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2009.03.10.21.54

るーぺ

産まれて最初にルーペ(Loupe)、すなわち虫眼鏡を手にしたのは、就学前。恐らく四歳にも満たない頃だと想う。勿論、ルーペ(Loupe)といっても、近所の駄菓子屋で売っていた50円もしないおもちゃのルーペ(Loupe)だったけれども、当時はそれで充分だった。

多分、緑色か藍色のプラスチック(Plastic)のボディに一体成形されていたプラスチック(Plastic)製の凸レンズ(Positive Lens / Converging Lens)の、その倍率(Magnification)は二倍にも満たないものだろうけれども、それでも、己自身を取り巻く風景が随分と変わって観えたのである。
部屋の片隅に無造作に放り出されていた朝刊(Newspaper)やら、卓袱台(Chabudai)に置かれた急須(Teapot)の文様やら、白黒テレビ(Black And White TV Set)のブラウン管(Cathode Ray Tube)やら、そこら中を這いずり回り、部屋の隅から隅まで、日がな一日ぢゅうずっと、辺り構わずに覗き込んでいたのである。

そしてそこから先の話は、あらためて書くまでもない。室内の"調査"に飽きたら、次はもっと広い世界に赴くだけの事である。

しかしながら、己の掌の中にある内は充分で満足がいくものであっても、それが一旦手元から離れてしまった場合の、落胆と幻滅はどの様なものであろうか。

つまりは、こういう事である。
例えば、偶然にも斜向いに棲む同年代の少年ー仮にMくんと呼ぼうー彼が、近所の児童公園で捕まえてきたゴマダラカミキリ(White-spotted Longhorn Beetle)を僕に観せたとする。そこで僕が、手にしたルーペ(Loupe)を翳してその蟲を覗き込んだとしたら...。
僕の頭の中では、自室の本棚に積まれている昆虫図鑑(Bug Guide)のある頁が開かれている。そして、その頁の右隅には、今、手元にある蟲と同種の昆虫(Insect)の、拡大された顔面が掲載されている筈だ。
僕とMくんが想い描くのは、手にしたルーペ(Loupe)で、それと全く同じ、否、それ以上に大きな驚異的な映像が視野に飛び込んでくる。そんな夢想であった。

やっぱり、おもちゃだよなぁ。
僕達の下した結論がこれなのであった。

そして、とどのつまりが、僕達がアンリ・ファーブル(Jean Henri Fabre)になれなかった顛末が、これなのである。

images
掲載図版は、ナダール(Nadar)撮影によるアンリ・ファーブル(Jean Henri Fabre)

次回は「」。
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