2022.07.12.08.34
先頃なくなった佐野浅夫 (Asao Sano) が演じた人物でも、その人物を主人公に据えたTV時代劇 (TV Jidaigeki) 『水戸黄門 (Mito Komon)』 [1969〜2019年 TBS系列放映] でもない。
だからと謂って、実在した人物、歴史上の彼でもない。
拙稿の主題は、森繁久彌 (Hisaya Morishige) が演じた人物、大河ドラマ (Taiga drama) 『元禄太平記 (Genroku Taiheiki)』[南條範夫 (Norio Nanjo) 原作 1975年 NHK放映] に登場した徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) である。
とは、謂ってもその大河ドラマ (Taiga drama) を観たのは、四半世紀以上も前の事である。しかも、現在はその映像も遺っておらず、追体験も不可能だ。
だから、その大河ドラマ (Taiga drama) では語られている徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) の枠を超えてしまうかもしれない。その番組内では語られてはいなかった事件にも言及してしまうかもしれない。
だから、厳密な意味での批評にも感想にもなり得ない、とおもう。
それ故にこれから綴られるモノは、その大河ドラマ (Taiga drama) を媒介にして、ぼくがみたりきいたりよんだりふれてみたモノ、そしてそこから類推し得たモノ、そんな認識で読んでくれたら、とおもう。
その大河ドラマ (Taiga drama) に、主人公はふたりいる。
柳沢吉保 (Yanagisawa Yoshiyasu) [演:石坂浩二 (Koji Ishizaka)] と大石内蔵助 (Oishi Kuranosuke) [演:江守徹 (Toru Emori)] である。前者は徳川綱吉 (Tokugawa Tsunayoshi) [演:芦田伸介 (Shinsuke Ashida)] に仕える側用人 (Sobayonin) であり、後者は浅野内匠頭 (Asano Naganori) [演:片岡孝夫 (Kataoka Nizaemon XV)] に仕える城代家老 (Daimyo's Chief Councilor In Charge Of His Master's Castle) であって、後に赤穂事件 (Forty-seven Ronin Incident) [1702年] をひきおこす首魁でもある。
物語前半は前者が当時の江戸幕府 (Tokugawa shogunate) の政権の中枢を握るまでの過程を描き、物語後半は、後者を中心とする赤穂浪士 (Forty-seven Ronin) によるその事件の過程を詳らかに描く。その転換として、浅野内匠頭 (Asano Naganori) による吉良上野介 (Kira Yoshinaka) [演:小沢栄太郎 (Eitaro Ozawa)] 暗殺未遂事件、すなわち松之廊下刃傷事件 (Bloodshed AtMatsu No Oroka) がある。その結果、前者と後者は2度、敵対関係となる。すなわち、裁く側と裁かれる側だ。とは謂え、両者が直接に相対する事はない。
だから、このふたりを次の様に看做す事が出来る。
どちらも暗愚な上司 (Boss) をもつ中間管理職 (Middle Manager) である、と。
前者は自身の上司 (Boss) の愚かさを最大限に活用して、自身の勤務先を完全掌握する。
後者は自身の上司 (Boss) の愚かさの尻拭いに終始し、部下 (Staff) それぞれに相応しい場所を提供すると共に、上司 (Boss) に代わってその本懐を遂げる。
そこで徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) は、暗愚な上司 (Boss)、もとい、徳川綱吉 (Tokugawa Tsunayoshi) に異を唱えるモノとして登場する。その部下 (Staff)、もとい、柳沢吉保 (Yanagisawa Yoshiyasu) にとっては、目の上の瘤 (A Pain In The Butt) の様な位置にいる。
彼が徳川綱吉 (Tokugawa Tsunayoshi) に向けて異論を投じたのはふたつの点だ。
ひとつは生類憐みの令 (Edict Forbidding Cruelties To Living Things) [1682〜1709年]、ひとつは徳川綱吉 (Tokugawa Tsunayoshi) の後継者、すなわち第6代将軍 (The Sixth Shogun) に関してである。
ちなみに、その時の彼は、御老公 (Eldely Nobleman) でも先の副将軍 (Former Vice-shogun) でもない。現役の水戸藩主 (Feudal Lord Of Mito Domain) であり、いまの副将軍 (Vice-shogun Nowadays) であるのだ。
柳沢吉保 (Yanagisawa Yoshiyasu) にとって、と謂うよりも、その上司 (Boss) 徳川綱吉 (Tokugawa Tsunayoshi) 自身にとっても、目の上の瘤 (A Pain In The Butt) なのである。
だから、その大河ドラマ (Taiga drama) での徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) は、徳川綱吉 (Tokugawa Tsunayoshi) 政権、そしてそれを継承して自家薬籠中のモノへとしようとする柳沢吉保 (Yanagisawa Yoshiyasu) 政権下に於ける問題点を指摘する装置としての役割であって、柳沢吉保 (Yanagisawa Yoshiyasu) の躍動が次第に活性化し始めた時点で、彼はその舞台から退場する。すなわ失脚 (Fall From Grace)、隠居 (Retirement) の身となるのだ。
