、彼は違うのだ。恐らくピンク・フロイド (Pink Floyd) もその様な手法でライヴを行っていたのだろう。しかし、その中にはきらきらと輝く美しいメロディーがいくつもいくつも溢れていたのではないだろうか。そして、音楽ビジネスとして彼らに着目したのは、そのきらきらと輝くメロディーの数々だったのだ。

恐らく、実際にライブで体験出来る「天の支配 (Astronomy Domine) 」や「星空のドライヴ (Interstellar Overdrive) 」は、アルバムに収められているものよりも遥かに長い演奏を要したであろう。その長い演奏時間の一断片として、「パウ・R・トック・H (Pow R. Toc H.) 」や「バイク (Bike) 」は時には白昼夢の様に時には悪夢の様に現れたに違いない。

シングルという短いフォーマットに無理矢理収められたナンバーや、LP[という当時では長尺]のフォーマットに収まりきれないナンバーを、交互に聴くと、そんな夢や幻を語りたくなるのです。

ものづくし(click in the world!)80.:
『夜明けの口笛吹き (THE PIPER AT THE GATES OF DAWN)』
by ピンク・フロイド (PINK FLOYD)


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夜明けの口笛吹き(THE PIPER AT THE GATES OF DAWN)』 by ピンク・フロイド(PINK FLOYD)

SIDE ONE
1. 天の支配 (4' 09")
  ASTRONOMY DOMINE (Barrett)
2. ルーシファー・サム (3' 04")
  LUCIFER SAM (Barrett)
3. マチルダ・マザー (3' 04")
  MATILDA MOTHER (Barrett)
4. フレイミング (2' 43")
  FLAMING (Barrett)
5. パウ・R・トック・H (4' 22")
  POW R. TOC H.
  (Barrett - Waters - Wright - Mason)
6. 恋の聴診器 (3' 05")
  TAKE UP THY STETHOSCOPE AND WALK
  (Waters)

SIDE TWO
1. 星空のドライヴ (9' 30")
  INTERSTELLAR OVERDRIVE
  (Barrett - Waters - Wright - Mason)
2. 地の精 (2' 20")
 THE GNOME (Barrett)
3. 第24章 (3' 38")
  CHAPTER 24 (Barrett)
4. 黒と緑のかかし (2' 07")
  THE SCARECROW (Barrett)
5. バイク (3' 22")
  BIKE (Barrett)
6. シー・エミリー・プレイ (2'49")
  SEE EMILY PLAY (Barrett)

[制作]
ノーマン・スミス
PRODUCED BY : NORMAN SMITH

Recording Engineer : Peter Bown
Front Cover Photo : Vic Singh
Rear Cover Design : Syd Barrett

[歌と演奏]
ピンク・フロイドシド・バレットロジャー・ウォータースリック・ライトニック・メイソン
SYD BARRETT - LEAD GUITAR & VOCALS
ROGER WATERS - BASS GUITAR & VOCALS
RICK WRIGHT - ORGAN / PIANO
NICKY MASON - DRUMS

(P) 1967 東芝EMI株式会社
MADE IN JAPAN

僕の持っている日本盤LPには、下に掲載する一文とともに、大貫憲章 / Kensho Onukiのライナー・ノーツが掲載されています。
「*このアルバムは'75年10月に発売したEMS-80317の新装再発です。従ってライナー・ノーツも当時のものを使用しました。」
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