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2009.05.10.01.40

『天国への扉 もしくは ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア (Knockin' On Heaven's Door)』 前編


幾度も幾度も天国への扉を叩く (Knock, Knock,Knockin' On Heaven's Door)」というリフレインが響くこの曲は、映画『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯 (Pat Garrett & Billy The Kid)』[サム・ペキンパー (Sam Peckinpah) 監督作品]の挿入曲として登場し、上にある様なシーンで響き渡る。
つまり、銃に撃たれ、意識が朦朧とし白濁してゆく中で、己の眼に映るモノを唄った曲である。
歌の主人公は、恐らく死ぬであろう、否、間違いなく死ぬであろう。


映像作品の劇中に登場するモノ達の心理描写としては、ごく普通の描写である。と、いうよりも常套句 (Cliche) でありクリシェ (Cliche) であり、吹飯ものの表現であるとも言える。
それを、この映画全編の音楽を担当したボブ・ディラン (Bob Dylan) が、サウンド・トラック盤『ビリー・ザ・キッド (Pat Garrett And Billy The Kid)』として発表する。



そしてまもなく、映画を離れて、ボブ・ディラン (Bob Dylan) の代表曲のひとつになってゆく。
上に掲載したのは、左上から、ザ・バンド (The Band) を伴った『偉大なる復活 (Before The Flood)』[1974年発表]のもの、1975年に行われたツアー『ローリング・サンダー・レヴュー (The Bootleg Series Vol. 5 : Bob Dylan Live 1975, The Rolling Thunder Revue』からのもの、そのライヴ盤『激しい雨 (Hard Rain)』発表時のツアーのもの。そして下段に移って、『ノックト・アウト・ローデッド (Knocked Out Loaded)』を発表しトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ (Tom Petty And The Heartbreakers) を従えた1986年当時のもの、そして1999年にポール・サイモン (Paul Simon) と共演時のもの。『MTVアンプラグド (MTV Unplugged)』のものはこちらから観て下さい[ザ・バンド (The Band) との共演を観たかった...というのは、亡いものねだりですね?]。
ボブ・ディラン (Bob Dylan) 自身の中で、その時その時に応じて、この楽曲に委ねるものが、どう変わっていったのか。歌詞そのものも変え、時にはメロディそのものも変えて唄う。だからそのアレンジが変わるのは当然なことだ。
それらを採り上げて、ひとつひとつ検証するには、あまりに英語力が乏しく、それ以上に、ボブ・ディラン (Bob Dylan) を知らなさすぎる。
だから、ここでは有名なカヴァー・ヴァージョンを採り上げて、この楽曲の変遷を聴いてみたいと想う。

ひとりの人間の死をモノローグとして唄う、その手法は、歌そのものを歌唱する人物が生者である限り、それは大袈裟な表現をすれば「死を想え / メメント・モリ (Memento mori) 」となる。
だから、この楽曲のアプローチは、唄う己自身の死[と生]に向かうか、他者のそれに向かうのか、いずれかにならざるを得ない。
死者は死を唄えないし、唄う必要すらないだろう。


多分、僕がこの楽曲を意識した最初のヴァージョンがガンズ・アンド・ローゼズ (Guns N' Roses) によるカヴァー。1991年発表の『ユーズ・ユア・イリュージョン II (Use Your Illusion II)』に収録されて、シングル・カットもされた。この曲がとても印象深いのは、この曲で唄われている内容がヴォーカリストのアクセル・ローズ (W. Axl Rose) の生き様にそのまま投影出来るからだ。このバンドがこれまで辿ってきた途、そして、これから辿るであろう途を、これほど予見させる楽曲もないだろう。
蛇足を承知で書けば、同時代にシーンに登場し、多大な評価と過大な絶賛を受け止められずに逝ってしまったカート・コバーン (Kurt Cobain) には、この曲は相応しくないのだ。


だから、多分にここで唄われる死は、リアリズム (Realism) よりもロマンティシズム (Romanticism) の方が要求されるのかも知れない。
となるとこの人。
と言えば、誤解を招くかも知れないけれども、ゴッズ・オヴ・ゴス (The Gods Of Goth) ことシスターズ・オブ・マーシー (The Sisters of Mercy) によるカヴァー。
死を想え / メメント・モリ (Memento mori) 」というよりも死と戯れろとでも言いたげな不適なカヴァーが個人的には好みだったりする。


そして、ウォーレン・ジヴォン (Warren Zevon) の場合は、あまりに哀しい。己が中皮腫 (Mesothelioma)を罹病している事が発覚、その後に制作に入るアルバム『ザ・ウインド (The Wind)』にこの曲を収録する。そして、この作品がそのまま遺作となってしまうのだ。
上に掲載した画像は、その彼の制作時の模様がわかるものである。


ところで、いくつか楽曲を調べてゆくと、少なからぬレゲエ (Reggae) 調のカヴァーが眼を引く。オリジナル・ヴァージョンがアコースティック弾語りなだけに、いぢりやすいと言えばそれまでだけれども、それには理由がある。
ボブ・マーリー (Bob Marley) が採り上げているからなのだ。恐らくこの楽曲のアンサー・ソングとして書かれたのが、撃った側の視点で書かれた「アイ・ショット・ザ・シェリフ (I Shot The Sheriff)」なのだろう。
ここでは、ボブ・マーリー (Bob Marley) へのトリビュート・カヴァーと同時に、エリック・クラプトン (Eric Clapton) によるカヴァー[彼は「アイ・ショット・ザ・シェリフ (I Shot The Sheriff) 」もカヴァーしている]と、ブライアン・フェリー (Bryan Ferry) のカヴァーを掲載する。

以後、後編に続く。
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