2021.03.16.08.58
現実に発症し得るその病状の、原因や症状、もしくは治療や予後とは、一切関係ありません。
脳内頭頂部に1点、あかい滲みが出現する。そして、その滲みは徐々に拡大し、あたかも蜘蛛 (Spider) がその八肢を拡げたかの様に、脳全体を覆い尽くすのだ。
くも膜下出血 (Subarachnoid Hemorrhage) と謂う語句を聴いて、ぼくが連想するのはそんな映像である。
[もう一度、繰り返します。現実に発症し得るその病状の、原因や症状、もしくは治療や予後とは、一切関係ありません。]

だから、そんな映像から飛躍して立ち所に、こんな作品を憶い出してしまう [上掲画像はこちらから]。
物語の舞台は、主人公、不動明 (Akira Fudo) と彼が寄宿している牧村家 (The Makimura) の長女、牧村美樹 (Miki Makimura) が通う学校の、ある日の放課後である。
昨夕の下校時、そして今朝の登校時。ふたりに絡んでこっ酷い仕打ちを受けてしまったドス六 (Dosu-Roku) は、不良達を募り、その報復を試みるが、ここでも、彼等達5人は不動明 (Akira Fudo) 1人に叩きのめされてしまう。そんな不甲斐ない彼等の前に顕れたひとりの女学生の、胎内を喰い破って登場したのが、数匹の蜘蛛 (Spider) なのである。蜘蛛 (Spider) はたちまち彼等にとり憑いて、彼等を操り、不動明 (Akira Fudo) を亡き者にせんと肉薄する。否、5人ばかりではない。放課後の学内に居た総ての生徒達に蜘蛛 (Spider) はとり憑いていたのである。
マンガ『デビルマン (Devilman)』 [永井豪 (Go Nagai) 作 1972~ 1973年 週刊少年マガジン連載] では、この蜘蛛 (Spider) の逸話は、ともすれば看過されがちなエピソードなのであるが [ぼく達の脳裏に強く印象づけられているのは、その前にあるデビルマン (Devilman) と妖鳥シレーヌ (Sirene) の死闘であり、また、その後にある悪魔王ゼノン (Lord Zennon) の登場以降の急展開である]、実はかなり重要な伏線が何本も張り巡らされた逸話である。と、ぼくは思う。
ひとつには、この蜘蛛 (Spider) の正体は魔将軍ザン (Zann) である事だ [後に改変され、その蜘蛛 (Spider) はラズバ (Rasber) とされているが]。彼は、不動明 (Akira Fudo) 達と蜘蛛 (Spider) との雌雄を決する闘いの直前に、その姿を顕して、名乗りをあげる。つまり、これは不動明 (Akira Fudo) すなわちデビルマン (Devilman) への挑戦状 (Statement For Challenge) であり、宣戦布告 (Declaration Of War) なのである。
その結果、ぼく達は、不動明 (Akira Fudo) 達の眼前にたちはだかる敵、デーモン (Demons) が組織的な存在であると知る。そして、不動明 (Akira Fudo) 達とによる彼等への闘いが次のステージへ移ったと知らされるのだ [特撮TV番組『仮面ライダー (Kamen Rider)』 [原作:石森章太郎 (Shotaro Ishinomori) 1971~ 1973年 NET系列放映] に於いて、ショッカー大幹部 (Shocker Generals) の肩書きをもつ人物達の登場と、その意味から類推すれば、解るだろう]。
ひとつには、デーモン (Demons) による人類 (Human Race) 討伐の方法の可能性が、ぼく達の思っていた以上に、多種多様、豊富である可能性を気付かせる事だ。
デーモン (Demons) が人 (Human) と合体するには幾つもの厳しい条件がある。その多難を掻い潜って誕生したのがデビルマン (Devilman) である [そして、その多難を逆手にとって活用し最大の効果を挙げたのが、後に登場する彼等の自爆攻撃 (Suicide Bomb Attack)、無差別合体 (indiscriminate Combining) である]。
それ故に、デーモン (Demons) が、地球上に於ける人間 (Human Race) の地位を脅かす為には、彼等が直接的に彼等を暴力でもって襲うしか、その術がない様に思われてきた。つまり、デーモン (Demons) が人間 (Human) を喰う、それしかないのである。
だが、それではあまりに時間がかかりすぎるのではないだろうか、と謂う疑念が沸きかねない。
にも関わらずに、物語の中では、デーモン (Demons) が人間界 (Human Society) になんの問題もなく潜伏し融合していると、告げられるのだ。それ故に、デーモン (Demons) による人間 (Human Race) 排除の方法として、"喰う"以外の手法を呈示する必要性が迫られていた、と看做す事が出来る。
