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2021.07.18.07.49

『ライヴ・アット・マクシズ・カンサス・シティ (LIVE AT MAX'S KANSAS CITY)』by ヴェルヴェット・アンダーグラウンド (THE VELVET UNDERGROUND)

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本作と彼等の第4作『ローデッド (Loaded)』 [1970年発表] が、はじめてぼくが聴いたヴェルヴェット・アンダーグラウンド (The Velvet Underground) の作品である。廉価のアナログ盤として、他の幾つかのアーティスト達の幾つかの作品群とあわせて、再発もしくは本邦初登場作品として販売されたのだ。
序でに綴っておくと、彼等の作品群のなかで最も好きなのは第2作『ホワイト・ライト / ホワイト・ヒート (White Light / White Heat)』 [1968年発表] である。本作にはあまり良い印象をもってはいない。

当時は、パンク (Punk) からニュー・ウェイヴ (New Wave) へと発展しつつある時季で、ぼくが買い漁っていたのはそんな作品群ばかりである。そして、その元祖的な位置付けとして彼等と彼等の遺した作品群は紹介されていた。決してそんな評価は間違ったモノではないが、そこから巣立ったメンバー達の当時の動向よりも、そちらの方が重要でかつ訴求するモノと看做されていたのだろう。
例えば、ジョン・ケイル (John Cale) を紹介するには、パティ・スミス (Patti Smith) の第1作『ホーセス (Horses)』 [1975年発表] のプロデューサーである、と謂う様に。
本作に封入されてある、水上はる子 (Haruko Minakami) による日本盤ライナー・ノーツもそんな趣旨の論理展開である。現在の音楽シーンの現状を紹介し、そこに於ける本作を遺したバンドの位置付けを経て、かつてのメンバー達の動向を紹介しているのだ。
モーリン・タッカー (Moe Tucker) をティナ・ウェイマス (Tina Weymouth) [当時トーキング・ヘッズ (Talking Heads) 在籍] 達、パンク (Punk) 系女性ミュージシャンの原点であるかの評価さえある [いや、決して間違えた視点ではないんだけれども]。

勿論、本作には、そのバンドのオリジナル・メンバーであるジョン・ケイル (John Cale) は参加していない [モーリン・タッカー (Moe Tucker) も不在だ]。彼の存在は、ルー・リード (Lou Reed) との共作である楽曲『サンディ・モーニング (Sunday Morning)』、その1曲のみである。
だから、彼等のファースト・アルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ (The Velvet Underground And Nico)』 [1967年発表] とは隔絶したモノが本作にはある。

[彼等の第1作を入手したのは、1年も後の事である。今はもう亡いレコード店の片隅に埋もれて日本盤があったのだ。その作品のプロデューサーでもあるアンディ・ウォーホル (Andy Warhol) 画のバナナ (Banana) の皮も捲る事も出来た。一番好きな第2作はさらにその後。第3作『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド (The Velvet Underground)』 [1969年発表] は、彼等のボックス・アルバム『ピール・スローリー・アンド・シー (Peel Slowly And See)』 [1995年発表] を入手するまで聴こうとも聴きたいとも思わなかった。]

ふわふわと虚ろに漂っている。本作を聴くといつも思う。幾つかの楽曲は、同時に購入した第4作収録楽曲でもあり、スタジオ・ヴァージョンとライヴ・ヴァージョンの差異に驚かされる。と、謂うよりも、スタジオ作にある雰囲気、そのひとつだけが抽出されている様でもある。
例えて謂えば、曲間で語るルー・リード (Lou Reed) の声の向こうに聴こえる、へらへらとした観客の嗤い声、その虚無の響きなのである。もしかしたら、本作を聴く意義は、この嗤い声を聴く事にあるのかもしれない [さもなければ『ヘロイン (Heroin)』 [第1作収録楽曲] はもうやらないと謂うルー・リード (Lou Reed) の発言だ]。

拙稿を綴る為に、久しぶりに本作を聴いた。不思議な事に、どの曲に対しても、声をあわせて唄ってしまった。普段、聴く彼等の楽曲のどれもに対して勿論、ぼくは唄う事は出来るだろう。だけれども、その際は主旋律よりも、その背景としてあるべき音響の方に関心がある様な気がする。でも、本作で聴ける楽曲に対しては、普段見過ごされているその主旋律の方にばかり、関心があるのだ。それは単に、本作がライヴ収録作であり、スタジオでの音響や音質の再現が当時の彼等にとっては困難なモノであった、と謂う理由だけではない様な気もする。