この大河ドラマ (Taiga drama) を観ていた当時のぼくの認識は、ここにいるのはぼくの知っている徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) でもないし、ぼくの知っている森繁久彌 (Hisaya Morishige) でもないのだな、と謂う様なモノだったとおもう。
頑固であると同時に守旧である。しかも円熟とは程遠い。激烈なのである。その大河ドラマ (Taiga drama) では叱ったり怒ったり怒鳴ったりしてばかり居た様な気がする。
次回は「に」。
附記 1, :
森繁久彌 (Hisaya Morishige) は、大河ドラマ (Taiga drama) に出演する以前に、映画『水戸黄門漫遊記 (Mito Komon Mannyuki)』 [千葉泰樹 (Yasuki Chiba) 監督作品 1969年制作] に於いて、徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) 役を演じている。
ぼくはその映画は未見であるので、それぞれの作品に於いての演出や演技に関する差異に関して言及する事は出来ないのであった。
附記 2. :
番組名にある元禄 (Genroku) [1688~1704年] と謂う時代、そしてその時代から発芽した幾つもの文化や風俗は、その大河ドラマ (Taiga drama) でどの様に描かれていたのであろうか。よく憶えていない。その代わりに、憶えているのはこんな事だ。
物語の序盤、すなわち、徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) が煩雑に登場しているときは、能 (Noh) の光景がよく登場し、それが意外なモノにぼくにはみえていた。何故ならば、その芸能はその当時より遥かに以前、室町時代 (Muromachi Period) に誕生したからだ。つまり、ぼくには予想外の何者でもなかったのだ。
そして徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) も能 (Noh) をよくし、ある日、無面でその演目『鍾馗 (Shoki)』を舞う。その際、柳沢吉保 (Yanagisawa Yoshiyasu) の傀儡である自藩の家老 (Karou : Chief Retainer)、藤井紋太夫( (Mondayu Fujii) [演:横森久 (Hisashi Yokomori)] を斬殺する [下掲画像は月岡耕漁 (Kogyo Tsukioka)画『能楽図絵:鐘馗 (Shoki, From The Series Pictures Of Noh Plays, Part II, Section I)』]。彼はその行為をもって隠居 (Retirement) させられてしまうのではあるが、大河ドラマ (Taiga drama) にもその様な描写はあっただろうか。
ただ、ぼくには、徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) の退場と共に能 (Noh) のシーンが姿を消してしまった様にみえた。それ以降、後に浄瑠璃 (Joruri) や歌舞伎 (Kabuki) の代表的な演目 [元禄 (Genroku) と謂う時代に芽吹いた芸能] となる赤穂事件 (Forty-seven Ronin Incident) を中心として、その大河ドラマ (Taiga drama) が語られていく、そんな印象がある。文化の中心が武家層 (Samurai) から町人層 (Chonin) へと転換していった、それがそこに顕れているかの様なのだ。

附記 3. :
その大河ドラマ (Taiga drama) 放映の前年、TV時代劇 (TV Jidaigeki) 『水戸黄門 第5部 (Mito Komon Season Five)』 [1974年 TBS系列放映] では、徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) [演:東野英治郎 (Eijiro Tono)] が鍋島光茂 (Nabeshima Mitsushige) [演:森繁久彌 (Hisaya Morishige)] を訪う場面がある。その時点では既に、翌年放映の大河ドラマ (Taiga drama) の内容と主要キャストは決定していた筈だから、その放映回はみかたによっては、東野英治郎 (Eijiro Tono) から森繁久彌 (Hisaya Morishige) への、TV時代劇 (TV Jidaigeki) 『水戸黄門 (Mito Komon)』から大河ドラマ (Taiga drama) 『元禄太平記 (Genroku Taiheiki)』への、ティービーエステレビ (TBS Television) から日本放送協会 (NHK) へのエール (Cheer) として眺める事も出来るだろう。
そして、森繁久彌 (Hisaya Morishige) が大河ドラマ (Taiga drama) に出演している際のティービーエステレビ (TBS Television) の放映枠はTV時代劇 (TV Jidaigeki) 『大岡越前 第4部 (Ooka Echizen Season Four)』 [1974~1975年 TBS系列放映] を放映している。つまり、ティービーエステレビ (TBS Television) と日本放送協会 (NHK) 両局に渡り、同時期に徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) は登場していない。演じている俳優も違えば、そこで語られている物語での役回りも異なるからだ。