この蜘蛛 (Spider) の逸話は、人間 (Human) を生かした儘、さらに、一度に多数の人間 (Human) を、おのれの支配下におく手法が呈示されてある。この逸話を事例のひとつとして把握してみれば、デーモン (Demons) には、多種多様な人類 (Human Race) 支配の可能性が暗示されていると、ぼく達に解釈せしめる事が出来るのではないだろうか。
そして、ひとつには、デーモン (Demons) には、これまでぼく達には知らされてこなかった能力の存在がある事をこの逸話でもって主張している事である。
その能力とは、他の生物の精神にちからを及ぼす事によって、その生物の肉体と精神を思うが儘に操る事が出来る事だ。つまり、これまでぼく達に知らされてきたデーモン (Demons) の印象がここに於いて、モノの見事に覆された事になる。と、謂うのは、デーモン (Demons) とは肉体と暴力、闘争本能の権化 (Incarnation About Fighting Instinct) であるかの様な印象を与え続けられてきたからなのである。そうではない、彼等はその精神力に於いてをも人類 (Human Race) を凌駕するちからを秘めている、そんな印象を蜘蛛 (Spider) の逸話はぼく達に知らしめているのだ。
さらにこれは、この逸話以降に登場し、暴力すなわち自己の体力ではなくて彼を凌駕するその精神力に於いて、デビルマン (Devilman) を一敗地に塗れせしめたデーモン (Demons)、サイコジェニー (Psycho Jenny) の登場 [すなわちデビルマン (Devilman) の敗北] を促す事である。
そして、謂うまでもなく、そのデーモン (Demons) の存在はそのまま、この物語での飛鳥了 (Ryo Asuka) の存在意義と彼の真の姿、ひいてはマンガ『デビルマン (Devilman)』と謂う物語全般を支配する伏線でもある。よって、この蜘蛛 (Spider) の逸話は、そんな大いなる伏線への導入部として評価出来る筈なのである。
不動明 (Akira Fudo) と蜘蛛 (Spider) との闘いは、先制をかけた魔将軍ザン (Zann) の撤退によって、中途半端なかたちで終わったが、それ故に [そのマンガ内に於いてはぼく達は魔将軍ザン (Zann) の、真のつよさと謂うモノを体感する機会は永遠に奪われてしまった]、この物語の最終部まで遺恨の様なかたちで、おおきな影響を及ぼしていると謂ってよい。
次回は「つ」。
附記 1. :
SF小説『地球の長い午後 (Hothouse)』 [ブライアン・W・オールディス (Brian W Aldiss) 作 1962年発表] には、この蜘蛛 (Spider) の様に、生物頭部に付着する事によって、その生物を支配する茸 (Mushroom)、アミガサダケ (The Morel) が登場する。
で、人類 (Human Race) に憑依する茸 (Mushroom) と謂えば、映画『マタンゴ (Matango)』 [本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品 1963年制作] へと想いが至ってしまうのだが、このみっつの作品になんらの関係性はあるのだろうか。
附記 2. :
マンガ『デビルマン (Devilman)』の作者、永井豪 (Go Nagai) には同時期に連載していた、もうひとつの彼の代表作であるマンガ『マジンガーZ (Mazinger Z)』 [1972~ 1973年 週刊少年ジャンプ 連載] がある。そして、このふたつの作品は互いに影響を与えあっている。
前者に登場する魔獣ジンメン (Jinmen) は、自らが喰らった人間 (Human) の意識と精神をその肉体に表出させる事が出来る。彼に喰われた人間は死者であるのにも関わらずに、魔獣ジンメン (Jinmen) の肉体に、身動きもままならないままに現出して遺恨や怨念のことばを吐き続ける。そして、後者に登場する機械獣 (Mechanical Beasts) ゴルゴス G5 (Grogos G5) は、体内に人質 (Hostage) としての人間 (Human) を何人も、その体内に幽閉する事が出来る。
それと同種の変換が、魔将軍ザン (Zann) の蜘蛛 (Spider) にも為され、マンガ『マジンガーZ (Mazinger Z)』 には、機械獣 (Mechanical Beasts) マリオ N7 (Mario N7) が登場するのだ。彼は、その無数にある触手を駆使し、無数にある人形をあたかも生けるが様に操る事が出来るのだ。
まるで、みえない糸によってその機械獣 (Mechanical Beasts) の触手が人形に生命を与えている様にみえるその様は、魔将軍ザン (Zann) [もしくははラズバ (Rasber) ]の登場シーンをそのまま連想させる。蜘蛛 (Spider) が放つ無数の糸 (Spider Silk) が手繰られる様にして、彼は闇のなか、虚空にその巨体を顕すからだ。
