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2009.05.05.22.04

ごもら

古代怪獣ゴモラ (Gomora) は、『ウルトラマン (Ultraman) 』第26話「怪獣殿下 [前篇] 」及び第27話「怪獣殿下 [後篇] 」 (The Monster Prince) に登場した怪獣の名前である。1967年に放映されたこの作品は、脚本:金城哲夫 (Tetsuo Kinjo) 及び若槻文三、監督:円谷一 (Hajime Tsuburaya) 、特殊技術:高野宏一 (Koichi Takano) のチームによって制作された。
30分一話完結の本シリーズにおいての唯一の例外、前後編あわせて60分弱をこの一匹の怪獣のエピソードに費やしている。
最終回に登場しウルトラマン (Ultraman) を破ったゼットン (Zetton aka Z-Ton) や、実力行使を避けて引き下がったメフィラス星人 (Alien Mephilas) 等を除けば、本シリーズ最強の怪獣と断言してよい。
そんな怪獣の登場するエピソードだからこその"怪獣殿下"なのだ、と想って観始めると、途端に肩すかしを喰らう。


"怪獣殿下"とは、この作品のもう一人の主人公、鈴木治少年 [演:稲吉千春] の綽名なのである。
怪獣好きが高じて就いた綽名、賞讃に値するその名の筈が、ちょっと物語では変な具合になっている。

"怪獣がいるなんて信じてる奴いるもんか"
"コイツ怪獣映画の見過ぎで頭に来たんだろう"
彼の級友が彼、つまり"怪獣殿下"に向けて発する台詞がこれなのである。

物語の中では、怪獣が居り、それを追撃する科学特捜隊 (Science Special Search Party) があり、そして彼らを救うウルトラマン (Ultraman) がいる筈なのである。

世界観 (Worldview) が揺らいでる。

のではない。
あのブラウン管 (Cathode Ray Tube) の中に登場し、虐げられ疎んじられている存在、"怪獣殿下"こと鈴木治少年 [演:稲吉千春] は誰なのか。それは、他でもない。彼の行動をブラウン管 (Cathode Ray Tube) のこちら側から凝視める僕たちの事に他ならない。
学習雑誌の付録や週刊誌のカラー・グラビアを貪る様に読み倒し、おもちゃ売り場に居並ぶ怪獣達を睥睨 ( "Glare At" or "Look Contemptuously At" ) し、レコード店にあるソノシート (Flexi Disc) に垂涎 (The Object Of Envy) したのは、この鈴木治少年 [演:稲吉千春] や僕ばかりではない。
"浩宮さま(現皇太子殿下)が、書店で最初に買われた本が、大伴の『怪獣図鑑』でした"とこちらのサイトで紹介 してある様に、日本国中の少年が同じ想いだったのである。

"怪獣がいるなんて信じてる奴いるもんか"
"コイツ怪獣映画の見過ぎで頭に来たんだろう"
と蔑み侮蔑されたのはぼく達である。だからといって、侮蔑されたその相手は級友なんかぢゃあない。オトナ達によって、ぼく達は断罪されたのである。

虚構が現実を誘惑しているのだ。
そうではない。
現実が虚構を侵犯するのだ。

images
1億5000万年前の太古に棲息していた恐竜の生残りが輸送途中に覚醒し、怪獣ゴモラ (Gomora) となって現れる。南海のジョンスン島 (Johnson's Island) に棲息している限りでは、生きている化石 (Living Fossil) であり、現在で言うレッド・データ・ブック (Red Data Book) に登録すべき生物である。しかし、一旦それが都会に現れ、都市を破壊し、人々を蹂躙 (Trample Down) し始めた時点で、それは生物を超えたもの、つまり、怪獣と化してしまう。キング・コング (King Kong) を初めとして、怪獣はその様に誕生する。

ゴモラ (Gomora) とウルトラマン (Ultraman) の格闘途中に発見した光る棒を、鈴木治少年 [演:稲吉千春] は必死の想いで科学特捜隊 (Science Special Search Party) に届けに行く [彼はその光る棒の正体もその使い方も解らない筈なのに、頭の上に掲げてウルトラマン (Ultraman) を召還しようとする] 。何故なら、その光る棒こそが、ベータ・カプセル (Beta Capsule) であり、科学特捜隊 (Science Special Search Party) 、否、ウルトラマン (Ultraman) にとって必要なモノだからなのである。
何故、彼が必要なモノだと認識しえたのかは言うまでもない。彼もまた、ブラウン管 (Cathode Ray Tube)のこちら側でウルトラマン (Ultraman) の活躍を凝視めていた、そんなぼく達の中のひとりだからだ。

ウルトラマン (Ultraman) 』の、第1話「ウルトラ作戦第一号」 (Ultra Operation #1.) と最終話「さらばウルトラマン」 (Farewell, Ultraman) を制作した金城哲夫 (Tetsuo Kinjo) ~円谷一 (Hajime Tsuburaya) ~高野宏一 (Koichi Takano) ならではの作劇と言えよう。

それは、近松門左衞門 (Chikamatsu Monzaemon)の虚実皮膜論 ( "Art is something that lies in the slender margin between the real and the unreal." ) や、前回書き連ねた、『仮名手本忠臣蔵 (Kanadehon Chushingura) 』や歌舞伎『東海道四谷怪談』 (Kabuki Play "Tokaido Yotsuya Kaidan") が実話に基づく虚構である...と、ここでは大風呂敷は広げないけれども、ゴモラ (Gomora) という怪獣は、その様な舞台に登場した怪獣なのである。

と、ここまでは「怪獣殿下 [前後篇] 」 (The Monster Prince) を紹介するエピソードとしては、どこでも語られている内容です。
実は、同じ様な設定で「怪獣殿下 [前後篇] 」 (The Monster Prince) とは全く異なるトーンの、悲劇的な物語があるのです。

それは、『メカゴジラの逆襲 (Terror Of Mechagodzilla) 』[本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品]、1975年の作品である。
物語は、[ゴジラ (Godzilla) という怪獣が跋扈 (Be Rampant) する世界観 (Worldview) であるにも関わらず] 絶滅した筈の恐竜の生存を主張し、その主張が異端であるがために学会を追われた科学者の内心から総てが始る。
恐竜チタノザウルス (Titanosaurus) が登場し、さらにはゴジラ (Godzilla) も登場するものの、彼を許し認め評価する者は誰もいない。

「怪獣殿下 [前後篇] 」 (The Monster Prince) が放映されてから約10年、全国各地にいた"怪獣殿下"も少年期を脱し、新たなステージに向かう。そんな時代だからこそ、創られた物語なのだろうか?
ゴジラ (Godzilla)』シリーズは、本作品をもって永きの眠りに一度、入ってしまうのだ。

次回は「」。
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