だからそれともだけれども、その一方でこんな事もある。
大河ドラマ (Taiga drama) 放映の前年放映のTV時代劇 (TV Jidaigeki) 『水戸黄門 第5部 (Mito Komon Season Five)』の徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) 一行の旅程は水戸藩 (Mito Domain) から福江藩 (Fukue Domain) への往路のみである。
そして、大河ドラマ (Taiga drama) 放映と同年放映のTV時代劇 (TV Jidaigeki) 『水戸黄門 第6部 (Mito Komon Season Six)』 [1975年 TBS系列放映] の徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) 一行の旅程は復路、福江藩 (Fukue Domain) から水戸藩 (Mito Domain) への帰還なのである。
つまり、大河ドラマ (Taiga drama) では水戸藩主 (Feudal Lord Of Mito Domain) であった 徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) が隠居 (Retirement) してそのままTV時代劇 (TV Jidaigeki) の徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) になったと謂う解釈からの回避、もしくは断絶がそこで謀られている。
附記 4. :
その大河ドラマ (Taiga drama) での徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) は自身の失脚 (Fall From Grace) 前に、自身が将軍 (Shogun) 後継と推す甲府綱豊 (Kofu Tsunatoyo) [演:木村功 (Isao Kimura)] に向けて雌伏を促す。
その結果、徳川綱吉 (Tokugawa Tsunayoshi) の死後、彼は第6代将軍 (The Sixth Shogun ) 徳川家宣 (Tokugawa Ienobu) として政権を握る事になる。
そう謂えば、徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) が企てた史書『大日本史 (Dai Nihonshi)』[1657年編纂開始 1906年編纂終了] の編集が、水戸藩 (Mito Domain) に於ける後の倒幕運動 (Movement To Overthrow The Shogunate) への端緒となったのである。
彼はなんらかの発火装置として、そこにあるのかもしれない。
だからと謂って、実在した人物、歴史上の彼でもない。
拙稿の主題は、森繁久彌 (Hisaya Morishige) が演じた人物、大河ドラマ (Taiga drama) 『元禄太平記 (Genroku Taiheiki)』[南條範夫 (Norio Nanjo) 原作 1975年 NHK放映] に登場した徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) である。
とは、謂ってもその大河ドラマ (Taiga drama) を観たのは、四半世紀以上も前の事である。しかも、現在はその映像も遺っておらず、追体験も不可能だ。
だから、その大河ドラマ (Taiga drama) では語られている徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) の枠を超えてしまうかもしれない。その番組内では語られてはいなかった事件にも言及してしまうかもしれない。
だから、厳密な意味での批評にも感想にもなり得ない、とおもう。
それ故にこれから綴られるモノは、その大河ドラマ (Taiga drama) を媒介にして、ぼくがみたりきいたりよんだりふれてみたモノ、そしてそこから類推し得たモノ、そんな認識で読んでくれたら、とおもう。
その大河ドラマ (Taiga drama) に、主人公はふたりいる。
柳沢吉保 (Yanagisawa Yoshiyasu) [演:石坂浩二 (Koji Ishizaka)] と大石内蔵助 (Oishi Kuranosuke) [演:江守徹 (Toru Emori)] である。前者は徳川綱吉 (Tokugawa Tsunayoshi) [演:芦田伸介 (Shinsuke Ashida)] に仕える側用人 (Sobayonin) であり、後者は浅野内匠頭 (Asano Naganori) [演:片岡孝夫 (Kataoka Nizaemon XV)] に仕える城代家老 (Daimyo's Chief Councilor In Charge Of His Master's Castle) であって、後に赤穂事件 (Forty-seven Ronin Incident) [1702年] をひきおこす首魁でもある。
物語前半は前者が当時の江戸幕府 (Tokugawa shogunate) の政権の中枢を握るまでの過程を描き、物語後半は、後者を中心とする赤穂浪士 (Forty-seven Ronin) によるその事件の過程を詳らかに描く。その転換として、浅野内匠頭 (Asano Naganori) による吉良上野介 (Kira Yoshinaka) [演:小沢栄太郎 (Eitaro Ozawa)] 暗殺未遂事件、すなわち松之廊下刃傷事件 (Bloodshed AtMatsu No Oroka) がある。その結果、前者と後者は2度、敵対関係となる。すなわち、裁く側と裁かれる側だ。とは謂え、両者が直接に相対する事はない。