脳内頭頂部に1点、あかい滲みが出現する。そして、その滲みは徐々に拡大し、あたかも蜘蛛 (Spider) がその八肢を拡げたかの様に、脳全体を覆い尽くすのだ。
くも膜下出血 (Subarachnoid Hemorrhage) と謂う語句を聴いて、ぼくが連想するのはそんな映像である。
[もう一度、繰り返します。現実に発症し得るその病状の、原因や症状、もしくは治療や予後とは、一切関係ありません。]

だから、そんな映像から飛躍して立ち所に、こんな作品を憶い出してしまう [上掲画像はこちらから]。
物語の舞台は、主人公、不動明 (Akira Fudo) と彼が寄宿している牧村家 (The Makimura) の長女、牧村美樹 (Miki Makimura) が通う学校の、ある日の放課後である。
昨夕の下校時、そして今朝の登校時。ふたりに絡んでこっ酷い仕打ちを受けてしまったドス六 (Dosu-Roku) は、不良達を募り、その報復を試みるが、ここでも、彼等達5人は不動明 (Akira Fudo) 1人に叩きのめされてしまう。そんな不甲斐ない彼等の前に顕れたひとりの女学生の、胎内を喰い破って登場したのが、数匹の蜘蛛 (Spider) なのである。蜘蛛 (Spider) はたちまち彼等にとり憑いて、彼等を操り、不動明 (Akira Fudo) を亡き者にせんと肉薄する。否、5人ばかりではない。放課後の学内に居た総ての生徒達に蜘蛛 (Spider) はとり憑いていたのである。
マンガ『デビルマン (Devilman)』 [永井豪 (Go Nagai) 作 1972~ 1973年 週刊少年マガジン連載] では、この蜘蛛 (Spider) の逸話は、ともすれば看過されがちなエピソードなのであるが [ぼく達の脳裏に強く印象づけられているのは、その前にあるデビルマン (Devilman) と妖鳥シレーヌ (Sirene) の死闘であり、また、その後にある悪魔王ゼノン (Lord Zennon) の登場以降の急展開である]、実はかなり重要な伏線が何本も張り巡らされた逸話である。と、ぼくは思う。
ひとつには、この蜘蛛 (Spider) の正体は魔将軍ザン (Zann) である事だ [後に改変され、その蜘蛛 (Spider) はラズバ (Rasber) とされているが]。彼は、不動明 (Akira Fudo) 達と蜘蛛 (Spider) との雌雄を決する闘いの直前に、その姿を顕して、名乗りをあげる。つまり、これは不動明 (Akira Fudo) すなわちデビルマン (Devilman) への挑戦状 (Statement For Challenge) であり、宣戦布告 (Declaration Of War) なのである。
その結果、ぼく達は、不動明 (Akira Fudo) 達の眼前にたちはだかる敵、デーモン (Demons) が組織的な存在であると知る。そして、不動明 (Akira Fudo) 達とによる彼等への闘いが次のステージへ移ったと知らされるのだ [特撮TV番組『仮面ライダー (Kamen Rider)』 [原作:石森章太郎 (Shotaro Ishinomori) 1971~ 1973年 NET系列放映] に於いて、ショッカー大幹部 (Shocker Generals) の肩書きをもつ人物達の登場と、その意味から類推すれば、解るだろう]。
ひとつには、デーモン (Demons) による人類 (Human Race) 討伐の方法の可能性が、ぼく達の思っていた以上に、多種多様、豊富である可能性を気付かせる事だ。
デーモン (Demons) が人 (Human) と合体するには幾つもの厳しい条件がある。その多難を掻い潜って誕生したのがデビルマン (Devilman) である [そして、その多難を逆手にとって活用し最大の効果を挙げたのが、後に登場する彼等の自爆攻撃 (Suicide Bomb Attack)、無差別合体 (indiscriminate Combining) である]。
それ故に、デーモン (Demons) が、地球上に於ける人間 (Human Race) の地位を脅かす為には、彼等が直接的に彼等を暴力でもって襲うしか、その術がない様に思われてきた。つまり、デーモン (Demons) が人間 (Human) を喰う、それしかないのである。
だが、それではあまりに時間がかかりすぎるのではないだろうか、と謂う疑念が沸きかねない。
にも関わらずに、物語の中では、デーモン (Demons) が人間界 (Human Society) になんの問題もなく潜伏し融合していると、告げられるのだ。それ故に、デーモン (Demons) による人間 (Human Race) 排除の方法として、"喰う"以外の手法を呈示する必要性が迫られていた、と看做す事が出来る。
