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2021.03.21.08.00

『フロッグス、スプラウツ、クロッグス・アンド・クラウツ (FROGS, SPROUTS, CLOGS AND KRAUTS)』 by ルーモア (RUMOUR)

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イアン・デューリー (Ian Dury) にはザ・ブロックヘッズ (The Blockheads) がいた様に、エルヴィス・コステロ (Elvis Costello) にはジ・アトラクションズ (The Attractions) がいた様に、グレアム・パーカー (Graham Parker) にはザ・ルーモア (The Rumour) がいた。
ここまでは間違ってはいない。
当時、個性的な男性ロック・ヴォーカリストの背後には、彼と対等、もしくはそれ以上に個性の強い専属バック・バンドが配属されていたのである。そのヴォーカリスト達の、アルバムにもライヴにも常に、彼等が帯同していたのだ。

だけれども、この文脈に、トム・ペティ (Tom Petty) とそのザ・ハートブレイカーズ (The Heartbreakers) や、ブルース・スプリングスティーン (Bruce Springsteen) とそのイー・ストリート・バンド (The E Street Band) を並べてもいいのだろうか。と、躊躇ってしまうのは、個々のヴォーカリスト達の音楽性や出自がぼくの念頭にあるからである。
況してや、ボブ・ディラン (Bob Dylan) とザ・バンド (The Band) に於いてをや。

ぼくが所有している国内盤CDの帯には、本作を紹介する文言として、ボブ・ディラン (Bob Dylan) とザ・バンド (The Band) の関係性に匹敵する存在として、グレアム・パーカー (Graham Parker) と本作の主人公であるザ・ルーモア (The Rumour) を紹介してあるのだ。

そんな比喩表現をする必要があるのならば、ぼくならば、オーティス・レディング (Otis Redding) とブッカーティー・アンド・ジ・エムジーズ (BookeR T And The Mg's) の方が相応しいと思うのだけれども。

ザ・ルーモア (The Rumour) を従えていた当時のグレアム・パーカー (Graham Parker) の音楽性、特に明快なポップ・サウンドでありながらも攻撃力のある歌唱と演奏は、オーティス・レディング (Otis Redding) とブッカーティー・アンド・ジ・エムジーズ (BookeR T And The Mg's) の熱い演奏に匹敵している様にも思えたのだ。それはヴォーカリストとバンド、その両者が互いに煽りに煽るからである。
しかもその熱さは、リード・ヴォーカリストを前面に押し出した際のバンドのあり方にあるばかりで、歌唱者のいないバンド単体での音楽性は、また異なった表情をもっているのである。

だが、そんな主張をしたとしても、少なからぬ弱点がそこにはある。と、謂うのは、ブッカーティー・アンド・ジ・エムジーズ (BookeR T And The Mg's) 抜きのオーティス・レディング (Otis Redding) の歌唱が存在していないのだから。その点は弱い。
逆に、バンドを離れてのボブ・ディラン (Bob Dylan) と、彼のいないザ・バンド (The Band) 単体、それぞれの音楽性と、彼等が共演している際に産まれるであろう化学反応の存在を信ずる事が出来るとしたら、その点をもって、グレアム・パーカー (Graham Parker) とザ・ルーモア (The Rumour) の比喩として成立してしまうのだ。

尤も、帯に躍るその文言は、より一般的な音楽ファンに向けてのモノであろう、と謂う事に着目してしまえば、単にそれだけの事である。オーティス・レディング (Otis Redding) よりもボブ・ディラン (Bob Dylan) の方が、遥かに知名度もあるだろうし、その文言を眼にした人物達にとっては、遥かに刺激的であろう、と。そんな考えがぼくに解らないでもない。

作品自体、アーティスト自体とは離れて、なんだかどうでもいい様な事をずぅっと堂々巡りしている様な文章ばかりが綴られているのは、バンドや作品を巧く説明する道筋へといつ迄経っても辿りつけないからなのだった。

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グレアム・パーカー (Graham Parker) ・アンド・ザ・ルーモア (The Rumour) 名義の作品は、ライヴ音源作を除けば全部で7作品ある。そのうちの2作品が今世紀に入っての再結成時でのモノで、彼等の全盛期 [この場合の彼等とは、リード・ヴォーカリストとそのバック・バンド双方にとってと謂う意味だ] の作品群は5作品ある。1976年から1980年の事である。
そして、本作自体は、彼等の最高作との呼び声も高い第4作『スパーク! (Squeezing Out Sparks)』 [1979年] が発表された、その同1979年の作品。バンド単独作としては第2作目にあたる。