だから、このふたりを次の様に看做す事が出来る。
どちらも暗愚な上司 (Boss) をもつ中間管理職 (Middle Manager) である、と。
前者は自身の上司 (Boss) の愚かさを最大限に活用して、自身の勤務先を完全掌握する。
後者は自身の上司 (Boss) の愚かさの尻拭いに終始し、部下 (Staff) それぞれに相応しい場所を提供すると共に、上司 (Boss) に代わってその本懐を遂げる。
そこで徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) は、暗愚な上司 (Boss)、もとい、徳川綱吉 (Tokugawa Tsunayoshi) に異を唱えるモノとして登場する。その部下 (Staff)、もとい、柳沢吉保 (Yanagisawa Yoshiyasu) にとっては、目の上の瘤 (A Pain In The Butt) の様な位置にいる。
彼が徳川綱吉 (Tokugawa Tsunayoshi) に向けて異論を投じたのはふたつの点だ。
ひとつは生類憐みの令 (Edict Forbidding Cruelties To Living Things) [1682〜1709年]、ひとつは徳川綱吉 (Tokugawa Tsunayoshi) の後継者、すなわち第6代将軍 (The Sixth Shogun) に関してである。
ちなみに、その時の彼は、御老公 (Eldely Nobleman) でも先の副将軍 (Former Vice-shogun) でもない。現役の水戸藩主 (Feudal Lord Of Mito Domain) であり、いまの副将軍 (Vice-shogun Nowadays) であるのだ。
柳沢吉保 (Yanagisawa Yoshiyasu) にとって、と謂うよりも、その上司 (Boss) 徳川綱吉 (Tokugawa Tsunayoshi) 自身にとっても、目の上の瘤 (A Pain In The Butt) なのである。
だから、その大河ドラマ (Taiga drama) での徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) は、徳川綱吉 (Tokugawa Tsunayoshi) 政権、そしてそれを継承して自家薬籠中のモノへとしようとする柳沢吉保 (Yanagisawa Yoshiyasu) 政権下に於ける問題点を指摘する装置としての役割であって、柳沢吉保 (Yanagisawa Yoshiyasu) の躍動が次第に活性化し始めた時点で、彼はその舞台から退場する。すなわ失脚 (Fall From Grace)、隠居 (Retirement) の身となるのだ。
この大河ドラマ (Taiga drama) を観ていた当時のぼくの認識は、ここにいるのはぼくの知っている徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) でもないし、ぼくの知っている森繁久彌 (Hisaya Morishige) でもないのだな、と謂う様なモノだったとおもう。
頑固であると同時に守旧である。しかも円熟とは程遠い。激烈なのである。その大河ドラマ (Taiga drama) では叱ったり怒ったり怒鳴ったりしてばかり居た様な気がする。
次回は「に」。
附記 1, :
森繁久彌 (Hisaya Morishige) は、大河ドラマ (Taiga drama) に出演する以前に、映画『水戸黄門漫遊記 (Mito Komon Mannyuki)』 [千葉泰樹 (Yasuki Chiba) 監督作品 1969年制作] に於いて、徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) 役を演じている。
ぼくはその映画は未見であるので、それぞれの作品に於いての演出や演技に関する差異に関して言及する事は出来ないのであった。
附記 2. :
番組名にある元禄 (Genroku) [1688~1704年] と謂う時代、そしてその時代から発芽した幾つもの文化や風俗は、その大河ドラマ (Taiga drama) でどの様に描かれていたのであろうか。よく憶えていない。その代わりに、憶えているのはこんな事だ。
物語の序盤、すなわち、徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) が煩雑に登場しているときは、能 (Noh) の光景がよく登場し、それが意外なモノにぼくにはみえていた。何故ならば、その芸能はその当時より遥かに以前、室町時代 (Muromachi Period) に誕生したからだ。つまり、ぼくには予想外の何者でもなかったのだ。
そして徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) も能 (Noh) をよくし、ある日、無面でその演目『鍾馗 (Shoki)』を舞う。その際、柳沢吉保 (Yanagisawa Yoshiyasu) の傀儡である自藩の家老 (Karou : Chief Retainer)、藤井紋太夫( (Mondayu Fujii) [演:横森久 (Hisashi Yokomori)] を斬殺する [下掲画像は月岡耕漁 (Kogyo Tsukioka)画『能楽図絵:鐘馗 (Shoki, From The Series Pictures Of Noh Plays, Part II, Section I)』]。彼はその行為をもって隠居 (Retirement) させられてしまうのではあるが、大河ドラマ (Taiga drama) にもその様な描写はあっただろうか。