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本作は、バンドが存続していた時季に発表された唯一のライヴ収録作品であり、その結果なのかどうなのか、収録場所であるマクシズ・カンザス・シティ (Max's Kansas City) は、当時 [ここで謂う当時は本作をぼくが購入した時季と謂う意味だ] シービージービー (CBGB : Country, Blue Grass, And Blues) と並んでパンク (Punk) の牙城として位置付けされていたと思う。それ故に、本作はヴェルヴェット・アンダーグラウンド (The Velvet Underground) の記録であると同時にマクシズ・カンザス・シティ (Max's Kansas City) の記録として評価する事も出来るだろう。
マクシズ・カンザス・シティ (Max's Kansas City) での収録作品には、オムニバス・ライヴ・アルバム『マクシズ・カンザス・シティ:1976・アンド・ビヨンド (Max's Kansas City : 1976 & Beyond)』 [1976年発表] とハートブレイカーズ (The Heartbreakers.) のライブ・アルバム『ライヴ・アット・マクシズ・カンザス・シティ (Live At Max's Kansas City)』 [1979年発表] 等がある。前者のジャケットにもマクシズ・カンザス・シティ (Max's Kansas City) の外観があり、本作発表後4年経過した後もその佇まいにはなんらの変化を発見出来ない。その点をもって、少なくとも前作は本作の継承と謂う意図があるのかもしれない。

最期に綴るべきは、本作のアート・ワークに関して、だ。
モノクロ撮影のマクシズ・カンザス・シティ (Max's Kansas City) の外観に、極彩色のイラストが絡みついている。そこにあるよっつのオブジェ、薔薇 (Rose)、 / Serpent)、葡萄 (Grape)、そして (Cloud) が意図するモノはなんだろうか。彼等がそれまでに遺したスタジオ収録作4作品なのであろうか。個々のオブジェをひとつひとつ1作ごとに対応出来そうな気がしないでもないのだ [そしてそのしたでまるで水飲み鳥 (Drinking Bird) の様に身体を前後にふっている人物がいるがこれは一体、なんなのだろう]。
猶、本作と前作である第4作『ローデッド (Loaded)』、そのアートワークは、サイケデリック (Psychedelic)) の残滓以上の意味をぼくはみいだせない。そんな観点からみると、彼等の音楽がレコード会社からさえも不当な理解しか得られていなかったのだろうなぁと思わせもする。
ちなみに、本作の水上はる子 (Haruko Minakami) によるライナー・ノーツには「写真とポップ・アートを組みあわせたこのユニークなジャケットのライヴ盤は、長らく輸入レコード屋のベスト・セラーだった」なる文言がある。

ものづくし (click in the world!) 225. :
『ライヴ・アット・マクシズ・カンサス・シティ (LIVE AT MAX'S KANSAS CITY)』by ヴェルヴェット・アンダーグラウンド (THE VELVET UNDERGROUND)


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ライヴ・アット・マクシズ・カンサス・シティ (LIVE AT MAX'S KANSAS CITY)』by ヴェルヴェット・アンダーグラウンド (THE VELVET UNDERGROUND)

THE VELVET UNDERGROUND COTILLION SD 9500
SIDE 1
1. アイム・ウェイティング・フォー・ザ・マン
 I'M WAITING FOR THE MAN (4:00)
2. スウィート・ジェーン
 SWEET JANE (4:52)
3. ロンサム・カウボーイ・ビル
 LONESOME COWBOY BILL (3:41)
4. ビギニング・トゥ・シー・ザ・ライト
 BEGINNING TO SEE THE LIGHT (5:00)
SIDE 2
1. アイル・ビー・ユア・ミラー
 I'LL BE YOUR MIRROR (1:55)
2. ペイル・ブルー・アイズ
 PALE BLUE EYES (5:38)
3. サンディ・モーニング
 SUNDAY MORNING (2:43)
4. ニュー・エイジ
 NEW AGE (5:58)
5. ファム・ファタル
 FEMME FATALE (2:43)
6. アフター・アワーズ
 AFTER HOURS (2:05)

All songs are written by Lou Reed with the exception of Sunday Morning which is composed by Lou Reed and John Cale with lyrics by Lou Reed. All songs are published by Oakfield Avenue Music, BMI.

Velvet Underground : Lou Reed, rhythm guitar & lead vocals ; Sterling Morrison, lead & rhythm guitars ; Doug Yule, bass & vocals ; Bill Yule, drums.

Recording : Brigid Polk
Editing and production supervision : Geoff Haslam
Album Coordination : Mark Meyerson
Art Direction & Design : Richard Mantel
Photography : Fred Lombardi Illustration : Doug Johnson

Special thanks to Danny Fields.

liner notes by MARK MEYERSON Coordinator of A & R Atlantic Records

This album was recorded in mono and can be played on any mono or stereo record player

COTILLION RECORDS DIVISION OF ATLANTIC RECORDING COOPERATION
(P) 1972 Atlantic Recording Corporation


ぼくが所有している日本盤LPには水上はる子 (Haruko Minakami) による解説と、リンダ・ヘンリック (Linda Hennrick) 聴き取りによる歌詞が封入されている。訳詞はない。
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