リード・ヴォーカリストを擁した作品群での音楽性を期待して聴くと、肩透かしを喰らった様な印象を抱くかもしれない。と、謂うよりも、ぼくは、そう抱いた。
そこにあるのは柔軟である一方で、癖のつよいポップ・ソングばかりで、彼等の出自が奈辺にあるのか立ち所に解らせる様な代物なのである。そしてそれはそのまま、本作を発表した場、スティッフ・レコード (Stiff Records) に潜む音楽性と謂えなくもない。

さてここで、ぼくはその音楽性そのものを綴らねばならない場所に到着してしまった訳ではあるが、その前にひとつ気がかりで仕様がない事をひとつ記しておきたい。
それは作品名に関する事である。

アルバム・ジャケットをみてみれば、 がらんとした部屋の一角にある柱を取り巻く様にして複数の国旗 (National Flag) が掲げられ、ひとりの男性が柱と国旗 (National Flag) 群を背にして立っている。しかも、それらと彼はバリアロープと支柱でもって囲われているのだ。
国内盤封入の解説で白木良重 (Yoshie Shiraki) が、このアルバム・ジャケットは作品名の解題である、もしくは、作品名がアルバム・ジャケットの脚注である、そんな解読を試みている [明らかにそれは違うだろうと罵倒したい様な言説もそこにはあるのだが、いま、どこでも誰もが簡単に読める様な文章ではないのでそれはしない]。
ぼく自身は、その説を総て鵜呑みには出来ないのだが、そんな主張に準拠して、アルバム・ジャケットと作品名を眺めてみたい。

左から右へと国旗 (National Flag) 群を眺めてみると、オランダ王国国旗 (Vlag van Nederland)、ドイツ連邦共和国国旗 (Flagge Geschichte der Bundesrepublik Deutschland) [当時]、ベルギー王国国旗 (Vlag van Belgie)、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国国旗 (Flag Of United Kingdom OfGreat Britain And Northern Ireland) [これは他の旗の背後、奥まった場所にある] そしてフランス共和国国旗 (Drapeau national de la France)、この5国旗 (National Flag) が掲げられてある様だ。
一方で、作品名にある語句は、蛙 (Frogs)、新芽 (Sprouts)、木靴 (Clogs) そして酢甘藍 (Krauts) の4語句である。
そして、それぞれの語句がそれぞれの国旗に対応していると解釈すると、1語句が不足である。
ところで、このバンドは英国人 (British People) によって成るバンドである。
そこで、このアルバム・ジャケットは、英国人 (British People) = グレートブリテン及び北アイルランド連合王国国旗 (Flag Of United Kingdom OfGreat Britain And Northern Ireland) の視点から観た4カ国人 = 4国旗 (National Flag) が、この4語句によって象徴されているのではないだろうか、と推察出来る。
解りやすいのは、蛙 (Frogs)と酢甘藍 (Krauts)、このふたつである。前者が仏国人 (Francais) の、後者が独国人 (Deutsche) の意、英国人 (British People) からみたそれぞれの国人の蔑称である。
それらから類推すると木靴 (Clogs) は蘭国人 (Nederlanders) の、新芽 (Sprouts) は白国人 (Belgen) の、英国人 (British People) 視点からの蔑称ではないかと、考えられる。前者は、当該の国人の民族衣装として、後者は、彼等のベルギー王国 (Koninkrijk Belgie) が1830年と他の国々と比較して新しいから、と謂う理由をもって看做す事が出来る [尤も、後者にかんする解説をこわ高く主張するのは、近代国家としての建国云々、現政治体制としての建国云々と謂いだすと途端に破綻しかねないのではあるが]。
と、謂う様な解釈は成立しないだろうか?
猶、本説を裏付ける為には、本作収録楽曲の『ユーロ (Euro)』の解釈が重要となるのであろうが、残念ながら、国内盤には訳詞はおろか歌詞も掲載されておらず、その一方で、ネット上で検索しても当該楽曲の歌詞は登場しないのである。