この蜘蛛 (Spider) の逸話は、人間 (Human) を生かした儘、さらに、一度に多数の人間 (Human) を、おのれの支配下におく手法が呈示されてある。この逸話を事例のひとつとして把握してみれば、デーモン (Demons) には、多種多様な人類 (Human Race) 支配の可能性が暗示されていると、ぼく達に解釈せしめる事が出来るのではないだろうか。
そして、ひとつには、デーモン (Demons) には、これまでぼく達には知らされてこなかった能力の存在がある事をこの逸話でもって主張している事である。
その能力とは、他の生物の精神にちからを及ぼす事によって、その生物の肉体と精神を思うが儘に操る事が出来る事だ。つまり、これまでぼく達に知らされてきたデーモン (Demons) の印象がここに於いて、モノの見事に覆された事になる。と、謂うのは、デーモン (Demons) とは肉体と暴力、闘争本能の権化 (Incarnation About Fighting Instinct) であるかの様な印象を与え続けられてきたからなのである。そうではない、彼等はその精神力に於いてをも人類 (Human Race) を凌駕するちからを秘めている、そんな印象を蜘蛛 (Spider) の逸話はぼく達に知らしめているのだ。
さらにこれは、この逸話以降に登場し、暴力すなわち自己の体力ではなくて彼を凌駕するその精神力に於いて、デビルマン (Devilman) を一敗地に塗れせしめたデーモン (Demons)、サイコジェニー (Psycho Jenny) の登場 [すなわちデビルマン (Devilman) の敗北] を促す事である。
そして、謂うまでもなく、そのデーモン (Demons) の存在はそのまま、この物語での飛鳥了 (Ryo Asuka) の存在意義と彼の真の姿、ひいてはマンガ『デビルマン (Devilman)』と謂う物語全般を支配する伏線でもある。よって、この蜘蛛 (Spider) の逸話は、そんな大いなる伏線への導入部として評価出来る筈なのである。
不動明 (Akira Fudo) と蜘蛛 (Spider) との闘いは、先制をかけた魔将軍ザン (Zann) の撤退によって、中途半端なかたちで終わったが、それ故に [そのマンガ内に於いてはぼく達は魔将軍ザン (Zann) の、真のつよさと謂うモノを体感する機会は永遠に奪われてしまった]、この物語の最終部まで遺恨の様なかたちで、おおきな影響を及ぼしていると謂ってよい。
次回は「つ」。
附記 1. :
SF小説『地球の長い午後 (Hothouse)』 [ブライアン・W・オールディス (Brian W Aldiss) 作 1962年発表] には、この蜘蛛 (Spider) の様に、生物頭部に付着する事によって、その生物を支配する茸 (Mushroom)、アミガサダケ (The Morel) が登場する。
で、人類 (Human Race) に憑依する茸 (Mushroom) と謂えば、映画『マタンゴ (Matango)』 [本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品 1963年制作] へと想いが至ってしまうのだが、このみっつの作品になんらの関係性はあるのだろうか。
附記 2. :
マンガ『デビルマン (Devilman)』の作者、永井豪 (Go Nagai) には同時期に連載していた、もうひとつの彼の代表作であるマンガ『マジンガーZ (Mazinger Z)』 [1972~ 1973年 週刊少年ジャンプ 連載] がある。そして、このふたつの作品は互いに影響を与えあっている。
前者に登場する魔獣ジンメン (Jinmen) は、自らが喰らった人間 (Human) の意識と精神をその肉体に表出させる事が出来る。彼に喰われた人間は死者であるのにも関わらずに、魔獣ジンメン (Jinmen) の肉体に、身動きもままならないままに現出して遺恨や怨念のことばを吐き続ける。そして、後者に登場する機械獣 (Mechanical Beasts) ゴルゴス G5 (Grogos G5) は、体内に人質 (Hostage) としての人間 (Human) を何人も、その体内に幽閉する事が出来る。
それと同種の変換が、魔将軍ザン (Zann) の蜘蛛 (Spider) にも為され、マンガ『マジンガーZ (Mazinger Z)』 には、機械獣 (Mechanical Beasts) マリオ N7 (Mario N7) が登場するのだ。彼は、その無数にある触手を駆使し、無数にある人形をあたかも生けるが様に操る事が出来るのだ。
まるで、みえない糸によってその機械獣 (Mechanical Beasts) の触手が人形に生命を与えている様にみえるその様は、魔将軍ザン (Zann) [もしくははラズバ (Rasber) ]の登場シーンをそのまま連想させる。蜘蛛 (Spider) が放つ無数の糸 (Spider Silk) が手繰られる様にして、彼は闇のなか、虚空にその巨体を顕すからだ。
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