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2022.06.19.08.27

"I am a kitten : Kahimi Karie sings Momus in Paris" by Kahimi Karie

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店には彼女名義の作品がふたつ並んでいた。1995年の事である。
そして、こうおもった。
こんなところでなにをやっているのだろう、と。

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歌手にではなくて、楽曲の提供者への興味があった。
つまり、モーマス (Momus) に対して、である。
だから、そこにあったカヒミ・カリィ (Kahimi Karie) のふたつの作品のうち、同日発売のミニ・アルバム『マイ・ファースト・カリィ (My First Karie)』 [1995年発表] ではなくて本作を購入する。

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モーマス (Momus) に関しては彼の第2作『ポイズン・ボーイフレンド (The Poison Boyfriend)』 [1987年発表] がすきだった。清洌なアコースティック・サウンド (Acoustic Sounds) が奏でられているのに、何故だか居心地がわるい。それは、そこに皮肉や諧謔が満ちている様におもわれたからだ。と、謂うか、その作品名に正直である為には、そうでなければならない。
だけれども、彼の音楽性 [表層的なそれ] は次から次へと変わる。そこにある真意は変わらないまま、口調が変わる。解りやすく謂えば、編曲や演奏形態が変わる。アコースティック (Acoustic Sonds) から一転、エレクトロニクス (Electronic Sounds) な音像になる。第4作『ヒア・カム・ザ・ナイト (Don't Stop The Night)』 [1989年発表] は、かねてからの彼等のファンに混乱をもたらすばかりなのだ。

そんな彼と謂うミュージシャンが、ひとりの女性アーティストに対し、楽曲提供をしている。作品名を信ずれば、そう謂う事だ。
それが俄かに信じ難い。孤高の、と謂う形容が相応しいのかは自信はないが、少なくとも共同制作には不適格な様におもえる。モーマス (Momus) と謂うアーティストは、孤独 [であるべき] ではないか。本作のアート・ワークにある様な光景は似つかわしくはない、そう思う。そして、それ故に購入した。

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作品名を信ずれば、カヒミ・カリィ (Kahimi Karie) によるモーマス (Momus) 楽曲のカヴァー集の様な体裁だ。だけれども本作で聴く事の出来る全5曲は、彼の既発表曲ではない。彼の新曲、新録音である [モーマス (Momus) 自身によるセルフ・カヴァーは全曲、後に発表される編集アルバム『20 ウォッカ・ジェリー (Twenty Vodka Jellies)』 [1996年発表] で聴く事が出来る] 。
しかも、ややこしい事に、クレジット上でのモーマス (Momus) の地位は正しくは、エグゼクティヴ・プロデューサー (Executive Producer) である様だ [カヒミ・カリィ (Kahimi Karie) の歌唱を支えるバック・メンバーのひとりではあるのだけれども] 。
本作のサウンド・プロデュース並びに実作業 (Sound Produce And Musical Director) は、バック・メンバーのひとりでもある、ベルトラン・ブルガラ (Bertrand Burgalat) が担っているのだ。
作品制作に於ける体制、その実態がよく解らない [作品制作に於ける、演奏者の選定や収録場所等のお膳立てはモーマス (Momus) が行ったんだろうなぁ、とはおもうのだけれども]。
クレジット表記を信ずる限り、アート・ワークにある様な光景をみるのはそう簡単ではないのだ。

話題はここで変わる。

冒頭に記した様な理由で、本作の主人公、カヒミ・カリィ (Kahimi Karie) にはまったく興味がない、一度も聴いた事すらない。そう断定出来れば格好良いのだが、現実はそんなにやさしくはない。
第一に、拙稿を綴る為に、念の為に今回、ひととおり聴いてしまった。

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そして、それ以前にも体験した事がある。本作を制作したクルーエル・レコーズ (Crue-L Records) のオムニバス・アルバム『ブロウ・アップ (Blow-Up 6 Singles And 6 Jingles)』 [1991年発表] に彼女も参加していた。この作品が、そのレーベルの第1作である。
今、憶えば、その作品こそ、渋谷系 (Shibuya-kei : Shibuya Style) の萌芽であったとおもう。だけれども発表当時は、その時代の洋楽の傾向にそっくりそのまま影響を受けたバンド群をかき集めたモノとしかおもえなかった。マッドチェスター (Madchester) とグランジ (Grunge) が、なんの蟠りもなく同居している。そんな認識だ。その中に於いては、カヒミ・カリィ (Kahimi Karie) は異質なモノではあったが、だからと謂って、その後の彼女をおもい描く事はぼくには出来なかった。