ただ、ぼくには、徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) の退場と共に能 (Noh) のシーンが姿を消してしまった様にみえた。それ以降、後に浄瑠璃 (Joruri) や歌舞伎 (Kabuki) の代表的な演目 [元禄 (Genroku) と謂う時代に芽吹いた芸能] となる赤穂事件 (Forty-seven Ronin Incident) を中心として、その大河ドラマ (Taiga drama) が語られていく、そんな印象がある。文化の中心が武家層 (Samurai) から町人層 (Chonin) へと転換していった、それがそこに顕れているかの様なのだ。

附記 3. :
その大河ドラマ (Taiga drama) 放映の前年、TV時代劇 (TV Jidaigeki) 『水戸黄門 第5部 (Mito Komon Season Five)』 [1974年 TBS系列放映] では、徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) [演:東野英治郎 (Eijiro Tono)] が鍋島光茂 (Nabeshima Mitsushige) [演:森繁久彌 (Hisaya Morishige)] を訪う場面がある。その時点では既に、翌年放映の大河ドラマ (Taiga drama) の内容と主要キャストは決定していた筈だから、その放映回はみかたによっては、東野英治郎 (Eijiro Tono) から森繁久彌 (Hisaya Morishige) への、TV時代劇 (TV Jidaigeki) 『水戸黄門 (Mito Komon)』から大河ドラマ (Taiga drama) 『元禄太平記 (Genroku Taiheiki)』への、ティービーエステレビ (TBS Television) から日本放送協会 (NHK) へのエール (Cheer) として眺める事も出来るだろう。
そして、森繁久彌 (Hisaya Morishige) が大河ドラマ (Taiga drama) に出演している際のティービーエステレビ (TBS Television) の放映枠はTV時代劇 (TV Jidaigeki) 『大岡越前 第4部 (Ooka Echizen Season Four)』 [1974~1975年 TBS系列放映] を放映している。つまり、ティービーエステレビ (TBS Television) と日本放送協会 (NHK) 両局に渡り、同時期に徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) は登場していない。演じている俳優も違えば、そこで語られている物語での役回りも異なるからだ。
だからそれともだけれども、その一方でこんな事もある。
大河ドラマ (Taiga drama) 放映の前年放映のTV時代劇 (TV Jidaigeki) 『水戸黄門 第5部 (Mito Komon Season Five)』の徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) 一行の旅程は水戸藩 (Mito Domain) から福江藩 (Fukue Domain) への往路のみである。
そして、大河ドラマ (Taiga drama) 放映と同年放映のTV時代劇 (TV Jidaigeki) 『水戸黄門 第6部 (Mito Komon Season Six)』 [1975年 TBS系列放映] の徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) 一行の旅程は復路、福江藩 (Fukue Domain) から水戸藩 (Mito Domain) への帰還なのである。
つまり、大河ドラマ (Taiga drama) では水戸藩主 (Feudal Lord Of Mito Domain) であった 徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) が隠居 (Retirement) してそのままTV時代劇 (TV Jidaigeki) の徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) になったと謂う解釈からの回避、もしくは断絶がそこで謀られている。
附記 4. :
その大河ドラマ (Taiga drama) での徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) は自身の失脚 (Fall From Grace) 前に、自身が将軍 (Shogun) 後継と推す甲府綱豊 (Kofu Tsunatoyo) [演:木村功 (Isao Kimura)] に向けて雌伏を促す。
その結果、徳川綱吉 (Tokugawa Tsunayoshi) の死後、彼は第6代将軍 (The Sixth Shogun ) 徳川家宣 (Tokugawa Ienobu) として政権を握る事になる。
そう謂えば、徳川光圀 (Tokugawa Mitsukuni) が企てた史書『大日本史 (Dai Nihonshi)』[1657年編纂開始 1906年編纂終了] の編集が、水戸藩 (Mito Domain) に於ける後の倒幕運動 (Movement To Overthrow The Shogunate) への端緒となったのである。
彼はなんらかの発火装置として、そこにあるのかもしれない。
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