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ところで、このバンドの第1作の作品名はアルバム『マックス (Max)』 [1977年発表]である。これは、フリートウッド・マック (Fleetwood Mac) のアルバム『噂 (Rumours)』 [1977年発表] に引っ掛けたモノであると謂う。作品名とバンド名の相互の位置を逆転させているのである。

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と、謂う事を憶い出すと、同年に発表されたニック・ロウ (Nick Lowe) のEP『ボイ (Bowi)』 [1977年発表] を引っ張り出したくなる。この作品は、デヴィッド・ボウイ (David Bowie) のアルバム『ロウ (Low)』 [1977年発表] に引っ掛けた命名だ。つまり、アルバムに並ぶ作品名が自身の名字に1文字足りない事を受けて、そのアーティストの名字から1文字足りない作品名としたのである。

そして、ぼくはそんな事ばかりに想いを馳せているから、本作の音楽性を未だに巧く説明出来ないのである。

ものづくし (click in the world!) 221. :『フロッグス、スプラウツ、クロッグス・アンド・クラウツ (FROGS, SPROUTS, CLOGS AND KRAUTS)』 by ルーモア (RUMOUR)


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フロッグス、スプラウツ、クロッグス・アンド・クラウツ (FROGS, SPROUTS, CLOGS AND KRAUTS)』 by ルーモア (RUMOUR)

「Bob Dylan : The Band = Graham Parker : The Rumour
スクィーズやXTCに通じる、ひねりのきいた英国独自のポップ・サウンドを展開したルーモアの'78年作 セカンド・アルバム。」

1. Frozen Years
2. Emotional Traffic
3. Tired Of Waiting
4. Loving You
5. Euro
6. Leaders
7. We Believe In You / New Age
8. All Fall Dawn
9. One Good Night
10. I Can't I Help Myself
Bonustracks
11. Hard Enough To Show
12. Frozen Years - Edited Version
13. II Want To Make You Very Happy as "Duplicates"
14. Call Of The Faithful as "Duplicates"

RECORDED ATEDEN MIXED AT EDEN AND WESSSEX

ENGINEERS ROGEEBECHIRIAN AND SOMEONE AT WESSSEX

UNDER THE LICENSE OF RABBEGELT Ltd.
(P) '92 MANUFACTURED BY CENTURY RECORDS CO ; LTD. JAPAN

ぼくが入手した日本盤には、白木良重 (Yoshie Shiraki) の解説と『ザ・スティッフ・レーベル - ア・ビリーフ・ヒストリー (The Stiff Records - A Brief History)』なる英文とその対訳が掲載されてある。

尚、そのCDに掲載されてあるクレジットは上記のモノのみだが、それでは不充分と思われるので、こちら等を参照して新たに判明した事を掲載しておく [一部重複しているのは許されたい]。

1. Frozen Years [written by B. Schwarz]
2. Emotional Traffic [written by R. Andrews, P. Mayberry]
3. Tired Of Waiting [written by J. Atkinson, R. Danko]
4. Loving You [Is Far Too Easy] [written by M. Belmont]
5. Euro [written by B. Schwarz]
6. Leaders [written by M. Belmont, N. Lowe]
7. We Believe In You / New Age [written by R. Andrews, P. Mayberry]
8. All Fall Dawn [Trumpet by Dick Hanson written by R. Andrews]
9. One Good Night [written by R. Andrews, M. Belmont]
10. I Can't I Help Myself [written by R. Andrews]
11. Hard Enough To Show [written by A. Bodnar]
12. Frozen Years [Edited Version] [written by B. Schwarz]
13. I Want To Make You Very Happy [As Duplicates] [written by The Duplicates]
14. Call Of The Faithful [As Duplicates] [written by The Duplicates]

mastering : Sterling Sound
recording : Eden Studios
mixing : Eden Studios, Wessex Sound Studios

Bass : Andrew Bodnar
Drums, Vocals : Steve Goulding
Guitar, Vocals : Brinsley Schwarz, Martin Belmont
Keyboards, Vocals : Bob Andrews
Engineer : Roger Bechirian
Mastering : GC
Producer : Roger Bechirian, The Rumour

All songs published by Vicglobe / Street Music Ltd. except 1 Street Music Ltd. / Rock Music Ltd.

All songs (P) 1978 Vicglobe / SStreet Music Ltd. except 1 (P) 1978 Street Music Ltd. / Rock Music Ltd.

(C) 1978 Stiff Records
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