その後、渋谷系 (Shibuya-kei : Shibuya Style) と謂う形容、評価が全盛を極めた時代にあって、彼女はその渦中にあった。と、謂うよりも君臨している、と謂った方が良いのだろうか。その形容を演出し牽引した人物達はほかにあっただろうが、彼等がそうせざるを得ないのが、彼女と謂う存在であったのかもしれない。
と、謂うのは、渋谷系 (Shibuya-kei : Shibuya Style) と謂う存在は、演奏の形態を示す語句ではなかったからだ。音楽に対するある種の態度 (Attitude)、そのひとつなのである。だから、その音楽がなんであろうと無関係ではあるのだ。
だからこそ、彼女はだれとでもくむことができるし、なんでもできる、その筈だ。
と、同時に。だからこそ、たったひとつのことしかできないし、なにをやっても、ひとつの結果しか産みだすことができない。
彼女名義の作品を幾つか聴いておもい、いえる事は今、こんな程度の事である。

敢えて謂えば、本作はモーマス (Momus) の作品ではなくて、どうみてもカカヒミ・カリィ (Kahimi Karie) の作品なのである。

[拙稿を綴り始める当初は、セルジュ・ゲンスブール (Serge Gainsbourg) と彼の [音楽家としての] 女性遍歴の事との比較めいた事を考えていたのだけれども、あまり良い方法ではないだろう。彼が何故、フランス・ギャル (France Gall) を弄んだのか、彼が何故、ジェーン・バーキン (Jane Birkin) に着港したのだろうか、そしてその間、彼が何故、ブリジット・バルドー (Brigitte Bardot) に掌を灼ゐたのか。そして、モーマス (Momus) にとっては、カヒミ・カリィ (Kahimi Karie) との逢瀬はどれなのだろうか。と、どうしても下世話なところへ横着するだけなのだから。本作の制作者にもそんな念頭はあったとしても。]

ものづくし (click in the world!) 236. :"I am a kitten : Kahimi Karie sings Momus in Paris" by Kahimi Karie


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"I am a kitten : Kahimi Karie sings Momus in Paris" by Kahimi Karie

1. I am a kitten
2. Vogue Bambini
3. Giapponese a Roma
4. Nikon 2
5. The Poisoners

all songs written and produced by Momus

(P) & (C) 1995 CRUE-L RECORDS, except track 1 1994 CRUE-L RECORDS
ORIGINAL SOUND RECORDING MADE BY CRUE-L RECORDS

Recording Personal
Momus - Guitar, Backing Vocals
Bertrand Burgalat - Bass, Piano, Flute, Organ
Gregori Czerkinsky - Drums, Percussion, Welson, Rhythm Box
Sound Produce and Musical Director : Bertrand Burgalat
Executive Producer : Momus

All songs written by Momus
Published by Rhythm King Music

Special Thanks by Momus ...
Kenji Takimi, Keigo Oyamada, Hiromi Otsuka, Shazna Nessa, Ichiro Oka, Fumiko Masaki

Photography by Kazunari Tajima for Tajjiemax Productions
Hair Make Up by Wataru Kasai
Painting by Masaru Ohtaki
Art Direction by Kahimi Karie
Sleve Layout by Mayumi Hirooka

Artist management : Fumiko Masaki, Ichiro Oka for 3D

Special Thanks ...
Hiromichi Nozawa, Michiko Tago, Bertrand Burgalat, Gregori Czerkinsky, Pascal BOREL, Shazna Currie, Frank ROUBAUO, Philippe KATERINE, Nicolas Moreau, Jean-Marie Poirier, Keigo Oyamada (Cornelius), Akira. O, Sei and Itsko. O, Yoko Ueno, Aritomo Ueno, Keiko Takai, Ryuichiro Yunoki, AIGON, Ellie Saito, Saiko Tsukamoto, Hiroko Umeyama and Nene, Akemi Nakano, Mika, Ruth, Goro, Tomomi, Taro, Minako and nao-chan, Churu, Hayami Tsuruta, Kei Sakuragi and TRATTORIA
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